398 / 661
10章 海は広くて冒険いっぱい
373.海の中へ
円の中に星やらアラビア文字のような記号やら、いろいろ描かれている魔法陣全体が光ると、不意に周囲の景色が消えた。
「ふぇっ!?」
つい間抜けな声を出してビビり、近くにいたスラリンにムギュッと抱きついちゃった。スラリンは変形したけどなぜか嬉しそう。
おー、やっぱりスライムって気持ちいい……って、今はそれどころじゃなかった!
ハッとした瞬間に、周囲に光が戻る。
青だ。僕たちを包むように、いくつもの光の柱がある青が広がっていた。
「——これ……海の中……?」
水族館とかでたまにある、全体を海に囲まれたような景色に圧倒される。上からは日差しが光の柱となって降り注いでいるから、明るくて綺麗だ。
時々魚系モンスターが泳いでいるのが見えるけど、僕たちに気づいてないみたいにスルーされてる。金鰺がまさしく黄金みたいに光っててゴージャス!
「ぴぅ(海を泳いでるみたいだね)」
「にゃ(ヒスイはちょっとこういうのは苦手にゃ……)」
「きゅーきゅい(ここ、シャボン玉の中みたいね)」
ヒスイは泳ぐの苦手そうだもんなぁ、と思ってたら、ナッティが意外なことを言った。
え、ここシャボン玉の中なの?
意識して海との境界を観察してみたら、確かに透明な薄い膜がある気がする。ただし、形は円柱形だから、シャボン玉とは違うと思うけど。ちょうど、さっきまでいた白い建物みたいな形だ。
「さっきの魔法陣はここの中に転移するためのものだったのかなぁ……って、これ、海の底におりていってない?」
ふと気づいたら、海面が少し遠くなってる。日の光も届かなくなってきて、海が深い青色に変わってきた。
幸い、僕たちがいるここは膜が光を発してるのか、お互いが見えなくなるほどの暗さではないけど。
「きゅぃ(おりてるねー。このまま海底都市リュウグウに行けるのかも)」
「あ、そっか。あの建物、入口だったもんね。こんな風に移動するのは予想外だったけど」
正直、普通に転移させてくれればいいのでは? と思わなくもない。でも、こうして海の中を観賞できるのも、たまには楽しくていいね。
見える範囲を泳ぐ魚系モンスターは、見たことがあるものもいれば、存在さえ知らなかったようなものまで多種多様だ。
スラリンたちと和気あいあいと感想を話しながら、膜に手をついて海を眺めていると、不意に大きな魚体が闇から現れるように近づいてきた。
「デカッ! 怖いよぉ」
経験上、魚系モンスターが僕たちを襲ってこないとはわかっていたけど、近くに来られるとそれなりにビビる。とはいえ、泳いでいる姿をマジマジと観察できる機会はそうそうないから、目を逸らすことなく見続けるけど。
この魚、なんだろう? 大きいし、食べごたえありそうだなぁ。なんとなく、リアルで見たことがある魚と似てる気がする。リアルでは魚に角ようなものはないと思うけど。
「あ、鑑定しよ」
スキルを思い出して、魚がいなくなる前にと慌てて鑑定する。
額辺りに二本の鬼の角のようなものを持つ、黒色のモンスターの正体は——
——————
【王鮪】
イノカン国の内海で王者と呼ばれる魚系モンスター
二本の角で敵を攻撃する
素早い動きが特徴
——————
「王鮪……って、モンちゃんが好きなモンスター!」
おお! モンちゃんお気に入りのモンスターはこの子かぁ。
僕に釣りを教えてくれた師匠曰く、すごく美味しい魚らしい。マグロいいよねぇ。でも、食べたらモンちゃんに嫌われちゃう? それはイヤだなぁ。
「強そうだねぇ」
「ぴぅ(ボクは戦いたくないよ……)」
「にゃ(モモが指示するなら、がんばって戦うにゃ)」
ちょっと引いてるユキマルの横で、ヒスイは勇気を奮い立たせた様子で王鮪を凝視しながら呟く。
え、僕はそんな指示出さないから、緊張しなくていいよ?
「いやいや、ここで戦うのはたぶん無理でしょ。万が一この膜が破れたら、僕たち死んじゃうよ?」
こんなところで死に戻りはイヤですー。
僕がそう言うと、ユキマルたちがホッと息を吐いて、落ち着いて王鮪を観察し始めた。
この王鮪、なぜか僕たちがいるシャボン玉みたいな膜の周囲をグルグルと回ってるんだよ。気づかれてるわけじゃないよね? 攻撃される感じじゃないしなぁ。どうしてだろう?
大きさは暴走鯱ほどではなくとも、人の数倍はありそうだから、結構な威圧感がある。
モンちゃん、こういうモンスターが好きなのかぁ。この前会った鷲っぽいモンスターのアクロもカッコいい系だったけど、ちょっとタイプが違うなぁ。
「きゅぃ(あ、下の方が明るいよ)」
王鮪に付き纏われながら観察していると、スラリンがぴょんと跳ねて言った。
つられて足下を見ると、確かに淡い光が見える。もしかして、目的地に着きそう?
海底都市リュウグウがどうやって海底に都市を築いてるか気になるー。確か、海のエルフが住んでるんだよね。
「……あ、王鮪がいなくなった」
僕たちの関心が逸れたのを察したように、王鮪が海の闇へと消えていった。ちょっと残念。
テイムできたら、モンちゃんに「いいだろー」って自慢できそうだけど……魚系モンスターのテイム方法はよくわからないな。釣り上げちゃダメだもんね。海の中で出会ったら、即バトルだろうし。
そんなことを考えている間にも、僕たちはゆっくりと下降を続け、ついに海底都市リュウグウを見られる距離まで近づいた。
「ほわぁ……想像する竜宮城のイメージにピッタリ……」
海底都市リュウグウは、西洋のアトランティスよりもやっぱり浦島太郎の竜宮城をモチーフにしてると察する景観だ。
和風の建築物が並ぶ街の奥には、一際立派な宮殿がある。あそこにお姫様とかいるのかな。
街は全体的に朱色をメインにしてて、青と黒の海に囲まれているから目立ってる。
海の中にある街なのに、当たり前のように街路樹とかがあるし……と思いながらよく見たら、木のような海草だった。普通の街中っぽいところに生えてる海草って、微妙に違和感があって面白い。
公園らしきところにあるベンチは貝殻だし、鮮やかな色のお花かと思ったものはたぶんイソギンチャクとかサンゴとかっぽい。あとで近くで観察しよう。
上から見ているだけでもワクワクする街並みだ。早く散策したいなぁ。
「ふぇっ!?」
つい間抜けな声を出してビビり、近くにいたスラリンにムギュッと抱きついちゃった。スラリンは変形したけどなぜか嬉しそう。
おー、やっぱりスライムって気持ちいい……って、今はそれどころじゃなかった!
ハッとした瞬間に、周囲に光が戻る。
青だ。僕たちを包むように、いくつもの光の柱がある青が広がっていた。
「——これ……海の中……?」
水族館とかでたまにある、全体を海に囲まれたような景色に圧倒される。上からは日差しが光の柱となって降り注いでいるから、明るくて綺麗だ。
時々魚系モンスターが泳いでいるのが見えるけど、僕たちに気づいてないみたいにスルーされてる。金鰺がまさしく黄金みたいに光っててゴージャス!
「ぴぅ(海を泳いでるみたいだね)」
「にゃ(ヒスイはちょっとこういうのは苦手にゃ……)」
「きゅーきゅい(ここ、シャボン玉の中みたいね)」
ヒスイは泳ぐの苦手そうだもんなぁ、と思ってたら、ナッティが意外なことを言った。
え、ここシャボン玉の中なの?
意識して海との境界を観察してみたら、確かに透明な薄い膜がある気がする。ただし、形は円柱形だから、シャボン玉とは違うと思うけど。ちょうど、さっきまでいた白い建物みたいな形だ。
「さっきの魔法陣はここの中に転移するためのものだったのかなぁ……って、これ、海の底におりていってない?」
ふと気づいたら、海面が少し遠くなってる。日の光も届かなくなってきて、海が深い青色に変わってきた。
幸い、僕たちがいるここは膜が光を発してるのか、お互いが見えなくなるほどの暗さではないけど。
「きゅぃ(おりてるねー。このまま海底都市リュウグウに行けるのかも)」
「あ、そっか。あの建物、入口だったもんね。こんな風に移動するのは予想外だったけど」
正直、普通に転移させてくれればいいのでは? と思わなくもない。でも、こうして海の中を観賞できるのも、たまには楽しくていいね。
見える範囲を泳ぐ魚系モンスターは、見たことがあるものもいれば、存在さえ知らなかったようなものまで多種多様だ。
スラリンたちと和気あいあいと感想を話しながら、膜に手をついて海を眺めていると、不意に大きな魚体が闇から現れるように近づいてきた。
「デカッ! 怖いよぉ」
経験上、魚系モンスターが僕たちを襲ってこないとはわかっていたけど、近くに来られるとそれなりにビビる。とはいえ、泳いでいる姿をマジマジと観察できる機会はそうそうないから、目を逸らすことなく見続けるけど。
この魚、なんだろう? 大きいし、食べごたえありそうだなぁ。なんとなく、リアルで見たことがある魚と似てる気がする。リアルでは魚に角ようなものはないと思うけど。
「あ、鑑定しよ」
スキルを思い出して、魚がいなくなる前にと慌てて鑑定する。
額辺りに二本の鬼の角のようなものを持つ、黒色のモンスターの正体は——
——————
【王鮪】
イノカン国の内海で王者と呼ばれる魚系モンスター
二本の角で敵を攻撃する
素早い動きが特徴
——————
「王鮪……って、モンちゃんが好きなモンスター!」
おお! モンちゃんお気に入りのモンスターはこの子かぁ。
僕に釣りを教えてくれた師匠曰く、すごく美味しい魚らしい。マグロいいよねぇ。でも、食べたらモンちゃんに嫌われちゃう? それはイヤだなぁ。
「強そうだねぇ」
「ぴぅ(ボクは戦いたくないよ……)」
「にゃ(モモが指示するなら、がんばって戦うにゃ)」
ちょっと引いてるユキマルの横で、ヒスイは勇気を奮い立たせた様子で王鮪を凝視しながら呟く。
え、僕はそんな指示出さないから、緊張しなくていいよ?
「いやいや、ここで戦うのはたぶん無理でしょ。万が一この膜が破れたら、僕たち死んじゃうよ?」
こんなところで死に戻りはイヤですー。
僕がそう言うと、ユキマルたちがホッと息を吐いて、落ち着いて王鮪を観察し始めた。
この王鮪、なぜか僕たちがいるシャボン玉みたいな膜の周囲をグルグルと回ってるんだよ。気づかれてるわけじゃないよね? 攻撃される感じじゃないしなぁ。どうしてだろう?
大きさは暴走鯱ほどではなくとも、人の数倍はありそうだから、結構な威圧感がある。
モンちゃん、こういうモンスターが好きなのかぁ。この前会った鷲っぽいモンスターのアクロもカッコいい系だったけど、ちょっとタイプが違うなぁ。
「きゅぃ(あ、下の方が明るいよ)」
王鮪に付き纏われながら観察していると、スラリンがぴょんと跳ねて言った。
つられて足下を見ると、確かに淡い光が見える。もしかして、目的地に着きそう?
海底都市リュウグウがどうやって海底に都市を築いてるか気になるー。確か、海のエルフが住んでるんだよね。
「……あ、王鮪がいなくなった」
僕たちの関心が逸れたのを察したように、王鮪が海の闇へと消えていった。ちょっと残念。
テイムできたら、モンちゃんに「いいだろー」って自慢できそうだけど……魚系モンスターのテイム方法はよくわからないな。釣り上げちゃダメだもんね。海の中で出会ったら、即バトルだろうし。
そんなことを考えている間にも、僕たちはゆっくりと下降を続け、ついに海底都市リュウグウを見られる距離まで近づいた。
「ほわぁ……想像する竜宮城のイメージにピッタリ……」
海底都市リュウグウは、西洋のアトランティスよりもやっぱり浦島太郎の竜宮城をモチーフにしてると察する景観だ。
和風の建築物が並ぶ街の奥には、一際立派な宮殿がある。あそこにお姫様とかいるのかな。
街は全体的に朱色をメインにしてて、青と黒の海に囲まれているから目立ってる。
海の中にある街なのに、当たり前のように街路樹とかがあるし……と思いながらよく見たら、木のような海草だった。普通の街中っぽいところに生えてる海草って、微妙に違和感があって面白い。
公園らしきところにあるベンチは貝殻だし、鮮やかな色のお花かと思ったものはたぶんイソギンチャクとかサンゴとかっぽい。あとで近くで観察しよう。
上から見ているだけでもワクワクする街並みだ。早く散策したいなぁ。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします
あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】