もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

470.もう秋ですよ

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 海イベントが終わって、ハロウィンイベントが始まったと思った途端、はじまりの街が紅葉で彩られた。

「ほあー、綺麗だねぇ」
「あかいねぇ」

 アリスちゃんと並んで、公園にあるもみじを見上げる。
 今日は一緒に遊んでるんだよ。

 やっぱり初めて仲良くなったお友だちと遊ぶのは楽しい。はじまりの街も、まだすべてを把握したわけじゃないから、散歩するだけで新発見がいっぱいだし。

「去年は赤くなってなかった気がする……」
「さいきんうえたんだってー」
「そうなんだ?」

 アリスちゃん曰く、旅人プレイヤーに少しでもこの世界に定着してもらうために、街は日々進化をしているらしい。
 つまりは……運営さん、めっちゃがんばってる、ってことだね!

「ねえ、モモ」
「なぁに?」

 もみじの木の下でピクニック。
 僕が作ったお菓子を食べながら、のんびりと休憩する。朝からたくさん歩き回ってたから、アリスちゃんが疲れちゃったかもしれないし。

「このあと、にゃんちゃんのお友だちのところに行く?」
「にゃんちゃんのお友だち……それはもしかしてニャンコ!?」

 思わず前のめりになった。
 にゃんちゃんはアリスちゃんの飼い猫(?)だから、そのお友だちも猫の可能性が高い。新たなもふもふだー!

「ニャンコ……うん、ニャンコ(?)かなぁ」
「待って、曖昧な感じなのはなんで??」

 首を傾げながらジュースを飲んでるアリスちゃんを凝視した。
 会いに行こうとしてるのはニャンコなの? ニャンコじゃないの? 結構重要だよ?

「あったらわかるよー」
「……そっかー。じゃあ、楽しみにしておくね」

 結局答えをもらえなかったから、謎のままだ。
 ニャンコ(?)の謎を解明するのは……数十分後だよ!
 ──なんて脳内で予告ナレーションを入れて気分を盛り上げる。

 楽しみだなー、ニャンコ(?)。
 まさか、リコみたいなよくわからない不思議生物ではないよね……?

 鰐と犬が合体した感じのリコの姿もカッコいいし、もふもふだし、いいと思うんだけど、今僕が求めてるもふもふはそれじゃないんだよなぁ。

 そんなことを考えながらお菓子を食べ、ほのぼのとしていたら、視界の端でボールのようなものが跳ねた気がした。
 ボール遊びしてる子がいるのかな? 公園だしねぇ──と思ったのも束の間、視線を向けて固まる。

「……ぷる君?」

 ボールじゃなかった。
 ぷる君が青緑色のボールのような体で、ぽよーんっと跳ねている。さすがスライム、まん丸だね。

「あ、モモさん、こんちゃー」
「こんちゃー。ぷる君、ここで何してるの?」

 僕に気づいて嬉しそうに近づいてきたぷる君をレジャーシートの上に誘導する。
 とりあえず、ぷる君もお菓子食べよ?

「わっ、美味しそうなお菓子だー。僕、マドレーヌ好きです!」
「食べていいよ」
「ありがとうございます! ──うまぁ……!」

 マドレーヌを食べて感動してるぷる君を眺めながら首を傾げる。
 僕が聞いたことへの答えはまだかなー?

「モモ、このプルプルはスラリンじゃないの?」
「スラリンじゃないよー。ぷる君っていう、僕の友だち……かな?」
「そこ、疑問符つけられるのはちょっぴり悲しいですぅ……」

 アリスちゃんにぷる君を紹介していたら、ぷる君が平べったく伸びた。
 急にそんな動きされたらビックリするよ。
 でも、最初は人間としての意識がどうとかって戸惑ってたのに、すっかりスライムの体に慣れたみたいだね。

「わたし、アリスよ。よろしくね」
「はい! お噂はかねがね……よろしくお願いします!」

 瞬時に丸い形態を取り戻して、嬉しそうに跳ねるぷる君に、アリスちゃんは目をパチパチと瞬かせてる。

「うわさ?」
「シークレットエリア開放ミッションの異世界の住人NPC……って、これ、本人に言っても伝わらないやつですかね?」

 キョトンとしてるアリスちゃんからソローッと目を逸らし、ぷる君が気まずそうに問いかけてくる。
 異世界の住人NPCに対して、ミッションとかのシステム関連の話題って、通じないことあるもんね。たぶん、アリスちゃんもわかってない。

「そうだねー。あのね、アリスちゃん。ぷる君が言ってるのは、アリスちゃんがお友だちにくれる秘密の地図のことだよ。他の人から、その話を聞いたんだと思うよ」
「そうなんです!」

 僕がアリスちゃんに伝わるように説明したら、ぷる君が輝きを取り戻した目でアリスちゃんを見上げた。
 アリスちゃんは「そっか。みんなにわたしてるもんね」と納得した様子。

「ぷる君もほしいの?」
「欲しいです!」

 ぷる君が食い気味に答える。そんなに欲しかったのか。
 まぁ、アリスちゃんって、連絡先を知らないと滅多に会えないレアキャラなところあるし。いる場所が固定されてないもんなぁ。せっかく会えたなら、報酬が欲しくなって当然かも。

「んー、でも、わたしとあなたは、まだともだちじゃないし……」
「グサッ……」
「おお、急に冷めた言葉でぷる君を突き刺すなんて、アリスちゃんやるぅ!」

 デローン、と伸びて倒れた様を表現するぷる君をスルーして、僕はアリスちゃんとハイタッチ。
 アリスちゃんはよくわかってない感じだけど、僕のもふもふなお手々をタッチして嬉しそう。

 秘密の地図をもらうのって、アリスちゃんと散歩するのが条件だった気がするし、ぷる君はまだ条件を達成できてないから、もらえないのはしかたないね。

「あ、そういえば、ぷる君に会ったの久しぶりだよね?」
「急にどうしたんです?」

 ふと思い出したことがあってぷる君に声をかけると、ヌルヌルとした動きで丸い形に戻った。その感じ、ちょっと気持ち悪いよ。

「矢印って、結局どうなったんだっけ?」
「今さら!? 修正されてから、何度か会ってますよね!」

 めっちゃ驚かれた。
 そうだねー。ぷる君は騒動を起こしたお詫びとして、漁の成果をプレゼントしてくれてたから、度々会ってたし、確かに今さらなんだけど。
 矢印は僕には見えないから、忘れてたんだよ。ぷる君も何も言わなかったからね。

「うん、今急に気になった」

 きっと、ぷる君に尋ねなさい──っていうお告げ(?)があったんだね。

 ニコニコしながらぷる君を見たら、ちょっぴり呆れた感じの目で「モモさんが電波ちゃんになるのは解釈違い……」と呟かれた。
 僕は電波ちゃんじゃないよ! たまに天啓を感じ取るだけ!

「……教えたら、僕の上に乗ってくれます?」
「えー……考えておくね?」
「それ、お断りって意味だったりしますよね!」

 ぷる君が「うわーん。ちょっと乗ってほしいだけなのにぃ。ついでにもふもふを体感させてほしいだけなのにぃ」と泣き真似をした。

 それを見て、アリスちゃんが「え……パパが近づいちゃダメっていつも言ってるタイプの子かな……?」とちょっと引いてるよ。
 ぷる君はすぐに態度を改めた方がいいと思う。
 このままだと、秘密の地図をもらえなくなっちゃうぞ!

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