もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
543 / 555
12章 美味しいもの大好き!

497.美食家もふもふ

しおりを挟む
 難しい話について悩むのは、未来の僕かルトに放り投げることにして。
 ハカセが満足するまで宝果ジュエルフルーツを観察し終えたタイミングで「そろそろ食べよう!」と宣言した。

 そもそも僕たちはこれを食べに来たんだもん。美味しそうだし、早く食べたい。

「そうだにゃー。宝果ジュエルフルーツは生で食べるも良し、加熱して食べるのも良しのフルーツらしいにゃ。数がたくさんあれば、色々試してみるんだけどにゃあ」

 ハカセはそんな説明をしつつ、「うぅむ?」と腕を組んで、最も美味しい宝果ジュエルフルーツの食べ方を悩んでいるようだ。

 宝果ジュエルフルーツのサイズは僕の頭ほど。
 フルーツとしては大きい方だけど、色んな調理法をできるほど余裕があるわけじゃない。

「とりあえず半分は生のまま食べて、残りを加熱してみる?」

 食べ方を色々と試してみた方が、グルメ大会のメニュー作りの参考になるし、と提案した。
 ハカセは「……それがいいかもにゃあ」と頷き、早速とばかりに包丁を取り出す。

「ハカセが調理してくれるの?」
「モモより上手いはずにゃ。我輩は美味しく食べたいにゃ」
「ちょっとひどい。僕だって、結構上手いはずなんだけどなぁ」
「モモは料理スキルのレベルが4程度じゃないかにゃ?」
「なんでわかったの!?」

 正確に料理スキルの習熟度を察知されて、ビックリしちゃった。
 ハカセは「我輩の観察眼はなんでもお見通しにゃあ」とちょっぴり誇らしそうに言う。

 素直に凄いと思うよ! まあ、全鑑定スキルを使えば、僕もできるような気もするけどね?

「料理スキルのレベルを上げるには、弟子入りするのが早いにゃ。がんばれにゃあ」
「なるほど……それはちょうどよかったかも?」

 情報をもらって、ふむふむと頷く。
 王城の料理長さんへの弟子入りをがんばらないとね。

 なんて話をしている内に、ハカセが宝果ジュエルフルーツをタンッと両断していた。
 上手い具合に果肉が半分になり、種子が外れてテーブルの上で揺れている。
 種子はダイヤモンドのようにキラキラと光る無色透明な丸い玉だった。

「らぴゅ(食べていぃ?)」
「ダメです!」

 手を伸ばしたラッタンから、種子をサッと取り上げて、アイテムボックスにしまった。
 これは農地に植えて育てるんだよ。食べ物じゃないよ。
 ラッタンは食べ物じゃなくても頬張れるから、取られないように気をつけなきゃ。

「こっちはみんなで分けるにゃー」

 僕たちのやり取りを微笑ましげに見守っていたハカセが、宝果ジュエルフルーツの半分を更に切り分けようとしたところで──

「……っ、美味しい匂いを察知、にゃ!」

 トトトッと何かが迫りくるような足音がしたかと思うと、三毛猫タイプの長靴猫ナガグツニャンコ族が研究室に入ってきた。

「面倒くさいヤツが来たにゃ……」

 ハカセがゲッソリとした顔をしてる。
 僕は宝果ジュエルフルーツに食いつくような目を向けている三毛猫くんをマジマジと見つめた。

 どこから来たんだか知らないけど、わりと遠いところから匂いを察知してきてそうな足音だった。
 すごい嗅覚だ。このニャンコ、実はワンコの擬態では?

 ──トトトッ!
 ──タタタッ!

 再び足音が聞こえた。
 しかも、今度は複数だ。もう次の展開が理解できた気がする。

「抜け駆けの気配を察知、にゃ!」
「美食がある気がしたにゃ!」
「甘い気配が漂ってるにゃ!」

 ……などなど。
 長靴猫ナガグツニャンコが次々にやって来る。
 あっという間に研究室がニャンコで埋め尽くされて、「にゃーにゃー」という声で満たされた。

 めっちゃもふもふな空間。
 もふもふ教のみんなが居合わせたら、きっと悶えながら喜んでただろうなー、とちょっと遠い目をしながら考える。

 僕ももふもふは好きだけど、この熱気には正直引いちゃいます。みんな、びーくーる。

「……なんか、もふもふがいっぱい集まってる気配を感じたにゃあ」

 最後にやって来たスコティッシュフォールドっぽい耳折れ長靴猫ナガグツニャンコが、控えめな感じで部屋を覗き込んでニコニコしてる。
 長靴猫ナガグツニャンコ族の中にもモフラーがいるのかぁ。

「きゅぃ(はわわ……もふもふに沈む!)」
「ぴぅ(もふもふが多すぎるよ……)」

 床にいたスラリンとユキマルが長靴猫ナガグツニャンコ族の大群に埋れそうになってる。
 慌てて救出してテーブルの上に避難してもらった。

 ピアとヒスイは宙に浮かび、ラッタンは「らぴゅ(もふもふにゃんにゃん♪)」と嬉しそうに長靴猫ナガグツニャンコ族の集団に飲まれてる。
 ……ラッタンが楽しそうでよかったよ。

「みんな騒がしいにゃ! この宝果ジュエルフルーツはモモのものにゃ! お前たちが簡単にありつけると思うんじゃないにゃ!」

 ハカセが一喝して、長靴猫ナガグツニャンコたちを黙らせる。
 でも、ほとんどの子が諦めきれない様子で、ジーッと宝果ジュエルフルーツを見つめていた。

 さすがに全員に食べさせてあげられる余裕はないなぁ。
 でも、ここでダメって断るのは、だいぶ気が咎める。美味しいものは、誰だって食べたくなるもんね。
 特に美食家と言われてる長靴猫ナガグツニャンコ族ならなおさらだろう。

「えーっと……これから宝果ジュエルフルーツを栽培する予定だから、たくさんできたらみんなにもあげるね?」

 唯一の解決策を提示すると、長靴猫ナガグツニャンコ族が一斉に僕を振り向いた。
 みんなキラキラした目をしてる。可愛いけど、こんなに多いと圧を感じるよ。

「この兎、凄くいい兎にゃ」
「慈愛精神溢れる兎にゃ」
「きっと美食の神がこの世界に降臨した姿にゃ」
「美食の神! 確かに、この兎、いい匂いがする気がするにゃ」
「美食の神兎モモ、にゃ。崇めるにゃあ」

 おっと? 話が変な方向に転がってる気がするぞ……?

 僕は頬が引き攣るのを感じながら、長靴猫ナガグツニャンコたちを眺める。

 一匹の長靴猫ナガグツニャンコ族が「はにゃー!」と平伏したかと思うと、次々にその連鎖が続き、あっという間に平伏ニャンコの群れが完成した。
 ……なんで???

 僕と目が合ったハカセが、何も言わずにソッと目を逸らす。

長靴猫ナガグツニャンコ族からの信仰を獲得しました。称号【美食の神】が贈られます〉

——————
称号【美食の神】
 世界が認める美食家長靴猫ナガグツニャンコ族が崇める存在は、きっと素晴らしい美食を与えられる神に違いない……
 そんな君にはこの称号が相応しいよ!

〈効果〉
 食べられるアイテムを作ると、必ず品質がワンランク上がる
——————

 称号をもらえたのは嬉しいけど、もふもふ神に加えて新たな神として扱われるのはノーセンキューだよ!

しおりを挟む
感想 2,531

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。