【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

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15話 それぞれの心の内

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 帝国軍事学校。

 長期休暇が終わり、ソウタとルースは軍事学校に戻ってきた。

 侯爵邸での休暇は、ソウタにとっては「生存戦略」が着実に進む実り多い期間であり、ルースにとってはソウタとの絆が深まる至福の時間だった。

 学校の門をくぐると、すぐに生徒たちのざわめきが耳に届いた。

 軍事学校は、テーマパークでのソウタとルースの活躍の噂で持ちきりだった。

 怪物との戦闘、二人の息の合った連携、そしてソウタが以前言い放った「僕のルースを傷つけるやつは僕の敵だ!」という言葉。

 それらは様々な憶測を呼び、二人の名前は学校中に知れ渡っていた。

「ソウタ君!」

 ソウタが歩いていると、オリオンが駆け寄ってきた。オリオンの顔には、安堵と、ソウタを心配する気持ちが入り混じっていた。

「休暇中は大丈夫だったかい? テーマパークでの話、聞いたよ。怪我はもう大丈夫なのか?」

 オリオンは、ソウタの肩をそっと触り、怪我がないか確認するように尋ねた。

「ああ、もう大丈夫だよ。ちょっと疲れたけどね」

 ソウタは、いつものように穏やかに答えた。

「それにしても、まさか実践で通用するなんて……ソウタ君は本当にすごいよ。僕が教える必要がないくらいだ」

 オリオンは、心底感心したようにソウタを褒めた。彼の瞳には、ソウタへの純粋な尊敬の念が宿っている。

 しかし、オリオンの心の中には、別の感情も渦巻いていた。ソウタとルースが二人きりでテーマパークに行ったこと。

 そして、未知生命体との激戦を共に乗り越えたこと。

(僕も、ソウタ君と一緒にテーマパークに行きたかったな……)

 オリオンは、ソウタとルースが楽しそうにしている姿を想像し、内心で少しばかり寂しさを感じていた。

 一方、ルースは、軍事学校に戻ってからも、ソウタに愛されているという噂が広まっていることを耳にしていた。

 彼は、その噂を耳にするたびに、満更でもない顔で口元を緩めながら、黙々と鍛錬に励んでいた。ソウタの愛を一身に受けているという噂は、ルースの心を大いに満たしていた。

 その日の午後、ソウタとオリオンは、鍛錬中のルースを少し離れた場所から見ていた。

 ルースの動きは、休暇中も鍛錬を怠らなかったことを物語っている。

「テーマパークでね、すごい近衛兵の二人組に会ったんだ」

 ソウタは、オリオンに、テーマパークでの近衛兵との出会いを話し始めた。

「彼ら、本当に強くてさ。僕たちじゃ手も足も出なかった敵を、あっという間に片付けちゃったんだ! もしよければ、今度オリオンも一緒に会ってみないか?」

 ソウタは、純粋な好奇心と、今後の情報収集のために、近衛兵たちとオリオンを会わせたいと思っていた。

 ソウタの言葉を聞きながら、オリオンの心の中には、様々な感情が渦巻いた。

 ソウタが、自分とではなくルースとテーマパークに行ったこと。そして、そこで出会った「すごい近衛兵」の話。

 オリオンの心の中で、くすぶっていた不満が、少しずつ膨らんでいく。

 オリオンは、ソウタの顔を見つめ、我慢できずに口を開いた。

「ソウタ君……」

 オリオンの声は、普段の穏やかさとは異なり、どこか不満げな響きを帯びていた。

「僕、正直……ソウタ君と一緒にテーマパークに行きたかった」

 オリオンは、そう言って、ソウタから目を逸らした。彼の頬は、わずかに赤く染まっている。

 自分の素直な気持ちを口にするのは、オリオンにとって、とても勇気のいることだった。

「それに……サポーターの勉強を教わりたいなら、他にも適任者がいただろう? もっと経験豊富な教師や、他の優秀な生徒たちとか……なのに、なぜ僕に声をかけたんだい? まさか、僕の家が皇帝派だから……とか?」

 オリオンの声には、疑念と、そして、ソウタが自分を「利用した」のではないかという、わずかな不信感が混じっていた。

 彼は、ソウタに惹かれているがゆえに、彼の行動の裏に隠された意図を深く考えてしまうのだった。

 ソウタは、オリオンの言葉にはっとした。彼の顔から、いつもの穏やかな表情が消え、真剣な眼差しになった。

 オリオンが、そんなにも悩んでいたとは、ソウタは全く気づいていなかったのだ。

「オリオン……」

 ソウタは、オリオンの手をそっと握った。その手は、冷たく、少し震えているように感じられた。

「僕はね、家のことなんて、これまで考えたこともなかったよ。皇帝派とか、中立派とか、そんなの関係ない」

 ソウタの声は、落ち着いていたが、その言葉には、オリオンへの心からの真摯な気持ちが込められていた。

 彼の「生存戦略」は、あくまで「個人の安全確保」であり、派閥間の争いには興味がない。

「ただ……オリオンが、すごく優しそうだったから、話してみたかったんだ。僕がサポーターに転向したいって言った時も、誰も信じてくれなかったのに、オリオンだけは僕を信じて、教えてくれた」

 ソウタの言葉は、彼の心からの感謝と、オリオンへの信頼を伝えるものだった。

 ソウタは、オリオンとの友情を、心から大切に思っていたのだ。

「それに、オリオンと友達になれて、本当に良かったと思ってる。君といると、すごく楽しいんだ」

 ソウタは、オリオンの目を見つめ、優しく微笑んだ。その笑顔は、オリオンの心を癒すかのように、温かく、そして純粋だった。

 オリオンは、ソウタの言葉を聞き、目を見開いた。

 ソウタの、何の計算もない、純粋な言葉が、オリオンの荒れた心を、ゆっくりと癒していく。

 彼の瞳に、安堵と、ソウタへの深い愛情が浮かんだ。

「ソウタ君……」

 オリオンの声は、震えていた。

 彼の心の中の不満や疑念は、ソウタの温かい言葉によって、全て溶かされていく。

 オリオンは、ソウタが自分を信じ、友人として大切に思ってくれていることを、心から嬉しく思った。

 彼の心は、再び、ソウタへの恋心で満たされていくのだった。


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