もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

433.好奇心の恩恵

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 ドンッと背後から全身を押されるような衝撃を感じる──と同時に、僕は「【水盾ウォーターシールド】!」と叫んで魔法を発動した。

 眩しくて温かいエネルギーに包まれながら、広い空間から狭い通路へと猛スピードで飛ばされ、僕はビュンッと外に放たれる。

 すぐさま地面が迫ってきたけど、僕の前に展開された水の盾がなんとか衝撃を和らげてくれた。
 水の盾ごと、僕は地面にめり込んじゃったけど。ダメージを負ってないからオッケーってことにしよう!

「はあっ!? モモ!?」
「え、モモが撃ち出されたように見えたんだけど……?」

 ルトとリリの声が聞こえた気がする。
 でも、周囲の音がうるさかったし、僕が二人を恋しくなってたから幻聴だったかも。

「♪進むー、進むー、どこまでもー、うさちゃんドリルだよー」

 今の状況を表す歌を即興で作り口ずさむ。
 僕と一緒に放たれた凄まじいエネルギーが、ガリガリと地面を削って進み、それに巻き込まれた僕もどんどん地中へと潜ってるんだ。

 外に出たかと思ったら、またどっかに行っちゃうよ。そろそろ帰りたい。リリ、ルト、助けてぇ……。

 僕どうなっちゃうのかなー、と投げやりな気分で次の展開を待っていると、不意に地面が終わった。代わりに、なんとなく見覚えがある透明な物体にエネルギーが衝突し、バリンッと激しい音を立てて破壊する。

 そこまでしてようやくエネルギーの放出が止まった。

「おっと……動けるようになったー!」

 エネルギーによる拘束から解放されて、スッキリした気分♪
 死に戻りしなかったし、咄嗟に水魔法を使った判断は間違ってなかったね。僕ってほんとラッキー。

 よいしょ、よいしょ、と固まっていた体を動かしてほぐしてから、周囲を観察する。
 僕の足元には透明な欠片が散っていて、キラキラと輝いていた。

「……これ、僕たちを攻撃してきた氷の槍(?)だよね」

 氷じゃないっぽいけど。ガラスの方が近い?
 踏んじゃったら痛そう。飛翔フライスキルを使って飛びながら、状況の把握に努める。

 どうやら地下にあったガラスっぽい塊を、防衛兵ガーディアン・ソルジャーから放たれたエネルギーが砕いたみたいだ。

 これ、なんなんだろうね? 攻撃されてる時は回避や攻撃の仕返しに必死で鑑定する暇がなかったけど、この状態なら余裕でできる。

——————
玻璃牢グラスダンジョンの欠片】
 地下にある透明な檻
 現在破壊されているが、一定時間が経過すると自動的に修復される
 中に凶悪なモンスターが閉じ込められていた
——————

「……おっと……これ、いいのかな?」

 え、閉じ込めてたモンスターを放っちゃった? それがボスだったりする?
 困惑しながら周囲を見ても、モンスターらしき姿はない。
 どういうこと?

玻璃牢グラスダンジョンを破壊しました。自動回復するまであと十分です〉

 あ、アナウンスでも状況を教えてくれた。僕の鑑定結果以上の情報はないけど。
 とりあえず、ルトたちのところに戻ろうっと。

 そう決めて僕が上を目指そうとするのと同時に、地面に散らばりキラキラ輝いている玻璃牢グラスダンジョンの欠片を跳ね除けるように、何かが地中から飛び出てきた。

「わあっ!? なにっ?」

 ギョッとしながら壁に背をつけ、限界まで離れてみる。
 早く地上に戻っておけばよかったー。
 ちょっぴり後悔したけど、出てきたものが僕を襲ってくる様子はない。

 そこにいたのは灰色の水の塊だ。歪な人型っぽく見えるけど、羽もあるような?
 不思議な形だなぁ。

 それはあっという間に体積を増して伸び上がり、エネルギー砲撃によって開けられた穴から外へと溢れていく。
 まぁ、この場所に足(?)をつけたままなんだけど。
 地中からずっと水が供給されて、塊がどんどん大きくなってる感じ?

「出るのは難しそう……」

 上を見上げたら、穴がほぼ灰色の水で埋まってる。
 僕がいるところはギリギリセーフの場所だ。下手な場所に退避してたら、水に押しつぶされちゃってたかも。僕の幸運値が仕事をした気がする!

 ぼんやりと観察を続けてたら、アナウンスが聞こえてきた。

〈海中窟ダンジョンボス【凶水霊イービルアクマリン】が現れました。玻璃牢グラスダンジョンが修復されるまでダメージを与えることができます〉
〈ミッション【凶水霊イービルアクマリンを攻撃しよう】が始まりました〉

——————
ミッション【凶水霊イービルアクマリンを攻撃しよう】
 海中窟ダンジョン一階奥に封じられていたデビル系モンスター【凶水霊イービルアクマリン】が解放された!
 制限時間内に与えたダメージ量に応じて報酬がもらえるよ
 たくさん攻撃しよう!
——————

 これがボス戦だった?
 でも、これまでのダンジョンボスとは違って、倒すことは求められてないみたいだ。

「とりあえず、たくさん攻撃すればいいってこと?」

 ボスの名前に『水霊』って入ってるし、ダンジョン攻略の目的だった『水霊魂アクアルーフ』を報酬としてもらえる可能性が高いよね。
 がんばって攻撃しよう!

「出られないし、ここから……【竜巻トルナード】!」

 地上でバトルが始まってる気配を感じながら、スキルを発動する。
 ペタやヒスイには指示を出せないけど、僕が傍にいなくてもきっと活躍してくれてるはずだ。

 僕が放った風魔法は、凶水霊イービルアクマリンの足(?)を削るように進む。灰色の水がバシャバシャと溢れた。
 僕がいるここも水の中なんだけど、灰色の水は混じることなくはっきり見える。

 ……凶水霊イービルアクマリンが体勢を崩した気がする?
 人が膝をついて転倒を回避するのと同じように、凶水霊イービルアクマリンも必死に踏ん張っているような。

 これは僕の攻撃のおかげか、それとも地上でがんばってるルトたちの攻撃の影響か……わからないけど、報酬のためにガンガン攻撃しちゃうぞ!

「【風の玉ウィンドボール】【風の槍ウィンドランス】【風の刃ウィンドスラッシュ】」

 風魔法三連発!
 凶水霊イービルアクマリンがめちゃくちゃ動揺してる気配を感じる。でも、僕に攻撃してくる様子はない。
 地上の方ではバタバタと騒がしい音がしていて、激しいバトルが繰り広げられてるっぽいのに。

 もしかして、凶水霊イービルアクマリンは地上にいる相手しか攻撃できないのかな。
 むふふー、まさか下から攻撃されるとは思ってなかったんだね?

 いい弱点を知っちゃったー。
 ルンルン、と鼻歌を歌いながら次々にスキルを放つ。一方的に攻撃できるのって楽しいね!

「【天の断罪アンジュジャッジ】からの【天兎の光アンジュラパ・ヘイロー】! 追加で【月光ルナライト】! 武器を変えて、【聖光ホーリーライト】!」

 今度は光属性攻撃三連発!
 防御力と光属性耐性を下げておいたから、効果は抜群だー。
 強い光を放ってもルトたちに怒られないし、一人で戦うのもこういう時はいいね。

「【嵐蹴り】【足蹴】【風の玉ウィンドボール】【風の槍ウィンドランス】──【竜巻トルナード】!」

 クールタイムを考えながら、ひたすら攻撃スキルを放つ。
 どれくらいダメージを稼げるかな~♪

 凶水霊イービルアクマリンがちょっぴり泣きそうになってるように感じるのは……きっと気のせいだよね!

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