【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

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13 夢でも会いたい

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「はぁ…………」

 「ちょっと、最近ため息ばかりじゃない……」

 私のデスクを通りかかったイヴェッタが、私にそう声をかけてきた。

「だって、来る日も来る日もおんなじ物ばかり作ってて、辛くなってきちゃうんだもの。早く新しい魔道具作りたいな~」

 「まぁね、その気持ちもわかるけどね」そういって、イヴェッタもため息をついた。
 
 今日も魔道具課は大忙しだ。遠征部隊に追加発注されている物が多く、その製作に追われている。

 魔獣は各地に散らばっており、ふたを開けてみればかなり大変な事態だった。

 山という山に、魔獣が現れ、市民が住む麓まで魔獣の生息が確認された。

 イヴェッタの兄も戦力として、討伐隊に参加している。

 幸い負傷者は少ないが、それもどこでどうなるかわからない。

 防御や回復アイテムの消費が激しく、それを作るのが魔道具課の仕事だ。

 ディートハルトが討伐に行ってから、もう10か月が過ぎた。

 魔道具課も普段の業務から、討伐隊の為の製作に追われ、毎日残業し、休日出勤が常となってきている。

 伯爵家に帰るのは週末の晩餐の時だけで、あとは臨時に設けられた宿舎で寝泊まりしている。

 ディートハルトがいない伯爵家は息がつまってしまうので、宿舎に泊まるのは正直ありがたい……。

 「アーシュレイさん、手紙おいておきますね」と、総務課の職員がデスクに手紙を置いていった。

 「ありがとうございます」と私はお礼を言って、手紙を確認した。

 一つはディートハルトで、もう一つはお義母様からだった。

 ディートハルトの懐かしい筆跡に、心がじんわり温かくなる。

 さっそく開けてみた。

 『親愛なるアーシュへ

 なかなか手紙を書けずに、すまない。

 魔道具課が送ってくれる物資のおかげで、皆ケガを最小限に抑えられ、とても助けられている。
 
 もしかして、魔獣除けパウダーはアーシュが作った? なんかそんな気がしたんだ。
 
 あのパウダーのおかげで、突然魔獣に出くわしても、一瞬奴らがひるんでくれるから、こっちも態勢を組みやすいんだ。
 
 本当にありがとう。
 
 討伐も残すところ一カ所になった。
 
 魔道具課も不眠不休だと聞いた。もう少しの辛抱だから、お互い頑張ろう。
 
 早く、アーシュに会いたい。

 ディートハルト』

 私は今は会えないディートハルトに、思いをはせて、手紙を抱きしめた。

 私は早く会いたい。あなたの声が聞きたい。あの逞しい胸に飛び込みたい……。

 「あら~?なんだかんだ、ラブラブじゃない」

 イヴェッタがニヤニヤしながら、また声をかけてきた。

 「そ、そんなことないわよ。ただ、ケガしてなかったようだから、安心したの。あと、魔獣除けパウダーは効果あったみたい」

 「そうなんだ!良かったじゃない。さすが、魔道具課きっての発明家ね」

 「ははは……。それ、言ってくれるのイヴェッタだけよ」

 私は乾いた笑いをした。

 私はもともとの魔力量が、他の職員より低い。魔道具は、制作時に物に魔力を流してつくる。その魔力量に比例して、つくれる大きさが決まってくる。

 イヴェッタは豊富な魔力を持っているため、大型武器や防具を製作できる。

 そして、魔力量が少ない私は、小型武器や道具、小さな回復アイテムなどの細々した物を製作している。

 魔獣除けパウダーは、魔獣が嫌いな薬草をブレンドして、微量の魔力を流したものだ。体に振りかけると、一時的に魔獣が近づきにくいように作った。

 試作品だったが、効果がでて良かった。でも、私の魔力ではせいぜい10分持てば良い方だろう。

「皆!作業を止めて聞いてほしい!」

 魔道具課の所長だ。……もしかして……。

 「とうとう、最後の山間部で、無事に魔獣の討伐が終わったと魔鳥から知らせが届いた!これで、討伐は終わった!皆、今日まで本当にご苦労だった!」

 そうか、手紙は荷馬車だからかなり時間がかかる。それにくらべて、魔鳥は数時間で到着する魔道具の鳥だ。かなり貴重な品の為、私たちは使用できない。

 よかった……。やっと終わったんだ……。

 魔道具課の面々が、やっと帰れると抱き合って喜んでいる。

 私もデスクに伏せた。これで、ゆっくり眠れる……。そして、ディートハルトに会える……。

 また、妊活の事があるけど、それは追々考えていこう……。今はとにかく眠りたい……。

 私は重くなった瞼をそのまま閉じた。
 
もう一つの手紙を開けていないことに気づくのは、だいぶあとになってからのことだった。
 

◇◇◇


あれ……?ずいぶん静かだなぁ……。確か……と思った所で、目が開いた。

目に映ったのは見慣れた天井だった。魔道具課の天井ではなく、なぜかいつも寝泊まりしている宿舎の天井だった。

あ……、討伐が終わったって言うのは夢だったのね。

そうよね、まだまだ時間かかるわよね。

じゃ、今は何時なんだろう……。全く時間の感覚がない……。そうとう疲れが溜まってるわね。

私は横向きになって、時計を見ようとした。そこに人の後姿があった。

どうやら、ベッドサイドに座って寝ているようだ。

このはちみつ色の髪の毛、知っている……。かなり伸びたようで、襟足で一つに結んでいた。

これも夢なのだろうか……。だってまだ帰ってこれるはずないもの。

私は恐る恐る手を伸ばした。

柔らかく、ふわふわの金色の髪の毛の感触が確かにあった。

日焼けした首筋に、盛り上がった肩の筋肉も見える。

髪の毛からそのまま、首に指をはわせた。確かに温かい……。夢なのに良く出来ている……。

夢なら、もう少し触っても良いだろうか……。私はそのまま逞しい肩のラインもなぞる。

毎日剣の稽古を欠かした事なかったもんね。

すごくいい筋肉……。努力のたまものだわ。それにしても、本当に再現度が高いわ。

そのまま胸の方に手を滑らしたときに、ガシっと手を捕まえられた。
 
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