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9章 もふうさフィーバー
332.霊峰を歩きます
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翌日。
防寒装備を整えて、北の霊峰エリアにやって来ましたー。
「寒いねぇ」
街からちょっと出ただけなのに、ヒヤッとした冷たい空気を感じる。霊峰の裾野にあたるこの場所はまだ普通に過ごせる温度だけど、上層はすっごく寒いんだろうなぁ。
「きゅぃ(歩いていくの?)」
「ううん、ここでストルムを喚んじゃうよー」
「キュオ(私も乗れるのかしらね?)」
冷たい風を心地よさそうに浴びていたオギンが、コテンと首を傾げた。
どうだろうね? ストルムが中くらいのサイズになったら、サイズ的には乗れそうだけど。
「乗れなかったら、一時帰還してもらって、バトルの時に再召喚するよ」
「キュオ(わかったわ)」
緩やかに尻尾を揺らすオギンを見てから、その足元で硬い表情をしているヒスイを確認する。
北の霊峰は西のキーリ湖エリアより強いモンスターが多いって教えてるから、緊張した顔だなぁ。大丈夫?
「ヒスイ、リラックスー。ストルムで霊峰の上層まで行けたら、ほぼバトルしないかもしれないし」
「……にゃ」
ヒスイが『そうなったら、ちょっと残念かもにゃ』と言いたげな顔をした。覚悟固めて来てるわけだから、肩透かし食らう感じになるもんね。
僕もそろそろ魔術士の職業レベルが上がりそうだから、バトルしたい気持ちはある。
「ま、とりあえずストルムを喚ぶよー」
召喚スキルを使おうとしたところで、ユキマルからちょんちょんとつつかれた。
「なぁに?」
「ぴぅ(もうちょっと街から離れたところで喚んだ方がいいと思う)」
「え……モンちゃんに怒られ案件?」
ふと周囲を見渡すと、プレイヤー・異世界の住人問わず、たくさんの冒険者がいた。北の霊峰エリアは今人気のエリアらしい。
スタ島への航路が始まったから、そっちに行っているプレイヤーも多いはずなのに。なんでこんなに人がいるんだろう?
ちょっと疑問に思ったけど、ひとまず移動をすることにした。
ユキマル、指摘してくれてありがとー。こんなに異世界の住人が多いところでストルムを召喚したら、モンちゃんに説教されるところだったよ。
「人気のないところまで歩こっかー」
「きゅぃ(オギン、乗っけて)」
「キュオ(いいわよ)」
オギンの上にスラリンとユキマルが乗る。スライムは移動速度が遅いもんねぇ。
ヒスイは「にゃ(歩きたいにゃ)」と言ったから、僕の横に並んで一緒に進む。
振り返ると、雪の上に小さな足跡が二つ、大きな足跡が一つ連なっていた。なんか可愛い。
そんなことを考えてちょっとほのぼのしていたら、ユキマルが「ぴぅ(宝石兎の気配がするよ)」と警戒色を発しながら教えてくれた。
宝石兎は特殊な気配のようで、昨日たくさん出会った結果、他のモンスターと区別して察知できるようになったらしい。
「お、このエリアにもいるんだね。寒くないのかなぁ?」
どこにいるんだろう、と白い雪原を見渡しながら歩く。この中にカラフルなモンスターがいたら結構目立つと思うんだけどな。
「見当たらな――いこともなかった!」
ふと白い塊が動いたのが見えて注目すると、それが雪ではなく白いもふもふだとわかった。歩くのに合わせて、長い耳がひょこひょこと揺れてる。
宝石兎っぽいんだけど……昨日会った子より丸っこいね? しかも、白色って何?
「鑑定!」
――――――
【宝石兎(土)】
額に宝石があるうさぎ型モンスター
よく卵を持っているが、宝石兎が産んだわけではなく、卵生でもない
卵をどこから入手しているかは謎である
〈スキル〉
体当たり、爪撃、宝石砲(土)、土塊柱
――――――
やっぱり宝石兎だった。でも、土属性? それなら黄色なのが普通だよね?
じぃっと観察していると、僕の視線に気づいたのか、宝石兎が振り返る――もふもふの白い毛皮のコートを耳付きフードまで被った姿だった。うさぎの着ぐるみをまとっているようにも見えちゃう。
フードから見えている顔の毛の色は、昨日で見慣れた黄色だ。
「えっ、どこでそのコートを手に入れたの!? その姿可愛すぎだよ!」
僕が驚いてビシッと指すと、宝石兎はビクッと体を跳ねさせて、逃げ場を探すようにキョロキョロと周囲を見渡す。
でも、ここはあまり障害物がなく、隠れられそうなところはない。
宝石兎は雪玉のようなものを『よいしょ、よいしょ!』と転がしながら、なんとか逃げようとし始めた。その速度はすっごく遅いけど。
その雪玉、置いていった方が逃げやすいんじゃない?
「――というか……雪玉? 卵はどうしたの?」
宝石兎を追いかけながら、セットになっているはずの卵の不在に気づいて、僕は首を傾げた。
もう誰かにあげちゃった後なのかな? そんな宝石兎は見たことないけど。
「キュオ(あの雪玉の中に卵があるんじゃないかしら?)」
「え……あ、そういうこと?」
オギンに言われて、宝石兎が転がしている雪玉を凝視する。転がるごとに少しずつ大きくなっている気がした。
卵の周りに雪がついて覆われちゃったんだね。それが転がされることで厚みを増してるんだろうなぁ。
宝石兎の速度がどんどん遅くなる。卵入り雪玉が大きくなったせいで、重いのだ。
しかも、雪の上はうさぎが歩くのに適してない。跳ねたら卵を押しにくいもんね。
「……必死になってるの可愛い!」
僕たちの他にも、宝石兎を見ているプレイヤーの姿がたくさんあった。みんな幸せそうに微笑んで、写真を撮ってるみたいだ。
このエリアが今大人気になってる理由がわかった気がする。宝石兎の雪玉転がしを見て楽しんでるんだね。
僕も写真撮っちゃおうっと。
防寒装備を整えて、北の霊峰エリアにやって来ましたー。
「寒いねぇ」
街からちょっと出ただけなのに、ヒヤッとした冷たい空気を感じる。霊峰の裾野にあたるこの場所はまだ普通に過ごせる温度だけど、上層はすっごく寒いんだろうなぁ。
「きゅぃ(歩いていくの?)」
「ううん、ここでストルムを喚んじゃうよー」
「キュオ(私も乗れるのかしらね?)」
冷たい風を心地よさそうに浴びていたオギンが、コテンと首を傾げた。
どうだろうね? ストルムが中くらいのサイズになったら、サイズ的には乗れそうだけど。
「乗れなかったら、一時帰還してもらって、バトルの時に再召喚するよ」
「キュオ(わかったわ)」
緩やかに尻尾を揺らすオギンを見てから、その足元で硬い表情をしているヒスイを確認する。
北の霊峰は西のキーリ湖エリアより強いモンスターが多いって教えてるから、緊張した顔だなぁ。大丈夫?
「ヒスイ、リラックスー。ストルムで霊峰の上層まで行けたら、ほぼバトルしないかもしれないし」
「……にゃ」
ヒスイが『そうなったら、ちょっと残念かもにゃ』と言いたげな顔をした。覚悟固めて来てるわけだから、肩透かし食らう感じになるもんね。
僕もそろそろ魔術士の職業レベルが上がりそうだから、バトルしたい気持ちはある。
「ま、とりあえずストルムを喚ぶよー」
召喚スキルを使おうとしたところで、ユキマルからちょんちょんとつつかれた。
「なぁに?」
「ぴぅ(もうちょっと街から離れたところで喚んだ方がいいと思う)」
「え……モンちゃんに怒られ案件?」
ふと周囲を見渡すと、プレイヤー・異世界の住人問わず、たくさんの冒険者がいた。北の霊峰エリアは今人気のエリアらしい。
スタ島への航路が始まったから、そっちに行っているプレイヤーも多いはずなのに。なんでこんなに人がいるんだろう?
ちょっと疑問に思ったけど、ひとまず移動をすることにした。
ユキマル、指摘してくれてありがとー。こんなに異世界の住人が多いところでストルムを召喚したら、モンちゃんに説教されるところだったよ。
「人気のないところまで歩こっかー」
「きゅぃ(オギン、乗っけて)」
「キュオ(いいわよ)」
オギンの上にスラリンとユキマルが乗る。スライムは移動速度が遅いもんねぇ。
ヒスイは「にゃ(歩きたいにゃ)」と言ったから、僕の横に並んで一緒に進む。
振り返ると、雪の上に小さな足跡が二つ、大きな足跡が一つ連なっていた。なんか可愛い。
そんなことを考えてちょっとほのぼのしていたら、ユキマルが「ぴぅ(宝石兎の気配がするよ)」と警戒色を発しながら教えてくれた。
宝石兎は特殊な気配のようで、昨日たくさん出会った結果、他のモンスターと区別して察知できるようになったらしい。
「お、このエリアにもいるんだね。寒くないのかなぁ?」
どこにいるんだろう、と白い雪原を見渡しながら歩く。この中にカラフルなモンスターがいたら結構目立つと思うんだけどな。
「見当たらな――いこともなかった!」
ふと白い塊が動いたのが見えて注目すると、それが雪ではなく白いもふもふだとわかった。歩くのに合わせて、長い耳がひょこひょこと揺れてる。
宝石兎っぽいんだけど……昨日会った子より丸っこいね? しかも、白色って何?
「鑑定!」
――――――
【宝石兎(土)】
額に宝石があるうさぎ型モンスター
よく卵を持っているが、宝石兎が産んだわけではなく、卵生でもない
卵をどこから入手しているかは謎である
〈スキル〉
体当たり、爪撃、宝石砲(土)、土塊柱
――――――
やっぱり宝石兎だった。でも、土属性? それなら黄色なのが普通だよね?
じぃっと観察していると、僕の視線に気づいたのか、宝石兎が振り返る――もふもふの白い毛皮のコートを耳付きフードまで被った姿だった。うさぎの着ぐるみをまとっているようにも見えちゃう。
フードから見えている顔の毛の色は、昨日で見慣れた黄色だ。
「えっ、どこでそのコートを手に入れたの!? その姿可愛すぎだよ!」
僕が驚いてビシッと指すと、宝石兎はビクッと体を跳ねさせて、逃げ場を探すようにキョロキョロと周囲を見渡す。
でも、ここはあまり障害物がなく、隠れられそうなところはない。
宝石兎は雪玉のようなものを『よいしょ、よいしょ!』と転がしながら、なんとか逃げようとし始めた。その速度はすっごく遅いけど。
その雪玉、置いていった方が逃げやすいんじゃない?
「――というか……雪玉? 卵はどうしたの?」
宝石兎を追いかけながら、セットになっているはずの卵の不在に気づいて、僕は首を傾げた。
もう誰かにあげちゃった後なのかな? そんな宝石兎は見たことないけど。
「キュオ(あの雪玉の中に卵があるんじゃないかしら?)」
「え……あ、そういうこと?」
オギンに言われて、宝石兎が転がしている雪玉を凝視する。転がるごとに少しずつ大きくなっている気がした。
卵の周りに雪がついて覆われちゃったんだね。それが転がされることで厚みを増してるんだろうなぁ。
宝石兎の速度がどんどん遅くなる。卵入り雪玉が大きくなったせいで、重いのだ。
しかも、雪の上はうさぎが歩くのに適してない。跳ねたら卵を押しにくいもんね。
「……必死になってるの可愛い!」
僕たちの他にも、宝石兎を見ているプレイヤーの姿がたくさんあった。みんな幸せそうに微笑んで、写真を撮ってるみたいだ。
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僕も写真撮っちゃおうっと。
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