415 / 661
10章 海は広くて冒険いっぱい
389.宝物庫へゴー!
三人で話し合った結果、今日はとりあえず宝物庫に行くことになった。というのも、ルトとリリがログインしていられる時間が、あと一時間もないことが判明したからだ。
「くそー……明日が模試じゃなけりゃ休みだったのに……」
どうやら、二人が通っている学校は明日の土曜日に模試があるらしい。大変だねー。
模試前日にゲーム三昧してるのはどうなんだろう、と思わなくもないけど、リリが「直前でジタバタしたところで結果は変わらない」とキリッとした顔で言ったから気にしないことにした。悪い結果になって、ゲーム機を取り上げられないといいね?
「まぁ、宝物庫はあまり離れてないらしいし、秘宝を見るくらいの時間はあるだろうから、それでよしとしようよ」
悔しそうに文句を呟いているルトの脚を、僕はポンポンと叩いて宥めた。
現在、宝物庫を目指して移動中。
リオさんとは「次はのんびりお茶会でもしようねー」と約束して別れたよ。お茶会ついでに面白い記録を見せてくれるらしい。楽しみ。
「そうだねー。あ、宝物庫はどっち?」
分かれ道にぶつかってすぐに問いかけるのは慣れたものだ。
リリの言葉に反応し、ぴょこんと矢印が現れる。
宝物庫への道案内は、許可が出ている人にだけ現れるらしいよ。許可がない人は、延々と宮殿を彷徨わされた後に、宮殿警備隊詰所に導かれて事情聴取されるのだとリオさんが言ってた。
この宮殿自体が、防犯システムみたいなもののようだ。
そう考えたらこの矢印さん、優秀で役立ってるよね。
つい感心の目を向けたら、それを察したように矢印さんが嬉しそうに少し桃色に色を変えた気がする。……喜んでるってことでいいんだよね?
時折矢印さんと交流(?)しつつ、順調に宮殿内を進む。
全然人と出会わないんだけど、宮殿内で働いてる人ってあまりいないのかな? 通路沿いに扉があるから、部屋の中にいるかもだけど。
人魚さんとかいないかなー、と思いながら歩いていると、不意に目の前を魚が泳いでいった。
ビックリして固まっちゃう。
「え、魚が宙を飛んでる!?」
「おー、あれなんだっけ……カクレクマノミ?」
「可愛い魚だよねー」
ルトとリリは僕と違って落ち着いてた。冷静に魚の種類について意見を交わしてる。
「なんで驚いてないの?」
「ここにあるのが空気に見えて海水なんだって、前に言ったよね?」
むぅ、と拗ねながら尋ねたら、リリがきょとんとした顔で答える。
「そういえば、そうだったね。海水なら魚が泳いでいても不思議じゃない──こともないでしょ! この世界の魚は、モンスターだよ? 宮殿にモンスターがいるのはおかしいよ!」
一旦は納得しかけたけど、思い直して訴える。
ルトが即座に「モンスターらしいモンスターは、今ここにいるけどな」と僕の耳をツンツンしながら言った。
そうだけど、そうじゃなーい! 僕は中身人間だし、プレイヤーだからいいの!
「普通に、宮殿の誰かのテイムモンスターなんじゃないの?」
再びリリがきょとんとした顔で言う。
あ、その可能性があったね。僕もたくさんテイムモンスターを連れてることがあるのに、うっかりしてたよ。
「……そっか、そっかー。君、テイムモンスターかぁ」
うんうん、と頷きながら赤い魚を眺めて呟く。その魚は、僕たちとつかず離れずの距離で前を進んでいた。たまに僕たちを振り返って確認してる気がする。
「なんか俺らを案内してるみたいじゃね?」
ルトが不思議そうに呟く。
確かにそう見えるけど、一体どこに、どういう意図があって?
首を傾げながら三人で顔を見合わせる。
「……一応、宝物庫の方に行ってるみたいだけど」
僕が呟くと、ルトも「だな」と頷く。
分かれ道に着くと、魚は僕たちに先んじて進むんだ。矢印が指す通路は魚が向かった方と同じ。だから、このまま宝物庫を目指すという方針を変える必要はなさそう。
魚が宝物庫に案内しようとしてるとしても、その理由はわからないけど。
まさか、リオさんが案内役をつけてくれたわけじゃないだろう。リオさんは「宮殿に聞けば宝物庫に行くのは簡単ですよー」って言ってたし。
「謎だねー……あ、あれ、宝物庫じゃない?」
不思議そうに魚を見ていたリリが、ふと前方に視線を向けて言う。
そこには、白い真珠で飾られた扉があった。手前には魚人族の男の人が二人。おそらく宝物庫を守る役目の人だろう。
魚はスイーッと男たちの前を泳ぐと、『早く来て』と言うように僕たちを振り向いた。男の人たちはその魚を気に留めずに、僕たちを凝視してる。魚は彼らに認められている存在らしい。
それなら、今のところ警戒しなくていっかー。
まずは僕たちに向けられてる不審そうな視線をどうにかしなくちゃ。
というわけで、パッと手を上げて挨拶してみる。
「こんちゃー」
「……あ、こんちゃー……この挨拶するって、もしかして、噂のウサギちゃん? 噂通りもふもふしてるー。ヤバ、生まれたての白海豹みたいだ!」
「噂?」
思いがけない反応をされた。
魚人さん二人が、僕を見て「おお、これがあの、もふもふ!」とか「初めて、こんちゃーって挨拶した」とか、よくわからないことを興奮気味に話してる。
なぜか僕の噂が宮殿内に広がってるみたいだね?
「どう考えてもこれ、宮殿前の門衛から話が広がってるだろ……」
ルトが呆れた感じで呟く。僕も同感です。
うっかり訂正し忘れたせいで、『こんちゃー』が陸上で一般的な挨拶だという誤解が宮殿内を駆け巡っちゃってそう!
「……ここ、宝物庫?」
どうしようかなー、と思ったけど、面倒くさくなって諸々をスルーした。ルトに「お前……」とジト目で見られたけど、気にしなーい。
「そうですよー。あ、皆さん許可持ちですね。秘宝を見に来たんです?」
予想以上に魚人さんが朗らかに尋ねてきた。
それに「うん」と答えると、「では、どうぞー」とあっさり扉が開かれる。
宝物庫って、こんなに気軽に入れていいものなんだ……?
「くそー……明日が模試じゃなけりゃ休みだったのに……」
どうやら、二人が通っている学校は明日の土曜日に模試があるらしい。大変だねー。
模試前日にゲーム三昧してるのはどうなんだろう、と思わなくもないけど、リリが「直前でジタバタしたところで結果は変わらない」とキリッとした顔で言ったから気にしないことにした。悪い結果になって、ゲーム機を取り上げられないといいね?
「まぁ、宝物庫はあまり離れてないらしいし、秘宝を見るくらいの時間はあるだろうから、それでよしとしようよ」
悔しそうに文句を呟いているルトの脚を、僕はポンポンと叩いて宥めた。
現在、宝物庫を目指して移動中。
リオさんとは「次はのんびりお茶会でもしようねー」と約束して別れたよ。お茶会ついでに面白い記録を見せてくれるらしい。楽しみ。
「そうだねー。あ、宝物庫はどっち?」
分かれ道にぶつかってすぐに問いかけるのは慣れたものだ。
リリの言葉に反応し、ぴょこんと矢印が現れる。
宝物庫への道案内は、許可が出ている人にだけ現れるらしいよ。許可がない人は、延々と宮殿を彷徨わされた後に、宮殿警備隊詰所に導かれて事情聴取されるのだとリオさんが言ってた。
この宮殿自体が、防犯システムみたいなもののようだ。
そう考えたらこの矢印さん、優秀で役立ってるよね。
つい感心の目を向けたら、それを察したように矢印さんが嬉しそうに少し桃色に色を変えた気がする。……喜んでるってことでいいんだよね?
時折矢印さんと交流(?)しつつ、順調に宮殿内を進む。
全然人と出会わないんだけど、宮殿内で働いてる人ってあまりいないのかな? 通路沿いに扉があるから、部屋の中にいるかもだけど。
人魚さんとかいないかなー、と思いながら歩いていると、不意に目の前を魚が泳いでいった。
ビックリして固まっちゃう。
「え、魚が宙を飛んでる!?」
「おー、あれなんだっけ……カクレクマノミ?」
「可愛い魚だよねー」
ルトとリリは僕と違って落ち着いてた。冷静に魚の種類について意見を交わしてる。
「なんで驚いてないの?」
「ここにあるのが空気に見えて海水なんだって、前に言ったよね?」
むぅ、と拗ねながら尋ねたら、リリがきょとんとした顔で答える。
「そういえば、そうだったね。海水なら魚が泳いでいても不思議じゃない──こともないでしょ! この世界の魚は、モンスターだよ? 宮殿にモンスターがいるのはおかしいよ!」
一旦は納得しかけたけど、思い直して訴える。
ルトが即座に「モンスターらしいモンスターは、今ここにいるけどな」と僕の耳をツンツンしながら言った。
そうだけど、そうじゃなーい! 僕は中身人間だし、プレイヤーだからいいの!
「普通に、宮殿の誰かのテイムモンスターなんじゃないの?」
再びリリがきょとんとした顔で言う。
あ、その可能性があったね。僕もたくさんテイムモンスターを連れてることがあるのに、うっかりしてたよ。
「……そっか、そっかー。君、テイムモンスターかぁ」
うんうん、と頷きながら赤い魚を眺めて呟く。その魚は、僕たちとつかず離れずの距離で前を進んでいた。たまに僕たちを振り返って確認してる気がする。
「なんか俺らを案内してるみたいじゃね?」
ルトが不思議そうに呟く。
確かにそう見えるけど、一体どこに、どういう意図があって?
首を傾げながら三人で顔を見合わせる。
「……一応、宝物庫の方に行ってるみたいだけど」
僕が呟くと、ルトも「だな」と頷く。
分かれ道に着くと、魚は僕たちに先んじて進むんだ。矢印が指す通路は魚が向かった方と同じ。だから、このまま宝物庫を目指すという方針を変える必要はなさそう。
魚が宝物庫に案内しようとしてるとしても、その理由はわからないけど。
まさか、リオさんが案内役をつけてくれたわけじゃないだろう。リオさんは「宮殿に聞けば宝物庫に行くのは簡単ですよー」って言ってたし。
「謎だねー……あ、あれ、宝物庫じゃない?」
不思議そうに魚を見ていたリリが、ふと前方に視線を向けて言う。
そこには、白い真珠で飾られた扉があった。手前には魚人族の男の人が二人。おそらく宝物庫を守る役目の人だろう。
魚はスイーッと男たちの前を泳ぐと、『早く来て』と言うように僕たちを振り向いた。男の人たちはその魚を気に留めずに、僕たちを凝視してる。魚は彼らに認められている存在らしい。
それなら、今のところ警戒しなくていっかー。
まずは僕たちに向けられてる不審そうな視線をどうにかしなくちゃ。
というわけで、パッと手を上げて挨拶してみる。
「こんちゃー」
「……あ、こんちゃー……この挨拶するって、もしかして、噂のウサギちゃん? 噂通りもふもふしてるー。ヤバ、生まれたての白海豹みたいだ!」
「噂?」
思いがけない反応をされた。
魚人さん二人が、僕を見て「おお、これがあの、もふもふ!」とか「初めて、こんちゃーって挨拶した」とか、よくわからないことを興奮気味に話してる。
なぜか僕の噂が宮殿内に広がってるみたいだね?
「どう考えてもこれ、宮殿前の門衛から話が広がってるだろ……」
ルトが呆れた感じで呟く。僕も同感です。
うっかり訂正し忘れたせいで、『こんちゃー』が陸上で一般的な挨拶だという誤解が宮殿内を駆け巡っちゃってそう!
「……ここ、宝物庫?」
どうしようかなー、と思ったけど、面倒くさくなって諸々をスルーした。ルトに「お前……」とジト目で見られたけど、気にしなーい。
「そうですよー。あ、皆さん許可持ちですね。秘宝を見に来たんです?」
予想以上に魚人さんが朗らかに尋ねてきた。
それに「うん」と答えると、「では、どうぞー」とあっさり扉が開かれる。
宝物庫って、こんなに気軽に入れていいものなんだ……?
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします
あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】