もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

471.お散歩中も油断大敵

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 ルンルンと街を散策中。
 にゃんちゃんのお友だちに会いに行くんだよー。どんなニャンコ(?)なのか、気になるにゃー。

 あ、ちなみにぷる君もついてきてる。
 このお散歩で秘密の地図をゲットできるといいね? アリスちゃんにちょっと距離を置かれてるから、難度上がってると思うけど。

「モモさん、飛べるのいいですよねぇ」
「でしょー。楽だよ」
「僕は移動が大変です……」

 アリスちゃんの顔の高さで飛んでる僕とは違い、ぷる君は地面を跳ねて、必死に進んでる。
 レベルが上がる度に、ステータスの素早さを上げてるらしいけど、やっぱり歩くのとは感覚が違って難しいらしい。スライムのアバターって大変だねぇ。

 僕も、ゲームを始めてすぐの頃は、背の低さで苦労してたなぁ。わりとすぐに飛翔フライスキルには慣れたから、それでなんとかカバーできたけど。

 ──なんて思い出に耽っていたら、ぷる君の視線を感じた。僕の後頭部あたりを見つめてる。

「そんなに気になる?」
「小さい矢印がモモさんを追尾してるのが面白くて……くふふ」

 ぷる君が声を押し殺して笑う。そんなに面白いのかな?

 僕が持ってる称号【スライムキングを尻に敷く】の影響で、スライム種のプレイヤーには、僕に矢印がくっついているように見えるらしい。

 最初は僕のプリティなお尻を矢印が指してるっていう絶許案件だったんだけど、運営さんに修正されて、後頭部の位置に移動したみたいなんだよねぇ。
 公園にいる時にぷる君に教えてもらいました!

 正面からは見えないらしいし、隠しヒントって感じなのかな?
 称号持ちに踏まれたら、スライムプレイヤーはスライムキングに進化するルートがいずれ出てくるっていう話だし、運営さんがヒントを用意してるのはわからないでもない。

 でも、『なんで矢印なの?』とか『プレイヤーの称号持ちにもつける必要ある?』って、疑問はあるけどね。

「モモ、もうすぐだよ」
「お、結構奥まで来たねー。そろそろシークレットエリアに入るんじゃない?」

 まだぷる君がついて来られる範囲だけど、危うくなりそうな気配。
 ぷる君が期待した目でアリスちゃんを見上げてる。

 さて、どうなるかな~、と思いながら、一旦着地しようと高度を落としたところで──

「ふぎゃ!?」

 なんかぷよっとした感触が足の裏に当たった。
 ぎょっとしながら下を見ると、青緑色のぷよぷよがある……って、これ絶対ぷる君じゃん!

 驚いた後に呆れて脱力しちゃった。
 ここで気合いを入れて僕の着地点まで超高速移動する必要ある? がんばりどころを間違ってると思うよ。

 諦めてぷる君の上に座り込んだら、なんだか嬉しそうな声が聞こえてくる。

「フフフッ、隙ありです! やったー、ミッションクリアしましたよー」

 すごく喜ばれて、ちょっと悔しい。完全に気を抜いてたなぁ。
 ぷる君も、僕でミッションクリアを目指さず、異世界の住人NPCの称号持ちを探せばよかったのにぃ。

「こうなったら、僕のベッド扱いしてやるー」
「わわっ、べちゃっとなっちゃいますよぉ。地面が近ーい」

 寝転がって飛翔フライスキルを発動する。ぷる君が僕の重さ+加圧を受けて、どんどん平べったくなった。

 このスキル、高度を操作できるから、下向きに力を入れることもできるんだよね。最近発見した裏ワザです!
 ……こんなタイミングで使うのはなんかもったいない気がするけど。

「モモとぷる君、なかよしなんだねー」

 アリスちゃんに微笑ましげに見つめられた。
 はしゃいでる子どもを見守るような目を幼女にされて、ちょっぴり矜持が傷つく。
 僕、アリスちゃんより年上だもん……。

「仲良しですよー」

 嬉しそうに答えるぷる君に、僕は指をぷすぷすと刺した。八つ当たりです。
 まあ、普段から体を使った漁をするぷる君には、「くすぐったーい!」という程度の攻撃にしかならなかったけど。

 ……ケッ。
 今の僕はヤサグレモードだよ。

「モモの友だちはわたしの友だちだから、ぷる君にもこれあげるね」
「こ、これは……噂の秘密の地図……!」

 ぷる君がアリスちゃんから手渡された地図に震えながら喜ぶ。

「……アリスちゃん、お友だち判定の基準がユルユルすぎじゃない?」
「え? でも、なかよくなったし……モモのお友だちなら、だいじょうぶでしょ?」
「うーん、絶大な信頼! 嬉しいけど、ぷる君に報酬があるのは納得いかなーい!」

 僕はヤサグレモードなので、ぷる君の幸運を素直に喜んだりなんかしません。
 ぷる君をベシベシと叩いて抗議すると、下から「あははっ、モモさんのおかげです。ありがとうございますー」という声が聞こえてきた。

 ……素直に感謝されちゃったら、これ以上文句は言えないよ。僕が悪い子になっちゃう。

「仕方ないなぁ。ぷる君、あとでアリスちゃんに渡す料理用のお魚で勘弁してあげるよ!」
「了解しました! 最近、大きめの魚も獲れるようになったんですよー。お渡ししますね!」

 にこやかに要求を受け入れられたから、すべて水に流すことにした。
 いつまでもプンプンしてる僕は可愛くないからね。

 ぴょんっとぷる君から飛びおりて、また飛翔フライスキルを使う。

「ぷる君もシークレットエリアに入れるようになったなら、さっさと行こう!」
「はーい!」

 ふわーっと飛ぶ僕とぽよんと跳ぶぷる君の後ろ姿に、アリスちゃんが「あれ?」と声を掛けた。

「ふたりとも、いくのはこっちだよ?」
「え?」

 急停止。
 振り返ってアリスちゃんが指す方を見ると……

「──そこ、入っていいところなの?」

 木造の建物の壁に、ぽっかりと穴が開いていた。
 小規模な爆弾で壊されたみたいな歪さで、『こんな平和な街に暴力的な抗争の跡が……怖っ』と思って見なかったことにしてたんだよ。

「うん、このおくに、にゃんちゃんのお友だちがいるからね」

 ニコニコ笑ってるアリスちゃんを見てから、ぷる君と目を見合わせる。
 僕とぷる君のどちらもが『それ、ヤバいお友だちじゃないよね?』と不安を抱いたのは間違いない。

 えー、僕たち、この先に進んで、ちゃんと帰ってこられるかなー?

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