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エピローグ
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サヴィとのサカオ王国での暮らしはレイナーラでの暮らしとは全く違う日々だった。
レノに貴族としての作法を、ばあやに令嬢教育を受けていたお陰で大きく困ることは無かったけど国が違うので細かな所はヘンドリー侯爵家で改めて教えてもらう。
その傍らで商会の事を学ぶ日々は忙しくも充実していた。
一緒に来てくれた皆のお陰で勝手が違って困る事もホームシックになることもなく、私はサカオ王国に、ヘンドリー侯爵家に馴染んでいけた。
初めての旅は驚きと感動の連続だった。
乗馬も覚え、行ける場所は増えていった。
お兄様から手紙が届き、お父様の死を知る。
お父様が結婚式に辺境伯として参列していた事、貴賓席に座っていた事は後で知った。
あの倒れた人が父親なのだと。
だけどテーブルや椅子で隠れていたのもあって顔なんて見ていない。
だからどんな人かも思い出せない。
手紙が届いたこともあったけど、サヴィをはじめ皆が望まないなら会わなくていいと言ってくれた。
私の決断は会わない、手紙も読まない、だった。
顔も覚えていないし会いたいと思わなかった。
だけどお兄様にはお会いした。
誘われたのがお母様のお墓参りだったから、というのもある。
お母様のお墓の近くにお父様のお墓が無いのが不思議だったけど、お父様は王都がお好きだったからそこで眠っていると話してくれた。
「行きたいなら案内するけど…行くかい?」
「…行かないわ」
「良かった。王都は遠いから面倒だなって思ったんだ」
お兄様は少し変わった方らしい…。
そして、そのお墓参りの時にお姉様が亡くなっていた事、遺髪の埋葬について聞いた。
もちろん私が亡くなった時には共に埋葬する事をお願いしたいと伝える。
お兄様は笑ってお互いちゃんと遺言として書き残しておこう、だなんて言い方で約束した。
お母様のお墓の向かいにはばあやが眠っている。
亡くなる前「願わくばお嬢様の近くで眠りたい」と話していたらしいから、とお兄様がここに埋葬させたらしい。
「いつでも気が向いたら遊びに来てね」
そう笑うお兄様の紫の瞳は暖かい。
変わった方…優しい人なのか、冷たい人なのか、お父様を嫌っているだけなのか…全く分からない。
…でもこれから知っていけば良いか、そう思えた。
その後、お祖父様を訪ねて夫婦で会いに行った日にお祖父様は眠るように亡くなった。
私の事を心配されていて、幸せに暮らしていることを伝えると「安心した」と「ありがとう」と笑顔を見せてくれた。
そして休まれるとおっしゃって…そのままだった。
私が来るから、とラメノ家の人達が集まっていたので皆に見送られながら、お祖母様に手を握られながらの最後だった。
「お母様のそれ、キラキラしてキレイねぇ」
3歳になる息子が言う『それ』はお母様の形見のペンダントだった。
お祖父様がお母様に贈られたという護りの首飾り。
「もうすぐ赤ちゃんが産まれるからお守りをつけているのよ」
そう伝えるとウンウンと頷いて優しくお腹に抱きついてくる。
「ぼく、妹だと思うなぁ~…」
お祖父様と同じ明るいブロンドにサヴィの紫の目を持った息子は嬉しそうにそう呟く。
「あまり強く抱きついてはいけないよ?」
飲み物を取りに行ってくれていたサヴィが庭に戻ってきた。
「お父様!大丈夫だよー、僕が守るんだよー!」
穏やかで幸せな時間。
頬を撫でるように優しい風が吹く。
「私、誰よりも幸せよ」
吹き抜けていく風に、小さな声でそう呟いた。
end
沢山の方に読んだけ光栄です!
思い出深い作品となりました。
最後までお付き合い下さりありがとうございました!
レノに貴族としての作法を、ばあやに令嬢教育を受けていたお陰で大きく困ることは無かったけど国が違うので細かな所はヘンドリー侯爵家で改めて教えてもらう。
その傍らで商会の事を学ぶ日々は忙しくも充実していた。
一緒に来てくれた皆のお陰で勝手が違って困る事もホームシックになることもなく、私はサカオ王国に、ヘンドリー侯爵家に馴染んでいけた。
初めての旅は驚きと感動の連続だった。
乗馬も覚え、行ける場所は増えていった。
お兄様から手紙が届き、お父様の死を知る。
お父様が結婚式に辺境伯として参列していた事、貴賓席に座っていた事は後で知った。
あの倒れた人が父親なのだと。
だけどテーブルや椅子で隠れていたのもあって顔なんて見ていない。
だからどんな人かも思い出せない。
手紙が届いたこともあったけど、サヴィをはじめ皆が望まないなら会わなくていいと言ってくれた。
私の決断は会わない、手紙も読まない、だった。
顔も覚えていないし会いたいと思わなかった。
だけどお兄様にはお会いした。
誘われたのがお母様のお墓参りだったから、というのもある。
お母様のお墓の近くにお父様のお墓が無いのが不思議だったけど、お父様は王都がお好きだったからそこで眠っていると話してくれた。
「行きたいなら案内するけど…行くかい?」
「…行かないわ」
「良かった。王都は遠いから面倒だなって思ったんだ」
お兄様は少し変わった方らしい…。
そして、そのお墓参りの時にお姉様が亡くなっていた事、遺髪の埋葬について聞いた。
もちろん私が亡くなった時には共に埋葬する事をお願いしたいと伝える。
お兄様は笑ってお互いちゃんと遺言として書き残しておこう、だなんて言い方で約束した。
お母様のお墓の向かいにはばあやが眠っている。
亡くなる前「願わくばお嬢様の近くで眠りたい」と話していたらしいから、とお兄様がここに埋葬させたらしい。
「いつでも気が向いたら遊びに来てね」
そう笑うお兄様の紫の瞳は暖かい。
変わった方…優しい人なのか、冷たい人なのか、お父様を嫌っているだけなのか…全く分からない。
…でもこれから知っていけば良いか、そう思えた。
その後、お祖父様を訪ねて夫婦で会いに行った日にお祖父様は眠るように亡くなった。
私の事を心配されていて、幸せに暮らしていることを伝えると「安心した」と「ありがとう」と笑顔を見せてくれた。
そして休まれるとおっしゃって…そのままだった。
私が来るから、とラメノ家の人達が集まっていたので皆に見送られながら、お祖母様に手を握られながらの最後だった。
「お母様のそれ、キラキラしてキレイねぇ」
3歳になる息子が言う『それ』はお母様の形見のペンダントだった。
お祖父様がお母様に贈られたという護りの首飾り。
「もうすぐ赤ちゃんが産まれるからお守りをつけているのよ」
そう伝えるとウンウンと頷いて優しくお腹に抱きついてくる。
「ぼく、妹だと思うなぁ~…」
お祖父様と同じ明るいブロンドにサヴィの紫の目を持った息子は嬉しそうにそう呟く。
「あまり強く抱きついてはいけないよ?」
飲み物を取りに行ってくれていたサヴィが庭に戻ってきた。
「お父様!大丈夫だよー、僕が守るんだよー!」
穏やかで幸せな時間。
頬を撫でるように優しい風が吹く。
「私、誰よりも幸せよ」
吹き抜けていく風に、小さな声でそう呟いた。
end
沢山の方に読んだけ光栄です!
思い出深い作品となりました。
最後までお付き合い下さりありがとうございました!
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