大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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第一章 ヨナン・グラスホッパー編

82. 陣地選び

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 野営訓練当日。

 案の定、集合場所であるイーグル辺境伯領主城に間に合わなかったDクラスの2班が、野営訓練本番を前に失格となった。

 戦争の開戦前に、集合場所に遅れるなど言語道断。
 貴族は、王に命令されたら、我先にと戦場に赴くのが当たり前。
 その時にこそ、その貴族の力が試されるのだ。兵の練度、兵の統率力、経済力などなど。

 もう、荷馬車が借りれない時点で、既に戦いは終わってたのである。
 班決めの時点で、荷馬車が借りれそうな班に入れてもらうとか、金策とか、何とかしておく事が重要だったのだ。

 本当の戦争の時、荷馬車が借りれなくて遅れたなんて言ったら、打ち首もの。爵位剥奪も十分に有り得る。

 実際、グラスホッパー騎士爵家は、規定の兵士の人数を集められなくて、懲罰的に1万の敵に、たった15人で突撃させられ、エドソン達は全滅。爵位も剥奪されたし……。

 その辺の厳しさを、ヨナンは死に戻り前に経験して、人一倍分かっているのだ。

「それではルールを説明する! 場所はヤヤヤム高地! 開戦時刻は、明日の早朝6時!期間は3日間!
 陣地は、15箇所! 自分達の陣地は、この地図に書いてる場所を早い者勝ちで決めろ!
 そして、最終的に、陣地を多く制圧した班か優勝だ!」

 Sクラスの担任グロリア先生が説明する。
 因みに、ヨナン達は既に、全ての陣地の下見を終わらせている。しかも、ヤヤヤム高地の至る所にトラップも設置済み。
 負ける要素など、何もない。

「それでは、今回、野営訓練の場所を貸してくれたイーグル辺境伯から有難い言葉を頂く!」

 グロリア先生が振ると、なんか、いつもよりゴツイ毛皮のコートを着たイーグル辺境伯が、生徒の前に出てくる。

「ガッハッハッハッハッ! よく来た!カララム王国学園の若人共よ!
 今日から3日間! 熱い闘争を期待してるぞ!
 そして、うちの婿殿、ヨナン・グラスホッパーを倒してみせい!
 まあ、無理じゃと思うがな! ガッハッハッハッハッハッ!」

 完全に、ヨナンは、カレンの旦那という事になっている。
 添い寝した時点で、既成事実が出来上がってしまったという事なのかもしれない。
 というか、イーグル辺境伯の中では、俺の班VSカララム王国学園1年生の構図になってるみたいである。

「では、野営訓練スタート!」

 グロリア先生の号令により、野営訓練の自分達の陣地を決める為の陣地取りが始まる。
 もう、陣地取りする前から、陣地取りするって本末転倒の気もするが、陣地は15箇所。
 既に2班が脱落してるので、2つの陣地が余ってる計算になる。
 それを最初に確保するのか、しないかの駆け引きもあったりするのだ。
 まあ、俺達の班は確保しないんだけどね。
 戦力を分散させるのは得策じゃないし。

 でもって、現在、瞬足Lv.3を持ってるマリン・チータが走りだす。
 予定通りに、俺達が陣地にする予定の陣地を確保する為だ。
 基本、明日の開戦前までは戦闘行為禁止なので、班の中の誰か1人が陣地を確保したら、他の班は奪えないのである。

『ヤバい速さですね! 馬より早いって、もう人間辞めてますよね!』

 鑑定スキルが、俺だけに話し掛けてくる。
 そう、今回の野営訓練の為に、俺は、鑑定スキルの念話を女子達にも解禁したのである。

「ああ。今回の特訓で、走力だけでなく体力も付いたらしいからな。
 起伏が激しい高地でもヘッチャラらしい。
 話によると、王都からイーグル辺境伯領まで、1日で到着する事ができるらしいぞ!」

『やっぱり、もう人間じゃないじゃないですか?』

「お前、それ本人に絶対言うなよ!」

『僕、嘘言えない設定なんですけど?』

「だったら、その事について、話さなければいいだけだろ!」

 ーーー

 俺達は、マリンに遅れる事、2時間掛けて予定の陣地に到着した。

 場所は、一番不利と思われる何も無い平地にある陣地。唯一ヤヤヤム高地で、周りが見渡せる陣地である。
 何故、こんな所の陣地にしたかというと、敵が攻めてきても何もないから直ぐに気付くし、しかも、平地にトラップ掛け放題。

 因みに、陣地の周りの平地には何千ものトラップを既に設置済みで、昨日とかも、下見にきた他の班の生徒が犠牲者になってたりしている。

 これも、会場であるヤヤヤム高地に早く着けたお陰。
 誰にも見られず、トラップを仕掛けられたし、直接手を下さないトラップなどの攻撃なら、開戦前でも有りなのだ。

 所謂、地の利を活かす戦いという事である。
 戦争の戦術として、自分が戦い易い場所で戦うのは定石だしね!

 基本、この野営訓練は、本当の戦争と同じなので、戦争で有りの事は、大体有りなのである。

「じゃあ、始めるか!」

 俺は、一気に、陣地の要塞化を始める。
 建物はオールミスリルアダマンタイト合金で覆い、3階建て。見晴らしの良い3階からは魔法攻撃が仕掛けられるように魔法攻撃用の狭間が設けられている。

 更に、玄関はこの世界にはない、顔認証の鍵が設置されており、ウチの班員じゃなければ誰も入れない。

 ハッキリ言って、難攻不落。
 誰も、ミスリルアダマンタイトを傷付けられないしね!

 しかも、敢えて、建物の回りには低めの石壁で覆っている。これは敵をおびき寄せる為。石壁をよじ登り下に飛び降りると、そこは落とし穴。一度落ちたら決して自力では脱出できない仕組みになっている。

 でもって、不幸にもそこを抜けたら、地雷地帯。普通に足が吹き飛ぶ程度の火力なので、痛い思いをしてもらわないといけない。

 因みに、カララム王国全土から優秀な治癒魔術師がたくさん来てるという事で、足の1本ぐらい無くなってもなんとかなるらしい。

 そして、準備は万端。俺達は、無駄に豪華な陣地でゆっくり休んで、次の日の朝6時。

 静けさの中、号令が鳴るのでもなく、野営訓練が、ひっそりと開戦されたのであった。
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