もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
410 / 555
10章 海は広くて冒険いっぱい

384.宮殿に潜入(?)します!

しおりを挟む
 首を傾げながら宮殿に入る。
 赤い珊瑚でできた宮殿は、ビックリするくらい大きい。たぶん一つの珊瑚じゃなくて、たくさんの珊瑚が集まってできてるんだと思う。

「なんっつーか……巨大な珊瑚の中身をくり抜いてる感じ?」

 入口すぐは少し広めの空間になっていて、そこから四方八方に通路が伸びてる。これ、普通に入ったら迷子になるやつ……迷路みたいだよ。

「そうね。面白いけど、さっきの門衛さんの言葉が気になる」
「僕もー。宮殿が案内してくれるってどういうことなんだろうね?」

 リリの言葉に頷きながら、右を見る。門衛さんが右に進めって言ってたから。
 でも……

「——右手側って、どれ?」

 大量に通路があってわかりませーん! いきなり迷子! 少なくとも右に伸びてる通路が五つあるよ。

 思わずリリと顔を見合わせる。いつも明るく鷹揚とした感じのリリも、さすがにちょっと困惑してるようだ。

「あー……早速、謎の答え合わせか? えっと、宮殿図書館に行く道はどれだ?」

 ルトが躊躇いながらも誰もいないところへ問いかけた。ルトって意外と適応力高いね。

 こんな感じで案内してもらえるのかな、と疑問に思いながら眺めていると、宮殿の一部がもぞっと動いた。

「……動いた!?」

 驚きすぎて二度見しちゃったよ。
 リリが「わあ……」と言葉を失って目を丸くしてる。ルトは「案内ってこれか?」と微妙に気持ち悪そうに眉を顰めた。

 動いたところをじぃっと見ていると、壁から何かが飛び出てきた。

「……矢印?」

 よく見ると、赤い矢印だ。それが通路の先を示してる。これが案内のようだ。

「矢印出すなら、最初から案内板を置いてくれりゃよくね?」
「身も蓋もないこと言うー」

 ルトにツッコミを入れつつ、矢印が指す方へ進む。
 矢印はルトの言葉を理解しているのか、こころなしかしょんぼりとヘタれた感じに見えた。
 僕の友だちがなんかごめんね?

 テクテクと登ったり下ったりしながら歩いて、たまに通路が分岐する度に「宮殿図書館どーっちだ?」と聞いて矢印を出してもらった。
 ちょっと面倒くさくなって、僕も最初から案内板欲しいなって思ったのは内緒。

「あ、なんか着きそう」

 歩き続けた先に、大きな扉があった。
 開放されてるから入ってもよさそう。「お邪魔しまーす」と遠慮なく進むと、大量の貝殻が壁のように積まれている小部屋らしき場所に着いた。
 扉の大きさに対して、予想以上に空間が狭い。

 上には膜越しに海水が揺らめいているのが見える。そこを時折魚系モンスターがスイーッと泳いでいく。これ、宮殿の外に出ちゃった感じ?

「え、ここが図書館?」

 三人で困惑しちゃう。本が一つもないんだけど?

「おや、陸の方がいらっしゃるとは珍しい」

 不意に声が聞こえた。ルトがピクッと動いて警戒してる。
 ……普通、そうやって警戒するものなんだね? 僕、そういうのしたことないやー。

「誰だ?」
「ここの司書ですよ」

 貝殻の壁の一部に道があったのか、ひょいっと海エルフらしき人が顔を覗かせる。興味深そうに僕たちを眺めて微笑んでいた。

「どうも。俺はルトです。こっちはリリで、このウサギはモモ。お察しの通り、リュウグウ外から来た人間です。あ、一匹人間じゃねーっすけど」

 一匹って言うなー。
 ちょっぴり抗議する意味を込めて、ルトの脚を叩いた。衝撃を感じる程度だろうけど。

「私は……通称リオルです。お好きに呼んでください」

 あ、やっぱり長い名前を持ってるんだね。リオルかー、リオルン、リオッチ、リオリーナ……

「リオさん、よろしくー」
「あだ名をもらってしまいましたね。ふふ、よろしく」

 シンプルイズベスト! ということで、あだ名を付けて呼んだら、嬉しそうに微笑まれた。僕があだ名を付けたら文句を言ってたモンちゃんとは大違いだね。

 ルトは『なんでいきなりあだ名……』と呆れた顔をしてる。
 なんとなくリオさんとは仲良くなれる気がしたんだよー。
 リリは普通に「リオさんかー」と頷いていた。

「リオさん、僕たち、この国の歴史を調べに来たんだけど、呪いとかリュウグウが狭くなってる原因についてとか、載ってる資料ある?」
「珍しいものを調べに来ましたね?」

 リオさんが首を傾げる。
 ルトとリリも、「リュウグウが狭くなってる……?」と不思議そうに呟いた。

「あ、それについては報告してなかったかも?」
「情報くれ」

 ジトッとした目でルトに頼まれたから、店員のルフさんから聞いた話と、僕が藤花貝ウィスティシェルを採りに行った時の話を説明した。

「——へぇ、膜の外側まで国の一部とされてるなんて知らなかったな」

 目を丸くするルトに、リオさんが微笑む。

「海底都市リュウグウは、かつて陸地にあり、海の王によって海底に沈むことになった、古代王国の都市全体を指していますからね。いくら外周部が海に呑まれようと、そこがリュウグウの一部であることに変わりありません」
「え、リュウグウって、昔は陸地にあったんっすか?」

 リオさんの解説に、ルトが目を丸くする。リリも無言で驚いていた。
 僕は「うーん?」と首を傾げる。なんとなく聞き覚えがあるような? もしかしたら、ラファイエットさんにちょっと聞いてる話だったかも。

 ルトにジトッと疑わしげに見られて、「えへへー」と笑って誤魔化す。
 今情報をもらえたんだから、僕がちょっと忘れてたくらいどうってことないでしょ。

「そうですよ。では、リュウグウの歴史を語る資料をお見せしましょう」

 リオさんは僕たちのやり取りを微笑ましげに眺め、身を翻した。
 この貝殻だらけの空間のどこに資料があるんだろうねー?

しおりを挟む
感想 2,532

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。