もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

498.ニャンコたちの美食

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 思いがけない称号の授与に、僕は遠くを見つめて現実逃避しちゃった。
 そんな状況でもアナウンスは止まらないんだけど。

長靴猫ナガグツニャンコ族との友好度が60%を超えました。スキル【錬成】の習得が可能になりました〉

 友好度アナウンスだぁ。わぁい。
 ……でも、神扱いされてるわりに、友好度低めじゃない? そこはボーナス的に、もっと大幅アップのご褒美が欲しかったな。

 ──なんて感想を心の中でぼやいたところで、アナウンスの内容を思い返して、ちょこっと首を傾げる。

「スキル【錬成】? 初耳なんだけど。特殊錬成じゃないんだ?」

 不思議に思いつつ、とりあえず詳細を確認してみた。

——————
スキル【錬成】
 生産用スキル
 複数の素材から一部の性質を選び出して、合成することができる
 また、一部のアイテムに、素材から抜き出した性質を付与することができる
 錬成に失敗すると、爆発が生じる
——————

 おっと……もしかして、特殊錬成の下位互換な感じのスキル?
 スキル名と『失敗すると爆発』っていうところが似てるし。

「ふむふむ……説明を読んでも、どういうスキルなのかよくわかんないな!」

 開き直りました。
 錬金術とは微妙に違うんだろうなぁ、とは理解できるんだよ。
 でも、素材から性質を抜き出して合成するってどういうこと??

「どうしたにゃ?」
「んー、ハカセ、錬成スキルの使い方、教えてくれる?」

 とりあえず聞いてみた。
 まだ習得可能になっただけで、使えるわけじゃないから、誰かに教えてもらわないとどうしようもないもんね。

 ハカセはパチパチと目を瞬かせてから、長靴猫ナガグツニャンコ族たちを眺め、口を開く。

「……同族が迷惑をかけそうだから、錬成スキルを教えてあげるくらいはいいにゃー」
「ありがとう! でも、迷惑はいらないかな!」

 僕が受け取り拒否するように両手を突き出すと、ハカセは乾いた笑みを浮かべた。

「走り出した突猪トッチョは容易に止まれないにゃあ……」
「それ、長靴猫ナガグツニャンコ族流のことわざ?」
「そうにゃ。どうやっても止められない勢いを、モンスターの突猪トッチョで比喩してるにゃ」

 つまり、僕が美食の神扱いされる流れは、変えられないんだね。
 遠い目をしてるハカセと同じく、僕も諦観の境地に至る。

 ……覚悟を決めるしかないなぁ。
 美食の神って何をしたらいいんだろう?

「にゃにゃ? 美食の神は錬成スキルを覚えたいにゃ? それならまずは、錬成で作った美食を味わうにゃ!」

 一番最初にこの部屋にやって来た三毛の長靴猫ナガグツニャンコが、キラッとした笑みを浮かべて、何かを僕に差し出してきた。

 見た目はポークステーキみたいだけど……?
 不思議に思いながらも、勧められるままに、一切れにフォークを刺して口に運ぶ。

「はぐはぐっ……ほわっ!?」

 口の中にジュワッとスープが溢れてきたような感覚があった。小籠包を食べた時と似てる。
 肉汁たっぷりのスープは複雑な味わいで、お肉はしっかりとした歯ごたえ。噛むほどに肉の甘さが口いっぱいに広がる。

「もぐもぐ……うまぁい!」

 飲み込むのがもったいないくらい美味しくて、ひたすらもぐもぐした。
 最終的に惜しみつつも飲み込んだけど。

 うぅ、ずっと味わっていたかった……。
 なんで美味しいものを楽しむ時間ってこんなに儚いんだろうね……。

 僕の感想に、長靴猫ナガグツニャンコたちが嬉しそうに頷く。

「当然にゃ。我輩が作ったんだからにゃあ」

 そう言いながらも誇らしげに胸を張る長靴猫ナガグツニャンコに続いて、他の子たちも「こっちも食べるにゃ!」と次々に料理を出してくれた。

 まるでプリンのような食感の煮魚。
 海鮮風の出汁が溢れるローストビーフ。
 ピザのような味のオムライス。
 綿菓子のような見た目・食感の餃子。
 ──などなど。

 見た目と味の違いが大きすぎて、頭がバグを起こしてる気がする。
 なんというか……普通にめちゃくちゃ美味しいんだけど、驚きが大きすぎるよ。
 最初に食べたメニューが一番、常識からあまり離れてなくて受け入れやすかったかも?

「ちなみに、この【綿餃子】は【綿菓子】から【見た目:ふわふわ】と【食感:溶ける】という性質を抜き出して、【餃子】から抜き出した【味わい:肉汁+野菜エキス】という性質と錬成してあるにゃ」
「なるほど???」

 ハカセが解説してくれたけど、ちょっと僕の理解を超えてます。
 理屈はわかったけど、どうしてそうなる? って感じ。
 そもそも、なんでそこを合成しようとしたの?

 長靴猫ナガグツニャンコ族の感性が不思議だ。
 美食を極めたら、普通じゃ満足できなくなるのかな。

 ……僕はその境地に至る前に、ちゃんと立ち止まろうと思う。
 常識って大切!

 それはともかく。
 錬成スキルのことをちょっと理解できた気がする。
 要は、アイテムを構成する性質を分けて取り出して、他のアイテムが持つ性質と合わせて、新たなアイテムにするってことだね。

「錬成スキルについては後でまた教えるにゃ。今は宝果ジュエルフルーツを食べるにゃあ」
「あ、そうだった!」

 長靴猫ナガグツニャンコの大群と錬成スキル情報ですっかり忘れてたけど、まだ宝果ジュエルフルーツを食べてなかったんだった。

 ハカセを切り分けてくれた宝果ジュエルフルーツをフォークに刺して口に運ぶ。

「……めっちゃ見られてて食べにくい」

 長靴猫ナガグツニャンコたちの視線を感じて、動きがギクシャクとしながらも、パクッと食べる。

 途端に口の中に溢れるラ・フランスに似た甘い香り・味とトロリとした食感に、頬が落ちそうになった。
 果汁たっぷりでうまうま。完熟具合が最高!
 長靴猫ナガグツニャンコたちの視線を忘れさせるくらい美味しいよ。

「ふあ~、甘ぁい……」

 フルーツを食べると、どうしてこんなに幸せになれるんだろうね?
 自然とニコニコしちゃうよ。

 スラリンたちも宝果ジュエルフルーツを食べてご機嫌な様子だ。
 ハカセは「ふむ……この甘さなら、あれと特殊錬成して……」なんて考察しながら味わってる。さすが博士なハカセ。

 生の宝果ジュエルフルーツを食べた後は、グラニュー糖を掛けてキャラメリゼしたものを食べた。

 パリッと香ばしい食感と甘み、加熱してトロッとプリンのような滑らか食感になった宝果ジュエルフルーツ……最高のスイーツだよ!

 生と加熱、どちらも美味しすぎてもっと食べたくなる。
 栽培へのモチベーションが上がりました!

「──グルメ大会用に、宝果ジュエルフルーツをたくさん栽培するぞ!」

 気合いを入れてから、ヨダレを垂らしてる長靴猫ナガグツニャンコたちを見て、目を逸らす。

 ……うん。みんなのためにも、たーくさん作るから、待っててね!

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