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10章 海は広くて冒険いっぱい
391.噂をすればコン!
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ルージュの後について、のんびりと歩く。
といっても、ルージュは宝物庫の奥に進んでるから、ここから出るつもりはないのかも? ──と思った次の瞬間には、ルージュが宝物庫の壁にタッチして、扉が現れたからポカンとしちゃった。
……え、これ、隠し扉ってやつです? 新たなシークレットミッションが始まってる気がするー!
一応システムのミッション欄を確かめてみたけど、今表示されてるシークレットミッションは見覚えのあるものしかなかった。
つまり、これはシークレットミッションではない……?
「んん……どういうことだろ~?」
大きく首を傾げて立ち止まる僕を、ルージュが『何してるの?』と言いたげに見つめてくる。意外とお魚さんって表情豊かなんだね。目で感情が伝わってくる気がする。
ルージュが扉をペシッと尾びれで叩き、僕をじぃっと凝視する。
はいはい、さっさと開けろって言ってるのね。
「わかりましたよーっと」
何が起きるか予想もできないけど、危ないことはないでしょー、と楽観的に考えながら扉を触る。
レッツ・オープン!
──大して力を込めなくても開かれた扉の奥は海だった。
「うん……? いきなり海に飛び込めってこと……?」
扉があるところを境界にして、海水がある。そっと手を伸ばしてみたら、水面に波紋が広がった。
一応、僕がいるここも海の中って話じゃなかったっけ? こういう感じで水面があるのはおかしいぞ。
でも、向こう側には小さな魚がたくさん泳いでるし、海っぽいんだよなぁ。まぁ、こっちにもルージュっていうお魚さんがいるから、魚がいることが海の証明にはならないんだけど。
むむぅ、と悩む僕の後頭部に、何かがコツンと当たった。
僕が「ほえ?」と振り向くより先に、ツンツンと連続でつつかれる。
「ちょ、ルージュ、そんな急かさなくたっていいでしょー」
ぶつかってきていたのはルージュ。さっさと入れって言ってるっぽい。
でも、水棲生物じゃない僕はこういうところに飛び込む前に準備が必要──と訴えている間に、全力でぶつかってきたルージュの勢いに押されて、扉の向こうに転がり込んじゃった。
「のぁああ、水中じゃ、息できなっ──いことも、ない……?」
叫んでも口の中に海水が入ってくることはないし、そもそも普通に声を出せた。
ここは海の中じゃない? でも、体に水が触れてる感覚があるよ。リュウグウの街中とは確実に環境が違う。
どういうこと? と、首を傾げている僕をスルーして、ルージュがスイスイと海の中を泳ぐ。これまでより活き活きとした感じだった。たぶん、リュウグウの街中よりルージュに合った環境なんだね。
「ルージュ、ここ何ー?」
尋ねてみても、ルージュからの返答はなく、ただ『ついてきて』というように身を翻して泳ぎ始めた。
今は流れに身を任せるしかないかぁ。つまり、僕のいつも通りってことだね。
ここだと普通に歩くのは微妙にしんどくて、とりあえず犬かきしてみる。この方が楽~。
どうでもいいけど、ウサギでも犬かきって言い方でいいんです?
「……暇」
海の中で魚を眺めるのも、ちょっと続けてたら飽きちゃうよ。貝や海藻の観察も同じく。
ルージュがどこに向かっているかもわからないし、危機感もないし、することなくて退屈です。
ぱしゃぱしゃ、と犬かきしながら周囲をキョロキョロと見渡す。
「……フラグ可視化でもしてみるか」
普段オフにしているスキルを思い出して使ってみた。
フラグさんでも見られたら暇つぶしにならないかなー。
オンにした途端、視界の端でピコンッと旗が立つ。お、ぴょんぴょんしてるー。あ、あっちでも、こっちでも、向こうでも。え、そこも?
「──待って、フラグさん、多すぎるよ!?」
視界に十個以上の旗がぴょんぴょんしてる。ちょっと主張が激しいんだけど、これは今までスルーしてたから、『ようやく見てくれたかー!』ってテンション上がってる感じです?
この何もなさそうな海の中で、フラグが立つような出来事がこんなにたくさんあるものなの……? 地雷原かな?
「こわ……触らんとこ……」
呟いた途端、一番近くにいたフラグさんが『えっ!?』って感じで震えて固まった。
旗なのに感情豊かだねー。そっか、触れてほしいのか。でも、僕はこれから前情報もなしに何かが起きるっぽいし、余計なことをしてる暇はないと思うんだよ。
ぴょんぴょんしてるフラグさんに心の中で話しかけてみたら、しょんぼりとされた気がする。なんかごめんね。
……あ、フラグさんがルージュをツンツンしてる。ルージュは『えー?』って迷惑そうな顔だ。
今、もしかして優先順位で争ってる? 僕が先にどのフラグに取り組むかって?
そういえば、ルージュの上にはどデカいフラグさんが『へへんっ』と胸を張る感じでいるね。うん、やっぱりルージュについていったら、凄いことが起きそう。
フラグさんたちがぶつかりあって争っているのをなんとも言えない気分で見守る。
これは『僕のために争わないでー』のセリフの出番かな? かな? フラグさん相手にこれを言うのも微妙な気分なんだけど。
「どうせなら、タマモとかに言いたい──」
「はい! 呼びました?」
「ふにゃあっ!?」
近くの大きな海藻の影から突然タマモが現れて、変な叫び声を上げちゃった。
タマモが「呼ばれて飛び出てコンココーン」と手でキツネの形を作って微笑む。ダブルキツネだね。いや、そんなことはどうでもよくて──
「どこから来たの!? なんで、ここにいるの!?」
抱きつく勢いで近づいた僕を、タマモが「どーぞ!」と両腕を広げて歓迎する。
今、そういうことをする場面じゃないでしょ! とは思ったものの、タマモが『もふもふを堪能したい……!』って顔をしてたから抱きついてあげた。僕優しい。
「はぅ……!」
「はいはい、さっさと理由を話してねー」
僕をぎゅっと抱きしめてニッコニコしながらもふもふを味わってるタマモの腕をポンポンと叩く。僕は早く状況を把握したいんだけどなー?
「私は青隠魚のアール君につれられて、ここに来たんです」
タマモが「はい、こちらアール君です」と手で示した先に、ルージュの青色バージョンのような見た目の魚がいた。
なるほど? つまり、タマモも僕と同じ状況だったわけだ?
こうしてつれてこられる条件ってなんなんだろうね?
といっても、ルージュは宝物庫の奥に進んでるから、ここから出るつもりはないのかも? ──と思った次の瞬間には、ルージュが宝物庫の壁にタッチして、扉が現れたからポカンとしちゃった。
……え、これ、隠し扉ってやつです? 新たなシークレットミッションが始まってる気がするー!
一応システムのミッション欄を確かめてみたけど、今表示されてるシークレットミッションは見覚えのあるものしかなかった。
つまり、これはシークレットミッションではない……?
「んん……どういうことだろ~?」
大きく首を傾げて立ち止まる僕を、ルージュが『何してるの?』と言いたげに見つめてくる。意外とお魚さんって表情豊かなんだね。目で感情が伝わってくる気がする。
ルージュが扉をペシッと尾びれで叩き、僕をじぃっと凝視する。
はいはい、さっさと開けろって言ってるのね。
「わかりましたよーっと」
何が起きるか予想もできないけど、危ないことはないでしょー、と楽観的に考えながら扉を触る。
レッツ・オープン!
──大して力を込めなくても開かれた扉の奥は海だった。
「うん……? いきなり海に飛び込めってこと……?」
扉があるところを境界にして、海水がある。そっと手を伸ばしてみたら、水面に波紋が広がった。
一応、僕がいるここも海の中って話じゃなかったっけ? こういう感じで水面があるのはおかしいぞ。
でも、向こう側には小さな魚がたくさん泳いでるし、海っぽいんだよなぁ。まぁ、こっちにもルージュっていうお魚さんがいるから、魚がいることが海の証明にはならないんだけど。
むむぅ、と悩む僕の後頭部に、何かがコツンと当たった。
僕が「ほえ?」と振り向くより先に、ツンツンと連続でつつかれる。
「ちょ、ルージュ、そんな急かさなくたっていいでしょー」
ぶつかってきていたのはルージュ。さっさと入れって言ってるっぽい。
でも、水棲生物じゃない僕はこういうところに飛び込む前に準備が必要──と訴えている間に、全力でぶつかってきたルージュの勢いに押されて、扉の向こうに転がり込んじゃった。
「のぁああ、水中じゃ、息できなっ──いことも、ない……?」
叫んでも口の中に海水が入ってくることはないし、そもそも普通に声を出せた。
ここは海の中じゃない? でも、体に水が触れてる感覚があるよ。リュウグウの街中とは確実に環境が違う。
どういうこと? と、首を傾げている僕をスルーして、ルージュがスイスイと海の中を泳ぐ。これまでより活き活きとした感じだった。たぶん、リュウグウの街中よりルージュに合った環境なんだね。
「ルージュ、ここ何ー?」
尋ねてみても、ルージュからの返答はなく、ただ『ついてきて』というように身を翻して泳ぎ始めた。
今は流れに身を任せるしかないかぁ。つまり、僕のいつも通りってことだね。
ここだと普通に歩くのは微妙にしんどくて、とりあえず犬かきしてみる。この方が楽~。
どうでもいいけど、ウサギでも犬かきって言い方でいいんです?
「……暇」
海の中で魚を眺めるのも、ちょっと続けてたら飽きちゃうよ。貝や海藻の観察も同じく。
ルージュがどこに向かっているかもわからないし、危機感もないし、することなくて退屈です。
ぱしゃぱしゃ、と犬かきしながら周囲をキョロキョロと見渡す。
「……フラグ可視化でもしてみるか」
普段オフにしているスキルを思い出して使ってみた。
フラグさんでも見られたら暇つぶしにならないかなー。
オンにした途端、視界の端でピコンッと旗が立つ。お、ぴょんぴょんしてるー。あ、あっちでも、こっちでも、向こうでも。え、そこも?
「──待って、フラグさん、多すぎるよ!?」
視界に十個以上の旗がぴょんぴょんしてる。ちょっと主張が激しいんだけど、これは今までスルーしてたから、『ようやく見てくれたかー!』ってテンション上がってる感じです?
この何もなさそうな海の中で、フラグが立つような出来事がこんなにたくさんあるものなの……? 地雷原かな?
「こわ……触らんとこ……」
呟いた途端、一番近くにいたフラグさんが『えっ!?』って感じで震えて固まった。
旗なのに感情豊かだねー。そっか、触れてほしいのか。でも、僕はこれから前情報もなしに何かが起きるっぽいし、余計なことをしてる暇はないと思うんだよ。
ぴょんぴょんしてるフラグさんに心の中で話しかけてみたら、しょんぼりとされた気がする。なんかごめんね。
……あ、フラグさんがルージュをツンツンしてる。ルージュは『えー?』って迷惑そうな顔だ。
今、もしかして優先順位で争ってる? 僕が先にどのフラグに取り組むかって?
そういえば、ルージュの上にはどデカいフラグさんが『へへんっ』と胸を張る感じでいるね。うん、やっぱりルージュについていったら、凄いことが起きそう。
フラグさんたちがぶつかりあって争っているのをなんとも言えない気分で見守る。
これは『僕のために争わないでー』のセリフの出番かな? かな? フラグさん相手にこれを言うのも微妙な気分なんだけど。
「どうせなら、タマモとかに言いたい──」
「はい! 呼びました?」
「ふにゃあっ!?」
近くの大きな海藻の影から突然タマモが現れて、変な叫び声を上げちゃった。
タマモが「呼ばれて飛び出てコンココーン」と手でキツネの形を作って微笑む。ダブルキツネだね。いや、そんなことはどうでもよくて──
「どこから来たの!? なんで、ここにいるの!?」
抱きつく勢いで近づいた僕を、タマモが「どーぞ!」と両腕を広げて歓迎する。
今、そういうことをする場面じゃないでしょ! とは思ったものの、タマモが『もふもふを堪能したい……!』って顔をしてたから抱きついてあげた。僕優しい。
「はぅ……!」
「はいはい、さっさと理由を話してねー」
僕をぎゅっと抱きしめてニッコニコしながらもふもふを味わってるタマモの腕をポンポンと叩く。僕は早く状況を把握したいんだけどなー?
「私は青隠魚のアール君につれられて、ここに来たんです」
タマモが「はい、こちらアール君です」と手で示した先に、ルージュの青色バージョンのような見た目の魚がいた。
なるほど? つまり、タマモも僕と同じ状況だったわけだ?
こうしてつれてこられる条件ってなんなんだろうね?
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