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12章 美味しいもの大好き!
502.壁は高い
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異空間(森)で錬成スキルの訓練を開始した。
スキルを覚えたし、混ぜ方のコツもちょっとは掴んだから、あんまり爆発しないかなーと思いきや──
──ドッカーン!
「いーやー!」
本日三度目の爆発に涙が出そうです。
これ、ちゃんとスキルの効果が出てる? 混ぜ方も成功した時と同じ感じにしたつもりなんだけどなぁ。
「……前と同じやり方じゃダメってこと? 素材や選ぶ性質によって混ぜ方が違うとか?」
それ、高難度すぎるぅ!
思い当たった原因に、ガックリと肩を落とす。
今回、素材には【白美桃】と【太陽みかん】を使ってみたんだ。農地でいっぱい採れる素材だから、錬成失敗しても大丈夫だなって思って。
でも、それが原因で失敗してるとしたら悲しすぎる。
かといって、桃と林檎ばかりで錬成したってつまらないしなぁ。
最終的には、錬金で作ったアイテムに、特殊な性質を付与できるまでになりたい。それならきっとルトも喜ぶし。
「むむぅ……一人だとしんどいからラッタンを喚ぼう……」
ラッタンはお手伝いスキルを持ってるし、生産作業のセンスを持ってるかも。
ということで召喚です。
「らぴゅ(ラッたん、登場ぅ♪)」
現れた途端、シュパッとポーズを取るのは誰に教わったんだろう?
前回の戦隊ごっこの影響かな。
気になりつつ、ラッタンにポンチョを着せて準備する。
「一緒に錬成しようねー」
「らぴゅ(わかったぁ。ラッたん、お歌担当ぅ)」
「……ラッタンは錬成しないの?」
「らぴゅ(してみてもいいよぉ)」
爆発を恐れず、ラッタンがニコニコと笑う。
それならやってもらいましょう! 決して、心が折れたわけじゃないよ。
「じゃあ、これ、【白美桃】と【太陽みかん】ね。選ぶ性質は白美桃が【味わい:たっぷり果汁が甘い】で、太陽みかんが【見た目:太陽のように輝く美しい橙色】ね」
さっき僕が失敗したレシピに挑戦してもらう。
もしラッタンが成功したら、それを参考にしよう。
「らぴゅ(任せてねぇ)」
ルンルンと歌いながら二つの果物を錬成壺に投げ込んだラッタンは、恐れることなく錬成杖でかき混ぜ始めた。一切躊躇いがない。
ラッタンが歌っているのは『もふもふ神さまはプリティ☆アイドル』だ。
「……お?」
歌が上手くなったなぁ、とほのぼのしながら眺めてたら、錬成壺から放たれる光の変化に気づいた。
僕が錬成してた時より、白っぽい光に変わってるぞ? これ、成功してる?
ポカーンとする僕の前で、ラッタンがラストの歌詞を歌う。
その素晴らしさを称えるように、錬成壺から一際綺麗な光が放たれて──
〈行動蓄積により、ラッタンが【錬成】スキルを習得しました〉
覚えるの早くない!?
僕の前回の苦労はなんだったの……。
ちょっぴり落ち込んじゃうけど、ラッタンがスキルを覚えてくれたのは正直助かるから喜ばなきゃ。
「らぴゅ(モモ、なんかできたぁ。食べていい?)」
首を傾げながら錬成壺の中に手を突っ込んだラッタンが、光沢のある橙色の玉のようなものを取り出して、目を輝かせる。
あ、これも丸いから、ラッタンの食欲が発動しちゃった!
「駄目です! 鑑定してから味見しよう!」
慌てて手を出すと、ラッタンは大人しく『はーい』と錬成アイテムを渡してくれた。
こういうところは素直でよし。
ありがとー、ラッタンは偉いねー、と褒めながら全鑑定スキルを発動する。
——————
【太陽桃】レア度☆☆☆☆
錬成によって作られた果物
見た目は太陽に似ているが、味は桃に近い
——————
……みかん要素どこいった?
輝く太陽桃に、心なしか近くにある雑草が嬉しそうにしてる気がする。光合成かな?
「とりあえず食べてみよっか」
包丁で切って二等分。
がんばってくれたラッタンに、たっぷりと食べさせてあげるぞ~。
……一発で成功されてショックだったとか、そんなことはないんだからね! なんて強がっちゃう。
僕もこれくらい簡単に成功したいよぉ。やっぱり歌いながら錬成するのが大切なのかな。どんな歌を選曲するか難しいけど。
的確に歌を選択できるなら、ラッタンの錬成センスが凄いってことだよなぁ。
「らぴゅ(あーん……うままぁ♡)」
太陽桃を食べたラッタンが嬉しそうに目を細めてステップを踏む。
全身で美味しさを表現してて可愛い。
僕も今は味見に集中することにして、パクッと食べてみる。
「はぐっ……うまうまー!」
ちょっぴりみかんっぽい爽やかな酸味が感じられる、ジューシーな桃だった。食感は熟した桃。見た目は半分になった光る橙色の玉だけど。
……中身と外側が全部同じ色なの、不思議だよ。
「選択しなかった性質は、錬成した時にランダムで選ばれるのかな?」
ハカセからは、錬成スキルのレベルが上がると、選べる性質の数が増えると聞いてる。
つまりそれは、より思い通りの錬成アイテムをゲットできるってことじゃないかな。
試しに、僕も太陽桃を作ってみた。
もちろん『もふもふ神さまはプリティ☆アイドル』の歌に合わせて錬成。すると──
「──お、成功した!」
まさかの一発成功。
やっぱり、錬成する素材と性質ごとに、混ぜるリズムが変わるのかも。それを偶然かどうかわからないけど、一回で正しいリズムを選べたラッタンがすごい!
爆発せずに成功できたことを喜びながら、全鑑定スキルを発動する。
見た目も説明も、ラッタン作の太陽桃と変わらなかった。
でも、味見してみると……
「みかん要素が強くなった?」
「らぴゅ(これも美味しいねぇ)」
ルンルンとしてるラッタンに「そうだねー」と返しつつ、僕は立てた仮説が正しい可能性が強まったことを理解して、しょんぼりと肩を落とした。
だって、錬成したアイテムをグルメ大会で出そうと思ったら、できる限り味の誤差をなくすためにランダム性を排除──つまり錬成スキルのレベルをめちゃくちゃ上げないといけないってことなんだよ。
「……地道にがんばるしかないかー」
とりあえず、ポンチョの耐久値と修復スキルの限界に挑むのを日課にしよう。
それくらいがんばれば、きっと爆発にも慣れるでしょー、あはは……。
スキルを覚えたし、混ぜ方のコツもちょっとは掴んだから、あんまり爆発しないかなーと思いきや──
──ドッカーン!
「いーやー!」
本日三度目の爆発に涙が出そうです。
これ、ちゃんとスキルの効果が出てる? 混ぜ方も成功した時と同じ感じにしたつもりなんだけどなぁ。
「……前と同じやり方じゃダメってこと? 素材や選ぶ性質によって混ぜ方が違うとか?」
それ、高難度すぎるぅ!
思い当たった原因に、ガックリと肩を落とす。
今回、素材には【白美桃】と【太陽みかん】を使ってみたんだ。農地でいっぱい採れる素材だから、錬成失敗しても大丈夫だなって思って。
でも、それが原因で失敗してるとしたら悲しすぎる。
かといって、桃と林檎ばかりで錬成したってつまらないしなぁ。
最終的には、錬金で作ったアイテムに、特殊な性質を付与できるまでになりたい。それならきっとルトも喜ぶし。
「むむぅ……一人だとしんどいからラッタンを喚ぼう……」
ラッタンはお手伝いスキルを持ってるし、生産作業のセンスを持ってるかも。
ということで召喚です。
「らぴゅ(ラッたん、登場ぅ♪)」
現れた途端、シュパッとポーズを取るのは誰に教わったんだろう?
前回の戦隊ごっこの影響かな。
気になりつつ、ラッタンにポンチョを着せて準備する。
「一緒に錬成しようねー」
「らぴゅ(わかったぁ。ラッたん、お歌担当ぅ)」
「……ラッタンは錬成しないの?」
「らぴゅ(してみてもいいよぉ)」
爆発を恐れず、ラッタンがニコニコと笑う。
それならやってもらいましょう! 決して、心が折れたわけじゃないよ。
「じゃあ、これ、【白美桃】と【太陽みかん】ね。選ぶ性質は白美桃が【味わい:たっぷり果汁が甘い】で、太陽みかんが【見た目:太陽のように輝く美しい橙色】ね」
さっき僕が失敗したレシピに挑戦してもらう。
もしラッタンが成功したら、それを参考にしよう。
「らぴゅ(任せてねぇ)」
ルンルンと歌いながら二つの果物を錬成壺に投げ込んだラッタンは、恐れることなく錬成杖でかき混ぜ始めた。一切躊躇いがない。
ラッタンが歌っているのは『もふもふ神さまはプリティ☆アイドル』だ。
「……お?」
歌が上手くなったなぁ、とほのぼのしながら眺めてたら、錬成壺から放たれる光の変化に気づいた。
僕が錬成してた時より、白っぽい光に変わってるぞ? これ、成功してる?
ポカーンとする僕の前で、ラッタンがラストの歌詞を歌う。
その素晴らしさを称えるように、錬成壺から一際綺麗な光が放たれて──
〈行動蓄積により、ラッタンが【錬成】スキルを習得しました〉
覚えるの早くない!?
僕の前回の苦労はなんだったの……。
ちょっぴり落ち込んじゃうけど、ラッタンがスキルを覚えてくれたのは正直助かるから喜ばなきゃ。
「らぴゅ(モモ、なんかできたぁ。食べていい?)」
首を傾げながら錬成壺の中に手を突っ込んだラッタンが、光沢のある橙色の玉のようなものを取り出して、目を輝かせる。
あ、これも丸いから、ラッタンの食欲が発動しちゃった!
「駄目です! 鑑定してから味見しよう!」
慌てて手を出すと、ラッタンは大人しく『はーい』と錬成アイテムを渡してくれた。
こういうところは素直でよし。
ありがとー、ラッタンは偉いねー、と褒めながら全鑑定スキルを発動する。
——————
【太陽桃】レア度☆☆☆☆
錬成によって作られた果物
見た目は太陽に似ているが、味は桃に近い
——————
……みかん要素どこいった?
輝く太陽桃に、心なしか近くにある雑草が嬉しそうにしてる気がする。光合成かな?
「とりあえず食べてみよっか」
包丁で切って二等分。
がんばってくれたラッタンに、たっぷりと食べさせてあげるぞ~。
……一発で成功されてショックだったとか、そんなことはないんだからね! なんて強がっちゃう。
僕もこれくらい簡単に成功したいよぉ。やっぱり歌いながら錬成するのが大切なのかな。どんな歌を選曲するか難しいけど。
的確に歌を選択できるなら、ラッタンの錬成センスが凄いってことだよなぁ。
「らぴゅ(あーん……うままぁ♡)」
太陽桃を食べたラッタンが嬉しそうに目を細めてステップを踏む。
全身で美味しさを表現してて可愛い。
僕も今は味見に集中することにして、パクッと食べてみる。
「はぐっ……うまうまー!」
ちょっぴりみかんっぽい爽やかな酸味が感じられる、ジューシーな桃だった。食感は熟した桃。見た目は半分になった光る橙色の玉だけど。
……中身と外側が全部同じ色なの、不思議だよ。
「選択しなかった性質は、錬成した時にランダムで選ばれるのかな?」
ハカセからは、錬成スキルのレベルが上がると、選べる性質の数が増えると聞いてる。
つまりそれは、より思い通りの錬成アイテムをゲットできるってことじゃないかな。
試しに、僕も太陽桃を作ってみた。
もちろん『もふもふ神さまはプリティ☆アイドル』の歌に合わせて錬成。すると──
「──お、成功した!」
まさかの一発成功。
やっぱり、錬成する素材と性質ごとに、混ぜるリズムが変わるのかも。それを偶然かどうかわからないけど、一回で正しいリズムを選べたラッタンがすごい!
爆発せずに成功できたことを喜びながら、全鑑定スキルを発動する。
見た目も説明も、ラッタン作の太陽桃と変わらなかった。
でも、味見してみると……
「みかん要素が強くなった?」
「らぴゅ(これも美味しいねぇ)」
ルンルンとしてるラッタンに「そうだねー」と返しつつ、僕は立てた仮説が正しい可能性が強まったことを理解して、しょんぼりと肩を落とした。
だって、錬成したアイテムをグルメ大会で出そうと思ったら、できる限り味の誤差をなくすためにランダム性を排除──つまり錬成スキルのレベルをめちゃくちゃ上げないといけないってことなんだよ。
「……地道にがんばるしかないかー」
とりあえず、ポンチョの耐久値と修復スキルの限界に挑むのを日課にしよう。
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