【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

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45話 観覧車での真実

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 ジェットコースターとお化け屋敷を堪能した(?)
 一行は、最後に観覧車に乗ろうと乗り場へと向かった。
 
 しかし、観覧車は二人乗りだ。
 
「僕は一人で乗ります」

 オリオンは、真っ先にそう言って、率先して一つ前のゴンドラに乗り込んでいった。
 ソウタとルースを二人きりにするため、気を利かせた行動だった。

 次に、レオ・ロウとユノ・セリウスが並んで観覧車に乗り込もうとする。
 
 その直前、ユノ・セリウスはソウタの耳元にそっと近づき、小さな声で囁いた。

「ソウタ様。観覧車の中で、殿下の手を握っていてあげてほしいのです。殿下は……高所恐怖症なのです」

 それを聞いたソウタは、驚いて目を見開いた。
 普段の威厳あるルースからは想像もできない弱点だ。
 
 ソウタは少し考えてから、ユノ・セリウスの顔を見て、こくりと頷いた。

「分かりました」
 
 ソウタとルースが同じゴンドラに乗り込む。
 
 実は、殿下が高所恐怖症だというのは、ソウタとルースの仲を進展させたいユノ・セリウスが考えた、真っ赤な嘘だった。
 
 彼は、二人の親密な時間を演出するためなら、嘘も辞さない覚悟だった。

 ゴンドラがゆっくりと上昇を始めた。
 
 席に座ったソウタは、ユノ・セリウスから言われた通り、そっとルースの手を握った。

「っ……!?」
 

 突然手を握られて、ルースは驚きで固まった。

 ソウタは、彼の驚きに気づかず、優しい眼差しで微笑みかける。

「私がそばにいるので、安心してください、殿下」

 そのソウタの純粋な微笑みを見て、ルースの顔はみるみるうちに赤く染まった。
 
 胸の鼓動が速くなるのを感じながら、ルースはかろうじて「……うん」とだけ答えた。

 二人は、ゆっくりと上昇していくゴンドラの中から、外の美しい景色を眺めながら過ごす。

 夕陽できらめく景色、遠くに見える山々。

 穏やかな時間が流れていく。

 ふと、ルースがぽつりと呟いた。


「…すまない、ソウタ」
 

 なぜ謝られたのか分からなくて、ソウタは首を傾げた。

 ルースは、観覧車の窓の外に広がる景色から目を離さず、正直に言葉を続けた。


「今日、テーマパークに来たのは……調査のためではない。ソウタ、君とテーマパークで、ただ遊びたかっただけなんだ」

 ソウタは、その言葉を聞いて、なんとなく分かっていたことなので、静かにルースを見つめた。

 ルースは、悲しそうな顔をして遠くの景色を眺めた。

「この美しい景色も、以前、君と一緒に見たことがあるはずなのに……思い出せないのが、悔しい」

 ソウタは、その言葉を聞くと、ルースの横顔を愛しそうに見つめて微笑んだ。

「思い出せなくても、消えたわけじゃないから、大丈夫ですよ。また、一緒に見に行きましょう」

 ソウタのその優しい表情を見て、ルースの胸は温かい気持ちで満たされた。

 失われた記憶への後悔が、ソウタの温かい言葉によって、少しずつ溶けていくようだった。

 ――

 観覧車から降りてくるソウタとルースは、未だに手と手を取り合っていた。

 その光景を目にしたユノ・セリウスは、内心で大喜びし、口元が緩むのを必死で抑え込んだ。 

 一方、オリオンは、その手を見て複雑な気持ちを抱き、静かに視線を逸らした。


 辺りもすっかり暗くなり、テーマパークを後にした一行は、皇宮へと帰路についた。

 ルースは、ソウタの手を握りしめたまま、少し照れたように尋ねた。

「今日は……楽しかったか?」

 ソウタは、今日の充実感をそのままに、明るい顔で即座に返事をした。

「はい、殿下! とても楽しかったです!」

 その真っ直ぐな返事に、ルースの胸は温かい幸せで満たされた。ソウタの笑顔が、何よりも彼を安堵させた。

(また、絶対一緒に来よう……!)

 ルースは、心の中で固く誓った。

 幸せそうな殿下の様子を見て、レオ・ロウは自分たちの苦労が報われたと喜び、満足げな表情を浮かべた。ユノ・セリウスもまた、

「これで仕事が順調に進んでくれるといいのですが……」

 と、安堵の溜息をついた。

 皆の楽しそうな様子を眺めながら、オリオンは静かに微笑んでいた。

 ソウタは、馬車に揺られながら、今日の出来事を振り返っていた。

 以前、平民だった頃のルースとテーマパークで遊んだ時も楽しかったけれど、今回は友達が増え、皆で賑やかに過ごせたことが、さらに楽しかった。

(みんなで遊ぶって、こんなに楽しいんだな……)
 
 ソウタは、そんな温かい思いを胸に抱きながら、夜空の下、皇宮へと帰っていくのだった。

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