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11章 夏の海ではしゃいじゃお
465.僕の周りは愛があふれてる
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転移で海精霊の里に来たよ~。
転移ピンを設定してある海輝石の傍に着いた途端、海精霊の女王メーアの険しい顔を目撃することになって、ビビッたけど。
え、メーア、お顔怖ぁ……。
『今年こそ、私が勝利するわ!』
『……まあ、なんというか……うん、そうだな……』
メーアにビシッと指を向けられた男の海精霊が、遠い目をしながら乾いた笑いをこぼしていた。
周りの海精霊たちが『女王様、もっと言ってやってください!』とか、『王様、お気を確かに……!』とか騒いでる。
ということは、メーアに睨まれてるのが、海精霊の王様ってことかぁ。
漫画だったら、背景に大量の線か黒いモヤが描かれそうなくらい生気がない表情だけど。
「え、あれ、ホントに王様? 王様ならもっとキラキラした雰囲気をしてるもんじゃないの……?」
勝手なイメージの押しつけになるかもしれないけど、王様らしくしていてほしいな。
ほら、イノカン国の王様はめちゃくちゃキラキラしてたよ。威厳はなかったけど、あれはあれで、見るからにいい人そうで好感を持てる感じだったし。
「ほぼほぼお前のせいだろ……」
ルトが目を眇めて言った。
僕のせいって、どういうこと?
きょとんとしている僕を見て、リリが「モモは台風の目だからねぇ。ふふ、そういうところ、好きよ」と微笑む。
「はわわ、告白されちゃったー!」
「アホ、そういう意味じゃねぇよ」
ほっぺたを押さえて照れた仕草をしてみたら、間髪入れずにルトに頭を叩かれて、「イテッ」と声が出る。
ちょっとふざけただけじゃんかぁ。なぁに? 嫉妬しちゃった? ルトってば、嫉妬深いんだからぁ!
ルトの足をペシペシと叩きながら笑うと、ジトッと見下ろされて、今度はデコピンされた。
イテテ……ルトは手が出るのが早すぎると思うよ! そこは直してほしいな!
「あらあら、まあまあ……相変わらず仲がいいわね」
ナルージャさんが現れて、メーアと海精霊の王様の仲裁を始めた。
僕たちより早く移動してたはずなのに、到着は遅れたみたいだ。
ルトが「やっぱ、高速移動は転移には速度っつう点では敵わねぇな……」と冷静に分析してる。
『な、仲良くなんてないわっ! ナルージャ、目玉が取れてるんじゃないの!?』
「目玉が取れて普通に歩いていたら、怖いわねぇ」
明らかに動揺した感じでナルージャさんに言い返しているメーアを見て、僕は「なるほど」と頷く。
僕、男女の仲の機微なんてよくわからないけど、これはなんとなくわかるよ。
メーアは王様に対していろいろ言いながらも、結構好きなんだね!
ニヨニヨと笑いながら、ルトに「ねぇねぇ、あれ絶対、照れてるだけだよね。ルト、わかる?」と教えてあげた。
すると、「この場にいる全員がそんなことわかってるだろ。得意気に言うことじゃねぇよ」と言われてしまった。
「……え、そんなわかりやすいの、あれ!?」
「そこで驚く意味がわからねぇな……」
本心から驚いてメーアを指して言ったら、ルトが呆れた顔をする。
リリも「うーん、あれはもう、一切隠せてないからねぇ……」と苦笑した。
そ、そうなの……?
せっかく隠し設定に気づけたと思ったのにぃ。
しょんぼりと項垂れていたら、周囲の人口密度が増してきたことに気づいた。
みんなキラキラとした目を僕に向けてくる。さては、もふもふ教の人だね?
ルトが掲示板に情報を載せたのはさっきのことなのに、行動が早いなー。
なぜかルトを睨んでる人も結構いるんだけど。
ルトは頑なにそういう人たちと目を合わせないようにしてる。気まずそうな顔だ。
「ルトくんや~い。もしかして、なんかしでかした?」
ちょっぴり殺意が混じってそうな目をルトに向けてる人たちを、ちょいちょいと指しながらルトに聞く。
なんかトラブルが起きてるなら、助け舟を出してあげないこともないよ? 僕とルトは親友だからね!
「あー……さっきの海園遊会、もふもふ教のやつらいなかったじゃん?」
僕の隣で腰を落として視線を合わせてきたルトが、コソコソと話してくる。
うんうん、確かにさっきのパーティーに、もふもふ教っぽいプレイヤーはいなかったね。確実に、もふもふ教に入ってそうな魚人さんはいたけどね。
「──実は、お前が今日、王都北の方で遊ぶって情報を流してたんだよな」
「なんで!?」
偽情報を流す理由がわからなくて、ギョッとしてルトを見ると、半眼で見つめ返された。
「そりゃ、お前の周りが騒がしすぎるからに決まってんだろ! 俺は、ダチとは静かに遊びたいんだ! 監視されながらなんて、疲れるだろ!」
小声で怒鳴るって器用だね、ルト──なんてことを考えながら、拗ねた顔をしているルトを観察する。
ルトの隣にしゃがんだリリが、フフッと笑って「ルトに悪気はないの。ただ、時々ホントに鬱陶しいって思うことがあるだけ」と、なかなかシビアなコメントをくれた。
なるほどねぇ。
ルトに『ダチ』って言われて、一緒に遊ぶのを楽しみにしてるって匂わされて、僕だって結構嬉しい。
僕の周囲が騒がしくなることがあるのは事実だし、それはちょっと申し訳ないなぁ、と思うこともある。
だから──
「……わかった! あとでみんなにフォローを入れとくね。それと、ルトたちと遊ぶ時は、あまり追ってこないでって言っとく!」
グッとサムズアップして僕が答えたら、ルトがパチパチと瞬きをして、ちょっと躊躇った感じで口を開く。
「……でも、お前、あいつらにキャアキャア言われんの好きじゃん?」
「好きだよ? 誰かに好かれるって凄いことだもん。好きでいてくれる分だけ、僕もみんなを幸せにできたらなーって思うし。でもね──」
しゃがんでるルトの膝をポンポンと叩いて微笑む。
「僕だって、ルトたちと遊ぶのが好きなんだよ。だから、たまにはルトたちの気持ちを優先してもよくない?」
「……そうかよ」
照れた感じで目を逸らすルトを指しながら、僕はリリにニコッと笑いかける。
「ルトってこういうところ可愛いよね!」
「でしょ!」
リリに全力で同意されたー。
ルトが「可愛くなんてねーよっ」と照れ隠しに怒ってる。
ふふふ、可愛いねぇ。
でも、ちょっと笑っていただけで、頭を拳でグリグリされた。
「痛ぁい! ルトのそういうところはきーらーいー!」
「はいはい、それはよかったよ」
ペシペシと叩き返しても全然効果がない。
グリグリするの、やーめーてー!
転移ピンを設定してある海輝石の傍に着いた途端、海精霊の女王メーアの険しい顔を目撃することになって、ビビッたけど。
え、メーア、お顔怖ぁ……。
『今年こそ、私が勝利するわ!』
『……まあ、なんというか……うん、そうだな……』
メーアにビシッと指を向けられた男の海精霊が、遠い目をしながら乾いた笑いをこぼしていた。
周りの海精霊たちが『女王様、もっと言ってやってください!』とか、『王様、お気を確かに……!』とか騒いでる。
ということは、メーアに睨まれてるのが、海精霊の王様ってことかぁ。
漫画だったら、背景に大量の線か黒いモヤが描かれそうなくらい生気がない表情だけど。
「え、あれ、ホントに王様? 王様ならもっとキラキラした雰囲気をしてるもんじゃないの……?」
勝手なイメージの押しつけになるかもしれないけど、王様らしくしていてほしいな。
ほら、イノカン国の王様はめちゃくちゃキラキラしてたよ。威厳はなかったけど、あれはあれで、見るからにいい人そうで好感を持てる感じだったし。
「ほぼほぼお前のせいだろ……」
ルトが目を眇めて言った。
僕のせいって、どういうこと?
きょとんとしている僕を見て、リリが「モモは台風の目だからねぇ。ふふ、そういうところ、好きよ」と微笑む。
「はわわ、告白されちゃったー!」
「アホ、そういう意味じゃねぇよ」
ほっぺたを押さえて照れた仕草をしてみたら、間髪入れずにルトに頭を叩かれて、「イテッ」と声が出る。
ちょっとふざけただけじゃんかぁ。なぁに? 嫉妬しちゃった? ルトってば、嫉妬深いんだからぁ!
ルトの足をペシペシと叩きながら笑うと、ジトッと見下ろされて、今度はデコピンされた。
イテテ……ルトは手が出るのが早すぎると思うよ! そこは直してほしいな!
「あらあら、まあまあ……相変わらず仲がいいわね」
ナルージャさんが現れて、メーアと海精霊の王様の仲裁を始めた。
僕たちより早く移動してたはずなのに、到着は遅れたみたいだ。
ルトが「やっぱ、高速移動は転移には速度っつう点では敵わねぇな……」と冷静に分析してる。
『な、仲良くなんてないわっ! ナルージャ、目玉が取れてるんじゃないの!?』
「目玉が取れて普通に歩いていたら、怖いわねぇ」
明らかに動揺した感じでナルージャさんに言い返しているメーアを見て、僕は「なるほど」と頷く。
僕、男女の仲の機微なんてよくわからないけど、これはなんとなくわかるよ。
メーアは王様に対していろいろ言いながらも、結構好きなんだね!
ニヨニヨと笑いながら、ルトに「ねぇねぇ、あれ絶対、照れてるだけだよね。ルト、わかる?」と教えてあげた。
すると、「この場にいる全員がそんなことわかってるだろ。得意気に言うことじゃねぇよ」と言われてしまった。
「……え、そんなわかりやすいの、あれ!?」
「そこで驚く意味がわからねぇな……」
本心から驚いてメーアを指して言ったら、ルトが呆れた顔をする。
リリも「うーん、あれはもう、一切隠せてないからねぇ……」と苦笑した。
そ、そうなの……?
せっかく隠し設定に気づけたと思ったのにぃ。
しょんぼりと項垂れていたら、周囲の人口密度が増してきたことに気づいた。
みんなキラキラとした目を僕に向けてくる。さては、もふもふ教の人だね?
ルトが掲示板に情報を載せたのはさっきのことなのに、行動が早いなー。
なぜかルトを睨んでる人も結構いるんだけど。
ルトは頑なにそういう人たちと目を合わせないようにしてる。気まずそうな顔だ。
「ルトくんや~い。もしかして、なんかしでかした?」
ちょっぴり殺意が混じってそうな目をルトに向けてる人たちを、ちょいちょいと指しながらルトに聞く。
なんかトラブルが起きてるなら、助け舟を出してあげないこともないよ? 僕とルトは親友だからね!
「あー……さっきの海園遊会、もふもふ教のやつらいなかったじゃん?」
僕の隣で腰を落として視線を合わせてきたルトが、コソコソと話してくる。
うんうん、確かにさっきのパーティーに、もふもふ教っぽいプレイヤーはいなかったね。確実に、もふもふ教に入ってそうな魚人さんはいたけどね。
「──実は、お前が今日、王都北の方で遊ぶって情報を流してたんだよな」
「なんで!?」
偽情報を流す理由がわからなくて、ギョッとしてルトを見ると、半眼で見つめ返された。
「そりゃ、お前の周りが騒がしすぎるからに決まってんだろ! 俺は、ダチとは静かに遊びたいんだ! 監視されながらなんて、疲れるだろ!」
小声で怒鳴るって器用だね、ルト──なんてことを考えながら、拗ねた顔をしているルトを観察する。
ルトの隣にしゃがんだリリが、フフッと笑って「ルトに悪気はないの。ただ、時々ホントに鬱陶しいって思うことがあるだけ」と、なかなかシビアなコメントをくれた。
なるほどねぇ。
ルトに『ダチ』って言われて、一緒に遊ぶのを楽しみにしてるって匂わされて、僕だって結構嬉しい。
僕の周囲が騒がしくなることがあるのは事実だし、それはちょっと申し訳ないなぁ、と思うこともある。
だから──
「……わかった! あとでみんなにフォローを入れとくね。それと、ルトたちと遊ぶ時は、あまり追ってこないでって言っとく!」
グッとサムズアップして僕が答えたら、ルトがパチパチと瞬きをして、ちょっと躊躇った感じで口を開く。
「……でも、お前、あいつらにキャアキャア言われんの好きじゃん?」
「好きだよ? 誰かに好かれるって凄いことだもん。好きでいてくれる分だけ、僕もみんなを幸せにできたらなーって思うし。でもね──」
しゃがんでるルトの膝をポンポンと叩いて微笑む。
「僕だって、ルトたちと遊ぶのが好きなんだよ。だから、たまにはルトたちの気持ちを優先してもよくない?」
「……そうかよ」
照れた感じで目を逸らすルトを指しながら、僕はリリにニコッと笑いかける。
「ルトってこういうところ可愛いよね!」
「でしょ!」
リリに全力で同意されたー。
ルトが「可愛くなんてねーよっ」と照れ隠しに怒ってる。
ふふふ、可愛いねぇ。
でも、ちょっと笑っていただけで、頭を拳でグリグリされた。
「痛ぁい! ルトのそういうところはきーらーいー!」
「はいはい、それはよかったよ」
ペシペシと叩き返しても全然効果がない。
グリグリするの、やーめーてー!
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