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10章 海は広くて冒険いっぱい
383.宮殿前でわちゃわちゃ
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ルトに「遅くね?」と微妙な顔をされながらも、キージィに乗って無事に宮殿に着いた。
僕を降ろしたキージィは『じゃあの』と言って去っていく。ほんとに僕を乗せて送り届けてくれただけなんだ……もうちょっと交流を重ねたら何か起きそう!
それはともかく。
宮殿は大きな石の門があって、その前に門衛さんが二人立っていた。
門扉は開いてて、貝殻の飛び石を進んだ先に、赤色の建物が見える。ところどころキラキラとした石や貝殻で飾られてて綺麗。
「おー、遠くから見た時は木造の建物かと思ってたけど、石っぽいね?」
「石、つーか、珊瑚じゃね?」
「……珊瑚?」
ルトに言われてマジマジと宮殿の方を見る。
え、この巨大な建物、全部が珊瑚でできてるの? すごいね!?
目をパチパチさせながら驚いていると、リリがふふっと笑う声が聞こえてきた。
「ちなみに街中の建物も、あれ、木造じゃないよ」
「……どう見ても木だったよ?」
なんですと……!?
僕がちょっと大げさに驚いて見せたら、リリは吹き出すようにして笑い、ルトは「そんな重要な情報じゃねぇだろ」とどうでもよさそうな顔をしてそっぽを向く。
たぶん、ルトは門衛さんと目が合って、居心地悪かったんだと思う。僕たち『え、この子ら何しに来たの?』って目で見られてるから。
「街の建物は海藻の一種らしいよー。木くらい太い茎でできてるの」
「それはもはや木って言っていいんじゃない?」
街路樹の代わりに海藻が植わってるんだから、海藻が木みたいなものと言われても納得するしかない。
海藻でできた建物って強度が大丈夫なのか不思議だけど、リリ曰く「ここは海中だから海藻の方が耐久性がある」ということらしい。
さらに詳しく聞いてみると、僕が普通に空気があると思っているこの空間も、実際は海水で満たされてるんだとか。意味がわからないよ。
水守りみたいな効果が、街にいる人全員に付与されてるようなものかな?
「——リリ、よく知ってるねー?」
「定期船内に資料があったの。モモは見てないだろうけど」
ニコッと笑って回答をもらった。
なるほど? 確かに見てませんね。僕、自分の船で来たからー。
「二人とも、僕が定期船を使ってないって知ってるんだ?」
「お前に関する情報が広がる速度はエグいぞ」
「……おーけー、察した」
遠い目をするルトを見て、僕もスンッとなって頷いた。もふもふ教ってすごい。
僕とルトの横では、リリがニコニコ笑ってる。わりとリリはタマモ寄りの感性だよね。
「宮殿が珊瑚ってことは、あれ、ちょっとずつデカくなんのかね?」
ルトが話題を変えた。ボソッと「精神疲労回避」って呟いてるから、僕も合わせる。
「珊瑚って生き物(?)だもんねー。成長する宮殿なら面白いかも? 中の部屋とかどうなるのかな」
「さあ? ……それより、そろそろ行こうぜ。視線が痛い」
「そうだねー、ルトが先陣切るのかと思ってたんだけど」
「一番許可もらいやすそうなのはモモだろ」
ルトは雑談をしたがってたわけじゃなくて、僕が動くのを待ってたらしい。ルトたちも問題なく通れると思うんだけどな。
まぁ、いっか——と僕は門に向かう。
門衛さんの前で立ち止まると、じぃっと見下ろされた。
しばらく見つめ合って膠着状態になった後、僕はひょいっと手を上げる。
「こんちゃ!」
「こ、こんちゃ……?」
戸惑わせちゃった。なんて挨拶したらいいか迷っただけなんだよー。だから、『この奇妙な生き物は何!?』って顔しないで。
門衛さんたちは魚の鱗っぽいものが頬や手の一部についてる。種族はエルフじゃなさそう。あ、髪の先が尾びれみたいにヒラヒラしてる。綺麗~。
「門衛さんって人間じゃないよね?」
「は!? あ、うん、そうだね? 俺たちは魚人族だよ」
「人魚じゃないの?」
なんか惜しい! と思って聞いてみたら、普通に「人魚族とは別だね」と返された。人魚いるんだ? 会ってみたいなー。
へぇ、と頷いてたら、ルトに頭の天辺をツンツンとつつかれる。そして「モモ、今話すのってそれじゃないだろ」って言われた。
そうだったねー、ついうっかり。僕、好奇心に任せて行動しちゃうからー。
「こんちゃ、門衛さん」
手を上げて挨拶からし直すと、今度は普通に「こんちゃ」と返された。陸地で一般的な挨拶だと誤解された気がするけど、訂正はしません。楽しいから。ルトには呆れた顔をされてる。
「僕たち、宮殿図書館に行きたいんだけど、入っていーい?」
「……あぁ、そうか……うーん」
何か考えるように門衛さんが僕を見る。それから一度頷くと、今度はリリとルトを眺めて、一拍置いてニコッと笑った。
「——いいよ。君たちは海に愛されているようだからね」
「ぱーどぅん?」
精霊なんちゃら、と言われると思ってたけど、さらに大きなことを言われた。僕たち、海に愛されてるの?
ルトに『まーたなんかやったのか?』って目で見られて、僕はぶんぶんと首を横に振る。冤罪ダメ絶対!
「あ、意味がわからなかった? 今言った海っていうのは海精霊のことなんだ」
「それなら心当たりあるー」
解説してもらって納得。やっぱりメーアたち海精霊から祝福とか受けてたらオッケーってことだったらしい。
ルトもホッとした感じで頷く。
「宮殿図書館は入って右手側に進んだところにあるよ。道がわからなかったら宮殿に案内を頼んで」
どうぞ、と門の先を示されて「ありがとー」と進んでからふと立ち止まる。
——宮殿に案内を頼むってどういうこと?
僕を降ろしたキージィは『じゃあの』と言って去っていく。ほんとに僕を乗せて送り届けてくれただけなんだ……もうちょっと交流を重ねたら何か起きそう!
それはともかく。
宮殿は大きな石の門があって、その前に門衛さんが二人立っていた。
門扉は開いてて、貝殻の飛び石を進んだ先に、赤色の建物が見える。ところどころキラキラとした石や貝殻で飾られてて綺麗。
「おー、遠くから見た時は木造の建物かと思ってたけど、石っぽいね?」
「石、つーか、珊瑚じゃね?」
「……珊瑚?」
ルトに言われてマジマジと宮殿の方を見る。
え、この巨大な建物、全部が珊瑚でできてるの? すごいね!?
目をパチパチさせながら驚いていると、リリがふふっと笑う声が聞こえてきた。
「ちなみに街中の建物も、あれ、木造じゃないよ」
「……どう見ても木だったよ?」
なんですと……!?
僕がちょっと大げさに驚いて見せたら、リリは吹き出すようにして笑い、ルトは「そんな重要な情報じゃねぇだろ」とどうでもよさそうな顔をしてそっぽを向く。
たぶん、ルトは門衛さんと目が合って、居心地悪かったんだと思う。僕たち『え、この子ら何しに来たの?』って目で見られてるから。
「街の建物は海藻の一種らしいよー。木くらい太い茎でできてるの」
「それはもはや木って言っていいんじゃない?」
街路樹の代わりに海藻が植わってるんだから、海藻が木みたいなものと言われても納得するしかない。
海藻でできた建物って強度が大丈夫なのか不思議だけど、リリ曰く「ここは海中だから海藻の方が耐久性がある」ということらしい。
さらに詳しく聞いてみると、僕が普通に空気があると思っているこの空間も、実際は海水で満たされてるんだとか。意味がわからないよ。
水守りみたいな効果が、街にいる人全員に付与されてるようなものかな?
「——リリ、よく知ってるねー?」
「定期船内に資料があったの。モモは見てないだろうけど」
ニコッと笑って回答をもらった。
なるほど? 確かに見てませんね。僕、自分の船で来たからー。
「二人とも、僕が定期船を使ってないって知ってるんだ?」
「お前に関する情報が広がる速度はエグいぞ」
「……おーけー、察した」
遠い目をするルトを見て、僕もスンッとなって頷いた。もふもふ教ってすごい。
僕とルトの横では、リリがニコニコ笑ってる。わりとリリはタマモ寄りの感性だよね。
「宮殿が珊瑚ってことは、あれ、ちょっとずつデカくなんのかね?」
ルトが話題を変えた。ボソッと「精神疲労回避」って呟いてるから、僕も合わせる。
「珊瑚って生き物(?)だもんねー。成長する宮殿なら面白いかも? 中の部屋とかどうなるのかな」
「さあ? ……それより、そろそろ行こうぜ。視線が痛い」
「そうだねー、ルトが先陣切るのかと思ってたんだけど」
「一番許可もらいやすそうなのはモモだろ」
ルトは雑談をしたがってたわけじゃなくて、僕が動くのを待ってたらしい。ルトたちも問題なく通れると思うんだけどな。
まぁ、いっか——と僕は門に向かう。
門衛さんの前で立ち止まると、じぃっと見下ろされた。
しばらく見つめ合って膠着状態になった後、僕はひょいっと手を上げる。
「こんちゃ!」
「こ、こんちゃ……?」
戸惑わせちゃった。なんて挨拶したらいいか迷っただけなんだよー。だから、『この奇妙な生き物は何!?』って顔しないで。
門衛さんたちは魚の鱗っぽいものが頬や手の一部についてる。種族はエルフじゃなさそう。あ、髪の先が尾びれみたいにヒラヒラしてる。綺麗~。
「門衛さんって人間じゃないよね?」
「は!? あ、うん、そうだね? 俺たちは魚人族だよ」
「人魚じゃないの?」
なんか惜しい! と思って聞いてみたら、普通に「人魚族とは別だね」と返された。人魚いるんだ? 会ってみたいなー。
へぇ、と頷いてたら、ルトに頭の天辺をツンツンとつつかれる。そして「モモ、今話すのってそれじゃないだろ」って言われた。
そうだったねー、ついうっかり。僕、好奇心に任せて行動しちゃうからー。
「こんちゃ、門衛さん」
手を上げて挨拶からし直すと、今度は普通に「こんちゃ」と返された。陸地で一般的な挨拶だと誤解された気がするけど、訂正はしません。楽しいから。ルトには呆れた顔をされてる。
「僕たち、宮殿図書館に行きたいんだけど、入っていーい?」
「……あぁ、そうか……うーん」
何か考えるように門衛さんが僕を見る。それから一度頷くと、今度はリリとルトを眺めて、一拍置いてニコッと笑った。
「——いいよ。君たちは海に愛されているようだからね」
「ぱーどぅん?」
精霊なんちゃら、と言われると思ってたけど、さらに大きなことを言われた。僕たち、海に愛されてるの?
ルトに『まーたなんかやったのか?』って目で見られて、僕はぶんぶんと首を横に振る。冤罪ダメ絶対!
「あ、意味がわからなかった? 今言った海っていうのは海精霊のことなんだ」
「それなら心当たりあるー」
解説してもらって納得。やっぱりメーアたち海精霊から祝福とか受けてたらオッケーってことだったらしい。
ルトもホッとした感じで頷く。
「宮殿図書館は入って右手側に進んだところにあるよ。道がわからなかったら宮殿に案内を頼んで」
どうぞ、と門の先を示されて「ありがとー」と進んでからふと立ち止まる。
——宮殿に案内を頼むってどういうこと?
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