もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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10章 海は広くて冒険いっぱい

388.のんびりさんのハイペース

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 すっごく脱線した気がするけど、気分を入れ替えて、リオさんが持ってきてくれた資料を確認した。これも映像記録だ。というか、海エルフの記録はすべて映像で残されているらしい。

 見た映像は、海のエルフ——映像の中で海の王と呼ばれていた——によって、大規模な魔法をかけられて島がゆっくりと海の底に沈んでいくところ。

 そして、海底に辿り着き安定した海底都市リュウグウの中で、海の王は「この術を継続させるために、【水霊魂アクアルーフ】を【海の根源オーシアルーツ】に捧げよ」とみんなに告げていた。

 水霊魂アクアルーフは海底ダンジョン【海中窟】で採れるアイテムらしい。
 しばらくは海エルフがダンジョンを攻略してアイテム集めに勤しんでいたけど、ダンジョンに何か問題が起きて閉ざされてしまったせいで、アイテムを入手できなくなった。

 その後は、海の王がかけた術の影響が薄れ、街の範囲が狭まっていくのを感じながらも、早急に対処する必要性がないほど遅々とした変化だったため、誰もが気にしなくなり──

「……それでいいの?」

 偉大な先祖の王がかけた術に対してテキトーすぎない?
 半眼で呟く僕の横で、ルトとリリも「「同感」」と頷く。だよねー。

 リオさんは「あはは、面目ない……」と目を逸らしながら苦笑していた。
 大いに反省してください。

 そうこうしてる内に映像が終わった。
 街が狭まることになった原因は明白だね。海エルフたちが水霊魂アクアルーフを捧げなくなったから!

水霊魂アクアルーフを捧げたら問題解決かー」
「原因の周知と、海中窟ダンジョンを開放できたら、海エルフたちが勝手に動いてくれそうだけどな。自分たちが暮らす場所のことなんだし」

 ルトに言われて、「なるほど、確かに」と頷く。全部を僕たちがしなくてもいいんだね。

 まぁ、海中窟っていうダンジョンが気になるから、開放できたら僕も攻略しに行くけど。
 もちろん、ルトも行くつもりらしい。ここに来てから一番輝いた目をしてるよ。さすがバトルジャンキー。

 そんなことを考えているとアナウンスが聞こえてきた。

〈シークレットミッション【海底都市リュウグウの過去を探る】をクリアしました。報酬としてスキル【水精術】が習得可能になりました〉

「おお? 初めてのパターンのアナウンス……」
「だな。習得可能ってことは、今のままじゃ使えないってことか」
「でも、どうやったら習得できるかわからないね」

 同じタイミングでアナウンスがあった様子の二人と顔を見合わせる。
 ステータスのスキルに表示されている【水精術】はグレーの色で、他とは違ってる。使えないっていう表示らしい。

 この水精術が、シークレットミッションクリア報酬に書かれてた海エルフの秘術なのは、まず間違いないと思うんだけどなー。

「どうしました?」

 リオさんに聞かれて、素直に「水精術を使えるようになるためにはどうしたらいいかなーって悩んでる」と答える。ちょっと手がかりをもらえるんじゃないかって期待しちゃう。

「水精術を使うには特別な素質が必要ですよ?」
「たぶん素質は持ってるよ」

 アナウンスされた『習得可能』っていうのは、そういうことだよね。
 ルトたちもうんうんと頷いているのを見て、リオさんが目を丸くしていた。

「……まさかエルフの秘術を使える素質を持つ者が、エルフ以外にいるとは」

 驚いてるけど、これ、プレイヤー特性みたいなものだから気にしないでほしいな。
 なんとも言えない気分でリオさんを見つめる。リオさんは少し悩んだ後「それなら——」と口を開いた。

「水精術の指南は王族が行うことになっています。私の立場では紹介状を用意することはできませんので、【海園遊会】への招待状をもらえるように功績をあげるといいでしょう」
「海園遊会って何?」

 きょとんと問い返すと、すぐさま「王家が主催するパーティーです。国に貢献するような功績をあげた人が招かれます。そこでは王族に願いを叶えてもらうことができるので、水精術を学ぶ機会を得たいと頼めばいいはずですよ」と答えがあった。

 王家主催パーティーか……王様とかお姫様と会うフラグ?
 でも、功績ってどうやったらいいの?

「……もしかしてこれ、海中窟ダンジョン開放を暗に依頼されてねぇか?」
「あ、ルトもそう思った?」

 ルトとリリが頷き合う。
 確かに海底都市リュウグウの存亡に関わる問題解決に繋がるし、功績として十分かも。呪い解除でもいける気がするけど。

「リオさーん、海中窟ダンジョン、どこにある?」

 さっき見た資料では場所の詳細がわからなかったから、まずは情報収集。リオさんは絶対物知りだし、教えてくれると思うんだよねー。

 ニコニコと微笑む僕に、リオさんもいい笑顔で「聞かれると思ってましたー」と答える。そして、キラキラとした白色の珊瑚らしきものを取り出し、僕たちに渡した。
 このパターンは——

〈【海エルフの司書・リオル】から【ダンジョン・海中窟の地図】が贈られました。マップが更新されます——更新されました〉

 やっぱりー!
 おなじみの展開に、頷く僕の横でルトが遠い目をしてる。

「……マジでモモと一緒にいると展開の進み具合がハイペース」
「いいことだね!」

 僕がニコッと笑うと、リリも「そうだねー」とニコニコした。ルトだけがちょっぴり疲れた表情だ。

 そんなルトの反応はさておき。
 マップを確認してみると、リュウグウの街から出て海中を進んだところに『ダンジョン・海中窟』の表示があった。

 つまり、ダンジョンに行くために、海守りとかシャボリンとかが必須? シャボリンはともかく、海守りはたくさんあるよ! 

「早速行っちゃう?」
「モモ、いいね! 行っちゃお」
「……宝物庫も行きたいし、ちゃんと予定立てようぜ」

 ワクワク、ソワソワしてる僕とリリの肩を掴みながら、ルトが「落ち着け」と半眼で言った。
 秘宝も見に行くんだったね。やりたいこといっぱいで楽しーい!

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