46 / 68
45話 観覧車での真実
しおりを挟むジェットコースターとお化け屋敷を堪能した(?)
一行は、最後に観覧車に乗ろうと乗り場へと向かった。
しかし、観覧車は二人乗りだ。
「僕は一人で乗ります」
オリオンは、真っ先にそう言って、率先して一つ前のゴンドラに乗り込んでいった。
ソウタとルースを二人きりにするため、気を利かせた行動だった。
次に、レオ・ロウとユノ・セリウスが並んで観覧車に乗り込もうとする。
その直前、ユノ・セリウスはソウタの耳元にそっと近づき、小さな声で囁いた。
「ソウタ様。観覧車の中で、殿下の手を握っていてあげてほしいのです。殿下は……高所恐怖症なのです」
それを聞いたソウタは、驚いて目を見開いた。
普段の威厳あるルースからは想像もできない弱点だ。
ソウタは少し考えてから、ユノ・セリウスの顔を見て、こくりと頷いた。
「分かりました」
ソウタとルースが同じゴンドラに乗り込む。
実は、殿下が高所恐怖症だというのは、ソウタとルースの仲を進展させたいユノ・セリウスが考えた、真っ赤な嘘だった。
彼は、二人の親密な時間を演出するためなら、嘘も辞さない覚悟だった。
ゴンドラがゆっくりと上昇を始めた。
席に座ったソウタは、ユノ・セリウスから言われた通り、そっとルースの手を握った。
「っ……!?」
突然手を握られて、ルースは驚きで固まった。
ソウタは、彼の驚きに気づかず、優しい眼差しで微笑みかける。
「私がそばにいるので、安心してください、殿下」
そのソウタの純粋な微笑みを見て、ルースの顔はみるみるうちに赤く染まった。
胸の鼓動が速くなるのを感じながら、ルースはかろうじて「……うん」とだけ答えた。
二人は、ゆっくりと上昇していくゴンドラの中から、外の美しい景色を眺めながら過ごす。
夕陽できらめく景色、遠くに見える山々。
穏やかな時間が流れていく。
ふと、ルースがぽつりと呟いた。
「…すまない、ソウタ」
なぜ謝られたのか分からなくて、ソウタは首を傾げた。
ルースは、観覧車の窓の外に広がる景色から目を離さず、正直に言葉を続けた。
「今日、テーマパークに来たのは……調査のためではない。ソウタ、君とテーマパークで、ただ遊びたかっただけなんだ」
ソウタは、その言葉を聞いて、なんとなく分かっていたことなので、静かにルースを見つめた。
ルースは、悲しそうな顔をして遠くの景色を眺めた。
「この美しい景色も、以前、君と一緒に見たことがあるはずなのに……思い出せないのが、悔しい」
ソウタは、その言葉を聞くと、ルースの横顔を愛しそうに見つめて微笑んだ。
「思い出せなくても、消えたわけじゃないから、大丈夫ですよ。また、一緒に見に行きましょう」
ソウタのその優しい表情を見て、ルースの胸は温かい気持ちで満たされた。
失われた記憶への後悔が、ソウタの温かい言葉によって、少しずつ溶けていくようだった。
――
観覧車から降りてくるソウタとルースは、未だに手と手を取り合っていた。
その光景を目にしたユノ・セリウスは、内心で大喜びし、口元が緩むのを必死で抑え込んだ。
一方、オリオンは、その手を見て複雑な気持ちを抱き、静かに視線を逸らした。
辺りもすっかり暗くなり、テーマパークを後にした一行は、皇宮へと帰路についた。
ルースは、ソウタの手を握りしめたまま、少し照れたように尋ねた。
「今日は……楽しかったか?」
ソウタは、今日の充実感をそのままに、明るい顔で即座に返事をした。
「はい、殿下! とても楽しかったです!」
その真っ直ぐな返事に、ルースの胸は温かい幸せで満たされた。ソウタの笑顔が、何よりも彼を安堵させた。
(また、絶対一緒に来よう……!)
ルースは、心の中で固く誓った。
幸せそうな殿下の様子を見て、レオ・ロウは自分たちの苦労が報われたと喜び、満足げな表情を浮かべた。ユノ・セリウスもまた、
「これで仕事が順調に進んでくれるといいのですが……」
と、安堵の溜息をついた。
皆の楽しそうな様子を眺めながら、オリオンは静かに微笑んでいた。
ソウタは、馬車に揺られながら、今日の出来事を振り返っていた。
以前、平民だった頃のルースとテーマパークで遊んだ時も楽しかったけれど、今回は友達が増え、皆で賑やかに過ごせたことが、さらに楽しかった。
(みんなで遊ぶって、こんなに楽しいんだな……)
ソウタは、そんな温かい思いを胸に抱きながら、夜空の下、皇宮へと帰っていくのだった。
81
あなたにおすすめの小説
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる