氷の公爵さまが何故か私を追いかけてくる

アキナヌカ

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05卑怯者

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「やったわ、生理がきたわ!!」

 レオンに抱かれて一月も経たないうちに私には生理がきた、つまり子どもを妊娠していなかった。これで賭けは私の勝ちだった、私はレオンに離婚証明書にサインするように迫った。でもレオンはどうしてもサインできなかった。それでほっといて私は公爵家を出て行くことにした、レオンとも二度と関わるつもりはなかった。

「さぁ、それじゃ私は行くわ」
「俺も行く」

「二度と関わらないって言ったじゃない」
「関わらない、ただついていくだけだ」

 そういうのを日本ではストーカーと呼ぶのだ、私が進む方向にレオンはついてきた。公爵家が支配する地域を出てもまだ追ってきた、私は頭を抱えてとりあえず『転移テレポーテーション』で公爵家に戻った。

「レオン、貴方は賭けに負けたの!! 男らしく負けを認めて離婚証明書にサインしなさい!!」
「嫌だ、そうしたら君は別の伴侶をみつけるんだろう。絶対に嫌だ」

 こうしてレオンは離婚証明書にサインもしなかったし、私に二度と関わらないということも守る気がないようだった。レオンはいつものように私を腕のなかに閉じ込めた、そうしてキスしようとしたから手で払いのけた。レオンは泣いていた、泣きながら賭けは無効だと言いだした。そっちが賭けを理由に私を抱いたのに、賭けは無効だなんて卑怯だと訴えた。

「卑怯でいい、俺は君と別れるのだけは駄目だ」
 
 当主であるレオンがそんな調子なのでメイドたちは同情していた、私は約束を守ってくれないので怒っていた。怒っていたから何かレオンにもダメージを与えたくて考えた、やっぱり無視が一番効くかなと思ってレオンを無視することにした。レオンは私に愛を囁き続けていた、無視をしてもずっと愛の言葉を囁くのを止めなかった。当主仕事も放りだしてしまったので執事から私に苦情がきた。私はレオンがやってきた仕事を見てみた、丁寧で領民の為になる仕事ばかりだった。

「レオン、仕事をしてください!!」

 そう言って叱ったらレオンはバリバリ仕事をするようになった、そして終わったら私を抱きしめにきた。まるで犬が投げたボールを拾ってきて褒めてと言っているようだった。私は根負けしてレオンが仕事をしたら褒めるようにした、それで領内のことは上手くいっていた。上手くいかないのは私たちの離婚だった。

「卑怯者といわれようが大嘘つきといわれようが、俺は離婚はしない!!」

 レオンは完全に開き直っていた、夜になると私を抱こうとして手を伸ばしてきた。その度に私にぴしゃりと手を叩かれていた、そうしてようやく諦めて眠りにつくのだ。私はストレスが溜まっていた、もう我慢の限界だった。そうして勝手にこう宣言した、二週間のお休みを取らせていただきますといって私は逃げ出した。『転移テレポーテーション』で遠くの国へいって二週間のんびり過ごした。貰っていた宝石を売って路銀にあてた、そうして二週間が経って私は帰ってきた。

「レオン、ちょっとそんなに強く抱きしめたら苦しい」

 私を抱きしめるレオンを寝かしつけて、完全に眠ったらメイドたちにここ二週間の様子を聞いた。レオンは真面目に仕事をしていたが、それ以外は私の部屋で立ち尽くしていたそうだ。メイドたちからはどうか奥様、旦那さまを見捨てないでくださいと言われた。私としては物凄く見捨てておきたかった。でも起きたらまたレオンは私を抱きしめにやってきた。そうして私を抱きしめて頬ずりしている姿はとても貴族には見えなかった。庶民の妻が大好きな夫に見えた、私はどうしたら私から興味を失ってくれるだろうと考えた、そうして少しレオンと話をした。

「そもそもどうしてレオンは私と結婚したいと思ったんです?」
「君は俺の命を救ってくれた、どこの誰かもわからないのに看病してくれた」

「それは言い過ぎです、命に関わるような怪我ではありませんでした」
「君は婚約者と楽しそうに話していた、俺ともそんなふうに話してほしくなった」

「ルッセと話していたところ見てたんですか、彼とは幼馴染でしたし」
「俺だってもっと早く君のことを知っていたら、あいつより先に君に求婚した」

 結局レオンは私を追いかけるのを止めてくれないようだ、私はどうしたものかと頭を抱えた。でもどうしようもないのがレオンだった、レオンは私を腕に閉じ込めて満足そうにしていた。私たちは清い関係のまま時間だけが経っていった。執事や国王陛下からは早く世継ぎになる子どもをと言われていたが、清い関係でいる私たちには関係がなかった。そうして王妃様が開くお茶会に私は招待された。他にも数名の女性が招待されていて、中には子どもを連れている女性もいた。私はいいなぁと思った、私も可愛い子どもを可愛がりたかった。年は私が十六歳、レオンが二十六歳になっていた、でも今更子どもを作ろうといって賛成するかなと思った。結果、私はレオンの愛情を軽く考えていた。

「レオン、子どもが欲しいと思いませんか?」
「養子か、適当な貴族の子を養子に向かえようか」

 私が我慢させすぎたせいで、レオンの中から自分の子を作るという選択肢が無くなっていた。私も養子がいいかなとか思い出して、もうそうしようかと思った時に執事が余計なことを言いだした。

「旦那様、奥様は旦那様の子が欲しいとおっしゃっているんですよ」
「え!? いや、私は養子で全く構わないです」
「リトスも養子がいいと言ってるぞ」

「いいえ、奥様は奥ゆかしい方なので子どもを作ろうなどと言い出せないのです」
「ええ!? いや、養子でいいって旦那様も言いましたよね」
「俺とリトスの子、きっと天使みたいに可愛いだろうなぁ」

 その日から毎晩レオンは私を抱きはじめた、なるべく喘ぎ声を上げないように私は我慢した。今更レオンに愛着がわいたなんて言えなかった、散々別れたがっていたからそんなことは言えなかった。でもレオンの愛情は凄かった、今まで我慢させてた分を取り戻すようにレオンは優しく私を抱いた。そうして一月が過ぎても私に生理が来なかった、これはもしかしてもしかしたのかなと思った。近くで一番腕がいい産科医は妊娠していますと言った、私はこれで夜の営みとはおさらばだと思った。

「なんか変な感じ、早期流産もあるから気をつけよう」

 世の中の馬鹿な男たちは奥さんが妊娠中に浮気すると聞いていたが、レオンに関しては浮気のうの字も出てこなかった。レオンは嬉しそうに私のお腹をさすっていた、そうして必ず私と一緒に眠った。そうして時が経ち子どもが産まれた、出産は痛くて痛くて大変だった。レオンはずっと私の手を握っていた。子どもは黒髪に金色の瞳を持つ男の子だった、髪以外は私に似たようだった。

「よくやったリトス、ああ、なんて美しい子どもなんだ」
「ええ、可愛い子ですね。名前は何にします?」

「七月に生まれた子だからユーリにしよう」
「へぇ、ユーリって七月って意味なんですね」

 子どもの名前も決まったし、私はユーリに母乳をあげていた。乳母にはまかせず私がユーリの世話をしていた、ちなみにレオンが母乳を飲むユーリを羨ましそうに見ていたのは秘密だ。そうして子どもが産まれて一カ月ほどは何もなかった、ユーリが夜泣きをしたら私があやしにいくくらいだった。しかし一カ月過ぎるとレオンがまた私の体を求めてきた。

「もう後継ぎは生まれたんだし良いじゃないですか」
「いやユーリにも弟や妹をつくってやりたい」

 だが私は断固として拒否した、こっちは出産で痛い思いをしたのだ。あの痛みをまた味わいたいとは思わなかった。
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