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9章 もふうさフィーバー
348.カジノへゴー!
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王都に転移した後に、ヒスイたちと船着き場まで行って転移ピンを設定してきた。船着き場はバトルフィールドとは違うらしく、転移ピンが一日で消失することはないらしい。
船着き場までの道中で出会った宝石兎たちはキーリ湖エリアにいたのとあまり変わらない見た目だったよ。
霊峰エリアにいた宝石兎が特殊だっただけなのかな。
「ル~ルルン♪」
今はハミングしながら王都を歩いてる。カジノに行くんだー。王都のカジノに行くのは初めてだ。
王都ースタ島間の定期航路はもう始まってるから、船のカジノに行ってもいいんだけど、やっぱり王都のカジノも体験しておきたいな、って思ってさ。
「えっと、マップだとこの辺……」
きょろきょろと周囲を見渡す。
王都はたくさんの塔が建っている街なんだけど、カジノは塔とは違う建物にあるって情報をタマモに聞いて来た。でも、それらしき建物がない。
なんで? まさか、カジノがかくれんぼ中?
腕を組んで、むむぅと考え込んでいたら、近くの木の陰から人が出てきた。エルフのミレイとタヌキ族獣人のユリだ。一緒に幻桃探しをした仲間。
二人も僕に気づいたみたいで、パッと表情を輝かせて近づいてくる。
「モモさん、こんにちは……」
「久しぶりやなー。今日ももふもふしてて可愛い」
控えめに微笑むミレイと快活な雰囲気で頭を撫でてくるユリに「やっほー。どもども」と手を振る。
「僕はいつでももふもふだよー」
「最高やん」
「でしょー」
軽いノリでユリと話してたら、ミレイが僕に触れたいけど触れられないって感じで手をさまよわせてることに気づいた。
「握手する?」
「……します」
躊躇いがちにミレイが手を伸ばしてきたので、手を握って「僕たち仲良しー」と揺らした。嬉しそうに口元を綻ばせるミレイが可愛い。
「二人はここで何してたの?」
なんも建物がない小さな森のような場所から出てきた二人に尋ねる。珍しいアイテムでも採れるポイントだったりする? 王都にこんな自然があるのは珍しいけど……
「カジノ行ってきてん。負けてもうたけどな」
「私はちょっとだけ勝ちました……まだ目標には届いてないんですけど……」
「え、カジノここにあるの!?」
二人の勝ち負けより気になる情報が出てきた。
当たり前のように言う二人の背後を覗き込む……うん、やっぱり小さな森にしか見えない。
僕が首を傾げると、ユリが「ああ」と納得した様子で頷いた。
「あるで。カジノはここの地下やねん」
ちょいちょい、と手招きされてユリについていく。
小さな森だと思っていた場所は、近づいてみると木々に囲まれた階段だった。階段は地下へと続いてる。
「へぇ、なんで地下なんだろう?」
「さあ? 雰囲気作りやない?」
「でも、国公認のカジノだよ」
「それでもちょっと悪いことしてる雰囲気、いいやん」
僕にはよくわかんないけど、そういうことなのかもね。
曖昧に頷いて、階段の奥に視線を向ける。ここからじゃ、カジノの中が見えないなぁ。
「モモさん、カジノに行くんですか……?」
「行くよー。無人島入手のために貢献しなくちゃ」
「モモならえらい勝ち方しそうやな」
ミレイにサムズアップして答えると、ユリがククッと笑った。
そんな凄い勝ち方ができるかはわかんないけど、負けるつもりはないよ。
「応援してます……」
「ウチもや。時間があったら見たかったんやけどなぁ。これから仕事や……」
控えめながらもキラキラとした目で応援してくれたミレイの横で、ユリが項垂れる。
前に王都へ案内してくれた時にちょっと話して知ってたけど、まだお仕事が忙しいらしい。社会人って大変だね。
「癒やしてあげよう」
えへん、と胸を張りながら両手を伸ばすと、ユリが遠慮なく抱きついてきた。
僕のもふもふボディは癒やし効果抜群だよ!
「……最高!」
「ふふ、良かったですね……」
二人とそんな感じで遊んでから、別れてカジノへ向かう。どんなところかなー。
ぴょんぴょんと跳ねるように階段をおりてしばらく通路を歩くと、大きな扉があった。重厚な雰囲気の扉だ。その前に立つと、自動的に扉が開いた。
奥に広がるのはカジノらしい光景だ。
カードやルーレット用のテーブルがたくさん並び、壁際を埋め尽くすようにスロットがある。船の中にあったカジノより広さが二倍はありそう。
そこではたくさんのプレイヤーが遊んでいて、歓喜の表情で両手を上げている人や床に倒れ伏している人など、カオスな状況になってる。
ちょっぴり顔が引き攣っちゃうよ。みんな、カジノに本気になりすぎじゃない?
「国立カジノにようこそいらっしゃいました。ごゆるりとお楽しみくださいませ」
目が合ったスタッフさんに微笑まれた。その笑みが『新たな金づるが来たぞー』って言ってるように見えるのは気のせいかな。気のせいってことにしたいな。
僕は金づるにはならないもん。絶対勝つもんね!
「まずはスロットかな」
ルーレットの方が勝つ確率高そうだけど、スロットで肩慣らししてからにしよう。
今日はどの台が当たりそうかなー、と壁際に並ぶスロットを眺めて歩く。半分以上が使用中だから、残りの中から選ばないといけないけど……
「あ、モモさん! 今日はカジノ遊びですか」
スロットで遊んでいたプレイヤーに話しかけられた。見覚えはないけど、キラキラと輝く目を見るに、たぶんもふもふ教の一員だ。がんばってるねー。僕もがんばるよ。
「そうだよー。隣にお邪魔していい?」
「もちろんです!」
「勝ってる?」
快諾してくれたプレイヤーさんに話の流れで尋ねたら、にこりと満面の笑みが返ってきた。
「負けてます! もうすぐ所持金0です!」
「……それ、笑顔で言うことじゃなくない?」
「モモさんと話せたので、ブルーな気分が吹っ飛びました!」
「……そっか、それならよかったよ」
タマモに似たタイプのプレイヤーは案外多いのかもしれない。
ちょっぴり苦笑しながら、そんなことを思った。
船着き場までの道中で出会った宝石兎たちはキーリ湖エリアにいたのとあまり変わらない見た目だったよ。
霊峰エリアにいた宝石兎が特殊だっただけなのかな。
「ル~ルルン♪」
今はハミングしながら王都を歩いてる。カジノに行くんだー。王都のカジノに行くのは初めてだ。
王都ースタ島間の定期航路はもう始まってるから、船のカジノに行ってもいいんだけど、やっぱり王都のカジノも体験しておきたいな、って思ってさ。
「えっと、マップだとこの辺……」
きょろきょろと周囲を見渡す。
王都はたくさんの塔が建っている街なんだけど、カジノは塔とは違う建物にあるって情報をタマモに聞いて来た。でも、それらしき建物がない。
なんで? まさか、カジノがかくれんぼ中?
腕を組んで、むむぅと考え込んでいたら、近くの木の陰から人が出てきた。エルフのミレイとタヌキ族獣人のユリだ。一緒に幻桃探しをした仲間。
二人も僕に気づいたみたいで、パッと表情を輝かせて近づいてくる。
「モモさん、こんにちは……」
「久しぶりやなー。今日ももふもふしてて可愛い」
控えめに微笑むミレイと快活な雰囲気で頭を撫でてくるユリに「やっほー。どもども」と手を振る。
「僕はいつでももふもふだよー」
「最高やん」
「でしょー」
軽いノリでユリと話してたら、ミレイが僕に触れたいけど触れられないって感じで手をさまよわせてることに気づいた。
「握手する?」
「……します」
躊躇いがちにミレイが手を伸ばしてきたので、手を握って「僕たち仲良しー」と揺らした。嬉しそうに口元を綻ばせるミレイが可愛い。
「二人はここで何してたの?」
なんも建物がない小さな森のような場所から出てきた二人に尋ねる。珍しいアイテムでも採れるポイントだったりする? 王都にこんな自然があるのは珍しいけど……
「カジノ行ってきてん。負けてもうたけどな」
「私はちょっとだけ勝ちました……まだ目標には届いてないんですけど……」
「え、カジノここにあるの!?」
二人の勝ち負けより気になる情報が出てきた。
当たり前のように言う二人の背後を覗き込む……うん、やっぱり小さな森にしか見えない。
僕が首を傾げると、ユリが「ああ」と納得した様子で頷いた。
「あるで。カジノはここの地下やねん」
ちょいちょい、と手招きされてユリについていく。
小さな森だと思っていた場所は、近づいてみると木々に囲まれた階段だった。階段は地下へと続いてる。
「へぇ、なんで地下なんだろう?」
「さあ? 雰囲気作りやない?」
「でも、国公認のカジノだよ」
「それでもちょっと悪いことしてる雰囲気、いいやん」
僕にはよくわかんないけど、そういうことなのかもね。
曖昧に頷いて、階段の奥に視線を向ける。ここからじゃ、カジノの中が見えないなぁ。
「モモさん、カジノに行くんですか……?」
「行くよー。無人島入手のために貢献しなくちゃ」
「モモならえらい勝ち方しそうやな」
ミレイにサムズアップして答えると、ユリがククッと笑った。
そんな凄い勝ち方ができるかはわかんないけど、負けるつもりはないよ。
「応援してます……」
「ウチもや。時間があったら見たかったんやけどなぁ。これから仕事や……」
控えめながらもキラキラとした目で応援してくれたミレイの横で、ユリが項垂れる。
前に王都へ案内してくれた時にちょっと話して知ってたけど、まだお仕事が忙しいらしい。社会人って大変だね。
「癒やしてあげよう」
えへん、と胸を張りながら両手を伸ばすと、ユリが遠慮なく抱きついてきた。
僕のもふもふボディは癒やし効果抜群だよ!
「……最高!」
「ふふ、良かったですね……」
二人とそんな感じで遊んでから、別れてカジノへ向かう。どんなところかなー。
ぴょんぴょんと跳ねるように階段をおりてしばらく通路を歩くと、大きな扉があった。重厚な雰囲気の扉だ。その前に立つと、自動的に扉が開いた。
奥に広がるのはカジノらしい光景だ。
カードやルーレット用のテーブルがたくさん並び、壁際を埋め尽くすようにスロットがある。船の中にあったカジノより広さが二倍はありそう。
そこではたくさんのプレイヤーが遊んでいて、歓喜の表情で両手を上げている人や床に倒れ伏している人など、カオスな状況になってる。
ちょっぴり顔が引き攣っちゃうよ。みんな、カジノに本気になりすぎじゃない?
「国立カジノにようこそいらっしゃいました。ごゆるりとお楽しみくださいませ」
目が合ったスタッフさんに微笑まれた。その笑みが『新たな金づるが来たぞー』って言ってるように見えるのは気のせいかな。気のせいってことにしたいな。
僕は金づるにはならないもん。絶対勝つもんね!
「まずはスロットかな」
ルーレットの方が勝つ確率高そうだけど、スロットで肩慣らししてからにしよう。
今日はどの台が当たりそうかなー、と壁際に並ぶスロットを眺めて歩く。半分以上が使用中だから、残りの中から選ばないといけないけど……
「あ、モモさん! 今日はカジノ遊びですか」
スロットで遊んでいたプレイヤーに話しかけられた。見覚えはないけど、キラキラと輝く目を見るに、たぶんもふもふ教の一員だ。がんばってるねー。僕もがんばるよ。
「そうだよー。隣にお邪魔していい?」
「もちろんです!」
「勝ってる?」
快諾してくれたプレイヤーさんに話の流れで尋ねたら、にこりと満面の笑みが返ってきた。
「負けてます! もうすぐ所持金0です!」
「……それ、笑顔で言うことじゃなくない?」
「モモさんと話せたので、ブルーな気分が吹っ飛びました!」
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タマモに似たタイプのプレイヤーは案外多いのかもしれない。
ちょっぴり苦笑しながら、そんなことを思った。
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