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46話 初めての看病
しおりを挟む帝国皇宮、皇太子ルースの執務室。
ソウタとテーマパークで楽しく遊んだ翌日、ルースはご機嫌な様子で仕事をしていた。
その近くで、書類の山と格闘しているレオ・ロウとユノ・セリウスの顔色は、優れない。
ルースは嬉しそうに、レオ・ロウとユノ・セリウスに語りかけた。
「観覧車の中でソウタが手を握ってきて……情熱的な瞳で、記憶を思い出せなくても消えたわけじゃないから大丈夫だと、また一緒に行きましょうと言ってくれたんだ!」
レオ・ロウは、疲れた顔でルースに告げた。
「……殿下、その話をされるのは、今日で15回目です」
ルースは、悪びれる様子もなく首を傾けた。
「そうだったか? しかし、本当にソウタは可愛かった……今度はいつテーマパークに行こう?」
ユノ・セリウスは、呆れつつも、冷静に、そして優しく言った。
「その前にまず、目の前の仕事を片付けましょう、殿下」
ルースは、ユノ・セリウスの言葉に「そうだな……」と頷いた。
だが、次の瞬間には、また観覧車での出来事をレオ・ロウとユノ・セリウスに話そうと口を開く。
レオ・ロウとユノ・セリウスは、心の中で頭を抱えた。
――
一方、補佐官室で仕事に励んでいたソウタは、小さく「くしゅん!」とくしゃみをした。これで今日3回目だ。
隣にいたオリオンが、心配そうにソウタに声をかける。
「ソウタ君、大丈夫?」
ソウタは、顔色こそ悪くなかったが、声が少し掠れていた。
「朝からちょっと身体がだるいんだよね……」
オリオンは、ソウタの体調を気遣い、真剣な表情で言った。
「仕事は僕がやっておくから、早退した方がいい」
オリオンの優しい言葉に、ソウタは素直に甘えることにした。
「ありがとう、オリオン。助かるよ」
お礼を言い、ソウタは自分の私室へと向かった。
皇宮、ルースの執務室。
レオ・ロウが、ルースにソウタが早退したことを報告する。
「殿下、ソウタ殿が……体調を崩され、早退なさいました」
「なんだと!?」
ルースは、その言葉を聞くやいなや、勢いよく席を立った。
ソウタの体調が心配で、居ても立ってもいられない。
部屋の中をウロウロと歩き回り、どうすればいいかと思案する。
ユノ・セリウスは、そんなルースの様子を見て、ここぞとばかりに提案した。
「殿下、ソウタ様の様子を見に行ってはいかがですか?」
ルースは、その言葉にハッとした。
「そうだな……! 補佐官を見舞いに行くのは、不自然じゃないよな!」
そう言って、自分を納得させると、ルースはソウタの私室へと急いで向かった。
ソウタの体調不良は、図らずもルースに、彼の元へと向かう正当な口実を与えたのだった。
――
帝国皇宮、ソウタの私室前。
ルースは、心配で居ても立ってもいられず、ソウタの私室のドアをノックした。
しばらくすると、ドアがゆっくりと開き、顔を赤くしたソウタが姿を見せた。
ソウタは、そこにルースが立っていることに驚き、目を丸くする。
ルースは、ソウタの赤い顔を見て、口ごもりながら言った。
「ぐ、具合が悪いと聞いたから……その、様子を見に来たんだ」
ソウタは、少しフラフラとした足取りで、
「少し熱があるだけです……」
と答えるが、その声はかすれ、体は不安定に揺れていた。
ルースは慌ててソウタの体を支え、部屋に入ると、焦ったように言った。
「すぐに医者を呼んでくる!」
ソウタは、ルースの服の袖をそっと引き留めた。
「大丈夫です……寝ていれば治りますから」
ルースは、医者を呼ぶべきか迷ったが、ソウタの言葉に従うことにした。
彼はソウタをそっとベッドまで連れていき、横たわらせた。
ソウタは、赤い顔と潤んだ目で、ルースを見上げた。
「殿下……風邪がうつったらどうしよう?」
ルースは、真剣な顔で答える。
「心配ない。私は風邪をひいたことが一度もない。身体が丈夫なのが取り柄だ」
そう言うと、ルースはキッチンに向かい、冷たい水を持ってきてソウタに飲ませた。
そして、慣れない手つきで水で濡らした冷たい布を、ソウタの額にそっと乗せる。
ひんやりとした感触に、ソウタは安堵の息を吐いた。体が少し楽になったようだ。
ルースは、ソウタの顔を心配そうに見つめ、優しい声で言った。
「あまり無理をするな」
ソウタは、そんなルースの真剣な顔を見つめて、そっと微笑んだ。
「……ルース、ありがとう」
いつも「殿下」と呼ばれるのに、突然名前を呼ばれて、ルースの胸はドキリと高鳴った。
しばらくルースがソウタの看病をしていると、コンコン、とドアがノックされた。
ルースがドアを開けると、そこに立っていたのはオリオンだった。
オリオンは、ルースがいることに驚きながらも、丁寧に挨拶する。
ルースは無言で頷き、入ってくるなオーラを出しつつ不機嫌な顔で、ソウタは今寝ている、と告げた。
オリオンは、ルースの様子を察し、ソウタのそばにいたい気持ちを抑えて言った。
「殿下がいらっしゃるなら、大丈夫ですね……失礼いたします」
そう言って、オリオンはそっと引き下がった。
秘書室に戻る途中、オリオンは「タイミングが悪かったな……」と小さく呟き、
少し落ち込んでいるようだった。
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