もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
369 / 555
9章 もふうさフィーバー

349.僕の運は……!

しおりを挟む
 もうすぐ所持金0になるプレイヤーさんは、ランっていう名前らしい。種族はエルフで魔術士なんだって。

 僕がスロットを始めながら「本当に大丈夫なの?」と聞いてみたら、ランはにこやかな表情で肩をすくめた。

「所持金は0になりますけど、銀行に預けてる分があるので大丈夫ですよー」
「銀行に? ランは何か商売してるの?」

 銀行にお金を預けるのって、商売してる人が多い。銀行は商業ギルド内にあるから。
 商売人仲間かなーと思って僕がランを見上げると、「そうです」と頷きが返ってきた。

「薬士なので、作った薬を時々屋台で売ってます。それなりに品質がいいので、毎回完売するんですよ」
「おお、すごいねー」

 ちゃんと商売してるプレイヤーに始めて会ったかも。

 色々と話を聞いてみたら、どうやらランは普段生産職として活動してることが多いらしい。「第三の街に行く時には友だちに頼りましたー。エリアボス、私の実力じゃ絶対倒せないですもん」と胸を張っていた。

 確かに、第三の街に行くために倒さなきゃいけないボス、強いもんねー。僕もルトたちと一緒だったから倒せたようなものだし。
 そんなことを考えて、僕がうんうんと頷いていると、ランが「あ、メダル尽きた……」と呟いた。ついに遊ぶのに必要なメダルがなくなったらしい。

「またメダル買ってくるの?」
「ちょっとしか買えなさそうだから、また今度にしますかねー。あ、モモさん、薬買います?」

 所持金足りないわー、と嘆いていたランが、ふと目を輝かせて僕を見つめてきた。
 僕に買ってもらって、遊ぶためのお金を増やそうとしてるらしい。

「どんな薬があるの?」

 無人島を手に入れようとしてる仲間だし、他のプレイヤーが作った薬も気になるし、買ってもいいなー、と思いながら尋ねる。
 すると、ランはアイテムボックスから「じゃじゃじゃーん」と何かを取り出した。

「【回避薬】です! これ、職業薬士しか作れないので、モモさんは持ってないと思うんですけど」
「うん、持ってない。鑑定していい?」
「どうぞー」

 にこやかに微笑むランの手にある瓶を鑑定する。中に入ってるのは、ラムネみたいな粒だ。

——————
【回避薬】レア度☆☆☆☆
 使用すると、一回だけ敵の攻撃を必ず回避できる
 即死攻撃には効果なし
 薬士専用レシピで作製された
 品質:最高
——————

 え、即死攻撃には対応できなくても、必ず回避が成功するのは凄いよね。

「結構な人気商品じゃない?」
「売り出したら即完売の商品です」
「僕に売らなくても、すぐにお金稼げるんじゃ……?」

 近くにいた他のプレイヤーが欲しそうにこっちを見てる。
 でも、ランはそっちに売るつもりはないらしく、ニコニコと微笑んでる。

「私が作った薬をモモさんに売りたいんです。次の屋台用に作り溜めていた分なんで、モモさん以外にはまだ売りません」
「なるほど……?」

 よくわかんないけど、たぶんファン心理なんだろう。
 売ってくれると言うなら買うけど。
 僕が知らなかっただけで、ランって結構注目されてるプレイヤーな気がする。

「——おいくら?」
「一つ二千リョウです」
「じゃあ、三つくださーい」

 チャリン、とお支払いしてアイテムゲット。
 いつ使うかわからないけど、持ってるだけで安心感がある。

「ヤッター、これでメダル買い足してきます!」
「いってらっしゃーい」

 嬉しそうに手を振ってメダル購入所に向かったランを見送る。
 僕はスロットがんばるぞー。

◇◆◇ 

 しばらくスロットで遊んで、ちょっぴり勝った。
 現在メダル金四枚、銀五枚。目標はメダル金十枚だけど、スロットはやっぱり運任せな感じが強くて勝ちにくい。

 追加でメダルを手に入れたランは、再び撃沈して「今日はダメです……また来ます……」と去っていった。
 僕と握手したらすぐにテンション上がってルンルンとした感じになってたけど。知らない人からは、きっと大勝ちしたように見えてたはず。

「今度はルーレットしようっと」

 トテトテと空いてるルーレットテーブルを探す。
 カードゲームはルールがよくわからないから手を出さない。ルーレットは単純でいいよねー。

「モモ、一緒にするかにゃ?」
「あ、ムギ、いたんだ?」

 不意に声をかけられたと思ったら、丸猫マンチクーンのムギがルーレットテーブルのところにいた。

「僕もいますよ。お久しぶりです」
「ソウタ、久しぶり」

 僕より小さい絹銀鼠シルクチンチラのソウタに「わーい」と抱きつくと、照れくさそうな笑みが返ってくる。年が近いっぽいから、親近感があるんだよね。

「——あれ? ツッキーは?」

 希少種会のメンバーが足りない、と気づいて僕がキョロキョロと周囲を見渡すと、ムギとソウタが疲れたような顔で視線を交わした。

「……ツッキーはカジノ出禁にゃ」
「カジノといえばイカサマなんて騒いで、ディーラーさんに怒られたんです」
「ツッキー、何やってるの……」

 僕も思わず呆れちゃった。
 現実でのカジノがどうかは知らないけど、このゲーム内のカジノでイカサマはないでしょ。

「まぁ、ツッキーはあの調子じゃ所持金0になりそうだったから、出禁になってよかったかもしれないにゃー」
「負けてる人多いね」
「そうじゃないとカジノ側の収益がないですからね」

 そんな話をしながら僕もムギたちと同じテーブルにつく。
 ルーレットで勝負、始めよう。

「どこに賭けますか?」

 玉を手に尋ねてきたディーラーさんに、悩んだ末に「……赤の5」と答えながらメダル銀を出す。
 最初から一点賭けして、運勢を占うよー。

「モモ、強気にゃ……あたいは黒」
「僕は赤で」

 苦笑しながらムギとソウタがメダル銀を出したところで、ルーレットが回り始めた。
 ディーラーが玉を投げ入れて、ルーレットがくるくる回っているところを固唾を飲んで見守る。

 ——カラン。

「……赤の5です」
「にゃ!?」
「えっ!?」

 見事に赤の5のポケットに落ちた玉を、テーブルについている全員が目を見開いて見下ろした。

「ヤッター! 僕、ツイてる~♪」

 いきなり勝ってメダル銀が三十六倍になるのは幸先いいね!
 大歓声を受けて、お手振りしたりウインクしたり。これでみんなにも幸運をお裾分けできたらいいな。
しおりを挟む
感想 2,532

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。