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10話 広がる噂と新たな衝突
しおりを挟むあの実技練習での暗殺未遂事件以来、ソウタは、より一層、オリオンとの勉強に熱を入れるようになった。
「 もっと強くなって、自分の身は自分で守れるようにならないと」
ソウタは、オリオンにそう言って、連日、サポーターとしての知識と技術を磨き続けた。
彼の言葉には「生き残るため」という本音が隠されていたが、その真剣な眼差しは、オリオンに疑いを抱かせなかった。
ソウタの才能は目覚ましく、オリオンも彼の成長に驚きを隠せずにいた。
しかし、同時に、学校内には新たな噂が広まっていた。
あの演習場でのソウタの咆哮。
「僕の、ルースを傷つけるやつは僕の敵だぁあああああ!!!」
という言葉は、瞬く間に軍事学校全体に広まり、ソウタがルースを深く愛しているという憶測を生んだ。
「ソウタ様って、まさか平民のルース君に本気で……?」
「ありえないわ、あのフランゼ家のソウタ様が、平民なんかに……」
そんな囁きが、ソウタの耳にも届いた。
(まあ、この方が都合がいいかな……僕がルースに恋してるとでも思わせておけば、無用な詮索も減るだろうし)
ソウタは、噂を否定しなかった。
彼の涼やかな顔には、いつものマイペースな表情が浮かんでいる。
だが、その噂は、ある者の心を深く揺さぶっていた。
オリオンは、ソウタの傍らで、複雑な気持ちを抱えていた。
ソウタがルースを「愛している」という噂。
それは、オリオン自身のソウタへの感情と重なり、彼の心をざわつかせた。
ソウタの、サポーターとして輝く姿を見て、彼に惹かれていく自分。
しかし、そのソウタが他の誰かを想っていると聞けば、オリオンの胸は締め付けられるような痛みを覚えた。
(ソウタ君は……本当に、ルース君を……?)
オリオンは、ソウタの隣で、そんな疑問を胸に抱えながらも、彼への教えを続けるしかなかった。
その日の夕方。
サポーターとしての勉強を終え、自室へと戻ろうとするソウタの背後から、冷たい声が響いた。
「ソウタ。待て」
振り返ると、そこに立っていたのは、ライエルだった。
彼の顔は、以前の激昂とは異なり、冷徹な怒りに染まっている。
ソウタは、ライエルと視線を合わせた。
彼の心は、すぐに戦闘態勢へと切り替わる。
(面倒だな……またか)
「ソウタ。これは最後の警告だ。まだあの平民の味方をするようなら、貴様も容赦はしない」
ライエルの声には、貴族派としての優位を誇示する、明確な脅しが込められていた。
彼の瞳は、ソウタを射殺さんばかりの勢いで睨みつけている。
ソウタは、ライエルに対し、普段の穏やかな笑みを消した。
彼の涼やかな顔には、わずかな苛立ちと、そして、氷のような冷徹さが宿った。
「それは、こっちの台詞だ、ライエル」
ソウタの声は、普段の彼からは想像もできないほど、低い響きを帯びていた。
その声には、一切の感情の揺れがなく、ただ、絶対的な警告だけが込められている。
「今度、ルースを傷つけたら……殺してやる」
ソウタの瞳は、ライエルを射抜くような凄まじい威圧感を放っていた。
その言葉は、ソウタの「生存戦略」における、「ルースを護る」という最重要事項への、揺るぎない決意の表れだった。
彼は、自身の命がかかっている以上、もはやライエルへの遠慮などなかった。
ライエルは、ソウタのその威圧感に、思わず後ずさりした。
ソウタの、普段とはかけ離れた冷たい表情と、殺意にも似た眼差しに、ライエルは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
二人の間には、剣呑な空気が流れたまま、数日が過ぎた。
ソウタとライエルの関係は、完全に険悪なものとなっていた。
そして、実技テスト当日。
軍事学校の生徒たちが、それぞれの専攻の実技テストに挑むため、演習場に集まっていた。
このテストでは、ペアを組んでの連携能力が評価される。
ペアは、公平を期すために、くじ引きで決められることになっていた。
ソウタは、自分のくじを引いた。
その番号を確認し、対応するパートナーの名前を見た瞬間、ソウタの顔から、一瞬にして血の気が引いた。
「……嘘だろ」
ソウタは、絶望の呟きを漏らした。
彼の隣に立っていたオリオンが、心配そうにソウタの手元のくじを覗き込む。
そのくじに書かれていたのは、ライエルの名前だった。
ソウタは、自分の隣に立つライエルを、嫌そうな顔でじっと見つめた。
ライエルもまた、ソウタの手元のくじを確認し、彼を睨みつけている。
二人の間には、ぴりぴりとした緊張感が漂っていた。
(よりによってコイツとなんて……最悪だ……!)
そして、そんなソウタとライエルの様子を、少し離れた場所から、ルースがじっと見ていた。
彼の顔は、むっとした不機嫌な表情だった。
(ソウタ様が、あんな嫌そうな顔で……あの人とペアになったからか……?)
ルースの瞳には、ソウタとライエルがペアになったことへの、強い不満と嫉妬が宿っていた。
彼の心の中では、ソウタが自分に片思いしているという「誤解」が、さらなる複雑な感情を生み出していくのだった。
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