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11章 夏の海ではしゃいじゃお
466.有名人?
僕がルトたちと遊んでいる間に、ナルージャさんとメーアたちのやり取りが終わっていた。
全然聞いてなくてごめんね? なんか重要な情報とかあったかなぁ?
「ルト、掲示板にメーアたちのやり取りについて情報出てない?」
「自分で調べろよ……」
半眼でクレームを言ってるけど、ルトはちゃんと掲示板を開いて探してくれた。やっぱり優しいねぇ。
その報告を待っていると、ふと近くに立っているおじさんと目が合う。
……とっても凝視されてます。
他のもふもふ教の人たちと、似てるようで微妙に違う熱視線に、ちょっとたじろいだ。
このおじさん、のほほんと穏やかな雰囲気だけど強そう。なんか強者のオーラを感じる。
「こ、こんちゃー?」
とりあえず、挨拶してみたよ。
友好的な態度をとって、喧嘩を売られることはないでしょ。
「こんちゃー。もふうさ君」
「僕、モモだよ」
「知ってるよ。俺はオジさんです」
「……え」
思った以上に友好的な態度にホッとしていたら、なぜか『もふ好きーなオジさん』と書かれた名刺をもらった。これ、名前じゃなくない?
オジさんの頭上には、ちゃんとプレイヤー名が『モフオジ』と表示されてる。……あながち、名刺の名前も間違ってない、のかも?
「ちなみに、最近結成されたばかりのもふもふ教情報班に所属してるぞー。基本は前線攻略優先だから、あまり活動しないはずだけど」
「いろいろわかんないけど、とりあえず、もふもふ教に所属してるオジさんってことでいい?」
「おっけー」
指でオッケーの形を作りながら頷かれた。
前線攻略をしてると言ってる割に、やっぱり雰囲気が緩い。でも、強いんだろうなー、というのは伝わってくる。
「おじさん、おじさんではありませんか」
突然ルトがボソッと呟いた。何事!?
ギョッとしてる僕の前で、オジさんが「あっはっは!」と笑い始める。
「これ、オジさんが掲示板に現れた時に言うのが決まりみたいになってるの」
リリが教えてくれた。
なるほどー? 掲示板にはよくわかんない文化があるんだね。
「いやー、銀くんと実際に会うのは久しぶりだな!」
「オジさんとはあんまりタイミングが合わないからなぁ」
ルトとオジさんは知り合いらしい。
意外と、ルトってもふもふ教に所属してる人と交流あるよね。たぶん、僕より知り合い多いよ。
「そういや、海精霊の女王たちの会話聞き逃したんだろ?」
不意にオジさんがメーアたちの方を指しながら首を傾げた。
ルトが頷きながら「掲示板に情報が出てないんすよ」と答える。
「うん。大した内容なかったしな。今回の争いで女王側が勝ったら、王様とデートするって決まったくらいで」
「「「デート……」」」
思わず、僕とルト、リリが声を合わせて呟くと、オジさんが苦笑しながら肩をすくめる。
「そう、デート。あっちのハイエルフのお嬢さんが上手い感じに話を運んで、そう決まったんだ。ハイエルフ的に、海精霊が王派、女王派で分断されてる状況はあまりいいことじゃないようだな」
「あー、なるほど?」
ルトはオジさんの補足に頷くも「いや、だからって、デート……」と呆れた顔をしてる。
その気持ち、僕もわかるよ。
王様とメーアはそれでいいんだ? もしかして、仲直りする機会を探してた感じかな? そもそもなんで喧嘩してるのかわかんないけど。
「つまり、二人のデートは確定?」
リリが尋ねると、ルトとオジさんが同時に「「だな」」と肯定する。
「え、なんで? まだ結果が出てないよ?」
きょとんとしながら尋ねた僕に、一斉に視線が集まった。ルトたちだけじゃなく、周囲に集まってた見知らぬプレイヤーたちからも。
……僕、そんなに変なこと言ったかな?
「いやー、もふうさ君が女王に肩入れした時点で、勝負は決まったも同然だったし……」
「これを覆すのは、とんでもないチートな裏技がなきゃ無理だろ」
「うーん、王様もすでに負けを悟ってるし、ね」
遠い目をするオジさんに続いてルトが呆れた感じで言うと、リリが王様を指して肩をすくめた。
確かに海精霊の王様は最初から闇を背負ってる雰囲気だったもんね。あれは常にそうだったわけじゃなくて、競争に負けると悟っていたからだったんだ?
「三人とも知ってるか?」
「なんっすか?」
「王様の派閥、競争の後半は毎日鬱々としてて、通りがかるプレイヤーに協力を頼もうと泣きついてたらしいぞ」
「うわぁ……悲惨……」
悟りの境地に至ったような表情のオジさんの言葉に、ルトが呻くような声を漏らす。
王様の派閥って、僕とタマモが領地内を通った時に怖い形相で追いかけてきたイメージしかないんだけど、随分と変わったんだねぇ。
あ、そういえばその時に、海精霊の弱点(天敵?)がタコだって話を聞いたんだっけ? 結局、そのタコは宿借蛸のことだったのかな?
僕が思い出した情報に首を傾げていると、二つの海輝石が壇上に運ばれてきて、ナルージャさんが結果発表の挨拶を始めた。
「たくさんの方が集まったようね? ふふ、海精霊のことに関心があるのはいいことよ」
ニコリと微笑んだナルージャさんは「楽しみにしているようだし、さっさと結果発表をしましょうか」と告げる。
どんよりとしてる王様派閥と堂々と胸を張ってるメーア派閥を両側に従えていたら、あまり長々と話す気にならなかったのかも。
「【水精よ、海輝石の力を光らせて】」
二つの海輝石に手を添えたナルージャさんが唱える。
途端に、息を呑むような美しい光が溢れた。
海輝石から次々に現れる光の花。
それはキラキラと光る花びらのように舞い散り、ステージ下で見ている僕たちを包みこんだ。
ふわっと温かなものに包まれるような安心感を覚える。
やがて光はメーアたちの方へ移動し、その頭上に大輪の光の花を咲かせた。
「──海輝石は女王メーアを勝者に選んだわ。皆のもの、海精霊の女王メーアに祝福を!」
拍手をするナルージャに一拍遅れて、僕たちもパチパチと拍手した。
海精霊の里を歓声が包み込んだ。
メーアが嬉しそうに微笑んでいる。
よかったね。僕もメーアに協力したかいがあったよ!
全然聞いてなくてごめんね? なんか重要な情報とかあったかなぁ?
「ルト、掲示板にメーアたちのやり取りについて情報出てない?」
「自分で調べろよ……」
半眼でクレームを言ってるけど、ルトはちゃんと掲示板を開いて探してくれた。やっぱり優しいねぇ。
その報告を待っていると、ふと近くに立っているおじさんと目が合う。
……とっても凝視されてます。
他のもふもふ教の人たちと、似てるようで微妙に違う熱視線に、ちょっとたじろいだ。
このおじさん、のほほんと穏やかな雰囲気だけど強そう。なんか強者のオーラを感じる。
「こ、こんちゃー?」
とりあえず、挨拶してみたよ。
友好的な態度をとって、喧嘩を売られることはないでしょ。
「こんちゃー。もふうさ君」
「僕、モモだよ」
「知ってるよ。俺はオジさんです」
「……え」
思った以上に友好的な態度にホッとしていたら、なぜか『もふ好きーなオジさん』と書かれた名刺をもらった。これ、名前じゃなくない?
オジさんの頭上には、ちゃんとプレイヤー名が『モフオジ』と表示されてる。……あながち、名刺の名前も間違ってない、のかも?
「ちなみに、最近結成されたばかりのもふもふ教情報班に所属してるぞー。基本は前線攻略優先だから、あまり活動しないはずだけど」
「いろいろわかんないけど、とりあえず、もふもふ教に所属してるオジさんってことでいい?」
「おっけー」
指でオッケーの形を作りながら頷かれた。
前線攻略をしてると言ってる割に、やっぱり雰囲気が緩い。でも、強いんだろうなー、というのは伝わってくる。
「おじさん、おじさんではありませんか」
突然ルトがボソッと呟いた。何事!?
ギョッとしてる僕の前で、オジさんが「あっはっは!」と笑い始める。
「これ、オジさんが掲示板に現れた時に言うのが決まりみたいになってるの」
リリが教えてくれた。
なるほどー? 掲示板にはよくわかんない文化があるんだね。
「いやー、銀くんと実際に会うのは久しぶりだな!」
「オジさんとはあんまりタイミングが合わないからなぁ」
ルトとオジさんは知り合いらしい。
意外と、ルトってもふもふ教に所属してる人と交流あるよね。たぶん、僕より知り合い多いよ。
「そういや、海精霊の女王たちの会話聞き逃したんだろ?」
不意にオジさんがメーアたちの方を指しながら首を傾げた。
ルトが頷きながら「掲示板に情報が出てないんすよ」と答える。
「うん。大した内容なかったしな。今回の争いで女王側が勝ったら、王様とデートするって決まったくらいで」
「「「デート……」」」
思わず、僕とルト、リリが声を合わせて呟くと、オジさんが苦笑しながら肩をすくめる。
「そう、デート。あっちのハイエルフのお嬢さんが上手い感じに話を運んで、そう決まったんだ。ハイエルフ的に、海精霊が王派、女王派で分断されてる状況はあまりいいことじゃないようだな」
「あー、なるほど?」
ルトはオジさんの補足に頷くも「いや、だからって、デート……」と呆れた顔をしてる。
その気持ち、僕もわかるよ。
王様とメーアはそれでいいんだ? もしかして、仲直りする機会を探してた感じかな? そもそもなんで喧嘩してるのかわかんないけど。
「つまり、二人のデートは確定?」
リリが尋ねると、ルトとオジさんが同時に「「だな」」と肯定する。
「え、なんで? まだ結果が出てないよ?」
きょとんとしながら尋ねた僕に、一斉に視線が集まった。ルトたちだけじゃなく、周囲に集まってた見知らぬプレイヤーたちからも。
……僕、そんなに変なこと言ったかな?
「いやー、もふうさ君が女王に肩入れした時点で、勝負は決まったも同然だったし……」
「これを覆すのは、とんでもないチートな裏技がなきゃ無理だろ」
「うーん、王様もすでに負けを悟ってるし、ね」
遠い目をするオジさんに続いてルトが呆れた感じで言うと、リリが王様を指して肩をすくめた。
確かに海精霊の王様は最初から闇を背負ってる雰囲気だったもんね。あれは常にそうだったわけじゃなくて、競争に負けると悟っていたからだったんだ?
「三人とも知ってるか?」
「なんっすか?」
「王様の派閥、競争の後半は毎日鬱々としてて、通りがかるプレイヤーに協力を頼もうと泣きついてたらしいぞ」
「うわぁ……悲惨……」
悟りの境地に至ったような表情のオジさんの言葉に、ルトが呻くような声を漏らす。
王様の派閥って、僕とタマモが領地内を通った時に怖い形相で追いかけてきたイメージしかないんだけど、随分と変わったんだねぇ。
あ、そういえばその時に、海精霊の弱点(天敵?)がタコだって話を聞いたんだっけ? 結局、そのタコは宿借蛸のことだったのかな?
僕が思い出した情報に首を傾げていると、二つの海輝石が壇上に運ばれてきて、ナルージャさんが結果発表の挨拶を始めた。
「たくさんの方が集まったようね? ふふ、海精霊のことに関心があるのはいいことよ」
ニコリと微笑んだナルージャさんは「楽しみにしているようだし、さっさと結果発表をしましょうか」と告げる。
どんよりとしてる王様派閥と堂々と胸を張ってるメーア派閥を両側に従えていたら、あまり長々と話す気にならなかったのかも。
「【水精よ、海輝石の力を光らせて】」
二つの海輝石に手を添えたナルージャさんが唱える。
途端に、息を呑むような美しい光が溢れた。
海輝石から次々に現れる光の花。
それはキラキラと光る花びらのように舞い散り、ステージ下で見ている僕たちを包みこんだ。
ふわっと温かなものに包まれるような安心感を覚える。
やがて光はメーアたちの方へ移動し、その頭上に大輪の光の花を咲かせた。
「──海輝石は女王メーアを勝者に選んだわ。皆のもの、海精霊の女王メーアに祝福を!」
拍手をするナルージャに一拍遅れて、僕たちもパチパチと拍手した。
海精霊の里を歓声が包み込んだ。
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