もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

423.バトル開始?

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 バトルをするなら、まずは敵の情報を集めなきゃ。
 事前に集められたらよかったんだけどなぁ。とりあえず、全鑑定スキルを使ってみよう。

 瞬く金色の目を見据えて、スキルを発動すると……

――――――
宿借蛸パクルオクト
 水属性モンスター。タコとヤドカリのキメラのような姿をしている
 六本の触腕と二本の鋏を持つ
 体格に合わせた貝殻を見つけると乗っ取り、基本的には出てこなくなる
 主に、鋏を使ったスキル【ハサミ切り】と触腕によるスキル【拘束】【絞め上げ】【薙ぎ払い】で攻撃する
 巨大化した個体は、エリアボス並みの強さを持つ
 得意属性【火】苦手属性【風】
――――――

 鑑定結果を見て、思わず首を傾げちゃった。

「つまり、タコなの? ヤドカリなの?」
「どっちの要素もあるってことだろ」

 僕と同じく敵を鑑定したようで、ルトが肩をすくめながら答えてくれた。
 タコでヤドカリかぁ……ちょっと不気味な見た目な気がするね。今の状態じゃ、目くらいしか見えないけど、攻撃したら出てくるのかな。

「タコなら、このモンスターが海精霊シーフェアリーたちが嫌ってる悪魔の可能性もあるかな」

 前に海精霊シーフェアリーの里に行った時、海精霊シーフェアリーたちがタコを悪魔って呼んで、嫌ってるっていう情報を入手したんだよね。

 海精霊シーフェアリーの里まで僕とタマモを乗せて行ってくれたカメのキークンはタコが好物だったみたいだし……リュウグウ内ではタコって特別な存在なのかも。

 特に、この宿借蛸パクルオクトっていうタコ(?)は、リュウグウと海精霊シーフェアリーの里に近い重要地点を陣取っているわけで……

「──海精霊シーフェアリーに倒したことを報告したら、またシークレットミッションを引き当てちゃうかも?」
「は? なんで」

 心底不思議そうにするルトに、現時点でわかっている情報を伝えると、「また、このウサギはよくわかんないフラグを立てやがって……」と呆れた顔をされた。

 そろそろ変なフラグ立てを僕の特技にしてもよさそうだよね! ──なんて、ちょっぴりやけっぱちな気分で考えながら、宿借蛸パクルオクトを見据える。

 どうでもいいけど、このタコの名前、ひどくない?
 パクるって、返すつもりないってことじゃん。

「とりあえず、戦ってみようよ。ミッションを引き当てられたらラッキーってことでいいでしょ」

 リリがニコニコと微笑みながら僕たちに準備を促した。
 ルトは「それ、ラッキーなのか?」とぼやきながらも、装備の確認を済ませ、僕に視線を向ける。

「モモはそのまま戦えそうか? 現状、パーティ制限はなさそうだから、このままパーティを二つ維持した状態でバトルを始めようと思うけど」
「パーティが一つに制限されそうだったらどうする?」
「モモがよければ、俺とリリのパーティが先攻で戦いたい。テイムモンスの数を調整して、モモがこっちに入る感じでもいいぞ」

 ルトに言われて、ちょっと考えてから頷く。

 別に僕は初討伐特典とかがどうしても欲しいとか思わないし、それより未知の敵との戦いを回避したい気持ちの方が強いもん。ルトたちが先に戦ってくれるならありがたい。

 ルトたちに倒された後、宿借蛸パクルオクトが復活せずに、僕が戦わなくて済む可能性もあるし、できれば様子見したいな。
 まぁ、このまま二つのパーティでバトルになだれ込む可能性の方が高い気がするけど。

「おっけー。パーティ制限があったら、僕たちは後攻にするね」

 戦う準備はバッチリ! ここに来るまでに、バトルのシミュレーションはしておいたんだ。
 こんなに大きな敵を相手にすることは想定してなかったけど、水属性なのは変わらないし、なんとかなるでしょ。


「んじゃ、先手は俺から──というか、ビアンに頼むな」
「キュルルン!」

 ルトが好戦的な笑みを口元に浮かべ、ビアンに視線を向ける。ビアンはその眼差しに答えるように、高らかに鳴き声を上げた。
 気合い十分だね! ビアンがどんな戦い方をするのか、僕も楽しみだなー。

「ビアン、宿借蛸パクルオクトに【水流鉾】だ!」
「キュルルンッ」

 ビアンがルトの指示に応え、すぐさま先端を尖らせた渦巻く水を敵の目に向けて放った。
 勢いがあってカッコいいスキルだ。ペタが使う【渦】スキルとは違う感じ。

「──デビィリアアアッ」
「ほえっ!?」

 尖った水が貝殻の隙間に飛び込んだ直後に、大音量の悲鳴のような鳴き声が聞こえてきてびっくりしちゃった。
 これ、宿借蛸パクルオクトの鳴き声?

〈〈とあるプレイヤーにより、デビル系モンスター【宿借蛸パクルオクト】との特殊バトルが開始しました。宿借蛸パクルオクトのテリトリー内にいるパーティが戦闘に参加可能です〉〉

 まさかの、ワールドアナウンス、だと……!?
 この言い方だと、もしかしてレイドバトルみたいな感じ?

 それに、宿借蛸パクルオクトの前に言われた『デビル系モンスター』って言葉が気になる。
 やっぱり悪魔なの? 海精霊シーフェアリーが嫌ってる悪魔って、このタコのこと?

宿借蛸パクルオクトとの特殊バトルに参加しますか?〉

 不意に聞かれて、すぐさま「もちろん参加するよ!」と答えた。
 これでルトたちと一緒に戦えるね。

〈〈パーティ【金銀とイルカ】とパーティ【もふっとウサちゃん&フレンズ】が参加表明しています。宿借蛸パクルオクトの攻撃開始まで残り十分です〉〉

 ワールドアナウンスでパーティ名が披露されちゃったー。
 あ、もちろん『もふっとウサちゃん&フレンズ』が僕のパーティ名だよ。実は前から名前を付けてたんだ。

「……お前、わかりやすいけど、そのパーティ名はどうなんだ?」
「ルトに言われたくないよ」

 ジト目を向けられたけど、ルトたちのパーティ名も大概だと思う。
 でも、変に厨二病を発揮してないのはよかったかもしれない。厨二的な名前をワールドアナウンスで出されたら、ちょっと恥ずかしいもんねー。

〈〈宿借蛸パクルオクトの攻撃開始まで残り九分です。パーティ【輝かしき勇者と仲間たち】が参加表明しました〉〉

 あ、早く攻撃開始しなきゃ──って、知らないパーティが参加してきた!?
 どこにいるの?

 突然のアナウンスにきょろきょろと周囲を見回す。
 攻撃を始めようとしてたルトも、つんのめった感じで止まった。

「……厨二病?」
「すごい名前だね」

 微妙そうな表情のルトの呟きに、リリが感心した雰囲気で応じる。

「だよねー。僕はなんとなく心当たりがあるよ……」

 ユウシャって名前の知り合いがいるから。

 ……知り合いってだけで、友だちじゃないよ!
 だから、ルトはそんなにドン引きした目で僕を見ないでほしいな!

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