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16話 深まる愛と決意
しおりを挟むソウタの温かい言葉に、オリオンの心は癒され、二人の間には以前よりも強い絆が生まれた。
「ソウタ君……ありがとう……」
オリオンは、ソウタの手をそっと握り、感謝の気持ちを伝えた。
彼の頬は、わずかに赤く染まっている。
ソウタは、オリオンの言葉に、にこやかに頷いた。
彼にとって、オリオンは大切な友人であり、彼を安心させることができたことに、内心で安堵していた。
その様子を、少し離れた場所で鍛錬していたルースが見ていた。
ソウタとオリオンが、互いの手を握り合っている光景は、ルースの目に、まるで恋人同士のように映った。
(ソウタ……なぜ、オリオン様と……!)
ルースの心の中に、激しい嫉妬が燃え上がった。
ルースにとって、ソウタが他の男と親密にしている姿は、耐え難いものだった。
彼の胸は、不快感と怒りで満たされていく。
(ソウタの気を、私に向けさせなければ……!)
ルースは、瞬間的にそう思った。
そして、彼の脳裏に、ある「計画」が閃いた。
ルースは、鍛錬中の姿勢をわざと崩し、重心を不安定にした。
そして、そのまま、バランスを失ったかのように、地面に派手に転倒した。
「うっ……!」
ルースは、呻き声を上げ、膝を抱え込んだ。
彼の動きは、あくまで事故を装っているが、その転び方は、ソウタの注意を引くには十分すぎるほどだった。
「ルース!?」
ソウタは、ルースの異変にすぐに気づき、慌てて駆け寄った。彼の顔には、心配の色が浮かんでいる。
オリオンもまた、驚いてルースの元へ駆け寄ろうとしたが、ソウタの動きの方が早かった。
「大丈夫か、ルース!?どこか痛むのか!?」
ソウタは、ルースの体を抱き起こし、怪我がないか心配そうに確認した。
ルースは、ソウタの焦った表情を見て、内心でほくそ笑んだ。ソウタの注意が、完全に自分に向いている。
「少し、膝を捻ってしまった……大したことはないよ……」
ルースは、痛むふりをして、わずかに顔を歪めた。
「大したことないわけないだろ! ほら、医務室に行くぞ!」
ソウタは、ルースを立ち上がらせようとした。
しかし、ルースはソウタの手を振り払った。
彼の顔には、嫉妬に燃える怒りが浮かんでいる。
「大丈夫……私一人で行ける」
ルースは、そう言って、ソウタの隣から離れようとした。
「何言ってるんだ! 一人で行かせられるわけないだろ! ほら、僕が支えるよ!」
ソウタは、ルースの腕を掴み直し、強引に医務室へと向かおうとした。
ソウタとルースが、医務室へと向かっていく。
その二人を、オリオンは、寂しそうな眼差しで見つめていた。
彼の瞳には、ソウタが自分ではなく、ルースを選んだことへの、複雑な感情が揺れている。
ソウタの優しさは、自分だけのものではないのだと、オリオンは痛感していた。
軍事学校の医務室。
ソウタは、自ら医務室の応急処置セットを取り出し、ルースの怪我の手当てを始めた。
彼の動きは、冷静で、そして手慣れていた。
消毒をし、包帯を巻き、痛みを和らげる薬を塗る。
「はい、これで大丈夫。無理するなよ」
ソウタは、ルースの膝に巻いた包帯を指でそっと叩いた。
ルースは、ソウタが真剣な表情で、自分の怪我を治療してくれている姿を見て、胸の奥が温かくなるのを感じた。
ソウタの、自分を心配する気持ちが、ルースの心を癒していく。
(ソウタは、こんなにも私のことを……)
ルースの心の中にあった嫉妬の炎は、ソウタの献身的な看病によって、ゆっくりと鎮火していった。
彼の顔には、再び、ソウタへの愛おしさと満足げな表情が戻っていた。
医務室での手当てを終え、ソウタとルースは、ソウタの部屋へと戻ってきた。
「ルース、これ、よく効く治療薬なんだ。使ってみてよ」
ソウタは、自分の部屋に着くと、戸棚から小さな瓶を取り出し、ルースに手渡した。
ルースは、ソウタの気遣いに、嬉しそうに頷いた。
「ありがとう、ソウタ。助かるよ」
その時、ソウタの部屋の机の上に、何通もの封筒が置かれているのが見えた。
全て、豪華な装飾が施された、明らかに貴族家からのものだった。
ソウタは、手紙を一瞥して溜息をついた。
「またか……婚約者がいるのに、なんで縁談の手紙が届くんだ?」
ソウタの口から出たのは、純粋な疑問だった。
彼にとって、これらの縁談は、今は全く優先順位の低いものだった。
彼は、今この時、未来の安全を確保するために、ルースや近衛兵たちとの関係を強化することに必死で、縁談など考える余裕はなかったのだ。
しかし、その言葉と、山のように積まれた手紙を見たルースは、顔色を変えた。
(縁談の手紙……!? ソウタは、こんなにも多くの貴族から求められているのか……!)
ルースの心臓が、激しく脈打った。
彼は、ソウタの呑気な態度に、言いようのない焦りを感じた。
(ソウタが、私以外の誰かに取られてしまうかもしれない……!)
ルースの脳裏に、貴族と結婚し、自分から離れていくソウタの姿が鮮明に浮かんだ。
ソウタが自分に恋しているという噂は、ルースの中で確固たるものだったが、それが真実であったとしても、平民の自分が貴族のソウタに相応しいのか、という不安が募った。
「ソウタ……」
ルースは、ソウタの腕を掴んだ。
その瞳は、強い決意に満ちていた。
(私は、このままではいけない……! ソウタに相応しい男にならなければ……!)
ルースは、ソウタへの揺るぎない愛と、そして、彼に相応しい存在になりたいという強い願望を胸に、さらに強くなろうと決意した。
彼の心には、ソウタを護り、そしてソウタの隣に立つための、燃えるような闘志が宿ったのだった。
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