418 / 661
10章 海は広くて冒険いっぱい
392.フラグさん『がんばった!』
ルージュとアール君が進む方向は同じみたいだから、タマモと一緒にぱしゃぱしゃ水泳中です。
ついでに、これまでの情報を共有したよ。
タマモはとあるミッションで【精霊眼鏡】という精霊を見やすくなるアイテムをゲットして、海精霊をたくさん発見したら、仲良くなった海精霊に『宮殿に行くといいよー』と言われてホイホイとやって来たらしい。
最初は宮殿図書館に行くつもりだったけど、すぐにアール君と出会って、予定を変更してここまで辿り着いたようだ。
「僕よりショートカットして進んでるね?」
「途中の重要なミッションをすっ飛ばしてるのを、ショートカットと言っていいのか……?」
タマモが苦笑しながら首を傾げる。
宮殿図書館でリオさんと会って入手した情報はタマモに教えてあげたから、今の展開が終わったらすぐにリオさんに会いに行くつもりらしいよ。ダンジョンとかの攻略、スケジュールが合いそうならタマモも一緒に行けるかも。
「そうだねー。タマモがアール君と出会ったのが海精霊きっかけなら、これって精霊関連のミッションが始まるのかな?」
「その可能性が高いですね。私は宮殿に関して海精霊以外のフラグは立ててないですし」
タマモがすぐに頷く。
自分が立てたフラグを把握できてるなんて凄いね! 僕は全然わからないよ。
ここにいるのも、きっかけは『あれかな?』『これかな?』ってポンポンとたくさん浮かんできて、予想するのも無駄だなって感じだったもん! 幸運値が仕事した可能性もあるし。
「そっか、海精霊かぁ……」
改めて考えてみる。
そういえば、僕、メーアからなんか依頼を受けてたね? 確か、海精霊の里に来てねー、って。何かお願いがある感じだった。
つまり、今、強制的にそっちのシークレットミッションが進行中?
とりあえずマップを開いてみる。
僕の現在地を示す点が、宮殿から離れて不思議な場所にあった。移動にかかった時間を考えると、いつの間にかワープしてたっぽい。
「──おお、海精霊の里が近い……」
進行方向にあるものがわかって、今からメーアのお里を訪問することが確定になりました!
「え、モモさん、精霊の里の場所を知ってるんです? 海エルフさんたちにも秘密の場所らしいですよ……?」
タマモがパチパチと瞬きをしてる。驚かせちゃったみたいだ。
「僕は海精霊の女王に祝福をもらったからー」
「おおっ……さすモモ!」
「うん? それ、褒められてる?」
「もちろんです!」
混じりっけのない好意100%な笑みで言われたから、「そっかー」と聞き流した。
とりあえず、ルージュたちは海精霊たちの意思を受けて行動してると思っていいのかな。
──そんなことを考えている間も、視界の端をフラグさんがぴょんぴょんしてる。タマモが合流してくれたおかげでもう暇じゃなくなったし、可視化スキルをオフにしようかな。
「でも、一個くらいは回収してあげるべき?」
うぅむ、と悩みながら呟く。
タマモに「どうしました?」と聞かれたから状況を教えると、「反則的スキルですねぇ。それを普段全然使わないモモさん、さすモモ!」という感想が返ってきた。
続けて「一個くらいは回収してみてもいいかもしれませんよー」と言ってくれたから、手近なものに触れてみることに決める。
タマモがいるから、何が起きたとしてもちょっとは余裕があるもんねー。
「じゃあ──君に決めた!」
一際激しくヘッドバンギングする勢いで揺れていたフラグさんをタッチする。
今さらだけど、フラグさんの回収ってこんなやり方でいいんだっけ? これまで折ってばっかりだったから、よくわからないや。
んー、と首を傾げたけど、僕のやり方は間違ってなかったらしい。
触れたフラグさんは、ポンッと手のひらサイズに変わったかと思うと、ロケットのようにどこかに飛んでいった。
……あれ? ほんとに間違ってないよね?
ポカンとしながら見送っちゃった。これ、フラグ回収できてなくない?
「あ、モモさん、アール君たちに置いていかれちゃいますよー」
「いや、ルージュなら僕の速度にあわせて進んでくれると思うから大丈夫だよ」
そう答えたけど、タマモが僕の手を掴んで引っ張りながら泳いでくれる。
ニコニコしてるから、たぶん僕と触れ合ってるのが嬉しいんだね。僕、一人で泳げるけど何も言わないことにしました。楽できるのは嬉しいし。
そんなことを考えていると、彼方に飛んでいったフラグさんが、またバビューンッと飛んで帰ってきた。おかえりなさーい。でも、どういうことです?
頭の中でクエスチョンマークが乱舞してる僕を、タマモがきょとんとした顔で見てる。タマモにはフラグさんが見えてないから、状況を把握できてないんだよね。
戻ってきたフラグさんは、僕に触れた途端、ポンッと消えた。
今度こそ、回収できたと思ってもよろしい?
これから何か起きるのかな~?
──どこかからバシャーンと水の音がする。
視界の端に小さな魚じゃないものが見えた気がした。
『おやー? ここによそ者さんがいらっしゃるとはめっずらしー』
いつの間にか、大きな亀さんが目の前にいた。銀色だ。
「おわっ」
「あらっ」
反射的に飛び跳ねて急停止。
ルージュとアール君が『どうしたの?』って感じで振り返り僕たちを確認した後、ポカンと口を開ける。お魚さんが唖然とした表情をしてるの、初めて見たよー。
『ウサギちゃんとキツネ人ちゃん、オレちゃんの背中、空いてるよー? 亀ちゃんタクシーに乗ってくー?』
どうぞ、という感じに亀さんが甲羅を向けてくれた。
亀ちゃんタクシー? ナンパっぽい感じなのはなんでなの?
思わずタマモと顔を見合わせる。
あんまり状況が理解できてないけど、たぶんこの亀さんはキージィと同種で害はないと思うし、乗っていいと思う。
「……乗ったら一時間素早さ+10になるみたいですよ」
「あ、キージィとは上がるステータスが違うんだ?」
キージィに乗ったら幸運値上昇だったもんね。その恩恵があったかどうかはいまいちわからないけど。
タマモが鑑定結果を教えてくれたから、僕は前に会ったキージィの情報を教えてあげた。
いろんな色がいるらしいとは知ってたけど、こんなに早く二体目に会うとは予想してなかったな。
いや、でも、精霊の里が近いなら、精霊の一種っぽい亀さんに会ってもおかしくないのかな?
ついでに、これまでの情報を共有したよ。
タマモはとあるミッションで【精霊眼鏡】という精霊を見やすくなるアイテムをゲットして、海精霊をたくさん発見したら、仲良くなった海精霊に『宮殿に行くといいよー』と言われてホイホイとやって来たらしい。
最初は宮殿図書館に行くつもりだったけど、すぐにアール君と出会って、予定を変更してここまで辿り着いたようだ。
「僕よりショートカットして進んでるね?」
「途中の重要なミッションをすっ飛ばしてるのを、ショートカットと言っていいのか……?」
タマモが苦笑しながら首を傾げる。
宮殿図書館でリオさんと会って入手した情報はタマモに教えてあげたから、今の展開が終わったらすぐにリオさんに会いに行くつもりらしいよ。ダンジョンとかの攻略、スケジュールが合いそうならタマモも一緒に行けるかも。
「そうだねー。タマモがアール君と出会ったのが海精霊きっかけなら、これって精霊関連のミッションが始まるのかな?」
「その可能性が高いですね。私は宮殿に関して海精霊以外のフラグは立ててないですし」
タマモがすぐに頷く。
自分が立てたフラグを把握できてるなんて凄いね! 僕は全然わからないよ。
ここにいるのも、きっかけは『あれかな?』『これかな?』ってポンポンとたくさん浮かんできて、予想するのも無駄だなって感じだったもん! 幸運値が仕事した可能性もあるし。
「そっか、海精霊かぁ……」
改めて考えてみる。
そういえば、僕、メーアからなんか依頼を受けてたね? 確か、海精霊の里に来てねー、って。何かお願いがある感じだった。
つまり、今、強制的にそっちのシークレットミッションが進行中?
とりあえずマップを開いてみる。
僕の現在地を示す点が、宮殿から離れて不思議な場所にあった。移動にかかった時間を考えると、いつの間にかワープしてたっぽい。
「──おお、海精霊の里が近い……」
進行方向にあるものがわかって、今からメーアのお里を訪問することが確定になりました!
「え、モモさん、精霊の里の場所を知ってるんです? 海エルフさんたちにも秘密の場所らしいですよ……?」
タマモがパチパチと瞬きをしてる。驚かせちゃったみたいだ。
「僕は海精霊の女王に祝福をもらったからー」
「おおっ……さすモモ!」
「うん? それ、褒められてる?」
「もちろんです!」
混じりっけのない好意100%な笑みで言われたから、「そっかー」と聞き流した。
とりあえず、ルージュたちは海精霊たちの意思を受けて行動してると思っていいのかな。
──そんなことを考えている間も、視界の端をフラグさんがぴょんぴょんしてる。タマモが合流してくれたおかげでもう暇じゃなくなったし、可視化スキルをオフにしようかな。
「でも、一個くらいは回収してあげるべき?」
うぅむ、と悩みながら呟く。
タマモに「どうしました?」と聞かれたから状況を教えると、「反則的スキルですねぇ。それを普段全然使わないモモさん、さすモモ!」という感想が返ってきた。
続けて「一個くらいは回収してみてもいいかもしれませんよー」と言ってくれたから、手近なものに触れてみることに決める。
タマモがいるから、何が起きたとしてもちょっとは余裕があるもんねー。
「じゃあ──君に決めた!」
一際激しくヘッドバンギングする勢いで揺れていたフラグさんをタッチする。
今さらだけど、フラグさんの回収ってこんなやり方でいいんだっけ? これまで折ってばっかりだったから、よくわからないや。
んー、と首を傾げたけど、僕のやり方は間違ってなかったらしい。
触れたフラグさんは、ポンッと手のひらサイズに変わったかと思うと、ロケットのようにどこかに飛んでいった。
……あれ? ほんとに間違ってないよね?
ポカンとしながら見送っちゃった。これ、フラグ回収できてなくない?
「あ、モモさん、アール君たちに置いていかれちゃいますよー」
「いや、ルージュなら僕の速度にあわせて進んでくれると思うから大丈夫だよ」
そう答えたけど、タマモが僕の手を掴んで引っ張りながら泳いでくれる。
ニコニコしてるから、たぶん僕と触れ合ってるのが嬉しいんだね。僕、一人で泳げるけど何も言わないことにしました。楽できるのは嬉しいし。
そんなことを考えていると、彼方に飛んでいったフラグさんが、またバビューンッと飛んで帰ってきた。おかえりなさーい。でも、どういうことです?
頭の中でクエスチョンマークが乱舞してる僕を、タマモがきょとんとした顔で見てる。タマモにはフラグさんが見えてないから、状況を把握できてないんだよね。
戻ってきたフラグさんは、僕に触れた途端、ポンッと消えた。
今度こそ、回収できたと思ってもよろしい?
これから何か起きるのかな~?
──どこかからバシャーンと水の音がする。
視界の端に小さな魚じゃないものが見えた気がした。
『おやー? ここによそ者さんがいらっしゃるとはめっずらしー』
いつの間にか、大きな亀さんが目の前にいた。銀色だ。
「おわっ」
「あらっ」
反射的に飛び跳ねて急停止。
ルージュとアール君が『どうしたの?』って感じで振り返り僕たちを確認した後、ポカンと口を開ける。お魚さんが唖然とした表情をしてるの、初めて見たよー。
『ウサギちゃんとキツネ人ちゃん、オレちゃんの背中、空いてるよー? 亀ちゃんタクシーに乗ってくー?』
どうぞ、という感じに亀さんが甲羅を向けてくれた。
亀ちゃんタクシー? ナンパっぽい感じなのはなんでなの?
思わずタマモと顔を見合わせる。
あんまり状況が理解できてないけど、たぶんこの亀さんはキージィと同種で害はないと思うし、乗っていいと思う。
「……乗ったら一時間素早さ+10になるみたいですよ」
「あ、キージィとは上がるステータスが違うんだ?」
キージィに乗ったら幸運値上昇だったもんね。その恩恵があったかどうかはいまいちわからないけど。
タマモが鑑定結果を教えてくれたから、僕は前に会ったキージィの情報を教えてあげた。
いろんな色がいるらしいとは知ってたけど、こんなに早く二体目に会うとは予想してなかったな。
いや、でも、精霊の里が近いなら、精霊の一種っぽい亀さんに会ってもおかしくないのかな?
あなたにおすすめの小説
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします
あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。