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ゆるり

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10章 海は広くて冒険いっぱい

392.フラグさん『がんばった!』

 ルージュとアール君が進む方向は同じみたいだから、タマモと一緒にぱしゃぱしゃ水泳中です。
 ついでに、これまでの情報を共有したよ。

 タマモはとあるミッションで【精霊眼鏡】という精霊を見やすくなるアイテムをゲットして、海精霊シーフェアリーをたくさん発見したら、仲良くなった海精霊シーフェアリーに『宮殿に行くといいよー』と言われてホイホイとやって来たらしい。

 最初は宮殿図書館に行くつもりだったけど、すぐにアール君と出会って、予定を変更してここまで辿り着いたようだ。

「僕よりショートカットして進んでるね?」
「途中の重要なミッションをすっ飛ばしてるのを、ショートカットと言っていいのか……?」

 タマモが苦笑しながら首を傾げる。
 宮殿図書館でリオさんと会って入手した情報はタマモに教えてあげたから、今の展開が終わったらすぐにリオさんに会いに行くつもりらしいよ。ダンジョンとかの攻略、スケジュールが合いそうならタマモも一緒に行けるかも。

「そうだねー。タマモがアール君と出会ったのが海精霊シーフェアリーきっかけなら、これって精霊関連のミッションが始まるのかな?」
「その可能性が高いですね。私は宮殿に関して海精霊シーフェアリー以外のフラグは立ててないですし」

 タマモがすぐに頷く。
 自分が立てたフラグを把握できてるなんて凄いね! 僕は全然わからないよ。
 ここにいるのも、きっかけは『あれかな?』『これかな?』ってポンポンとたくさん浮かんできて、予想するのも無駄だなって感じだったもん! 幸運値が仕事した可能性もあるし。

「そっか、海精霊シーフェアリーかぁ……」

 改めて考えてみる。
 そういえば、僕、メーアからなんか依頼を受けてたね? 確か、海精霊シーフェアリーの里に来てねー、って。何かお願いがある感じだった。

 つまり、今、強制的にそっちのシークレットミッションが進行中?

 とりあえずマップを開いてみる。
 僕の現在地を示す点が、宮殿から離れて不思議な場所にあった。移動にかかった時間を考えると、いつの間にかワープしてたっぽい。

「──おお、海精霊シーフェアリーの里が近い……」

 進行方向にあるものがわかって、今からメーアのお里を訪問することが確定になりました!

「え、モモさん、精霊の里の場所を知ってるんです? 海エルフさんたちにも秘密の場所らしいですよ……?」

 タマモがパチパチと瞬きをしてる。驚かせちゃったみたいだ。

「僕は海精霊シーフェアリーの女王に祝福をもらったからー」
「おおっ……さすモモ!」
「うん? それ、褒められてる?」
「もちろんです!」

 混じりっけのない好意100%な笑みで言われたから、「そっかー」と聞き流した。
 とりあえず、ルージュたちは海精霊シーフェアリーたちの意思を受けて行動してると思っていいのかな。

 ──そんなことを考えている間も、視界の端をフラグさんがぴょんぴょんしてる。タマモが合流してくれたおかげでもう暇じゃなくなったし、可視化スキルをオフにしようかな。

「でも、一個くらいは回収してあげるべき?」

 うぅむ、と悩みながら呟く。
 タマモに「どうしました?」と聞かれたから状況を教えると、「反則的スキルですねぇ。それを普段全然使わないモモさん、さすモモ!」という感想が返ってきた。

 続けて「一個くらいは回収してみてもいいかもしれませんよー」と言ってくれたから、手近なものに触れてみることに決める。
 タマモがいるから、何が起きたとしてもちょっとは余裕があるもんねー。

「じゃあ──君に決めた!」

 一際激しくヘッドバンギングする勢いで揺れていたフラグさんをタッチする。
 今さらだけど、フラグさんの回収ってこんなやり方でいいんだっけ? これまで折ってばっかりだったから、よくわからないや。

 んー、と首を傾げたけど、僕のやり方は間違ってなかったらしい。
 触れたフラグさんは、ポンッと手のひらサイズに変わったかと思うと、ロケットのようにどこかに飛んでいった。

 ……あれ? ほんとに間違ってないよね?

 ポカンとしながら見送っちゃった。これ、フラグ回収できてなくない?

「あ、モモさん、アール君たちに置いていかれちゃいますよー」
「いや、ルージュなら僕の速度にあわせて進んでくれると思うから大丈夫だよ」

 そう答えたけど、タマモが僕の手を掴んで引っ張りながら泳いでくれる。
 ニコニコしてるから、たぶん僕と触れ合ってるのが嬉しいんだね。僕、一人で泳げるけど何も言わないことにしました。楽できるのは嬉しいし。

 そんなことを考えていると、彼方に飛んでいったフラグさんが、またバビューンッと飛んで帰ってきた。おかえりなさーい。でも、どういうことです?

 頭の中でクエスチョンマークが乱舞してる僕を、タマモがきょとんとした顔で見てる。タマモにはフラグさんが見えてないから、状況を把握できてないんだよね。

 戻ってきたフラグさんは、僕に触れた途端、ポンッと消えた。
 今度こそ、回収できたと思ってもよろしい?
 これから何か起きるのかな~?

 ──どこかからバシャーンと水の音がする。
 視界の端に小さな魚じゃないものが見えた気がした。

『おやー? ここによそ者さんがいらっしゃるとはめっずらしー』

 いつの間にか、大きな亀さんが目の前にいた。銀色だ。

「おわっ」
「あらっ」

 反射的に飛び跳ねて急停止。
 ルージュとアール君が『どうしたの?』って感じで振り返り僕たちを確認した後、ポカンと口を開ける。お魚さんが唖然とした表情をしてるの、初めて見たよー。

『ウサギちゃんとキツネ人ちゃん、オレちゃんの背中、空いてるよー? 亀ちゃんタクシーに乗ってくー?』

 どうぞ、という感じに亀さんが甲羅を向けてくれた。
 亀ちゃんタクシー? ナンパっぽい感じなのはなんでなの?

 思わずタマモと顔を見合わせる。
 あんまり状況が理解できてないけど、たぶんこの亀さんはキージィと同種で害はないと思うし、乗っていいと思う。

「……乗ったら一時間素早さ+10になるみたいですよ」
「あ、キージィとは上がるステータスが違うんだ?」

 キージィに乗ったら幸運値上昇だったもんね。その恩恵があったかどうかはいまいちわからないけど。
 タマモが鑑定結果を教えてくれたから、僕は前に会ったキージィの情報を教えてあげた。

 いろんな色がいるらしいとは知ってたけど、こんなに早く二体目に会うとは予想してなかったな。
 いや、でも、精霊の里が近いなら、精霊の一種っぽい亀さんに会ってもおかしくないのかな?

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