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10章 海は広くて冒険いっぱい
385.調べものします?
リオさんの後についていく。
貝殻の壁は迷路のように連なっているようで、いくら歩けども終わりが見えない。そして本がない。
「……ここ、図書館だよね?」
「俺も同じこと思った」
ルトとコソコソと話す。リオさんが迷いのない足取りだから問題はないんだろうけど、ちょっと不安になるよ。
僕たちの横にいるリリはのんびりと周囲を眺めながら歩き、会話が聞こえたのかふふっと笑った。
「書物が紙の本とは限らないんじゃない? リアルだって、電子書籍が一般的でしょ」
「あ、確かに」
リリに言われて、僕は思わずポンッと手を叩いた。
このゲームの世界観が剣と魔法のファンタジーだからうっかり忘れてたけど、紙の本ってリアルではあまり手に取ったことないんだよねー。
「——急に電子書籍が出てきたら、世界観が崩壊する気がする……」
リオさんがタブレット端末に資料を表示させる光景を想像して微妙な気分になる。
ファンタジー感は大切にしてほしいな!
そんな僕の願いが届いたのか否か……リオさんが立ち止まった先にタブレット端末はなかった。というか、ここまで見てきたものと違うものは一切なかった。
どういうこと?
きょとんと首を傾げている僕たちの前で、リオさんは壁に積み上げられた貝殻の一つに手を伸ばす。そして、閉じた二枚貝をコツコツとノックすると、それがパカリと口を開けた。中にあるのは、キラキラと輝くダイヤモンドのような石。
リオさんは当然のようにその石を取り出し、僕たちに差し出してくる。ニコニコと笑ってるけど意味がわからないよ。
とりあえず代表して僕が受け取りました。
……うん、いくら眺めてもこれは石。宝石っぽい感じ。感触もしっかり硬いし、ゼリーとかではない。
こういう時こそ全鑑定スキルの出番だー。
——————
【記録石】レア度☆☆☆
海底都市リュウグウが保有する特殊技術で作られた記録媒体
これ一つで記録された内容を再生可能
——————
「おお? これが本代わり?」
「本ですか? よくわかりませんが、この国で書物といえば、これが一般的ですよ」
リオさんがあっさりと答えた。
電子書籍とは違った謎技術が出てきたね。なんとなくファンタジー感が守られてる気がして満足です。
「これ、どうやって確認するの?」
「持った状態で再生と唱えればいいですよ」
ルトたちと視線を交わしてから、僕は言われた通り「【再生】!」と唱えてみた。
途端に、目の前に水でできた鏡のようなものが現れる。そして、その表面が波紋のように揺らいだかと思うと、こことは違う場所の光景が映った。
〈海精歴378年、海底都市リュウグウは暗黒の魔術士により滅亡の危機に陥っていた——〉
たくさんのエルフたちが黒いモヤに襲われて倒れていく映像(?)と共にナレーションが流れる。
再生って、ほんとに映像の再生だったんだ!? しかもナレーション付き! 凝ってるって言っていいのかな?
「おー、なんかショートムービー見てるみたいだな」
次々と変わりゆく展開を目と耳で追いながら、ルトが楽しそうに呟く。リリも「そうだねー」と微笑み頷いた。
ちょっと怖い感じの映像だけど、ホラーとかサスペンス映画と思えば、確かに面白いかも。ポップコーンとコーラが欲しい感じ。
試しにリオさんに「ここって飲食オッケー?」と聞いてみたら、ニコッと笑って「いいですよ。私も食べたいです」とちゃっかりおねだりされた。一緒に食べようねー。
コーラはないけど、炭酸レモネードは作製成功しているのです!
ポップコーンは適したトウモロコシを見つけるのに手間取ったけど、バッチリ完成した。味もいろいろあるよー。
食べ物を取り出すついでに、リラックスしながら鑑賞するためにクッションを取り出す。
僕特製『ウサギをダメにするクッション』だよ。僕が使うと巨大なベッド状態になる大きさで、沈み込む感覚にこだわって作った逸品。
ルトにちょっと呆れた感じで見られたけど、何か言われるより先にルトたちの分のクッションも提供したら、無言で受け取ってくれた。
リオさんはすでに嬉々とした感じで使って、クッションの上でだら~ってしてる。きっちりした見た目に反した怠惰な雰囲気にちょっと笑っちゃった。
「レモネードあげるね。ポップコーンは何味がいい? 塩、チョコ、塩キャラメル、イチゴ、仙桃ミルク——いろいろあるよ!」
「マジで多いな。作りすぎじゃね? あ、俺は塩」
「私は塩キャラメルがいいなー」
ほいほい、と二人にポップコーンとレモネードを渡したところで、リオさんに視線を向けたら、パチッと目が合った。
「私もいいんです? それならイチゴで」
「意外と可愛いチョイスだね」
「この国のイチゴと違いがあるか知りたいです」
「……海の底のこの国にもイチゴがあるの?」
「ありますよー」
僕が差し出したポップコーンを嬉しそうに受け取ったリオさんが、匂いをかぎながら、反対の手で宙から何かを取り出す。
円錐に近い形でうっすら紫色のゼリーっぽいプルプルしてるもの。なんだこれ。
受け取ってマジマジと眺める僕に、リオさんは「この国のイチゴです」と言った。
「えっ、これがほんとにイチゴ!?」
「正式名称は【偽苺】です。昔のご先祖様が陸で食べたイチゴを恋しがって、ここでも育つよう品種改良したらしいですよー」
「それ、外から持ってきた方が早くない?」
「ロマンです」
キリッとした顔でよくわかんない回答をされたけど、もらったこれがイチゴっぽい何かなことは確からしい。くれるって言うから、食べてみる。
シュワッと炭酸のような弾ける爽快感と共に、イチゴそっくりの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
「美味しい!」
「でしょう? あ、このレモネードというのは、弾ける感覚が似てますね」
僕が渡したレモネードを飲み、リオさんが「ほう」と感心した様子で微笑んだ。
「だねー。この偽苺を使ったら、すぐに炭酸ジュースが作れそう」
「たくさん欲しければ、市場で買うといいですよー。あ、でも、あそこは地元民しか利用できない……うぅん、美味しいものいただきましたし、紹介状を差し上げますねー」
リオさんが二枚貝の片割れのようなものを僕に差し出してきた。
受け取った途端、アナウンスが聞こえてくる。
〈シークレットミッション【海エルフとの友好度が50%を超える】を達成しました。シークレットエリアの地図(一部)が贈られました。マップが更新されます——更新されました〉
……おっと? 予想外なところでシークレットミッションを達成したね?
パチパチと目を瞬かせて固まっていると、ルトにジトッと見つめられた。
アナウンスはルトに聞こえてないだろうに、ルトの察し力がすごい。
僕は目を逸らす。
これはやらかしたわけじゃないんだよー。自然ななりゆきだよー。えへへ……シークレットエリアを散策したら情報をあげるね!
「——ねぇ、完全に映像見逃しちゃってるんだけどいいの?」
「あ、また再生しなきゃ!」
リリに言われて、いつの間にか記録映像が停止して消えていたことに気づき慌てる。
よし、今度は最初から鑑賞準備を整えて再生するぞー! 僕の装備はレモネード&ポップコーン(仙桃ミルク味)!
貝殻の壁は迷路のように連なっているようで、いくら歩けども終わりが見えない。そして本がない。
「……ここ、図書館だよね?」
「俺も同じこと思った」
ルトとコソコソと話す。リオさんが迷いのない足取りだから問題はないんだろうけど、ちょっと不安になるよ。
僕たちの横にいるリリはのんびりと周囲を眺めながら歩き、会話が聞こえたのかふふっと笑った。
「書物が紙の本とは限らないんじゃない? リアルだって、電子書籍が一般的でしょ」
「あ、確かに」
リリに言われて、僕は思わずポンッと手を叩いた。
このゲームの世界観が剣と魔法のファンタジーだからうっかり忘れてたけど、紙の本ってリアルではあまり手に取ったことないんだよねー。
「——急に電子書籍が出てきたら、世界観が崩壊する気がする……」
リオさんがタブレット端末に資料を表示させる光景を想像して微妙な気分になる。
ファンタジー感は大切にしてほしいな!
そんな僕の願いが届いたのか否か……リオさんが立ち止まった先にタブレット端末はなかった。というか、ここまで見てきたものと違うものは一切なかった。
どういうこと?
きょとんと首を傾げている僕たちの前で、リオさんは壁に積み上げられた貝殻の一つに手を伸ばす。そして、閉じた二枚貝をコツコツとノックすると、それがパカリと口を開けた。中にあるのは、キラキラと輝くダイヤモンドのような石。
リオさんは当然のようにその石を取り出し、僕たちに差し出してくる。ニコニコと笑ってるけど意味がわからないよ。
とりあえず代表して僕が受け取りました。
……うん、いくら眺めてもこれは石。宝石っぽい感じ。感触もしっかり硬いし、ゼリーとかではない。
こういう時こそ全鑑定スキルの出番だー。
——————
【記録石】レア度☆☆☆
海底都市リュウグウが保有する特殊技術で作られた記録媒体
これ一つで記録された内容を再生可能
——————
「おお? これが本代わり?」
「本ですか? よくわかりませんが、この国で書物といえば、これが一般的ですよ」
リオさんがあっさりと答えた。
電子書籍とは違った謎技術が出てきたね。なんとなくファンタジー感が守られてる気がして満足です。
「これ、どうやって確認するの?」
「持った状態で再生と唱えればいいですよ」
ルトたちと視線を交わしてから、僕は言われた通り「【再生】!」と唱えてみた。
途端に、目の前に水でできた鏡のようなものが現れる。そして、その表面が波紋のように揺らいだかと思うと、こことは違う場所の光景が映った。
〈海精歴378年、海底都市リュウグウは暗黒の魔術士により滅亡の危機に陥っていた——〉
たくさんのエルフたちが黒いモヤに襲われて倒れていく映像(?)と共にナレーションが流れる。
再生って、ほんとに映像の再生だったんだ!? しかもナレーション付き! 凝ってるって言っていいのかな?
「おー、なんかショートムービー見てるみたいだな」
次々と変わりゆく展開を目と耳で追いながら、ルトが楽しそうに呟く。リリも「そうだねー」と微笑み頷いた。
ちょっと怖い感じの映像だけど、ホラーとかサスペンス映画と思えば、確かに面白いかも。ポップコーンとコーラが欲しい感じ。
試しにリオさんに「ここって飲食オッケー?」と聞いてみたら、ニコッと笑って「いいですよ。私も食べたいです」とちゃっかりおねだりされた。一緒に食べようねー。
コーラはないけど、炭酸レモネードは作製成功しているのです!
ポップコーンは適したトウモロコシを見つけるのに手間取ったけど、バッチリ完成した。味もいろいろあるよー。
食べ物を取り出すついでに、リラックスしながら鑑賞するためにクッションを取り出す。
僕特製『ウサギをダメにするクッション』だよ。僕が使うと巨大なベッド状態になる大きさで、沈み込む感覚にこだわって作った逸品。
ルトにちょっと呆れた感じで見られたけど、何か言われるより先にルトたちの分のクッションも提供したら、無言で受け取ってくれた。
リオさんはすでに嬉々とした感じで使って、クッションの上でだら~ってしてる。きっちりした見た目に反した怠惰な雰囲気にちょっと笑っちゃった。
「レモネードあげるね。ポップコーンは何味がいい? 塩、チョコ、塩キャラメル、イチゴ、仙桃ミルク——いろいろあるよ!」
「マジで多いな。作りすぎじゃね? あ、俺は塩」
「私は塩キャラメルがいいなー」
ほいほい、と二人にポップコーンとレモネードを渡したところで、リオさんに視線を向けたら、パチッと目が合った。
「私もいいんです? それならイチゴで」
「意外と可愛いチョイスだね」
「この国のイチゴと違いがあるか知りたいです」
「……海の底のこの国にもイチゴがあるの?」
「ありますよー」
僕が差し出したポップコーンを嬉しそうに受け取ったリオさんが、匂いをかぎながら、反対の手で宙から何かを取り出す。
円錐に近い形でうっすら紫色のゼリーっぽいプルプルしてるもの。なんだこれ。
受け取ってマジマジと眺める僕に、リオさんは「この国のイチゴです」と言った。
「えっ、これがほんとにイチゴ!?」
「正式名称は【偽苺】です。昔のご先祖様が陸で食べたイチゴを恋しがって、ここでも育つよう品種改良したらしいですよー」
「それ、外から持ってきた方が早くない?」
「ロマンです」
キリッとした顔でよくわかんない回答をされたけど、もらったこれがイチゴっぽい何かなことは確からしい。くれるって言うから、食べてみる。
シュワッと炭酸のような弾ける爽快感と共に、イチゴそっくりの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
「美味しい!」
「でしょう? あ、このレモネードというのは、弾ける感覚が似てますね」
僕が渡したレモネードを飲み、リオさんが「ほう」と感心した様子で微笑んだ。
「だねー。この偽苺を使ったら、すぐに炭酸ジュースが作れそう」
「たくさん欲しければ、市場で買うといいですよー。あ、でも、あそこは地元民しか利用できない……うぅん、美味しいものいただきましたし、紹介状を差し上げますねー」
リオさんが二枚貝の片割れのようなものを僕に差し出してきた。
受け取った途端、アナウンスが聞こえてくる。
〈シークレットミッション【海エルフとの友好度が50%を超える】を達成しました。シークレットエリアの地図(一部)が贈られました。マップが更新されます——更新されました〉
……おっと? 予想外なところでシークレットミッションを達成したね?
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アナウンスはルトに聞こえてないだろうに、ルトの察し力がすごい。
僕は目を逸らす。
これはやらかしたわけじゃないんだよー。自然ななりゆきだよー。えへへ……シークレットエリアを散策したら情報をあげるね!
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