もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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10章 海は広くて冒険いっぱい

415.可愛い子、羨ましい

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 いろいろありつつも、無事リュウグウ入口に着いたよ! いぇい!
 そろそろログアウトしなきゃいけない時間だから、転移で第三の街のホームに戻るつもりだけどね。

 船旅ものんびりして楽しかったから、また時間があったらやろうっと。ヒスイたちも楽しそうだったし。

 リュウグウ入口の島に着いて、船をしまってから転移スキルを使おう──と思ったら、予想外の姿を発見した。

「……ルト?」
「うおっ!? ……なんだ、モモか」

 ホッと胸を撫で下ろしてるルトの姿に首を傾げる。
 なんでそんなに驚いたの?

「ルトもログインしてたんだねー? リリは?」
「ちょっと用があって来ただけ。もうすぐログアウトする。リリは来てないんじゃないか? 模試がいい感じだったお祝いに、今夜は家族で外食だって言ってたし」
「ほほぅ……ルトはどうだったの?」
「何が」
「模試」
「聞くな」

 サッと目をそらされた。察し。まぁ、そういう日もあるよ!
 ポンポンと足を叩いて慰めたら、「その慈愛の眼差しやめろ……」と項垂れながら文句を言われた。
 ありゃりゃ、僕の優しさが傷心に追い打ちをかけちゃった?

「ここで何してたのー? というか、用って何……あ」

 ルトに向けた質問に答えが返る前に、海からひょっこりと白いイルカが顔を出した。かわいー!

「イルカだ!」
「まぁ、そうだな」
「あれ? この子、敵じゃないよ?」
「俺がテイムしてるからな」
「……えっ!?」

 あまりにもあっさりと言われて、聞き流しかけた。でも、ルトの言葉を頭の中で反芻してビックリする。
 ルト、モンスターをテイムしたの!?

「──テイムしたなら言ってよ! 先輩テイマーとしてアドバイスくらいするのに!」

 ルトの足をポスポスと叩きながら文句を言う。
 すぐさま「やめろ、うぜー」と頭を叩き返されたし、白イルカ君も『え、このウサギ、マスターの敵?』とソワソワし始めたから、ちょっと離れる。
 僕を攻撃しないでー。

「言うつもりだったぞ? 今度ダンジョン探索をする時」
「そっかー。ならいいや。この子とはどういう出会い?」
「海獣の卵から孵った」
「……ほわっつ?」

 ぽかんと口を開ける。ルトが顎を押して閉じてくれた。ありがとう。
 でも、それより、思いがけない言葉が聞こえた気がしたんだけど!? 海獣の卵が孵ったの!?

「──それこそ、すぐに教えてよー!」
「すぐに教えたところで変わんなくねぇか?」

 不思議そうにしてるけど、変わるとか変わらないとかっていう問題じゃないんだよ。
 僕だって海獣の卵を持ってるんだから、純粋に気になる!

 ムスッと頬を膨らませてルトを見据えたら、軽い感じで「悪い悪い」と謝られた。
 まぁ、許しますけどぉ。

「どういうタイミングで孵ったの?」
「ログインしたら、急にアナウンスで『海獣の卵が孵りそうです』って言われたんだよ。俺は何もしてねぇぞ」
「そうなんだ?」

 むむー、そうだとすると、僕の海獣の卵がいつ孵るかはわからないなぁ。
 ゲームプレイ時間は、ルトより僕の方が長いと思うんだけど、それは関係ないのかも。生まれるモンスターの種類ごとに、孵るまでの時間が違うのかな。

「こいつは白飛鯆ビアンフィンっていう種類らしい。水・風属性で飛べるんだ」
「飛べるんだ!?」

 驚きの情報が飛び出した。
 ルトは「まぁ、水中の方が好きみたいだけどな」と言いながら肩をすくめる。

 海獣の卵をもらった時の冷めた感じとは違い、白飛鯆ビアンフィンに向ける眼差しには愛情が滲んでいる気がする。
 やっぱり、ルトってクールを気取ってるけど、基本的に優しいよねー。

「──飛べるなら、陸上にも連れていけるね」

 ルトと白イルカの組み合わせ、結構いいかも。
 そんなことを思いながらニコニコと微笑んだら、ルトはニヤッと笑い、「おう」と自慢げに応じた。

「こいつに騎乗してバトルできるんだぜ? お陰で、【騎乗】スキルをゲットしたよ……それを目撃されて、友だちから騎士なんて呼ばれてる。実際、転職可能な職業に【魔剣騎士】が出てきたし」

 ルトが嬉しそうに胸を張った。
 ただの剣士より騎士の方が、カッコいい感じがするもんね。喜ぶポイントがルトらしい。

「白イルカに乗って戦う騎士かー……なんか可愛い!」
「ぁあ?」

 想像して『ファンタジーだなー』と思って素直な感想をこぼすと、ルトに凄まれた。怖いよー。可愛いの、ダメ?
 睨んでくるルトから目を逸らしたら、白飛鯆ビアンフィンと目が合う。

「この子の名前はなぁに?」
「ビアンだよ」
「……そのままだね?」
「なんか文句あっか? つーか、お前に言われたくねぇよ」

 ペシッと額を叩かれた。ぴえん。
 痛くない額を擦りながら、ビアンに語りかける。

「君のマスター、暴力的だよー。一緒にいて大丈夫ー?」
「こら、俺はコイツに体罰なんてしねぇぞ?」
「キュルルン!」

 ビアンがルトの言葉に楽しそうに頷く。ルトが微笑み、ビアンの口に魚を投げ入れた。
 ……もしかして、短時間でもログインしてたのは、餌付けするため? めっちゃ可愛がってるね!

「ビアンの鳴き声可愛い!」
「お前のあざと可愛さとは違って、本物の可愛さだな」
「さては喧嘩売ってるね???」

 高くで買うぞー、とファイティングポーズをしたら、スクショを撮られた。
 ルトが「掲示板に載せてやろ。『もふもふ神さまの真実の姿を激写!』ってコメと一緒に」と言いながらニヤリと笑う。

 な、なんと……卑怯な脅しだね!
 でも、大丈夫だもん。きっとみんな、可愛いって言ってくれるから!

 ……だよね、タマモ?
 心の中で尋ねてみたら、タマモが満面の笑みを浮かべて、両腕で大きな丸を作る姿が見えた気がした。
 さすがモフラーの第一人者!


******
番外編シリーズの方に、ルト視点の『ビアン誕生話』を公開しますー。
ぜひこちらもあわせてお楽しみくださいませ。

また、書籍版2巻の書影が公開されました。
書籍版の方もチェックしていただけますと嬉しいです!
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