もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

359.探索開始?

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 宝箱の蓋をえいっと開ける。
 ルトと二人で覗き込むと、そこにあったのは——

「……なんかの液体?」
「薬じゃねーか?」

 蓋付きの試験管のようなもの。中には薄い青色の液体がしゅわしゅわと泡を立てている。
 よいしょ、と手を伸ばして取ってみた。とりあえず鑑定しましょ。

——————
人魚薬マーメイディスン】レア度☆☆☆☆
 使用後一時間、人魚のように水中で自由自在に素早く動けるようになる
——————

「おぉ? 水中で自由自在になる、ってことは呼吸も問題ないのかな」
「そういうことだろうな」

 二人でマジマジとアイテムを見下ろす。
 鑑定したところで、ここに宝箱があった理由はわからなかった。まぁ、それなりに便利なアイテムだと思うけど……。

 いつの間にか閉じている宝箱を見下ろす。
 中身を取ったからといって、この宝箱は消えないようだ。

 ふと思いついたことがあって、アイテムを凝視しながら首を傾げているルトのズボンをクイクイと引っ張る。

「ルトも開けてみて」
「は? もう取ったんだから意味ないだろ」

 不思議そうにしながらも、ルトはひょいっと宝箱を開けた。

「——あったな……」
「あったねぇ」

 宝箱の中には僕が持ってるアイテムと同じ人魚薬マーメイディスンが入っていた。
 ルトは首を傾げながらそれを手にして宝箱を閉じ——再び開ける。

「もうないねぇ」
「ねぇな」

 一人一つ限定で入手できるアイテムなのかな。
 そう考えたところでふと気づく。

「あ、僕とルト、今パーティ組んでないよね」
「そうだな。お前のテイムモンスがまだ外にいるから……って、もしかして、これ一つのパーティに一つゲットできるアイテムか?」

 その可能性がある気がする。
 僕が頷くと、ルトは「ほーん……」と言いながら人魚薬マーメイディスンの観察を続けた。

「たぶん? ほら、ダンジョンって、パーティごとに独立した空間になってて、それぞれが宝箱のアイテムを取れるでしょ?」
「ここ、パーティメンバーじゃなくても一緒にいられるみたいだから、前提が違ぇけどな」
「まぁ、それは……後で誰かが検証するでしょ」

 ルトが言うのももっともで、僕はすぐに疑問をぽいっと放棄した。
 アイテムをゲットできたから、その入手条件とか正直どうでもいい。

「水中戦か……確か海底都市があるんだったか?」
「そうそう。えっと、リュウグウだったかな」
「このレイドイベが終わったら、海底都市に行けるようになるはずだし、このアイテムはそこで使えってことかね?」

 あまり納得してなさそうな口調でルトが言う。僕も『それはどうだろう?』と首を傾げた。
 だって、そんな情報はラファイエットさんから聞いてないし。

「まぁ、そこで使えそうではあるけどねぇ」

 応えながら、僕はさらに喉奥の方を眺めた。
 宝箱ってこれ一つなのかな。

「……今、モモが考えてることがなんとなくわかる」
「さっすが親友! じゃあ行こっか」
「やっぱりかよ」

 ルトがため息をつく。でも、内心ワクワクしてるのを僕はわかってるよ! 親友だもん。
 ルンルン、とさらに奥へと進む。行けるところがあるなら、余さず探索したいよね~。

 道中、相変わらずグラグラと揺れる口内に苦戦しながら、タマモと連絡をとる。
 口内からの攻撃だと体力バーを確認できないから、タマモに見てもらう予定だったんだ。上手くできてたら、他のプレイヤーも来るはず。

——————
モモ:
 口内から攻撃したけど、ダメージはどんな感じだった?

タマモ:
 お疲れさまです! 結構大きなダメージが入りましたよ。現在、次に入る人を決めてます。モモさんたちはどうですか? もうそろそろ出てきます? タイミングを合わせて、口を開かせましょうか?
——————

 即座に返事が来た。
 もう次が入ってくるのかー。僕たちは転移で出られるし、情報だけあげておこう。

——————
モモ:
 僕たちの帰りは気にしないでいいよー。
 それより、喉の方を攻撃したら宝箱を発見したから伝えておくね。
 攻撃で一瞬見えるから手探りでゲットできると思う。浄化したらバッチリ見えるようになるよ。
 たぶん一人一つか、パーティに一つアイテムをゲットできるんだと思う。
 入ってたのは人魚薬マーメイディスンだったよ。水中で素早く動けるようになるアイテムだってー。
——————

 僕が情報を送ったところで、不意にルトが「おい。このまま歩いててもダメなんじゃね?」と言い出した。

「え、なんで?」
「さっきは攻撃して宝箱発見しただろ? もしまた宝箱があるなら、このままじゃ素通りしちまうんじゃね?」
「あ」

 そうだね! 僕がポンと手を叩いて頷くと、ルトが呆れたような顔になった。それくらいのこと、さっさと気づけよって言いたげだ。ルトだって今気づいたくせにー。

 ちょっぴり後戻りしてから、二人で交互に攻撃しながら進むことにした。
 攻撃の度に暴走鯱バイオレンシャチが暴れるから、足元グラグラで酔いそう。僕は飛翔フライスキルでなんとかなるけど、ルトはしんどそうだ。

 ダメージを稼げるから、一石二鳥にはなってるんだけどねぇ。
 暴走鯱バイオレンシャチに浄化が効く理由もよくわからないし、こっちを検証してみる?

「んー……ユキマルを喚ぼうかなぁ」
「そうしてくれたらありがたいな……」
「わかった! じゃあ、ユキマルを一旦帰還させて——【召喚】ユキマル!」

 ユキマルは外にいるから、ちょっと手間取ったけど、ちゃんと召喚できた。
 現れたユキマルはきょとんとした感じだったけど、すぐに僕を見て嬉しそうに跳ねる。

「ぴぅ(モモ、元気そう)」
「うん、全然体力減ってないよー」

 心配してくれてたんだ? ありがとね。
 ユキマルに返事をしてから、周囲に浄化スキルを使うよう頼んだ。

「広範囲を浄化したいんだけど、できそう?」
「ぴぅ(がんばる)」

 キリッとした雰囲気で跳ねたユキマルが、浄化の光を放ってピンポン玉のように跳ね回った。
 暴走鯱バイオレンシャチの舌がトランポリンのようになってるから、口の上下に当たって跳ね返って——と目で追うと酔いそうな動きになってる。

「おお、凄い跳ねてる……」
「俺は絶対見ねぇ」

 元々酔いそうだったルトは、ユキマルから目を逸らし、ひたすら喉奥を見つめていた。

「あ、浄化でちょっと色が変わってる。赤色がピンクっぽくなってるよ」

 ユキマルが当たったところをマジマジと観察する。
 マーブル模様のように、赤色の口内にピンクの点が散っていた。斑点がちょっと病気みたいだなって思ったのは内緒。

「この暴走鯱バイオレンシャチ、全身穢れまくってんの?」
「そうみたいだねー」

 なんでだろうね?
 よくわかんないけど、この調子で浄化して、また宝箱を発見できたらいいなー。

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