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4章 錬金術士だよ?
151.エリアボスに挑むよ!
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減っていたアイテムを補充したり、掲示板で迷彩小竜の情報を集めたり、仮想施設でスキルを鍛えたりしながら過ごして二日後。
ついに今日、迷彩小竜に挑むよ! 狙ってボス戦に行くの初めてだなぁ。
「そういや、モモは東のエリアボスと戦ったことないんだったな」
迷彩小竜がいるところに向かう途中、ルトがふと思い出した感じで言う。
「ないよー。確か、アルパカみたいなモンスターなんだっけ?」
「ああ。初クリアしたの、タマモだったはずだぞ」
「……タマモ、強いね?」
「だな。素材はたぶんお前の店に流れてる」
言われて気付いた。僕が東の牧草地エリアのボスが初討伐されたのを知ったのは、ボス素材を買い取ったからだったかも。まだ使ってないけど、結構良いアイテムになりそうなんだよね~。使うの楽しみ!
「ワールドアナウンスあったっけ?」
「あったぞ。お前はチェックしてないんだろうなとは思ってたけど」
「モモって、情報に疎いよねぇ」
ルトには呆れた感じでため息をつかれたし、リリには苦笑されちゃった。
でも、ログインする度に、ログアウト中の通知がズラーッと表示されたら、もういいやってなるでしょ。重要(赤マーク)なのはチェックしてるもん。
「迷彩小竜クリアできたら、情報流すからな」
「いいよー、僕はたぶんしないけど」
「わかってる」
当たり前みたいに頷かれた。掲示板に書き込むのって面倒くさいんだよね。それよりゲームを楽しみたいし。ルトは掲示板で交流するのも楽しんでる感じだし、おまかせします。
ルトって、普段はリリと僕以外とはあんまり交流しないくせに、掲示板での交流は好きって、僕と対照的な性格だよね。
「あ、そろそろエリアボスが近いかも」
不意にリリが声を潜めた。近くの木陰に身を隠して前方を窺うと、開けた場所が見える。その中央付近で、大きなトカゲというか、カメレオンみたいなモンスターが身を丸めて眠っていた。
「エリアボスのバトルフィールドは、あの開けた場所な。入った途端、あいつが目覚めてバトル開始だから、油断するなよ」
「はーい。まず来るのは、即死攻撃だっけ?」
ルトに教えられた迷彩小竜の動きを復習する。ランダムに攻撃を繰り出してくるらしいけど、一番最初の攻撃が即死効果を持ってるのは確定だって聞いた。
「ああ。だから、青乳牛のお守りは手元に持ってろ」
「りょうかい」
三人で青乳牛のお守りを持ってたら、見た目がメルヘン。特にクールな感じの装備のルトがぬいぐるみを抱えてる姿が、なんか笑える。笑っちゃったら、絶対拗ねるだろうから我慢するけど。
「……即死攻撃の予備動作は、『身を伏せて口を開ける』だ。その五秒後には攻撃が来るから、毎回青乳牛のお守りを用意しろ。極力、セーフゾーンの木は使わずにいこう」
「アイテムが尽きた時の、最後の手段だからね」
「お守り、たくさん用意したから、遠慮なく使っちゃって」
エリアボスのバトルフィールドに五本ある木は、後ろに隠れれば即死攻撃を避けられる。でも、使ったら消滅しちゃうから、大切に使わないと。青乳牛のお守りを出し忘れて、咄嗟に隠れるのはオッケーって事前に決めてる。
「ありがとな。そんで木魔術での攻撃の予備動作はない。でも、木が生えてくる三秒前に地面が盛り上がるから、察知したら全力で回避だ。ダメージ負ったら、即回復。リリが余裕あればスキルで回復してもらうけど、アイテムを使う前提がいいな」
「回復アイテムもたくさん用意してあるよー」
二人にも配布した回復アイテムは、僕の称号の影響で効果がアップしてる。役立ってくれるといいなー。
「ステルスからの攻撃は、ペイントボールの効果次第だけど、おそらく避けられるようになると思う。ま、気をつけてくれ。相手に体力を吸収されて、回復させるのは避けたいからな」
「見逃さなければなんとかなりそうだね。適宜、ペイントボールを追加で投げて、効果が切れないようにするよ」
「私も隙を見て投げるから、大丈夫でしょ」
リリとニコッと微笑み合う。ボス戦目前で、ちょっと緊張してたけど、気分がほぐれた。
「だな。――そんな感じだ。そろそろ行くか」
「うん。誰もエリアボスに挑んでないみたいだしね」
「お守りの消費数が多くて、みんな頻繁に挑めるわけじゃないみたいだからねー。迷彩小竜クリアできたら、モモがお店で売ってあげるんでしょ? そうしたら、気軽に挑戦できるようになるかも」
「そうなるといいね」
雑談して適度にリラックスしながら歩を進める。開けたところに踏み込んだ途端に、迷彩小竜の目蓋がゆっくりと開いた。
近くで見ると、山みたいだ。大きいよー。というか、僕たちが小さいのかな?
小象に挑むより無理な感じがするのは、迷彩小竜から伝わってくる威圧感のせいかも。
「……緊張する」
「お前が会ったって言ってた、古竜ほどじゃねぇだろ」
ルトに言われて、確かにそうだと思った。イグニスさんの威圧感は、もはや目で見えるくらいだったし。それと比べたら弱いね。
「なんかクリアできる気がしてきた」
「気がする、じゃなくて、クリアするんだよ」
ニッと強気に笑ったルトは、カッコいい。バトル慣れしてる感じだ。僕もルトみたいにカッコよくなりたい!
「そうだね! 強い心でがんばろー!」
「うん、モモの可愛さで緊張がほぐれたよ」
「待って? カッコいいって思われたいんだけど!」
リリに訴えたけど、答えはなかった。それより先に、迷彩小竜が動いたから、会話する余裕はなくなったんだ。
迷彩小竜が僕たちを見据えて、身を屈めて口を大きく開く。
それを見ながら、青乳牛のお守りをぎゅっと強く抱きしめた。これがあるから大丈夫のはず。だけど、鋭くて大きな歯がたくさん見えて、怖いよぉ。
――ガァアアッ!
森全体を震わせそうなほど大きな声が響いた。衝撃波で吹き飛ばされそうな気がして、グッと足に力を込める。
青乳牛のお守りがボロッと崩れて消滅した。僕はダメージを負ってない。お守りはしっかりと役目を果たしてくれたんだ。
「……やるぞ」
「うん!」
「絶対クリアしようね!」
「当然だろ」
返ってきた言葉に、僕もルトに合わせてにこりと笑う。僕たち三人で挑んでるんだから、きっと大丈夫だね。
ついに今日、迷彩小竜に挑むよ! 狙ってボス戦に行くの初めてだなぁ。
「そういや、モモは東のエリアボスと戦ったことないんだったな」
迷彩小竜がいるところに向かう途中、ルトがふと思い出した感じで言う。
「ないよー。確か、アルパカみたいなモンスターなんだっけ?」
「ああ。初クリアしたの、タマモだったはずだぞ」
「……タマモ、強いね?」
「だな。素材はたぶんお前の店に流れてる」
言われて気付いた。僕が東の牧草地エリアのボスが初討伐されたのを知ったのは、ボス素材を買い取ったからだったかも。まだ使ってないけど、結構良いアイテムになりそうなんだよね~。使うの楽しみ!
「ワールドアナウンスあったっけ?」
「あったぞ。お前はチェックしてないんだろうなとは思ってたけど」
「モモって、情報に疎いよねぇ」
ルトには呆れた感じでため息をつかれたし、リリには苦笑されちゃった。
でも、ログインする度に、ログアウト中の通知がズラーッと表示されたら、もういいやってなるでしょ。重要(赤マーク)なのはチェックしてるもん。
「迷彩小竜クリアできたら、情報流すからな」
「いいよー、僕はたぶんしないけど」
「わかってる」
当たり前みたいに頷かれた。掲示板に書き込むのって面倒くさいんだよね。それよりゲームを楽しみたいし。ルトは掲示板で交流するのも楽しんでる感じだし、おまかせします。
ルトって、普段はリリと僕以外とはあんまり交流しないくせに、掲示板での交流は好きって、僕と対照的な性格だよね。
「あ、そろそろエリアボスが近いかも」
不意にリリが声を潜めた。近くの木陰に身を隠して前方を窺うと、開けた場所が見える。その中央付近で、大きなトカゲというか、カメレオンみたいなモンスターが身を丸めて眠っていた。
「エリアボスのバトルフィールドは、あの開けた場所な。入った途端、あいつが目覚めてバトル開始だから、油断するなよ」
「はーい。まず来るのは、即死攻撃だっけ?」
ルトに教えられた迷彩小竜の動きを復習する。ランダムに攻撃を繰り出してくるらしいけど、一番最初の攻撃が即死効果を持ってるのは確定だって聞いた。
「ああ。だから、青乳牛のお守りは手元に持ってろ」
「りょうかい」
三人で青乳牛のお守りを持ってたら、見た目がメルヘン。特にクールな感じの装備のルトがぬいぐるみを抱えてる姿が、なんか笑える。笑っちゃったら、絶対拗ねるだろうから我慢するけど。
「……即死攻撃の予備動作は、『身を伏せて口を開ける』だ。その五秒後には攻撃が来るから、毎回青乳牛のお守りを用意しろ。極力、セーフゾーンの木は使わずにいこう」
「アイテムが尽きた時の、最後の手段だからね」
「お守り、たくさん用意したから、遠慮なく使っちゃって」
エリアボスのバトルフィールドに五本ある木は、後ろに隠れれば即死攻撃を避けられる。でも、使ったら消滅しちゃうから、大切に使わないと。青乳牛のお守りを出し忘れて、咄嗟に隠れるのはオッケーって事前に決めてる。
「ありがとな。そんで木魔術での攻撃の予備動作はない。でも、木が生えてくる三秒前に地面が盛り上がるから、察知したら全力で回避だ。ダメージ負ったら、即回復。リリが余裕あればスキルで回復してもらうけど、アイテムを使う前提がいいな」
「回復アイテムもたくさん用意してあるよー」
二人にも配布した回復アイテムは、僕の称号の影響で効果がアップしてる。役立ってくれるといいなー。
「ステルスからの攻撃は、ペイントボールの効果次第だけど、おそらく避けられるようになると思う。ま、気をつけてくれ。相手に体力を吸収されて、回復させるのは避けたいからな」
「見逃さなければなんとかなりそうだね。適宜、ペイントボールを追加で投げて、効果が切れないようにするよ」
「私も隙を見て投げるから、大丈夫でしょ」
リリとニコッと微笑み合う。ボス戦目前で、ちょっと緊張してたけど、気分がほぐれた。
「だな。――そんな感じだ。そろそろ行くか」
「うん。誰もエリアボスに挑んでないみたいだしね」
「お守りの消費数が多くて、みんな頻繁に挑めるわけじゃないみたいだからねー。迷彩小竜クリアできたら、モモがお店で売ってあげるんでしょ? そうしたら、気軽に挑戦できるようになるかも」
「そうなるといいね」
雑談して適度にリラックスしながら歩を進める。開けたところに踏み込んだ途端に、迷彩小竜の目蓋がゆっくりと開いた。
近くで見ると、山みたいだ。大きいよー。というか、僕たちが小さいのかな?
小象に挑むより無理な感じがするのは、迷彩小竜から伝わってくる威圧感のせいかも。
「……緊張する」
「お前が会ったって言ってた、古竜ほどじゃねぇだろ」
ルトに言われて、確かにそうだと思った。イグニスさんの威圧感は、もはや目で見えるくらいだったし。それと比べたら弱いね。
「なんかクリアできる気がしてきた」
「気がする、じゃなくて、クリアするんだよ」
ニッと強気に笑ったルトは、カッコいい。バトル慣れしてる感じだ。僕もルトみたいにカッコよくなりたい!
「そうだね! 強い心でがんばろー!」
「うん、モモの可愛さで緊張がほぐれたよ」
「待って? カッコいいって思われたいんだけど!」
リリに訴えたけど、答えはなかった。それより先に、迷彩小竜が動いたから、会話する余裕はなくなったんだ。
迷彩小竜が僕たちを見据えて、身を屈めて口を大きく開く。
それを見ながら、青乳牛のお守りをぎゅっと強く抱きしめた。これがあるから大丈夫のはず。だけど、鋭くて大きな歯がたくさん見えて、怖いよぉ。
――ガァアアッ!
森全体を震わせそうなほど大きな声が響いた。衝撃波で吹き飛ばされそうな気がして、グッと足に力を込める。
青乳牛のお守りがボロッと崩れて消滅した。僕はダメージを負ってない。お守りはしっかりと役目を果たしてくれたんだ。
「……やるぞ」
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