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11章 夏の海ではしゃいじゃお
422.ダンジョン(?)の前に
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シャボリンは大きなシャボン玉のような乗り物だ。中に入って自分たちで転がすから、速度も進む方向も自由自在、のはずなんだけど──
「ふぎゃーっ、またこれー!?」
凄まじい速度で進むシャボリンの中で、必死に足を動かす。
最初、スラリンたちを含めたみんなで動かしていたからか、思った以上に速度が出ちゃってるんだよ。前回シャボリンで移動した時もそうだったけど。
「きゅぃ(楽しいね!)」
「ぴぅ(くるくる回るぅ……)」
ぴょんぴょん跳ねてシャボリンを転がすスラリンとは対照的に、ユキマルは虚無の表情でシャボリンと一緒に回り始めた。諦めるの早いよ。
ペタは海中を泳いで、時々シャボリンの方向転換をしてくれてる。これがすっごく助かるんだー。勢いのままに、進みたい方向からズレることが度々あるから。
ヒスイは時々飛んでズルしてる。僕も飛んでいいかな? そうしたらスラリン一人で転がすことになるから、ちょっとは速度が緩むと思うんだ。
「【飛翔】!」
スキルを使う。スラリンが『えっ!?』と言いたげな目で見上げてきたけど、そっと目を逸らした。
スラリンはがんばってシャボリンを転がしてね。
ヒスイと僕で交互に飛んだり転がしたりしていると、ちょうどいい速度になってきた。
そして、ようやくルトとリリが動かすシャボリンが追いついてくる。二人とも呆れた顔をしてた。
「海中を爆走する意味あるか?」
「この強化シャボリンなら、急がなくても壊れる前に海中窟まで辿り着けると思うんだけど……?」
不思議そうに首を傾げるリリに、僕はエヘヘッと笑って見せた。
「……爆走するのって楽しいからね!」
「絶対、狙ってしてたことじゃないだろ。モモの叫び声、俺たちのところまで聞こえてたぞ」
ルトには誤魔化しが通用しなかった。僕の間抜けさが露呈しちゃった感じがしてしょんぼり。
「キュルルン!」
鳴き声が聞こえて、ルトたちが入ってる強化シャボリンの後ろを見ると、ビアンが楽しそうに泳いでた。
たまにシャボリンを押したり、尾で方向を変えたりと、器用に動きを補助してるみたいだ。
ペタ同様、水中で俊敏に動けるモンスターはこういう時に役に立つ。
ルトは度々ビアンの活躍を確認して満足そうな顔をしてた。すごく可愛がってるねぇ。
僕が持ってる海獣の卵も早く孵らないかな。どんな子が生まれるか、楽しみ!
「あっ、ねぇ、あれが海中窟ダンジョンの入口じゃない?」
不意にリリが前方を指す。
そこには、色とりどりの石や珊瑚、海藻で囲まれた大きな二枚貝があった。
「……あれが入口?」
僕は首を傾げる。
あの貝殻、どこにも繋がってないように見えるけど。かろうじて、二枚貝の隙間から中に入れそうではある。
「あー、そうっぽいな。異空間みたいな感じか? つーか、デカいな、あれ」
マップで海中窟ダンジョンの場所と現在地を確認したルトが、驚きを通り越して感心した雰囲気で呟く。
ルトが言う通り、二枚貝はすっごく大きいんだよ。僕たちのシャボリン二つが、悠々と中に入れそうだ。
シャボリンが進むにつれて、二枚貝の状態がよくわかるようになったけど、隙間から中を覗いても暗闇で何も把握できない。
ここに入るの勇気いるぅ……。
シャボリンの動きを微調整してくれてるペタとビアンのおかげで、二枚貝からちょっと離れたところで一時停止できた。
鑑定してみようっと。
――――――
【時空貝】
異空間に通じている巨大な貝殻
ダンジョン同様、破壊できない性質を持つ
内部がどこに通じているかは、時空貝ごとに異なる
――――――
……時空貝=ダンジョンというわけではなさそう? ここ以外にも、時空貝はあるっぽいね。
時間があったら他の時空貝を探して、どういう異空間に通じてるのか調べてみたいなぁ。
マップを見ると、これが海中窟ダンジョンの入口なのは間違いなさそうだから、とりあえず進んじゃおっか!
「シャボリンに乗ったまま入っていいのかな?」
しげしげと時空貝を眺めながら僕が呟くと、すぐさまルトが頷いた。
「大丈夫だろ。ちょうど入れそうなくらい開いてるし」
「キュルルン!」
ルトの言葉にビアンがすぐに反応し、シャボリンを押して時空貝の貝殻の隙間へと進めていく。
「ペタ、押してくれる?」
「くるる(いいよー)」
僕たちが乗るシャボリンも、ペタに押されて進み始めた。
中がどうなってるか、ワクワクするね!
あと少しで中に入れる──というところで、二つの金色の丸が貝殻の間にある闇の中で輝いた。
反射的に、ビアンとペタがシャボリンの動きを止める。
「えっ、なに!?」
「……モンスター、か?」
ビックリしてちょっと後ずさりした僕の近くで、ルトが眉を顰めながら呟く。
これ、モンスターなの? 金色の丸のモンスターってなに?
首を傾げる僕に、ルトが呆れたような視線を向けた。
「──言っとくけど、丸いモンスターじゃなくて、これ、目だと思うぞ?」
「なんで言葉にしてないのに僕の疑問がわかったの? っていうか、え……これ、目!? 大きくない!?」
聞き流しかけて、ぎょっとした。
二つの丸は僕の体の二倍はありそうな大きさだよ。これが目だったら、モンスターの本体はどれだけ大きいの……?
「つまり、モンスターのせいで、海中窟ダンジョンは閉ざされてたってこと?」
リリがじぃっと金色の目らしきものを見据えながら呟く。
そう言えば、海中窟ダンジョンって、なんか問題があって、海エルフたちが攻略できなくなったんだったね。
海中窟ダンジョンを開放するのが僕たちに課せられたミッションっぽいから、このモンスターを倒す必要があるってことかな。
「……いきなりボス戦みたいなものだよね」
嫌だなぁ、と思いながら僕が呟いても、否定の言葉が返ってくることはなかった。ルトたちも同意見ってことか。
うーん……気合いを入れてがんばろう。
みんなで力を合わせたらきっとクリアできるよね!
「ふぎゃーっ、またこれー!?」
凄まじい速度で進むシャボリンの中で、必死に足を動かす。
最初、スラリンたちを含めたみんなで動かしていたからか、思った以上に速度が出ちゃってるんだよ。前回シャボリンで移動した時もそうだったけど。
「きゅぃ(楽しいね!)」
「ぴぅ(くるくる回るぅ……)」
ぴょんぴょん跳ねてシャボリンを転がすスラリンとは対照的に、ユキマルは虚無の表情でシャボリンと一緒に回り始めた。諦めるの早いよ。
ペタは海中を泳いで、時々シャボリンの方向転換をしてくれてる。これがすっごく助かるんだー。勢いのままに、進みたい方向からズレることが度々あるから。
ヒスイは時々飛んでズルしてる。僕も飛んでいいかな? そうしたらスラリン一人で転がすことになるから、ちょっとは速度が緩むと思うんだ。
「【飛翔】!」
スキルを使う。スラリンが『えっ!?』と言いたげな目で見上げてきたけど、そっと目を逸らした。
スラリンはがんばってシャボリンを転がしてね。
ヒスイと僕で交互に飛んだり転がしたりしていると、ちょうどいい速度になってきた。
そして、ようやくルトとリリが動かすシャボリンが追いついてくる。二人とも呆れた顔をしてた。
「海中を爆走する意味あるか?」
「この強化シャボリンなら、急がなくても壊れる前に海中窟まで辿り着けると思うんだけど……?」
不思議そうに首を傾げるリリに、僕はエヘヘッと笑って見せた。
「……爆走するのって楽しいからね!」
「絶対、狙ってしてたことじゃないだろ。モモの叫び声、俺たちのところまで聞こえてたぞ」
ルトには誤魔化しが通用しなかった。僕の間抜けさが露呈しちゃった感じがしてしょんぼり。
「キュルルン!」
鳴き声が聞こえて、ルトたちが入ってる強化シャボリンの後ろを見ると、ビアンが楽しそうに泳いでた。
たまにシャボリンを押したり、尾で方向を変えたりと、器用に動きを補助してるみたいだ。
ペタ同様、水中で俊敏に動けるモンスターはこういう時に役に立つ。
ルトは度々ビアンの活躍を確認して満足そうな顔をしてた。すごく可愛がってるねぇ。
僕が持ってる海獣の卵も早く孵らないかな。どんな子が生まれるか、楽しみ!
「あっ、ねぇ、あれが海中窟ダンジョンの入口じゃない?」
不意にリリが前方を指す。
そこには、色とりどりの石や珊瑚、海藻で囲まれた大きな二枚貝があった。
「……あれが入口?」
僕は首を傾げる。
あの貝殻、どこにも繋がってないように見えるけど。かろうじて、二枚貝の隙間から中に入れそうではある。
「あー、そうっぽいな。異空間みたいな感じか? つーか、デカいな、あれ」
マップで海中窟ダンジョンの場所と現在地を確認したルトが、驚きを通り越して感心した雰囲気で呟く。
ルトが言う通り、二枚貝はすっごく大きいんだよ。僕たちのシャボリン二つが、悠々と中に入れそうだ。
シャボリンが進むにつれて、二枚貝の状態がよくわかるようになったけど、隙間から中を覗いても暗闇で何も把握できない。
ここに入るの勇気いるぅ……。
シャボリンの動きを微調整してくれてるペタとビアンのおかげで、二枚貝からちょっと離れたところで一時停止できた。
鑑定してみようっと。
――――――
【時空貝】
異空間に通じている巨大な貝殻
ダンジョン同様、破壊できない性質を持つ
内部がどこに通じているかは、時空貝ごとに異なる
――――――
……時空貝=ダンジョンというわけではなさそう? ここ以外にも、時空貝はあるっぽいね。
時間があったら他の時空貝を探して、どういう異空間に通じてるのか調べてみたいなぁ。
マップを見ると、これが海中窟ダンジョンの入口なのは間違いなさそうだから、とりあえず進んじゃおっか!
「シャボリンに乗ったまま入っていいのかな?」
しげしげと時空貝を眺めながら僕が呟くと、すぐさまルトが頷いた。
「大丈夫だろ。ちょうど入れそうなくらい開いてるし」
「キュルルン!」
ルトの言葉にビアンがすぐに反応し、シャボリンを押して時空貝の貝殻の隙間へと進めていく。
「ペタ、押してくれる?」
「くるる(いいよー)」
僕たちが乗るシャボリンも、ペタに押されて進み始めた。
中がどうなってるか、ワクワクするね!
あと少しで中に入れる──というところで、二つの金色の丸が貝殻の間にある闇の中で輝いた。
反射的に、ビアンとペタがシャボリンの動きを止める。
「えっ、なに!?」
「……モンスター、か?」
ビックリしてちょっと後ずさりした僕の近くで、ルトが眉を顰めながら呟く。
これ、モンスターなの? 金色の丸のモンスターってなに?
首を傾げる僕に、ルトが呆れたような視線を向けた。
「──言っとくけど、丸いモンスターじゃなくて、これ、目だと思うぞ?」
「なんで言葉にしてないのに僕の疑問がわかったの? っていうか、え……これ、目!? 大きくない!?」
聞き流しかけて、ぎょっとした。
二つの丸は僕の体の二倍はありそうな大きさだよ。これが目だったら、モンスターの本体はどれだけ大きいの……?
「つまり、モンスターのせいで、海中窟ダンジョンは閉ざされてたってこと?」
リリがじぃっと金色の目らしきものを見据えながら呟く。
そう言えば、海中窟ダンジョンって、なんか問題があって、海エルフたちが攻略できなくなったんだったね。
海中窟ダンジョンを開放するのが僕たちに課せられたミッションっぽいから、このモンスターを倒す必要があるってことかな。
「……いきなりボス戦みたいなものだよね」
嫌だなぁ、と思いながら僕が呟いても、否定の言葉が返ってくることはなかった。ルトたちも同意見ってことか。
うーん……気合いを入れてがんばろう。
みんなで力を合わせたらきっとクリアできるよね!
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