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10章 海は広くて冒険いっぱい
408.もふもふ愛ランドを歩こう
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万歳三唱ロード──勝手に名付けた。それくらい、みんなが万歳しながら僕たちを見てた──をタマモに連れられて進む。
辿り着いたのは、見覚えのあるイースターエッグ遊具が並んでるエリア。
相変わらず、ウサギと卵をモチーフにした遊具が可愛い。すでに乗って遊んでる人もいて、楽しそうだなー。
「タマモが作り足した遊具もここにあるの?」
「はい! ここと、山の頂上に置いてるんですよ」
ニコニコ笑顔でタマモが指した先にあったのは、羽がついた大きなブランコだ。二人掛けになってるけど、一方にはすでに天兎が座ってる。
「……うん!? 天兎がいる!?」
ぎょっとしながら眺めて、違和感に気づいた。
この天兎、ピクリともしないぞ……?
チラッとタマモを見上げると、軽い感じで「作りましたー」と言われた。
作ったって、天兎を!?
驚きのあまり固まる僕を、タマモはブランコに乗せる。
隣の天兎にそっと手を伸ばすと、柔らかな毛に触れた。
「おお、ぬいぐるみ、かな? 毛質は夢羊っぽいけど」
天兎とはちょっと違うねー。でも、これはこれでよき。
わしゃわしゃと撫でてみる。
「ぬいぐるみより、像に近いんですよ。モモさんが作るぬいぐるみには、やはり及びません。効果も『設置した周囲、半径十メートルをリラックス空間に変える』だけですし」
「だいぶ意味がわからない効果だね?」
残念そうなタマモの言葉を聞きながら、天兎の横顔を眺める。
可愛いから、見てるだけで癒やされるし、リラックス効果はあるかも?
スクショスポットにもいいねー。天兎とツーショット写真を撮れるよ!
しばらく像の天兎と戯れた後、またタマモに抱かれながら、もふもふ愛ランド観光をした。
遊具のエリアの近くには大きなステージがあって、いつでもコンサートができるようになっていたし、演出用の機材も揃ってた。
スポットライトとか、音響機器とか、大きなスクリーンとか……いつの間に、こんなにコンサート機材が充実してたんだろうね?
運営さんの、ゲームの開発方針がよくわからない。ありがたいけど、普通のRPG系ゲームには必要のないアイテムだよ。
──そんなことを考えながら山道を登ってしばし。
道中にはたくさんの天兎像があって、たまに宝石兎の像も隠れていたり、僕のテイムモンスターを模した像もあったりして、全然飽きなかったよ!
「ここが展望台ですよー」
「ほえー、ほんとに巨大なウサ耳だぁ」
辿り着いた山の頂上に、にょきっと二つの耳がそびえ立っている。
ウサ耳展望台の周囲は広場になっていて、遊具エリアで見たのと同じブランコやベンチ、噴水などで、センスよく飾られていた。
どの設備ももれなくウサギモチーフなのは、もう疑問にも思わない。
「登りますよね?」
「せっかく来たしね」
答えながら、そろそろ下ろしてもらえるかな? と首を傾げる。
ここまでずっと、遊具で遊んでる時間以外は、タマモに抱き上げられたままだったんだよ。
タマモが「仕事の疲れが癒されるぅ……」と蕩けた顔をしていたから、まぁいっか、と受け入れてたんだけど。そろそろ自分で歩きたいです。
そんなささやかな願いは、タマモの笑顔でかき消された。今日は離す気がないらしい。
僕たちを囲んでついてきていたみんなが、「もふらーさんめ……!」「呪うだけでは足りない気がしてきた……」とか呟いてるのが聞こえないのかな。
聞こえた上で、スルーしてる可能性が高いね。やっぱり僕で癒やされてる状態のタマモは無敵。どんな呪いも跳ね除けちゃう多幸感に溢れてる。
「あ、内部は結構シンプルだね」
ウサ耳展望台の入口から登っていく。
中は螺旋階段になっていて、登る人と降りる人がバッティングしないようになっていた。DNAの螺旋構造っぽい感じ。
中までウサギ尽くし、と予想していたのに、そういうのは一切ない。
それがちょっぴり不思議。ウサギに飽きちゃった?
「まだ整備途中なんですよ。階段の手すりや柱などに、天兎彫刻を施す予定です」
「あっ、そうなんだね。さすがタマモ……さすタマ」
キリッとした顔で教えられて、納得するしかなかった。
タマモがウサギ──天兎な僕に飽きる未来が想像できないもん。
でも、タマモって別ゲームしてるんじゃないの、って疑問に思っちゃうくらい島開発に全力だね。
このゲームはRPG系ではなく、島開発ゲームだった……?
そう考えている僕も、普段王道RPGより食道楽寄り道珍道中ばかりである現実からは目を逸らす。
想像の中でルトのジト目を感じたけど、全力で気づかないフリ!
僕がこうなってるのはすべて、ご飯が美味しくて、バトル以外で楽しいことがいっぱいなこの世界のせいなんだよ! つまり、諸悪の根源は運営さんです!
……あれ? 見たこともない運営さんにもジト目を向けられてる気がしたぞ?
これは普通に気のせいだね。
「さぁ、外に出ますよー」
展望台を登りきって、小さな出口から外に出る。
ウサ耳の周りを歩いて回れるスペースがあるみたいだ。
ふわっと潮の香りがする。
新緑の山はところどころに花が咲き、麓には見て回ったばかりの遊具スペースや休憩スペースがあった。
そこから先はキラキラと輝く美しい青。広い海が水平線まで続いている。雄大な景色だ。
「……この世界って、ほんと広いよねぇ」
「そうですねぇ。いくら遊んでも、遊びきれない気がします」
タマモと二人、ほのぼのと海を眺める。
この海の先にはまだ知らない世界が広がっていると思うと、改めてワクワクするよ! 楽しいね!
辿り着いたのは、見覚えのあるイースターエッグ遊具が並んでるエリア。
相変わらず、ウサギと卵をモチーフにした遊具が可愛い。すでに乗って遊んでる人もいて、楽しそうだなー。
「タマモが作り足した遊具もここにあるの?」
「はい! ここと、山の頂上に置いてるんですよ」
ニコニコ笑顔でタマモが指した先にあったのは、羽がついた大きなブランコだ。二人掛けになってるけど、一方にはすでに天兎が座ってる。
「……うん!? 天兎がいる!?」
ぎょっとしながら眺めて、違和感に気づいた。
この天兎、ピクリともしないぞ……?
チラッとタマモを見上げると、軽い感じで「作りましたー」と言われた。
作ったって、天兎を!?
驚きのあまり固まる僕を、タマモはブランコに乗せる。
隣の天兎にそっと手を伸ばすと、柔らかな毛に触れた。
「おお、ぬいぐるみ、かな? 毛質は夢羊っぽいけど」
天兎とはちょっと違うねー。でも、これはこれでよき。
わしゃわしゃと撫でてみる。
「ぬいぐるみより、像に近いんですよ。モモさんが作るぬいぐるみには、やはり及びません。効果も『設置した周囲、半径十メートルをリラックス空間に変える』だけですし」
「だいぶ意味がわからない効果だね?」
残念そうなタマモの言葉を聞きながら、天兎の横顔を眺める。
可愛いから、見てるだけで癒やされるし、リラックス効果はあるかも?
スクショスポットにもいいねー。天兎とツーショット写真を撮れるよ!
しばらく像の天兎と戯れた後、またタマモに抱かれながら、もふもふ愛ランド観光をした。
遊具のエリアの近くには大きなステージがあって、いつでもコンサートができるようになっていたし、演出用の機材も揃ってた。
スポットライトとか、音響機器とか、大きなスクリーンとか……いつの間に、こんなにコンサート機材が充実してたんだろうね?
運営さんの、ゲームの開発方針がよくわからない。ありがたいけど、普通のRPG系ゲームには必要のないアイテムだよ。
──そんなことを考えながら山道を登ってしばし。
道中にはたくさんの天兎像があって、たまに宝石兎の像も隠れていたり、僕のテイムモンスターを模した像もあったりして、全然飽きなかったよ!
「ここが展望台ですよー」
「ほえー、ほんとに巨大なウサ耳だぁ」
辿り着いた山の頂上に、にょきっと二つの耳がそびえ立っている。
ウサ耳展望台の周囲は広場になっていて、遊具エリアで見たのと同じブランコやベンチ、噴水などで、センスよく飾られていた。
どの設備ももれなくウサギモチーフなのは、もう疑問にも思わない。
「登りますよね?」
「せっかく来たしね」
答えながら、そろそろ下ろしてもらえるかな? と首を傾げる。
ここまでずっと、遊具で遊んでる時間以外は、タマモに抱き上げられたままだったんだよ。
タマモが「仕事の疲れが癒されるぅ……」と蕩けた顔をしていたから、まぁいっか、と受け入れてたんだけど。そろそろ自分で歩きたいです。
そんなささやかな願いは、タマモの笑顔でかき消された。今日は離す気がないらしい。
僕たちを囲んでついてきていたみんなが、「もふらーさんめ……!」「呪うだけでは足りない気がしてきた……」とか呟いてるのが聞こえないのかな。
聞こえた上で、スルーしてる可能性が高いね。やっぱり僕で癒やされてる状態のタマモは無敵。どんな呪いも跳ね除けちゃう多幸感に溢れてる。
「あ、内部は結構シンプルだね」
ウサ耳展望台の入口から登っていく。
中は螺旋階段になっていて、登る人と降りる人がバッティングしないようになっていた。DNAの螺旋構造っぽい感じ。
中までウサギ尽くし、と予想していたのに、そういうのは一切ない。
それがちょっぴり不思議。ウサギに飽きちゃった?
「まだ整備途中なんですよ。階段の手すりや柱などに、天兎彫刻を施す予定です」
「あっ、そうなんだね。さすがタマモ……さすタマ」
キリッとした顔で教えられて、納得するしかなかった。
タマモがウサギ──天兎な僕に飽きる未来が想像できないもん。
でも、タマモって別ゲームしてるんじゃないの、って疑問に思っちゃうくらい島開発に全力だね。
このゲームはRPG系ではなく、島開発ゲームだった……?
そう考えている僕も、普段王道RPGより食道楽寄り道珍道中ばかりである現実からは目を逸らす。
想像の中でルトのジト目を感じたけど、全力で気づかないフリ!
僕がこうなってるのはすべて、ご飯が美味しくて、バトル以外で楽しいことがいっぱいなこの世界のせいなんだよ! つまり、諸悪の根源は運営さんです!
……あれ? 見たこともない運営さんにもジト目を向けられてる気がしたぞ?
これは普通に気のせいだね。
「さぁ、外に出ますよー」
展望台を登りきって、小さな出口から外に出る。
ウサ耳の周りを歩いて回れるスペースがあるみたいだ。
ふわっと潮の香りがする。
新緑の山はところどころに花が咲き、麓には見て回ったばかりの遊具スペースや休憩スペースがあった。
そこから先はキラキラと輝く美しい青。広い海が水平線まで続いている。雄大な景色だ。
「……この世界って、ほんと広いよねぇ」
「そうですねぇ。いくら遊んでも、遊びきれない気がします」
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