もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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10章 海は広くて冒険いっぱい

372.入口は不思議

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 テーブルの上に錬金布と錬金玉を載せる。
 まずは僕の綿毛で作れるレシピを探そう、と錬金布に綿毛を載せて錬金玉に触れた。するとすぐにスクリーンが現れ、レシピが表示される。

 よく作っているぬいぐるみの他にも小物やアクセサリーが並んでいて、それをザッと眺めていると、ふと見たことのないアイテムが目に入った。

「【もふもふの海守り(ウサギ)】……?」

——————
【もふもふの海守り(ウサギ)】レア度☆☆☆☆
 ピンクベージュのウサギをモチーフにしたお守り
 使用すると、十分間海のモンスターが近づいてこなくなる
 もふもふでふわふわな触り心地
〈レシピ〉
 【綿毛】+【海の香】
——————

 なるほど?
 説明文の横にあるイラストは、うさ耳がついているお守りだった。形は神社とかでもらえるお守りに似てるけど、全体的にもふもふしてる。綿毛で作られてるんだから当然だよね。

 それにしても、なんでこんなレシピが急に出てきたんだろう? しかも、作製可能の表示があるけど、僕は海の香なんてアイテムは持ってないんだよ?

「うーん……これは、この場所だから作れるアイテムってことかな?」

 不意に潮の香りを意識した。この場にあるものが、自動的に錬金術のレシピとして認定されているのかも。
 理由は定かではないけど、作れると言うなら作ってみたい。使うタイミングがあるかわからなくても、もふもふしてて可愛いから、持っておくのでも、売るのでもいいはず。

「よーし——【錬金スタート】!」

 光る煙の演出が潮風に流される中、あっという間にアイテムが完成した。
 錬金布の中央に現れた海守りを持ってみると、ふわふわの感触が伝わってくる。タマモだったら頬ずりしちゃいそうな気持ちよさだ。

「おー、可愛い!」

 もうちょっと追加で作ろうかな、と思いながらも手を止める。
 僕の綿毛から作ったぬいぐるみはお店で大人気なんだよ。海守りを作るために使い切ったら、みんながきっと残念がる。

 ということで、残りの綿毛は夢羊ドリームトンの羊毛と混ぜて錬金し、ぬいぐるみにした。これでちょっとはもふもふを楽しめる人が増えるねー。

 続けて、ヒスイの猫毛を錬金布に載せる。これも普段はぬいぐるみにすることが多いんだけど、新しいレシピがないかなーと探してみて、見つけたアイテムに首を傾げた。

「また海守りがあった……そんなに推してるの?」

——————
【もふもふの海守り(ネコ)】レア度☆☆☆☆
 白いネコをモチーフにしたお守り
 使用すると、十分間海のモンスターが近づいてこなくなる
 もふもふでふわふわな触り心地
〈レシピ〉
 【ふんわり猫毛】+【海の香】
——————

 今度は猫バージョンだ。海上だと、このアイテムを作れるのが普通みたいだ。
 とりあえず一個作って、他に気になるレシピがなかったから、他の猫毛はぬいぐるみに錬金する。

 同様に、ナッティからもらった栗毛も錬金して海守りとぬいぐるみを作った。もふもふがいっぱいだー。

 スラリンたちからもらったスライムジェルは、たくさん集めたらビーチボールやスライムプールを作れるらしいからアイテムボックスに保管しておく。スライムプールがちょっと気になるんだよねー。どんなのなんだろう?

「たくさん作ったー」

 ぐいっと体を伸ばすと、スラリンたちが近づいてくる。でも、ユキマルとナッティ、ヒスイは海の方に視線を向けていた。何か気になるものを見つけたようだ。

「きゅぃ(お疲れさまー)」
「ぴぅ(なんか見えてきたよ)」
「きゅーきゅい(あれ、シャボン玉みたいねぇ)」
「にゃ(つついて破りたくなるにゃ)」
「え? シャボン玉?」

 ユキマルたちの視線の先を追うと、海の上に虹色の光を放つ丸い透明なドームのようなものが見えた。ナッティが言う通り、シャボン玉に近い見た目だ。

「——なに、あれ?」

 船が少しずつ減速していく。
 定期船の方から、船員の声が聞こえてきた。

「もうすぐ【海底都市リュウグウ入口】に到着します。途中下船をする方は、進行方向右側のタラップ近くにお集まりください」

 海底都市リュウグウが近いらしい。でも、目立つものといえば、ユキマルたちが見つけたシャボン玉のようなものだけだ。

「……あれが、海底都市リュウグウの入口なのかな?」

 気になるとウズウズしてくる。
 ということで、操縦パネルに向かって、追尾機能を解除し、新たに表示されていたマップ上の点【海底都市リュウグウ入口】を設定した。ここまで来たら、マップで設定できる場所だったようだ。

 減速していた船が、定期船を追い越して、シャボン玉のようなドームに近づく。
 間近で見てもそれはシャボン玉にしか見えない。海の波を弾いて固定されているから、実際は硬いのかもしれないけど。

「これ、触っても大丈夫かな」
「にゃ(ヒスイが行ってみるにゃ)」
「え、待って——」

 僕が止める前にヒスイが飛び出した。
 楽しげにシャボン玉をつついたかと思うと、一瞬で中に飛び込む。ヒスイの姿が見えなくなった。

「ヒスイ、大丈夫!?」
「にゃ(大丈夫にゃー。この膜、物質じゃなくて光に近いにゃ。生き物は通れるみたいだにゃ)」

 見えないヒスイから返事が来た。中にいるのは確からしい。
 危険はないとわかれば、再びウズウズと好奇心が湧き上がる。

「【飛翔フライ】!」

 ふわっと飛んでシャボン玉の中に突入。
 すると、白い石でできた円形の島があるのがわかった。中央には、島と同じ素材の白くて円柱状の建物がある。建物の周囲は狭く、人が一列に並べる程度しかない。

「人工的だねぇ……」

 観察していると、スラリンとユキマル、ナッティも船をぴょんと飛びおりて来た。誰も乗ってない船はさっさとアイテムボックスに収納しておく。内部からは外がちゃんと見えた。

「これ、どうしたらいいんだろう?」

 ここが海底都市リュウグウの入口であることは間違いないけど、どうやって入ればいいかわからない。
 首を傾げていると、円筒状の建物の側面がスライドし、ぽっかりと開いた。

「え、そこ、扉だったの? 中には……魔法陣?」

 開いたところから中を覗き込むと、丸い床いっぱいに魔法陣のような模様が描かれてる。ような、っていうか、たぶん魔法陣そのものだと思うけど。

「きゅぃ(転移する魔法陣かな?)」
「うーん……教会で見たのとはちょっと違う気がする……?」

 記憶を探っても、明確な答えが出ない。複雑な模様を覚えてるわけがないから。
 そうこうしてる内に、定期船がこの島に着岸したようだ。僕たちがここに留まっていたら邪魔になっちゃいそう。
 何が起きるかわからないけど、さっさと進んだ方がよさそうだね。

「まぁ、危険はないでしょ。みんなー、進むよー」
「きゅぃ(はーい! 楽しみだねー)」

 ルンルン、と鼻歌を歌いながらスラリンたちと建物の中に入る。
 すると、一拍置いて扉が閉まった。中は人工的な光があってほのかに明るい。

「さて、これからどうなるのかな?」

 床に描かれた魔法陣がふわりと光を放つのを眺めながら、ワクワクと次の展開を待った。

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