【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

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14話 二人の近衛兵

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 激戦の末、巨大な未知生命体が排除され、演習場に静寂が戻った。

 ソウタは、息を整えながら、圧倒的な力で敵を制圧した二人の近衛兵に尊敬の眼差しを送っていた。

 二人の近衛兵は、ソウタとルースの方へと歩み寄ってきた。

 彼らは、顔の埃を払いながら、ソウタとルースの無事を確認するように声をかけてきた。

「君たち、無事か? 怪我はないか?」

 その顔を見た瞬間、ソウタの頭の中に電撃が走った。

(……この顔……まさか!)

 ソウタは、彼らの顔を凝視した。
 一人目の近衛兵は、精悍な顔つきで、鋭い眼光を持つ男。

 二人目の近衛兵は、落ち着いた雰囲気で、冷静沈着な印象の男。

 彼らは、原作で登場する皇太子ルースの、最も有能な部下である近衛兵二人だ。

 ルースが記憶を取り戻し、皇太子に戻った後、彼の右腕となって活躍する、信頼厚い側近たち。

 ソウタの心臓が高鳴った。

(よし、 この二人に気に入られれば、僕が生き残るのにさらに有利になる!)

 彼らと良好な関係を築けば、未来の皇帝の側近として、自身の安全がより確実なものとなるだろう。

 ソウタは、笑顔で近衛兵たちに歩み寄った。

「はい、おかげさまで無事です! お二人のおかげで助かりました!本当にすごいです! 尊敬します!」

 ソウタの声には、心からの感嘆と、そして、彼らを称えるための「媚び」が込められていた。

 近衛兵の二人は、ソウタの言葉に、わずかに驚いたような表情を見せた。

 彼らは、ソウタとルースの戦闘を遠くから見ており、その息の合った連携と、ソウタのサポーターとしての才能に、すでに好意的な印象を抱いていた。

「いや、君たちも素晴らしい戦いぶりだった。
 特に、君のサポーターとしての能力は目を見張るものがあった」

 精悍な顔つきの近衛兵が、ソウタの才能を称賛した。

「ええ。まさか、訓練生でこれほどの連携を見せるとは。君たちのおかげで、一般市民の被害も最小限に抑えられました」

 落ち着いた雰囲気の近衛兵も、穏やかにソウタとルースを評価した。

 ソウタは、彼らの好意的な言葉に、さらに顔を綻ばせた。

「ありがとうございます!僕たちも、お二人のように、国を守れる存在になりたいです!もしよろしければ、僕たちに色々教えていただけませんか?」

 ソウタは、さらに踏み込んで懇願した。
 彼の瞳は、純粋な向上心と、秘めたる打算で輝いている。

 近衛兵の二人は、ソウタの熱意と、その才能に魅力を感じたのだろう。

 彼らは顔を見合わせ、頷いた。

「もちろんだ。君たちのような有望な若者には、ぜひ力を貸したい」

「はい。いつでも声をかけてください」

 こうして、ソウタは、未来の皇帝の有能な部下たちと、あっという間に打ち解け、親しくなった。

 彼らは、ソウタの冷静な判断力と、サポーターとしての突出した才能を高く評価し、すぐにソウタの良き理解者となった。

 しかし、その光景を、ルースが、眉間に皺を寄せ、不機嫌な顔で見ていた。

(ソウタが……また、私以外の男と仲良くしている……!)

 ルースの瞳は、ソウタと近衛兵たちの和やかな会話に向けられ、そこには、はっきりと嫉妬の色が浮かんでいた。

 ソウタが、自分には見せたことのないような満面の笑みで、彼らと話している。

 大したことではないはずなのに、なぜかルースの心は、激しくかき乱されるのを感じた。

 ソウタが、近衛兵たちと話しているだけだということは理解している。

 しかし、ソウタのその楽しそうな様子を見るたびに、胸の奥がチクリと痛むのだ。

「ソウタ!」

 ルースは、たまらずソウタを呼んだ。
 ソウタが振り返ると、ルースはソウタの腕を掴んだ。

「もういいだろう、ソウタ。あとはこの人達に任せて、早く家に帰ろう」

 ルースの声は、ソウタへの嫉妬と、そして、近衛兵たちへの不満が入り混じったような、不機嫌な響きを帯びていた。

 彼は、一刻も早くソウタをこの場から連れ去りたい一心だった。

(どうして!? 将来の君の部下たちなのに、そんなに冷たいんだ?せっかく仲良くなれるチャンスなのに……!)

 ソウタは、ルースの腕に引っ張られながら、内心で叫んだ。

 だが、ルースの腕は強く、ソウタは抗うことができない。

「あ、ああ、分かったよ、ルース。じゃあ、またね、近衛兵さんたち!」

 ソウタは、近衛兵たちに慌てて手を振った。

 近衛兵たちは、ソウタの様子を見て、少し困惑したような表情を浮かべていた。

 そして、ソウタは、不満げなルースに引きずられるようにして、テーマパークを後にし、侯爵家の邸宅へと帰宅した。

 ――

 テーマパークでの未知生命体との激しい戦闘と、その後のルースに引きずられての帰宅。ソウタは、心身ともにへとへとになっていた。

 侯爵家の広大な自室に戻ると、ソウタはそのままソファに倒れ込んだ。彼の体は、重力に逆らえず、泥のように沈んでいく。

「くそっ……思ったより疲れたな……」

 ソウタは、瞼を閉じたまま呟いた。普段は計算高く冷静な彼も、突然の襲撃と、身を挺しての戦闘で、限界だった。
 疲労困憊のまま、ソウタは深い眠りに落ちていった。

 しばらくして、ソウタの部屋に入ってきたルースは、ソファで眠りこけているソウタの姿を見て、眉をひそめた。

「ソウタ……こんなところで寝ていたら、体が冷えてしまうだろう」

 ルースは、ソウタを心配する声で呟いた。
 ソウタが自分を庇って戦い、疲れ果てていることを知っているルースは、彼の無防備な寝顔を見て、愛おしさが募った。

 ルースは、ソウタを抱き上げ、ゆっくりとベッドまで運んだ。
 ソウタの体は、意外なほど軽く、そして温かかった。

 ルースは、ソウタを優しくベッドに寝かせると、彼に毛布をかけた。
 その時、ソウタの唇が、かすかに動いた。

「んん……ルース……」

 ソウタが、寝言を言った。ルースは、ソウタの顔に耳を近づけた。

「ルース……君がいないと……生きられない……」

 ソウタの声は、寝言特有の、どこか弱々しい響きを帯びていた。

 彼の言葉は、彼自身の「生存戦略」における、「ルースが必要不可欠である」という、切実な本音だった。

 しかし、それを聞いたルースは、心臓が激しく脈打った。

(ソウタが……私のことが、そんなにも……!)

 ルースの脳内では、ソウタの「君がいないと生きられない」という言葉が、深い愛として即座に変換された。

 この言葉は、まるでソウタからの熱烈な告白のように聞こえたのだ。

 ルースの頬は、瞬時に真っ赤に染まった。
 彼の胸は、甘く、そして強い感情で満たされた。

(まさか、そこまで私のことを……!
 私のことが好きすぎて、一緒にいないと死んでしまうくらい、私のことを愛してくれているのか……!)

 ルースの心は、ソウタへの愛おしさでいっぱいになった。

 彼は、ソウタの寝顔をじっと見つめ、ドキドキする胸を押さえながら、ベッドに横になった。

 そして、そのままソウタの隣で、穏やかな眠りについた。

 

 翌朝。

 ソウタは、目覚めると、見慣れない天井に少し驚いた。ここは、自分のベッドだ。

(あれ?僕、昨日はソファで寝てたはずなのに……)

 ソウタは、体を起こそうとして、隣にいる人影に気づいた。

「!?」

 ソウタは、隣で穏やかに眠っているルースを見て、思わず声を上げそうになった。

 なぜルースが自分のベッドで寝ているのか、全く理解できなかった。

 その時、ルースがゆっくりと目を開けた。彼の顔には、満面の笑みが浮かんでいる。

「おはよう、ソウタ。よく眠れたかい?」

 ルースの声は、いつになくご機嫌で、甘さを帯びていた。

 その瞳は、まるでソウタを慈しむかのように、優しい光を宿している。

 ソウタは、ご機嫌なルースを見て、首を傾げた。

(なんでルース、こんなにご機嫌なんだ?
 それに、なんで僕のベッドで寝てるんだ?)

 ソウタは、一瞬、昨夜のテーマパークでの戦闘の記憶を辿ったが、ルースの態度が急にご機嫌になった理由が、全く見当もつかなかった。

 しかし、ソウタは、深く追求することをやめた。

 彼の頭の中では、「ルースがご機嫌であること=生存に有利であること」というシンプルな計算が成り立っていた。

(まあ、よく分からないけど、ルースがご機嫌なら、生き残れる可能性も上がるだろうし、いいか)

 ソウタは、ルースの隣で、ごく自然な笑顔を浮かべた。

「うん、よく眠れたよ、ルース。おはよう」

 ソウタの、無自覚な「家族愛」は、ルースの中で、また一つ、深い愛の証として誤解されていくのだった。

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