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7章 世界が広がっていくよ
278.王城パーティー
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スタ島までの船旅は、ゲーム内時間で四日かかるらしい。途中で転移スキルを使っての移動はできないそうなので、友だちに遠出する連絡をしたり、農地の手入れをしたり、準備することはたくさんあった。
「んー……大体大丈夫のはず!」
うんうん、と頷いて確認して、服を着替える。
着たのは白の燕尾服っぽいジャケット。正装です。リリが作ってくれたんだ。スカーフタイがおしゃれ。
今日は王城パーティーに参加するから、ちゃんとした格好しなくちゃね。見た目がモンスターだから、あんまり気にしなくても大丈夫そうだけど。
トテトテと歩いて、王城前まで来た。このまま入れるのかな?
「——パーティー参加者の方ですか?」
王城前の門に立ってる騎士さんが話しかけてきた。あんまり驚いた顔をしてない。
「そうだよー。冒険者のモモです!」
「ラファイエット様より伺っております。こちらへどうぞ」
「ありがとー。ラファイエットさん、話しててくれたんだね」
「モンスター種族の方が参加されるのは珍しいことですので、失礼があってはいけませんから」
僕の歩調に合わせて歩く騎士さんがにこりと微笑み、パーティー会場まで案内してくれた。
この騎士さん、貴族っぽい雰囲気なのに気遣い上手で優しい!
「——ラファイエット様のお客様だと知られていますので、変な方に話しかけられることはないと思いますが、困ったことがありましたらお声がけください」
パーティー会場に入る直前に言われた。
「変な方?」
「貴族には様々な性格の方がいらっしゃいますので……」
「なるほど! 難癖つけてくる人とか、偉ぶってる人とかってことだね」
騎士さんが濁した言葉を明確にしたら、困った顔をされた。でも否定されないから僕の解釈は間違ってないんだろう。
そっかぁ。そういう変な人もいるのかー。
僕が知ってる王侯貴族って、ベラちゃんとかラファイエットさんとかだから、あんまりそういう悪い印象はなかったんだけど。
あ、でも、レイドイベントで捕まえた犯人は没落貴族だったな。ああいう人が他にもいるなら、絡まれる可能性はある。
そういう時は遠慮なく騎士さんたちを頼ろう!
うんうん、と頷きながら会場に入ったら、たくさんの視線を感じた。まぁ、見られるのは慣れてる。みんなドレスや正装姿っていうのは違和感あるけど。
お上品な雰囲気だー。おもしろーい。
「あ、料理発見!」
きょろきょろと周囲を見渡したら、壁際にたくさんのお皿が並んでるのがわかった。ふわーと飛んで行くと、ちょっとどよめきが起きた気がする。
僕、見た目通り飛べるんだよ。観賞するのはオッケーです。
料理は豪勢な洋風メニューだった。第三の街でのパーティー料理とは全然違うなぁ。
「オムレツ美味しそー」
「うむ、美味いのは間違いないぞ。ウチの自慢のシェフが作ってるからな」
「そうなんだ。じゃあ食べてみる!」
テーブル傍に立っていたメイドさんがぎこちない感じで取り分けてくれたところで、ふと首を傾げる。
僕、誰と話してるんだっけ?
そっと横を見たら、ザ・王様って感じの服を着た男の人がニコニコしながら僕を見てた。ラファイエットさんと似た面影があって、全身から豪快で溌剌としたオーラが放たれてる感じがする。
「えっと……こんばんは、僕モモです」
「礼儀正しいな! 俺はレオナルド。この国の王だ」
「やっぱり! あ、失礼な言い方しちゃった」
「気にするな。オムレツのソースのおすすめはチーズとトマトのあいがけだぞ」
「美味しそう。それでお願いします!」
メイドさんが二種類のソースをかけてくれた。ありがとう。
王様はなんだか気安い雰囲気だったから、気にせず勧められるままにオムレツを口に運ぶ。
「——うまー! トロトロふわふわだー」
「だろう?」
今まで食べたオムレツの中で一番美味しいかもしれない。オムレツってこんなに美味しくなるんだ?
誇らしげな王様は、自分の城のシェフが褒められたと思って喜んでるんだろうな。冒険者でモンスターな見た目の僕のことを気にしてないみたいだし、朗らかで良い人。
魔術学院の受付さんが『少年みたい』って感じのこと言ってたけど、確かにピッタリな表現だ。ラファイエットさんのお父さんなら、それなりの年齢だろうに、すごく若々しく感じる。
「美味い料理を食いながら、古竜の話をしてくれないか?」
「聞かれると思ったー」
古竜に興味津々らしいっていう前情報はあったし、頷いて話す。
イグニスさんとの出会いを話したら楽しそうに笑われたし、普通に交流してるって言ったら「モモは素晴らしいな!」とすごく気に入られた。
「俺は古代王国の王と古竜のおとぎ話が好きなんだ。こうして実際に話を聞けて嬉しいぞ」
ニコニコと言う王様に、「おとぎ話なんてあるんだー」と返す。そういえば、はじまりの街にはイグニスさん関連の昔話もあるんだって、前に聞いた気がする。いつか調べてみよう。
その後もほのぼのと王様と会話を楽しんだ。おかげで変な人に絡まれる隙なんてなかったよ。
王様が「あ、こいつ役立つから覚えとくといい」って、当たり前のようにシーアイ機関のトップを紹介してくれた時は驚いたけど。ダーロンさんっていうんだって。
シーアイ機関って、スパイ集団みたいなものなはずだけど、こんなに気軽に会えちゃっていいんだ?
ダーロンさんから「娘が世話になっているようですね。ありがとうございます」と言われたときはもっと驚いた。
「もしかして、リカちゃん?」
「そうです。モモさんは将来有望なテイマーだと伺っておりますよ」
「えー、照れるー」
本職は魔術士だよ、とはわざわざ言わない。ダーロンさんも知ってて言ってるんだろうし。
「何かありましたら、当家にいらしてください」
名刺みたいなものを渡された。
〈【シーアイ機関本部所在地】を入手しました。マップに記載されます〉
こんな簡単に手に入れてもいいものかな? くれるって言うなら、遠慮なくもらうけど。
「情報欲しい時に聞きに行っていい?」
「当家がお役に立てると良いのですが」
ニコニコと微笑まれる。断られてないからオッケーってことだよね? 対価が求められそうだから、いざという時だけ利用しよう。
「んー……大体大丈夫のはず!」
うんうん、と頷いて確認して、服を着替える。
着たのは白の燕尾服っぽいジャケット。正装です。リリが作ってくれたんだ。スカーフタイがおしゃれ。
今日は王城パーティーに参加するから、ちゃんとした格好しなくちゃね。見た目がモンスターだから、あんまり気にしなくても大丈夫そうだけど。
トテトテと歩いて、王城前まで来た。このまま入れるのかな?
「——パーティー参加者の方ですか?」
王城前の門に立ってる騎士さんが話しかけてきた。あんまり驚いた顔をしてない。
「そうだよー。冒険者のモモです!」
「ラファイエット様より伺っております。こちらへどうぞ」
「ありがとー。ラファイエットさん、話しててくれたんだね」
「モンスター種族の方が参加されるのは珍しいことですので、失礼があってはいけませんから」
僕の歩調に合わせて歩く騎士さんがにこりと微笑み、パーティー会場まで案内してくれた。
この騎士さん、貴族っぽい雰囲気なのに気遣い上手で優しい!
「——ラファイエット様のお客様だと知られていますので、変な方に話しかけられることはないと思いますが、困ったことがありましたらお声がけください」
パーティー会場に入る直前に言われた。
「変な方?」
「貴族には様々な性格の方がいらっしゃいますので……」
「なるほど! 難癖つけてくる人とか、偉ぶってる人とかってことだね」
騎士さんが濁した言葉を明確にしたら、困った顔をされた。でも否定されないから僕の解釈は間違ってないんだろう。
そっかぁ。そういう変な人もいるのかー。
僕が知ってる王侯貴族って、ベラちゃんとかラファイエットさんとかだから、あんまりそういう悪い印象はなかったんだけど。
あ、でも、レイドイベントで捕まえた犯人は没落貴族だったな。ああいう人が他にもいるなら、絡まれる可能性はある。
そういう時は遠慮なく騎士さんたちを頼ろう!
うんうん、と頷きながら会場に入ったら、たくさんの視線を感じた。まぁ、見られるのは慣れてる。みんなドレスや正装姿っていうのは違和感あるけど。
お上品な雰囲気だー。おもしろーい。
「あ、料理発見!」
きょろきょろと周囲を見渡したら、壁際にたくさんのお皿が並んでるのがわかった。ふわーと飛んで行くと、ちょっとどよめきが起きた気がする。
僕、見た目通り飛べるんだよ。観賞するのはオッケーです。
料理は豪勢な洋風メニューだった。第三の街でのパーティー料理とは全然違うなぁ。
「オムレツ美味しそー」
「うむ、美味いのは間違いないぞ。ウチの自慢のシェフが作ってるからな」
「そうなんだ。じゃあ食べてみる!」
テーブル傍に立っていたメイドさんがぎこちない感じで取り分けてくれたところで、ふと首を傾げる。
僕、誰と話してるんだっけ?
そっと横を見たら、ザ・王様って感じの服を着た男の人がニコニコしながら僕を見てた。ラファイエットさんと似た面影があって、全身から豪快で溌剌としたオーラが放たれてる感じがする。
「えっと……こんばんは、僕モモです」
「礼儀正しいな! 俺はレオナルド。この国の王だ」
「やっぱり! あ、失礼な言い方しちゃった」
「気にするな。オムレツのソースのおすすめはチーズとトマトのあいがけだぞ」
「美味しそう。それでお願いします!」
メイドさんが二種類のソースをかけてくれた。ありがとう。
王様はなんだか気安い雰囲気だったから、気にせず勧められるままにオムレツを口に運ぶ。
「——うまー! トロトロふわふわだー」
「だろう?」
今まで食べたオムレツの中で一番美味しいかもしれない。オムレツってこんなに美味しくなるんだ?
誇らしげな王様は、自分の城のシェフが褒められたと思って喜んでるんだろうな。冒険者でモンスターな見た目の僕のことを気にしてないみたいだし、朗らかで良い人。
魔術学院の受付さんが『少年みたい』って感じのこと言ってたけど、確かにピッタリな表現だ。ラファイエットさんのお父さんなら、それなりの年齢だろうに、すごく若々しく感じる。
「美味い料理を食いながら、古竜の話をしてくれないか?」
「聞かれると思ったー」
古竜に興味津々らしいっていう前情報はあったし、頷いて話す。
イグニスさんとの出会いを話したら楽しそうに笑われたし、普通に交流してるって言ったら「モモは素晴らしいな!」とすごく気に入られた。
「俺は古代王国の王と古竜のおとぎ話が好きなんだ。こうして実際に話を聞けて嬉しいぞ」
ニコニコと言う王様に、「おとぎ話なんてあるんだー」と返す。そういえば、はじまりの街にはイグニスさん関連の昔話もあるんだって、前に聞いた気がする。いつか調べてみよう。
その後もほのぼのと王様と会話を楽しんだ。おかげで変な人に絡まれる隙なんてなかったよ。
王様が「あ、こいつ役立つから覚えとくといい」って、当たり前のようにシーアイ機関のトップを紹介してくれた時は驚いたけど。ダーロンさんっていうんだって。
シーアイ機関って、スパイ集団みたいなものなはずだけど、こんなに気軽に会えちゃっていいんだ?
ダーロンさんから「娘が世話になっているようですね。ありがとうございます」と言われたときはもっと驚いた。
「もしかして、リカちゃん?」
「そうです。モモさんは将来有望なテイマーだと伺っておりますよ」
「えー、照れるー」
本職は魔術士だよ、とはわざわざ言わない。ダーロンさんも知ってて言ってるんだろうし。
「何かありましたら、当家にいらしてください」
名刺みたいなものを渡された。
〈【シーアイ機関本部所在地】を入手しました。マップに記載されます〉
こんな簡単に手に入れてもいいものかな? くれるって言うなら、遠慮なくもらうけど。
「情報欲しい時に聞きに行っていい?」
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