白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

文字の大きさ
14 / 24

14 夢じゃなかった

しおりを挟む
「アーシュ……?」
 
振り向いた翡翠の瞳と目が合った。
 
「あ、ディー。おかえりなさい……」
 
あれ? 夢じゃないの……?
 
 「あぁ、ただいま」

 「アーシュ何していたの?」

 手を引き戻そうとしても、力強いディートハルトではびくともしなかった。

 「俺の体触ってなかった?」

 頬がカッと熱くなり、目が泳いでしまった。

 「夢かとおもったの……。それで確かめようと思って」

 ディートハルトは面白そうに、口角を上げた。

 「それで夢、だったの?」

 ディートハルトが掴んだ手を、自身の胸の押し当てた。

 「ひっ!」

 ディートハルトの心臓の鼓動がドクドクと手を通して伝わってきた。

 「夢じゃないみたい……」

 「うん。夢じゃないよ」

 「ええっ!夢じゃないの!?どうして?あれ?私確か、職場で討伐が終わったって聞いて、それで机に伏して寝たような……。なのに、ディーがここにいて、なぜか宿舎のベッドに寝てて……」

 なにがそうなって、ディートハルトとここにいるのだろうか……。頭を整理したいのに、全くできずうろたえてしまった。


 「ははは」と、ディートハルトがまたお腹を抱えて笑っている。

 「そうだよな、びっくりしてパニックになるよな」

 ディートハルトが私の肩を掴んだと思ったら、グイっと自分の方に引き寄せた。トクントクン……と耳に心地よい音がする。

 さらにぎゅっと抱きしめられ、汗と消炎の香りがした。

 「帰ってきたよ、やっと……。ずっと、アーシュに会いたかった」

 「うん……。私も……。ずっとディーに会いたかった。ケガしてない?」

 「うん、かすり傷位でほぼ無傷だよ」


私は上を見た。日焼けしたディートハルトの顔があり、少し野性味が増していた。そんな姿もかっこいいと思ってしまい、私はの鼓動が増していく。
翡翠の瞳が私を捕らえた。

「アーシュは少し痩せた?なんか持った時、軽くなった気がした」

 「あー……。うん、そうかも。なんせ、不眠不休だったから……。って、持った時って……?それにどうやって帰ってきたの?」

最後の討伐地は辺境の山間部だったはず。そこから、帰るには二週間はかかる。
 
「あー……、バーデン様が転移魔法で先に帰るって聞いて、便乗したんだ。それでその足で、魔道具課に行ったら、イヴェッタがアーシュが机で寝ちゃってるから、宿舎に持って帰れって。だから、そのまま抱えてここにきたって訳。アーシュよっぽど疲れてたんだね。全く起きなかったよ」

「えっ……、ええっ!!そんな……」
 
 きっと平日の昼間だったから、他の部署の職員にも見られてる!!しばらく、社員食堂行きたくないかも……。  

 それより、疲れて帰ってきたディートハルトに何させちゃってるのよ!

 「ディーも疲れてるのに、本当にごめんね!おかげで、良く眠れました。イヴェッタのお兄様と仲が良かったのね、知らなかったわ」

 「今回の討伐で、一緒に戦う機会が多くて、イヴェッタの同級生だよねって声をかけてくれたんだ。雲の上の存在だと思ったから、すごくうれしかったよ。バーデン様は多忙だから、転移魔法で魔法省に戻られるって聞いて、お願いしたら快諾してくれたんだよ」

 バーデン様の転移魔法!いいなぁ……。あんな豊富な魔力があったら、どんないい魔道具作れるだろう。

 「他のメンバーも2~3日中には帰ってこれるだろうから」

 「え?そんなに早く?」

 「うん、イヴェッタがバーデン様と作っていた、転移魔道具が試験的に使われる事になったんだ」

 イヴェッタは魔道具課一の魔力量の持ち主。大勢の人や、馬、馬車を転移魔法のように移動できないか、入職してからずっと研究していた。

 それがとうとう試験的に導入されたのか……!すごいなぁ……。私のつくるおもちゃのような魔道具とは大違いだ……。
 
 転移魔道具は、バーデン様が作る魔法陣を魔道具に入れたもの。五メートル程の円盤状の平たい魔道具で、対になっている。

 本体は王宮に保管されている。移動先で使うものなので、バーデン様が魔法で小さくして待って行ったのだろう。

 それがとうとうつかわれるのかぁ……。絶対見る!!

 「今、絶対見るって思ったでしょう」

 破顔したディートハルトに言われた。なんでもお見通しのようだ……。

 「あ、お風呂入りたいよね!宿舎のお風呂まだ使えるから、入ってきたら?今夜はここに泊まるよね?もう遅いし……」

 「あー……、でも着替えもないから、騎士団の宿舎に帰ろうかと思ったんだけど……」

 着替えかぁ……、私のじゃ入らないし……。あっ……。
 
 「バスローブだけもって行って!洋服は洗って乾かしておくから」

 コンシェルジェがいるとはいえ、宿舎にいる時は洗濯は自分でしていた。簡易ワンピースだった為、割とすぐ乾いたのだ。
 
 それに、早く乾かす魔道具パウダーもある。
 
 「えっ!バスローブで廊下歩くの?さすがに……」

 「大丈夫よ!こんな遅い時間に入る人いないから」

 「じゃあ、洋服脱いでくれる?」

 「わかったよ……」ディートハルトは観念したとばかりに溜息をついて、洋服を脱いだ。

 前に見た時より、一回り大きくなったと思う位筋肉がついていた。背中には所々大小の傷がついていた。中にはまだ治っていない傷もあり、痛々しかった。

 私はその傷跡にそっと触れていた。ビクッとディートハルトが反応した。

 「ア、アーシュ?」

 私はその背中にそっと抱き着いた。とてもおおきな背中だった。

 こんな傷だらけになるまで、市民の為に戦ってくれたんだ。おじいちゃんとの約束を守ってくれた。

 無事に帰ってきてくれた。一番に会いに来てくれた。目の奥がツンとしてきて、その波をおさえる事ができなかった。

 「ありがとう……。本当にありがとう……」そう言った時に、一滴頬を伝った。

 「うん……。アーシュもありがとう」

 とめどなく流れ出るものを抑えきれず、声を殺して泣いた。

 なんて、義理堅くて優しい人なんだろう。

 ディートハルトが振り向いて、私の顎に手を当てて自分の顔の方に向けた。

 「やっぱり、泣いてた」

 翡翠のやさしい瞳と目があった。

 涙に口づけられた。少し乾いた唇が、チクチクした。

 そしてまた美しい瞳と目が合い、ディートハルトの顔が近づいてきた。

 私はそっと瞳を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

政略結婚した夫に殺される夢を見た翌日、裏庭に深い穴が掘られていました

伊織
恋愛
夫に殺される夢を見た。 冷え切った青い瞳で見下ろされ、血に染まった寝室で命を奪われる――あまりにも生々しい悪夢。 夢から覚めたセレナは、政略結婚した騎士団長の夫・ルシアンとの冷えた関係を改めて実感する。 彼は宝石ばかり買う妻を快く思っておらず、セレナもまた、愛のない結婚に期待などしていなかった。 だがその日、夢の中で自分が埋められていたはずの屋敷の裏庭で、 「深い穴を掘るために用意されたようなスコップ」を目にしてしまう。 これは、ただの悪夢なのか。 それとも――現実に起こる未来の予兆なのか。 闇魔法を受け継ぐ公爵令嬢と、彼女を疎む騎士団長。 不穏な夢から始まる、夫婦の物語。 男女の恋愛小説に挑戦しています。 楽しんでいただけたら嬉しいです。

『あなたを捨てたのは、私です』 〜冷酷公爵を追い出した元恋人ですが、隠し子ごと溺愛されています〜

ria_alphapolis
恋愛
「あなたを捨てたのは、私です」 そう告げて、公爵である彼を追い出した日から数年。 私は一人で、彼との子どもを育てていた。 愛していた。 だからこそ、彼の未来とこの子を守るために、 “嫌われ役”になることを選んだ――その真実を、彼は知らない。 再会した彼は、冷酷公爵と噂されるほど別人のようだった。 けれど、私と子どもを見るその瞳だけは、昔と変わらない。 「今度こそ、離さない」 父親だと気づいた瞬間から始まる、後悔と執着。 拒み続ける私と、手放す気のない彼。 そして、何も知らないはずの子どもが抱える“秘密”。 これは、 愛していたからこそ別れを選んだ女と、 捨てられたと思い続けてきた男が、 “家族になるまで”の物語。

愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?

四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

素敵な人が私の婚約者ですか?すみません、他に好きな人がいる婚約者様とは将来を約束出来ませんので婚約破棄をお願いします。

クロユキ
恋愛
「あの…貴方は誰ですか?」 森の中で倒れていた私は婚約者のアレン様を私は覚えていません、記憶喪失だそうです。彼には別に好きな人がいたようなのです。私、マリーナ・クレールは婚約破棄をしました。 彼の事は覚えていませんので私の事は気にしないで下さい。 誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

あなたがすき、だったから……。

友坂 悠
恋愛
 あなたが好きだったから、わたしは身を引いた。  もともと、3年だけの契約婚だった。  恋愛感情なしに、偽装夫婦を演じよう。  そういうあなたに同意をして一緒に暮らし出した日々。  それなのに。  約束の期限の三日前、まさか酔ったあなたとそういう関係になるなんて、思わなかった。  だから。 わたしはそのまま翌朝家を出た。  わたしだけが、どんどんあなたを好きになってしまったことを隠したくて。  こんな気持ちを悟られ、あなたに迷惑がかかるのに、耐えられなくて。    ############# なろうさんで開催されていた、氷雨そら先生、キムラましゅろう先生主催、 シークレットベビー企画参加作品だった、「あなたが好きだったから」という短編に、少し加筆修正して連載化しました。 初めてのシクべ、ちょっと変わったタイプのシクべ作品となりました。 お楽しみいただけると幸いです。

「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!

放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】 侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。 しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。 「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」 利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。 一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。

処理中です...