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12章 美味しいもの大好き!
472.探検仲間を増やそう
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僕は、穴を見たら入ってみたくなる系のウサギだけど、この穴にはヤバさを感じて尻込みちゃうよ。
えぇ……この中に、ほんとに行くのぉ……?
躊躇いながらも、とりあえず近寄って観察してみる。
建物の外壁の一部が壊れて床と地面に穴があいてるけど、部屋の方に続く地上部は板で塞がれて、入れないようになってる。
穴があるところだけが、建物から隔離されて外から見えてる感じ。
吹き飛ばされたようになくなってる床(地面)には、地下へと伸びる歪な階段らしきものがあった。
階段の奥は見えない。この穴、すごく深いところまで続いてそう。
何かのせいで大穴があいちゃったから、とりあえず部屋に入れないように壁を内側に新設して、外から地下へ向かう通り道だけ残したように見える。
……絶対ヤバい原因でできてるよ、この穴!
振り返ってアリスちゃんをじぃっと見つめたら、きょとんとした顔で首を傾げられた。
僕が感じてるヤバさは、アリスちゃんには全然伝わってないらしい。危機感が仕事放棄しちゃってる。幼女だからしかたないけども。
「……ぷる君」
「はい! なんですか?」
声を掛けたら、ぷる君にキラキラとした目で見つめられた。
「先に行って、危険がないか確認してくれない?」
「え”!?」
濁点がついた「え」という驚きの声と共に、固まった表情で見つめられる。
僕はえへへっと笑いながら目を逸らした。ちょっとひどいこと言っちゃったかもー。
「──冗談だよ。ぷる君に押しつけたりなんてしないってー」
「で、ですよねー……?」
ちょっぴり本気でした。
まあ、そもそも街中で危ない目にあうことはそうそうないはずだから、任せたとしても大丈夫だとは思うんだけどね。
「……アンタたち、そこで何してるんだい?」
声を掛けられて振り向くと、近くにある家の窓手すりで寝そべりながら、三毛猫っぽい子が尻尾を揺らしてた。
長毛種だから、めっちゃ優雅な感じに見える。猫の種類としてはノルウェージャンフォレストキャットに近いかな。大きさもそれっぽいし。
というか、このニャンコさんは知り合いだね?
第三陣プレイヤーで森猫アバターのトアさん。
もふもふ愛ランドで初めて会ったけど、頼りがいのある姉御肌な感じなんだよ。
「トアさんだー! こんちゃー」
「こんにちは。いつもながら、モモは元気そうね」
「うん、僕とっても元気!」
僕が挨拶して「こんちゃー」と返ってこないのはレアだ。
簡単に流行りに乗らないで自分のスタイルを貫く感じが、さすがみんなからニャン姐さんと呼ばれるだけある。
カッコいい! 猫系アバターが様になってる!
やっぱ猫と言えば気まぐれで、基本ツンとしてるところが魅力の一つだからね。
「わあ、ニャンコだー!」
アリスちゃんが嬉しそうにトアさんに近づいていく。
窓の位置が高いから、アリスちゃんが手を伸ばしても届かない。
でも、その手をトアさんが尻尾を揺らしてくすぐると、アリスちゃんは嬉しそうな声を上げた。
トアさん、子どもの扱いも上手! 過剰に触れ合おうとせずに、一定の距離を置いてるところは猫っぽいし。
「トアさん、そこで何してるんですかー」
ぷる君がぴょんと跳ねながら尋ねた。
二人は同じ第三陣のプレイヤーということもあって、それなりに親しくしているらしい。
とはいえ、海で漁をしてることが多いぷる君と、さっさと第二の街に行けるくらい強くなったトアさんは、一緒にバトルをしに行く機会はほとんどないようだけど。
「見てわかるでしょ? ──日向ぼっこよ」
「ふはっ、ほんとに猫さんみたいじゃないですかー」
ぷる君が体をプルプルと震わせて笑う。
トアさんは「今はほんとに猫だからねぇ」と言いながら、くわりとあくびをして、前足に顎を乗せて寝そべった。
窓際は日当たりが良さそうで、確かに日向ぼっこに最適な感じ。
なんなら、僕も一緒に日向ぼっこしたい。
「ニャンコさん!」
「アタイにはトアっていう名前があるんだよ」
「トアさん? わたしアリスよ。仲良くしましょ!」
「ふーん……いいよ。一緒に日向ぼっこする?」
アリスちゃんの態度が、トアさんに対してとぷる君に対してとでえらい違いだ。ずっとニコニコしてる。
まあ、それは仕方ないよね。ぷる君は第一印象が危ないタイプだったし。トアさんは魅力的なニャンコだし。
「日向ぼっこ……したいけど、きょうはこれから、にゃんちゃんのお友だちにあいに行くの」
「にゃんちゃんの友だち? ──ああ、さっき話してた、その穴蔵に住んでるあの子のことね」
トアさんはゆっくりと目を瞬いた後、壁にあいた穴に視線を向けた。どうやら、この穴の先にいるニャンコ(?)と知り合いらしい。
「トアさん! この先にいるのはどんな子なの?」
僕が情報を求めて問いかけると、トアさんが「ふふ、どんな子だったかな?」とはぐらかす感じで笑った。
うぅ、そういう風に言われたら、無理に聞けないよぉ。
でも、危険はなさそうってことはわかった。さすがに奥にいるのが危ない子だったら、トアさんが注意してくれるでしょ。
「──よし。行こう」
穴にヤバさを感じるのは変わらないけど、不安は減ったし、きっと大丈夫なはず。
そう考えて穴に向き合ったところで、後ろからスタッという音が聞こえた。振り返る前に、柔らかいものが一瞬僕の体にすりついて、すぐに離れていく──トアさんだ。
僕の隣に座ったトアさんが、小さく首を傾げて目を細めた。
「アタイも一緒に行こうか?」
「うん! 行こう!!」
トアさんの言葉に、僕は飛びつくような勢いで頷いた。トアさんは楽しそうに「ふはっ」と吹き出して笑う。
冒険はたくさんで行った方が楽しいもんねー、とルンルンする僕の傍では、ぷる君とアリスちゃんも嬉しそうにニコニコしてる。
このメンバーで、いざ穴蔵探検だ。
ニャンコ(?)の謎を解き明かすぞー!
「あのー、俺、見えてない感じですかね? ──もしかして、スケルトンだから、透けとるん? 俺、進化したからスケルトンじゃないんだけどネ!」
見慣れた骸骨が建物の角から僕たちを覗いてる気がするけど、そのギャグごと存在をスルーしたい。だから、そのまま透けてることにしてほしいな。
えぇ……この中に、ほんとに行くのぉ……?
躊躇いながらも、とりあえず近寄って観察してみる。
建物の外壁の一部が壊れて床と地面に穴があいてるけど、部屋の方に続く地上部は板で塞がれて、入れないようになってる。
穴があるところだけが、建物から隔離されて外から見えてる感じ。
吹き飛ばされたようになくなってる床(地面)には、地下へと伸びる歪な階段らしきものがあった。
階段の奥は見えない。この穴、すごく深いところまで続いてそう。
何かのせいで大穴があいちゃったから、とりあえず部屋に入れないように壁を内側に新設して、外から地下へ向かう通り道だけ残したように見える。
……絶対ヤバい原因でできてるよ、この穴!
振り返ってアリスちゃんをじぃっと見つめたら、きょとんとした顔で首を傾げられた。
僕が感じてるヤバさは、アリスちゃんには全然伝わってないらしい。危機感が仕事放棄しちゃってる。幼女だからしかたないけども。
「……ぷる君」
「はい! なんですか?」
声を掛けたら、ぷる君にキラキラとした目で見つめられた。
「先に行って、危険がないか確認してくれない?」
「え”!?」
濁点がついた「え」という驚きの声と共に、固まった表情で見つめられる。
僕はえへへっと笑いながら目を逸らした。ちょっとひどいこと言っちゃったかもー。
「──冗談だよ。ぷる君に押しつけたりなんてしないってー」
「で、ですよねー……?」
ちょっぴり本気でした。
まあ、そもそも街中で危ない目にあうことはそうそうないはずだから、任せたとしても大丈夫だとは思うんだけどね。
「……アンタたち、そこで何してるんだい?」
声を掛けられて振り向くと、近くにある家の窓手すりで寝そべりながら、三毛猫っぽい子が尻尾を揺らしてた。
長毛種だから、めっちゃ優雅な感じに見える。猫の種類としてはノルウェージャンフォレストキャットに近いかな。大きさもそれっぽいし。
というか、このニャンコさんは知り合いだね?
第三陣プレイヤーで森猫アバターのトアさん。
もふもふ愛ランドで初めて会ったけど、頼りがいのある姉御肌な感じなんだよ。
「トアさんだー! こんちゃー」
「こんにちは。いつもながら、モモは元気そうね」
「うん、僕とっても元気!」
僕が挨拶して「こんちゃー」と返ってこないのはレアだ。
簡単に流行りに乗らないで自分のスタイルを貫く感じが、さすがみんなからニャン姐さんと呼ばれるだけある。
カッコいい! 猫系アバターが様になってる!
やっぱ猫と言えば気まぐれで、基本ツンとしてるところが魅力の一つだからね。
「わあ、ニャンコだー!」
アリスちゃんが嬉しそうにトアさんに近づいていく。
窓の位置が高いから、アリスちゃんが手を伸ばしても届かない。
でも、その手をトアさんが尻尾を揺らしてくすぐると、アリスちゃんは嬉しそうな声を上げた。
トアさん、子どもの扱いも上手! 過剰に触れ合おうとせずに、一定の距離を置いてるところは猫っぽいし。
「トアさん、そこで何してるんですかー」
ぷる君がぴょんと跳ねながら尋ねた。
二人は同じ第三陣のプレイヤーということもあって、それなりに親しくしているらしい。
とはいえ、海で漁をしてることが多いぷる君と、さっさと第二の街に行けるくらい強くなったトアさんは、一緒にバトルをしに行く機会はほとんどないようだけど。
「見てわかるでしょ? ──日向ぼっこよ」
「ふはっ、ほんとに猫さんみたいじゃないですかー」
ぷる君が体をプルプルと震わせて笑う。
トアさんは「今はほんとに猫だからねぇ」と言いながら、くわりとあくびをして、前足に顎を乗せて寝そべった。
窓際は日当たりが良さそうで、確かに日向ぼっこに最適な感じ。
なんなら、僕も一緒に日向ぼっこしたい。
「ニャンコさん!」
「アタイにはトアっていう名前があるんだよ」
「トアさん? わたしアリスよ。仲良くしましょ!」
「ふーん……いいよ。一緒に日向ぼっこする?」
アリスちゃんの態度が、トアさんに対してとぷる君に対してとでえらい違いだ。ずっとニコニコしてる。
まあ、それは仕方ないよね。ぷる君は第一印象が危ないタイプだったし。トアさんは魅力的なニャンコだし。
「日向ぼっこ……したいけど、きょうはこれから、にゃんちゃんのお友だちにあいに行くの」
「にゃんちゃんの友だち? ──ああ、さっき話してた、その穴蔵に住んでるあの子のことね」
トアさんはゆっくりと目を瞬いた後、壁にあいた穴に視線を向けた。どうやら、この穴の先にいるニャンコ(?)と知り合いらしい。
「トアさん! この先にいるのはどんな子なの?」
僕が情報を求めて問いかけると、トアさんが「ふふ、どんな子だったかな?」とはぐらかす感じで笑った。
うぅ、そういう風に言われたら、無理に聞けないよぉ。
でも、危険はなさそうってことはわかった。さすがに奥にいるのが危ない子だったら、トアさんが注意してくれるでしょ。
「──よし。行こう」
穴にヤバさを感じるのは変わらないけど、不安は減ったし、きっと大丈夫なはず。
そう考えて穴に向き合ったところで、後ろからスタッという音が聞こえた。振り返る前に、柔らかいものが一瞬僕の体にすりついて、すぐに離れていく──トアさんだ。
僕の隣に座ったトアさんが、小さく首を傾げて目を細めた。
「アタイも一緒に行こうか?」
「うん! 行こう!!」
トアさんの言葉に、僕は飛びつくような勢いで頷いた。トアさんは楽しそうに「ふはっ」と吹き出して笑う。
冒険はたくさんで行った方が楽しいもんねー、とルンルンする僕の傍では、ぷる君とアリスちゃんも嬉しそうにニコニコしてる。
このメンバーで、いざ穴蔵探検だ。
ニャンコ(?)の謎を解き明かすぞー!
「あのー、俺、見えてない感じですかね? ──もしかして、スケルトンだから、透けとるん? 俺、進化したからスケルトンじゃないんだけどネ!」
見慣れた骸骨が建物の角から僕たちを覗いてる気がするけど、そのギャグごと存在をスルーしたい。だから、そのまま透けてることにしてほしいな。
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