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10章 海は広くて冒険いっぱい
384.宮殿に潜入(?)します!
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首を傾げながら宮殿に入る。
赤い珊瑚でできた宮殿は、ビックリするくらい大きい。たぶん一つの珊瑚じゃなくて、たくさんの珊瑚が集まってできてるんだと思う。
「なんっつーか……巨大な珊瑚の中身をくり抜いてる感じ?」
入口すぐは少し広めの空間になっていて、そこから四方八方に通路が伸びてる。これ、普通に入ったら迷子になるやつ……迷路みたいだよ。
「そうね。面白いけど、さっきの門衛さんの言葉が気になる」
「僕もー。宮殿が案内してくれるってどういうことなんだろうね?」
リリの言葉に頷きながら、右を見る。門衛さんが右に進めって言ってたから。
でも……
「——右手側って、どれ?」
大量に通路があってわかりませーん! いきなり迷子! 少なくとも右に伸びてる通路が五つあるよ。
思わずリリと顔を見合わせる。いつも明るく鷹揚とした感じのリリも、さすがにちょっと困惑してるようだ。
「あー……早速、謎の答え合わせか? えっと、宮殿図書館に行く道はどれだ?」
ルトが躊躇いながらも誰もいないところへ問いかけた。ルトって意外と適応力高いね。
こんな感じで案内してもらえるのかな、と疑問に思いながら眺めていると、宮殿の一部がもぞっと動いた。
「……動いた!?」
驚きすぎて二度見しちゃったよ。
リリが「わあ……」と言葉を失って目を丸くしてる。ルトは「案内ってこれか?」と微妙に気持ち悪そうに眉を顰めた。
動いたところをじぃっと見ていると、壁から何かが飛び出てきた。
「……矢印?」
よく見ると、赤い矢印だ。それが通路の先を示してる。これが案内のようだ。
「矢印出すなら、最初から案内板を置いてくれりゃよくね?」
「身も蓋もないこと言うー」
ルトにツッコミを入れつつ、矢印が指す方へ進む。
矢印はルトの言葉を理解しているのか、こころなしかしょんぼりとヘタれた感じに見えた。
僕の友だちがなんかごめんね?
テクテクと登ったり下ったりしながら歩いて、たまに通路が分岐する度に「宮殿図書館どーっちだ?」と聞いて矢印を出してもらった。
ちょっと面倒くさくなって、僕も最初から案内板欲しいなって思ったのは内緒。
「あ、なんか着きそう」
歩き続けた先に、大きな扉があった。
開放されてるから入ってもよさそう。「お邪魔しまーす」と遠慮なく進むと、大量の貝殻が壁のように積まれている小部屋らしき場所に着いた。
扉の大きさに対して、予想以上に空間が狭い。
上には膜越しに海水が揺らめいているのが見える。そこを時折魚系モンスターがスイーッと泳いでいく。これ、宮殿の外に出ちゃった感じ?
「え、ここが図書館?」
三人で困惑しちゃう。本が一つもないんだけど?
「おや、陸の方がいらっしゃるとは珍しい」
不意に声が聞こえた。ルトがピクッと動いて警戒してる。
……普通、そうやって警戒するものなんだね? 僕、そういうのしたことないやー。
「誰だ?」
「ここの司書ですよ」
貝殻の壁の一部に道があったのか、ひょいっと海エルフらしき人が顔を覗かせる。興味深そうに僕たちを眺めて微笑んでいた。
「どうも。俺はルトです。こっちはリリで、このウサギはモモ。お察しの通り、リュウグウ外から来た人間です。あ、一匹人間じゃねーっすけど」
一匹って言うなー。
ちょっぴり抗議する意味を込めて、ルトの脚を叩いた。衝撃を感じる程度だろうけど。
「私は……通称リオルです。お好きに呼んでください」
あ、やっぱり長い名前を持ってるんだね。リオルかー、リオルン、リオッチ、リオリーナ……
「リオさん、よろしくー」
「あだ名をもらってしまいましたね。ふふ、よろしく」
シンプルイズベスト! ということで、あだ名を付けて呼んだら、嬉しそうに微笑まれた。僕があだ名を付けたら文句を言ってたモンちゃんとは大違いだね。
ルトは『なんでいきなりあだ名……』と呆れた顔をしてる。
なんとなくリオさんとは仲良くなれる気がしたんだよー。
リリは普通に「リオさんかー」と頷いていた。
「リオさん、僕たち、この国の歴史を調べに来たんだけど、呪いとかリュウグウが狭くなってる原因についてとか、載ってる資料ある?」
「珍しいものを調べに来ましたね?」
リオさんが首を傾げる。
ルトとリリも、「リュウグウが狭くなってる……?」と不思議そうに呟いた。
「あ、それについては報告してなかったかも?」
「情報くれ」
ジトッとした目でルトに頼まれたから、店員のルフさんから聞いた話と、僕が藤花貝を採りに行った時の話を説明した。
「——へぇ、膜の外側まで国の一部とされてるなんて知らなかったな」
目を丸くするルトに、リオさんが微笑む。
「海底都市リュウグウは、かつて陸地にあり、海の王によって海底に沈むことになった、古代王国の都市全体を指していますからね。いくら外周部が海に呑まれようと、そこがリュウグウの一部であることに変わりありません」
「え、リュウグウって、昔は陸地にあったんっすか?」
リオさんの解説に、ルトが目を丸くする。リリも無言で驚いていた。
僕は「うーん?」と首を傾げる。なんとなく聞き覚えがあるような? もしかしたら、ラファイエットさんにちょっと聞いてる話だったかも。
ルトにジトッと疑わしげに見られて、「えへへー」と笑って誤魔化す。
今情報をもらえたんだから、僕がちょっと忘れてたくらいどうってことないでしょ。
「そうですよ。では、リュウグウの歴史を語る資料をお見せしましょう」
リオさんは僕たちのやり取りを微笑ましげに眺め、身を翻した。
この貝殻だらけの空間のどこに資料があるんだろうねー?
赤い珊瑚でできた宮殿は、ビックリするくらい大きい。たぶん一つの珊瑚じゃなくて、たくさんの珊瑚が集まってできてるんだと思う。
「なんっつーか……巨大な珊瑚の中身をくり抜いてる感じ?」
入口すぐは少し広めの空間になっていて、そこから四方八方に通路が伸びてる。これ、普通に入ったら迷子になるやつ……迷路みたいだよ。
「そうね。面白いけど、さっきの門衛さんの言葉が気になる」
「僕もー。宮殿が案内してくれるってどういうことなんだろうね?」
リリの言葉に頷きながら、右を見る。門衛さんが右に進めって言ってたから。
でも……
「——右手側って、どれ?」
大量に通路があってわかりませーん! いきなり迷子! 少なくとも右に伸びてる通路が五つあるよ。
思わずリリと顔を見合わせる。いつも明るく鷹揚とした感じのリリも、さすがにちょっと困惑してるようだ。
「あー……早速、謎の答え合わせか? えっと、宮殿図書館に行く道はどれだ?」
ルトが躊躇いながらも誰もいないところへ問いかけた。ルトって意外と適応力高いね。
こんな感じで案内してもらえるのかな、と疑問に思いながら眺めていると、宮殿の一部がもぞっと動いた。
「……動いた!?」
驚きすぎて二度見しちゃったよ。
リリが「わあ……」と言葉を失って目を丸くしてる。ルトは「案内ってこれか?」と微妙に気持ち悪そうに眉を顰めた。
動いたところをじぃっと見ていると、壁から何かが飛び出てきた。
「……矢印?」
よく見ると、赤い矢印だ。それが通路の先を示してる。これが案内のようだ。
「矢印出すなら、最初から案内板を置いてくれりゃよくね?」
「身も蓋もないこと言うー」
ルトにツッコミを入れつつ、矢印が指す方へ進む。
矢印はルトの言葉を理解しているのか、こころなしかしょんぼりとヘタれた感じに見えた。
僕の友だちがなんかごめんね?
テクテクと登ったり下ったりしながら歩いて、たまに通路が分岐する度に「宮殿図書館どーっちだ?」と聞いて矢印を出してもらった。
ちょっと面倒くさくなって、僕も最初から案内板欲しいなって思ったのは内緒。
「あ、なんか着きそう」
歩き続けた先に、大きな扉があった。
開放されてるから入ってもよさそう。「お邪魔しまーす」と遠慮なく進むと、大量の貝殻が壁のように積まれている小部屋らしき場所に着いた。
扉の大きさに対して、予想以上に空間が狭い。
上には膜越しに海水が揺らめいているのが見える。そこを時折魚系モンスターがスイーッと泳いでいく。これ、宮殿の外に出ちゃった感じ?
「え、ここが図書館?」
三人で困惑しちゃう。本が一つもないんだけど?
「おや、陸の方がいらっしゃるとは珍しい」
不意に声が聞こえた。ルトがピクッと動いて警戒してる。
……普通、そうやって警戒するものなんだね? 僕、そういうのしたことないやー。
「誰だ?」
「ここの司書ですよ」
貝殻の壁の一部に道があったのか、ひょいっと海エルフらしき人が顔を覗かせる。興味深そうに僕たちを眺めて微笑んでいた。
「どうも。俺はルトです。こっちはリリで、このウサギはモモ。お察しの通り、リュウグウ外から来た人間です。あ、一匹人間じゃねーっすけど」
一匹って言うなー。
ちょっぴり抗議する意味を込めて、ルトの脚を叩いた。衝撃を感じる程度だろうけど。
「私は……通称リオルです。お好きに呼んでください」
あ、やっぱり長い名前を持ってるんだね。リオルかー、リオルン、リオッチ、リオリーナ……
「リオさん、よろしくー」
「あだ名をもらってしまいましたね。ふふ、よろしく」
シンプルイズベスト! ということで、あだ名を付けて呼んだら、嬉しそうに微笑まれた。僕があだ名を付けたら文句を言ってたモンちゃんとは大違いだね。
ルトは『なんでいきなりあだ名……』と呆れた顔をしてる。
なんとなくリオさんとは仲良くなれる気がしたんだよー。
リリは普通に「リオさんかー」と頷いていた。
「リオさん、僕たち、この国の歴史を調べに来たんだけど、呪いとかリュウグウが狭くなってる原因についてとか、載ってる資料ある?」
「珍しいものを調べに来ましたね?」
リオさんが首を傾げる。
ルトとリリも、「リュウグウが狭くなってる……?」と不思議そうに呟いた。
「あ、それについては報告してなかったかも?」
「情報くれ」
ジトッとした目でルトに頼まれたから、店員のルフさんから聞いた話と、僕が藤花貝を採りに行った時の話を説明した。
「——へぇ、膜の外側まで国の一部とされてるなんて知らなかったな」
目を丸くするルトに、リオさんが微笑む。
「海底都市リュウグウは、かつて陸地にあり、海の王によって海底に沈むことになった、古代王国の都市全体を指していますからね。いくら外周部が海に呑まれようと、そこがリュウグウの一部であることに変わりありません」
「え、リュウグウって、昔は陸地にあったんっすか?」
リオさんの解説に、ルトが目を丸くする。リリも無言で驚いていた。
僕は「うーん?」と首を傾げる。なんとなく聞き覚えがあるような? もしかしたら、ラファイエットさんにちょっと聞いてる話だったかも。
ルトにジトッと疑わしげに見られて、「えへへー」と笑って誤魔化す。
今情報をもらえたんだから、僕がちょっと忘れてたくらいどうってことないでしょ。
「そうですよ。では、リュウグウの歴史を語る資料をお見せしましょう」
リオさんは僕たちのやり取りを微笑ましげに眺め、身を翻した。
この貝殻だらけの空間のどこに資料があるんだろうねー?
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