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7章 世界が広がっていくよ
270.悟りの境地?
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たくさん火炎結晶を採って、はじまりの街の冒険者ギルドで「古竜のイグニスさんからお騒がせしたお詫びです!」と押し付けてきた。
久しぶりに会った受付嬢のロアナさんが目を白黒させてた気がする。でも、これでどうにかなるでしょ? そういうことにして?
「さぁて、そろそろホームに帰ろっかなぁ」
夕暮れの空を見上げて呟いたところで、後ろから足音が聞こえてきた。
「モモ」
「あれ? ルトだー。こんちゃー」
「……はぁ。のんきな面を見て気が抜けた。つーか、連絡送ってきたなら、ちゃんと返信までしろよ」
「あ、通知切ってたんだった。そういえば、連絡したねー」
ルトに連絡した後で、イグニスさんの噴火――そう言っていいレベルだったと思う――があったから、すっかり忘れてた。
今さらながら、返信を確認する。
――――――
ルト『……言いたいことがいろいろあるから会いに行く。今どこ?』
――――――
なんか怖いんですけど。『いろいろ』の部分に含みがあるよね?
恐る恐るルトを見上げたら、予想外に穏やかな表情だった。
「――もしかして、今回は怒ってない?」
「一周回って落ち着いた」
「なるほどー……良かったネ!」
「ソウダナ」
ハハハー、と二人揃って作りもの感満載の笑い声を上げる。
ちょっと微妙な空気の後、ルトが「まぁ、マジで――」と言葉を続けた。
「わりと、モモがやることなすことの影響力の強さに慣れてきた気がする。なんなら、サクノ山で凄まじい火って情報を聞いて、当たり前のようにモモがこの辺にいるって考えて来たし」
「あ、だからここで会ったんだ?」
返信してないのに、居場所がバレたのはなんでだろうなーって思ってたんだよね。謎は全て解けたっ!
「リリ経由で、モモが海で遊んでたことも知ってるぞ。その爆笑必須の杖も、見る前に覚悟できてたから、生温く観察できるしな……」
「待って? 誰が見てたの? そんな情報まで!?」
海では周囲に誰もいないのを確認したのに!
驚く僕を、ルトがちょっと憐れんだ感じで見つめてくる。
「……あれだ。もふもふ教おそるべし、って感じで」
「それ、なんの答えにもなってないよ」
「んー、いろんなスキルがあるよな? ほら、ソウタのステルスとか」
「ステルス系のスキルを使ってまで僕を観察してる人がいるってこと!?」
それ、ストーカーでは?
僕がおののいていると、ルトは「今までと大して変わらないだろ? 話しかけてくるわけじゃないし、存在感消してるし」と言う。大いに違うと思う!
「嫌ならそう言えば? きっとやめると思うぞ」
「……うーん、そうだね。一応タマモに伝えとく」
僕を見守ってくれるのはいいけど、ストーカーはやめてください。
タマモに伝えたら、どうにかしてくれるでしょ。最近頼りすぎてるなー。
「それで、情報。送ってきたやつで全部か?」
「えっとー……あ、追加でスタ島っていう場所のこと聞いたよ。そこも創世神と関わりがあるんだって」
「島?」
目を丸くしたルトが、少し考える表情を浮かべる。
「――そういや、王都から海の方に進んだら、『船着き場』があるって聞いたな」
「え、海近いの?」
「ああ。近いって言っても、第三の街と王都くらい離れてるけど。船着き場も閉まってたらしいし」
「なるほどー。じゃあ、そこからスタ島に行く船が出る可能性はあるけど、現時点では行けないってことかぁ」
「だな。たぶん、なんらかのミッションをクリアする必要があるんだろ」
ルトの目がキラキラと輝いてる。楽しそうだ。バトルだけじゃなく、こうして攻略情報を集めるのも好きなんだろうねぇ。
僕は難しいことを考えるの苦手だから、流れに身を任せるけど。
「情報は掲示板に流しておいてくれる?」
「りょ。でも、そろそろモモが情報源だってバレるかも」
「なんで?」
僕自身で発信しないのに?
そう思って僕が首を傾げたら、ルトは軽く肩をすくめた。
「俺とかタマモとか、モモに近いって知られてる人間が情報を落とすから?」
「ルトって気づかれてるんだ?」
「わりと、俺は攻略組のメンツとも情報交換してるし、文体の雰囲気で伝わるんだろ」
「そこはがんばって隠そうよ」
「めんどくさい」
そこでめんどくさがるのはどうかと思うよー!
まぁ、でも、僕が情報源だってバレたところで、さらなる情報を求めて詰め寄ってこられないならそれでいいや。ルトも「そこは大丈夫」って言ってくれたし。
「そういや、サクノ山の火の真相は?」
「イグニスさんに辛い料理あげたら火を噴いた」
「……そっか。うん、モモらしいな」
悟った顔してない?
遠くを見るような眼差しで、ごく自然な感じで手を伸ばしてきたから避け損ねた。
「ぷぎゃっ」
「あー……もふもふ、もっちもち」
ほっぺたをモミモミされてます。出たな、ルトの『頬揉み』攻撃! 気持ちいいのはわかるし、それで癒やされてるなら別にいいけど。というか、もう慣れた。
もーみもーみ、と頬を揉まれてる。
これ、道端での行動だから、結構街の人からの視線を感じる。微笑ましげだよ。ルト、こういうの恥ずかしがるタイプじゃなかった?
「っ……そろそろログアウトしねぇと」
「正気に戻ったね」
パッと手を離したルトに代わり、自分の頬をさする。うん、変形してない。いつも通りのふわふわもちもち!
「とりあえず、情報は流しとく。創世神関連のミッションがあるんだろ? それで新展開があったら教えてくれ」
「うん。まぁ、あったら、ね」
「モモのことだからあるだろ」
僕に対する厚い信頼! 応えなきゃって気分になるね!
けど、ラファイエットさんの依頼に対する報酬って王城パーティーへの招待だったんだよなぁ。ルトが好みそうな情報があるか微妙。
共用のホームに帰るというルトを、ふりふりと手を振って見送る。
僕はまだ時間があるし、ラファイエットさんに連絡をとるところから始めようかな。
久しぶりに会った受付嬢のロアナさんが目を白黒させてた気がする。でも、これでどうにかなるでしょ? そういうことにして?
「さぁて、そろそろホームに帰ろっかなぁ」
夕暮れの空を見上げて呟いたところで、後ろから足音が聞こえてきた。
「モモ」
「あれ? ルトだー。こんちゃー」
「……はぁ。のんきな面を見て気が抜けた。つーか、連絡送ってきたなら、ちゃんと返信までしろよ」
「あ、通知切ってたんだった。そういえば、連絡したねー」
ルトに連絡した後で、イグニスさんの噴火――そう言っていいレベルだったと思う――があったから、すっかり忘れてた。
今さらながら、返信を確認する。
――――――
ルト『……言いたいことがいろいろあるから会いに行く。今どこ?』
――――――
なんか怖いんですけど。『いろいろ』の部分に含みがあるよね?
恐る恐るルトを見上げたら、予想外に穏やかな表情だった。
「――もしかして、今回は怒ってない?」
「一周回って落ち着いた」
「なるほどー……良かったネ!」
「ソウダナ」
ハハハー、と二人揃って作りもの感満載の笑い声を上げる。
ちょっと微妙な空気の後、ルトが「まぁ、マジで――」と言葉を続けた。
「わりと、モモがやることなすことの影響力の強さに慣れてきた気がする。なんなら、サクノ山で凄まじい火って情報を聞いて、当たり前のようにモモがこの辺にいるって考えて来たし」
「あ、だからここで会ったんだ?」
返信してないのに、居場所がバレたのはなんでだろうなーって思ってたんだよね。謎は全て解けたっ!
「リリ経由で、モモが海で遊んでたことも知ってるぞ。その爆笑必須の杖も、見る前に覚悟できてたから、生温く観察できるしな……」
「待って? 誰が見てたの? そんな情報まで!?」
海では周囲に誰もいないのを確認したのに!
驚く僕を、ルトがちょっと憐れんだ感じで見つめてくる。
「……あれだ。もふもふ教おそるべし、って感じで」
「それ、なんの答えにもなってないよ」
「んー、いろんなスキルがあるよな? ほら、ソウタのステルスとか」
「ステルス系のスキルを使ってまで僕を観察してる人がいるってこと!?」
それ、ストーカーでは?
僕がおののいていると、ルトは「今までと大して変わらないだろ? 話しかけてくるわけじゃないし、存在感消してるし」と言う。大いに違うと思う!
「嫌ならそう言えば? きっとやめると思うぞ」
「……うーん、そうだね。一応タマモに伝えとく」
僕を見守ってくれるのはいいけど、ストーカーはやめてください。
タマモに伝えたら、どうにかしてくれるでしょ。最近頼りすぎてるなー。
「それで、情報。送ってきたやつで全部か?」
「えっとー……あ、追加でスタ島っていう場所のこと聞いたよ。そこも創世神と関わりがあるんだって」
「島?」
目を丸くしたルトが、少し考える表情を浮かべる。
「――そういや、王都から海の方に進んだら、『船着き場』があるって聞いたな」
「え、海近いの?」
「ああ。近いって言っても、第三の街と王都くらい離れてるけど。船着き場も閉まってたらしいし」
「なるほどー。じゃあ、そこからスタ島に行く船が出る可能性はあるけど、現時点では行けないってことかぁ」
「だな。たぶん、なんらかのミッションをクリアする必要があるんだろ」
ルトの目がキラキラと輝いてる。楽しそうだ。バトルだけじゃなく、こうして攻略情報を集めるのも好きなんだろうねぇ。
僕は難しいことを考えるの苦手だから、流れに身を任せるけど。
「情報は掲示板に流しておいてくれる?」
「りょ。でも、そろそろモモが情報源だってバレるかも」
「なんで?」
僕自身で発信しないのに?
そう思って僕が首を傾げたら、ルトは軽く肩をすくめた。
「俺とかタマモとか、モモに近いって知られてる人間が情報を落とすから?」
「ルトって気づかれてるんだ?」
「わりと、俺は攻略組のメンツとも情報交換してるし、文体の雰囲気で伝わるんだろ」
「そこはがんばって隠そうよ」
「めんどくさい」
そこでめんどくさがるのはどうかと思うよー!
まぁ、でも、僕が情報源だってバレたところで、さらなる情報を求めて詰め寄ってこられないならそれでいいや。ルトも「そこは大丈夫」って言ってくれたし。
「そういや、サクノ山の火の真相は?」
「イグニスさんに辛い料理あげたら火を噴いた」
「……そっか。うん、モモらしいな」
悟った顔してない?
遠くを見るような眼差しで、ごく自然な感じで手を伸ばしてきたから避け損ねた。
「ぷぎゃっ」
「あー……もふもふ、もっちもち」
ほっぺたをモミモミされてます。出たな、ルトの『頬揉み』攻撃! 気持ちいいのはわかるし、それで癒やされてるなら別にいいけど。というか、もう慣れた。
もーみもーみ、と頬を揉まれてる。
これ、道端での行動だから、結構街の人からの視線を感じる。微笑ましげだよ。ルト、こういうの恥ずかしがるタイプじゃなかった?
「っ……そろそろログアウトしねぇと」
「正気に戻ったね」
パッと手を離したルトに代わり、自分の頬をさする。うん、変形してない。いつも通りのふわふわもちもち!
「とりあえず、情報は流しとく。創世神関連のミッションがあるんだろ? それで新展開があったら教えてくれ」
「うん。まぁ、あったら、ね」
「モモのことだからあるだろ」
僕に対する厚い信頼! 応えなきゃって気分になるね!
けど、ラファイエットさんの依頼に対する報酬って王城パーティーへの招待だったんだよなぁ。ルトが好みそうな情報があるか微妙。
共用のホームに帰るというルトを、ふりふりと手を振って見送る。
僕はまだ時間があるし、ラファイエットさんに連絡をとるところから始めようかな。
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