もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
506 / 555
11章 夏の海ではしゃいじゃお

464.今日は忙しくなりそう?

しおりを挟む
 ナルージャさんには、このあとすぐに水精術を教えてもらえることになった。
 ただし──

「わたくしはこれから海精霊シーフェアリーの里に向かわなくてはならないから、教えるのはそちらで、ということでいいかしら?」

 ──とのこと。
 もちろん、オッケーしたよ。
 海精霊シーフェアリーの里には海輝石シーロキスに魔力を込めるミッションのために何度も行ってるし、慣れた場所だからね。

 ルトたちも僕と同じミッションを受けていて、転移ピンは設定済みのようだから、向かうのは簡単だ。

「ちなみに、ナルージャ様は何をしに海精霊シーフェアリーの里に行くんですか?」

 リリが興味津々な感じで聞くと、ナルージャさんがニコリと微笑む。

「年に一度の競争の審判役なのよ」
「年に一度の……」
「競争……」

 僕たちはパチパチと目を瞬かせながら、ナルージャさんの言葉を繰り返した。
 聞き覚えがあるね?

 ……これ、海精霊シーフェアリーの女王メーアが依頼してきた、ミッションのことでしょ。海精霊シーフェアリーの王様と陣地争いをしてる、っていう。

「待って、もしかして、今日、勝敗が決まるの!?」

 僕は思わず身を乗り出して聞いた。
 ナルージャさんは「そうよ?」と不思議そうにしながらも頷く。

 近々終了するって噂は聞いてたけど、まさか今日だったとは……この情報、誰も知らないんじゃない?

 僕が視線を向けると、ルトが眉を寄せながら頷いて、掲示板に書き込む作業を始めた。
 勝敗が決まる場にプレイヤーはいなくてもいいのかもしれないけど、こんだけ関わったなら最後を見届けたいっていう人がいるだろうしね。

「ナルージャ、では、彼らの指導を頼んだよ」
「お任せくださいませ、殿下」

 プレア殿下はナルージャさんに声を掛けたあと、改めて僕たちを見て微笑む。

「水精術の訓練がんばってね。私はもう行かなくてはならないけれど、リュウグウのことで困ったことがあれば、遠慮なく訪ねてきてくれ──特に、モモには父や母も関心を向けていたから、遊びに来てくれると嬉しいよ」

 片手を上げて去っていくプレア殿下を、僕は「ばいばーい」と手を振って見送る。
 それから、ルトを見上げた。

「……ねえ、プレア殿下のお父さんとお母さんって」
「国王と王妃だろ……」

 遠い目をしながらもルトがハッキリと答える。

「……だよね! 僕、王様とお妃様にも知られてるんだぁ」

 よくよく考えると凄いことだよねぇ、と僕も遠くを見つめた。
 リリが「さすがもふもふ神さま、さすもふ、だね」と楽しそうにしてる。

 リリって、こういうことには気後れしないよね。自分が実際に王様たちに会うわけじゃないからかもしれないけど。
 僕はさすがに王様たちに会うってことになったらちょっと緊張しちゃうよ。たぶん。

「もふもふ教の神なのだから、知られていて当然じゃないかしら? リュウグウにも教会を建てる予定なのよね? 用地を借りる申請がされているもの」
「それはめちゃくちゃ初耳!」

 ナルージャの言葉に間髪入れず叫んだ。
 ねぇ、いつの間にリュウグウに教会を建てることが決まったの?

 ルトとリリを見ると、無言で首を横に振られた。二人も知らなかったらしい。
 たぶんタマモが決めて、即実行に移してるんだろうなぁ。リュウグウの魚人族を中心に、もふもふ教の信徒が増えているらしいし。
 ……もふもふ教の勢力拡大って感じだね!

「あ、わたくし、そろそろ行かなくちゃ。あなたたちは後から来る?」
「いえ、俺たちも一緒に行きます」

 ナルージャの言葉にルトがすぐさま答える。
 海園遊会での目的は達成したもんね。美味しいものもたくさん味わえたし。
 だから、海精霊シーフェアリーたちの競争の結末を見届ける方が優先だ。

「ナルージャさんも転移スキルを使える?」

 ふと思い出して聞いてみる。
 異世界の住人NPCは基本的に転移スキルを使えないんだよねぇ。そのせいで、異世界の住人NPCを連れた移動はちょっと気を遣わないといけない。
 転移スキルに異世界の住人NPCを便乗させるアイテム、余ってたっけ?

 でも、そんな僕の危惧は不要だったようで、ナルージャさんはニコリと微笑んだ。

「転移スキルは使えないけれど、わたくしには水精術があるから問題ないわ」
「……水精術って、転移スキルみたいに使えるの?」

 僕たちはパチパチと目を瞬かせて驚く。
 そもそも水精術がどういうスキルなのか、情報を集めてなかったから知らないんだよねぇ。

「極めれば、ね──先に行くから、あなたたちも早くいらしてね」

 フフッと微笑んだナルージャさんが「水精ウィンディ、私を運んで」と唱えた後に姿を消した。
 ほんとに一瞬で移動したの? すごーい!

「へぇ……転移っていうより、超高速移動って感じか?」

 ルトが彼方に視線を向けて呟く。
 リリが「そうなの?」と聞くと、説明を続けてくれた。

「──少し移動した残像が見えた。転移スキルはその場から一瞬で姿が消えるから、横移動する必要はないだろ」
「言われてみればそうかも?」

 ルトに答えたリリと、僕は顔を見合わせた。
 その残像、ルトはよく見えたね。僕は全然わからなかったよ。この感じだと、リリも僕と一緒っぽい。

「ま、そういうのも後で教えてもらえるだろうし、俺たちもさっさと行こうぜ」
「さんせーい。モモ、行こう!」
「はーい! ということで──【転移】!」

 海精霊シーフェアリーの里にある転移ピンを選んでスキルを使った。
 勝負の行方も、水精術も、楽しみだな~♪


******
番外編の方にハロウィンssを公開しております。
こちらもぜひお楽しみくださいませ🎃
しおりを挟む
感想 2,531

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。