15 / 18
ナーシャの気持ち
しおりを挟む
「ナーシャ様、木の実探しを手伝ってもらえませんか?」
ラーウェイに声をかけたれたのはルーベンの領境となる森の街道脇で休憩しているときだった。
野宿の時でさえ何かしらの採取に誘われたことは無い。
不思議に思いつつもナーシャは少しワクワクした気持ちになった。
「よろこんで!」
一瞬ラーウェイを咎めるような素振りをしたレバンスが心配そうに見送る。
近頃ラノ村から謎のモヤモヤが時々顔を出すので気分転換になりそうで本当に嬉しかった。
なのにレバンスの表情を見て何だか切ないような気持ちになる。
(もう!本当になんなのかしら…)
レバンスは本当は引き止めたかった。
いつもの採取のようにラーウェイ一人に行って欲しかった。
しかし…以前ラーウェイもナーシャを口説くと言っていた。
その事に遠慮してしまって見送ったのだ。
我ながらお人好しだと思いながら…。
そんな気持ちのレバンスだったのでレバンスの表情は殊更切ない気持ちを押し込めたものだった。
その顔を見たことでナーシャは分かったことが一つ出来た。
モヤモヤしたり、切なくきゅうっとしたり…それにはレバンスが関係しているのは間違いなさそうだと…。
グルグルとそんな事を考えていたのでラーウェイの声に小さく驚いてしまう。
「これこれ、これ、美味しいんですよっ」
いつの間にか随分と森の奥に来たように思えた。
ラーウェイが指し示す木の上には桑の実が沢山なっている。
桑にしてはかなり大きな木だ。
「ここにあるって知ってたの?」
周りは似たような木ばかりなのに迷い無く進んできたはずだ。
「はいっ!この森は庭みたいなものですからね。あの休憩出来るスペースから近いんでルーベンの騎士なら殆ど皆この木は知ってますよ!」
思ったほど奥までは来ていなかったのかもしれない。
それだけ考えてしまっていたことにそこで気付いた。
笑顔で返したラーウェイは口の広い籠を手渡してきた。
「私が上に登るので籠を上に持ち上げて受けて下さい」
スルスルとラーウェイが木に登り、器用に実をプチプチ採ってはナーシャが頭上に持ち上げている籠に投げ入れていく。
そんなラーウェイを見ながらまた考え事の沼にはまっていく。
そういえばモヤモヤはラーウェイには起こらない。
一緒に旅をすると決まったときに神様がくれた縁の人かもしれないと思ったりもしたのに、そんな可能性を感じない。
なのにレバンスならば…?
前回も、今回も、優しくて話していて楽しいレバンス。
前回も別れがたくて…今回は私から話しかけてしまった。
ここまで考えたとき、唐突に理解した。
レバンスに恋したかもしれないと。
自覚すると急に恥ずかしくなった。
どうしてラノ村であんな事を言ってしまったのか。
レバンスは独立後伯爵になるらしいのに。
自分は逆に平民になるのに…!
結婚の申し込みをされると思うなんて…前回と今回は違うのに!
「持つよ」
気付けばラーウェイは降りてきて籠を受け取ってくれていた。
ナーシャの顔を見てニコリと笑う。
「赤いですよ。もしかしてレバンスのことが好きってちょっと離れただけで自覚しました?」
「なんでそれを…!?」
自分でも無自覚だった気持ちが、たった今自覚した気持ちが、何故ラーウェイにバレているのか不思議で仕方ない。
ものすごく驚くとラーウェイは揶揄うように続けた。
「荷馬車から二人がずーっと仲良く喋ってるの見てましたからねぇ。こりゃくっつくなーって」
「えぇ!?」
「なんか既に恋人同士感があったんですよ。いやー気まずい気まずい」
揶揄われるのは恥ずかしかったが『くっつく』『恋人同士感』につい嬉しくなってしまう。
自分で思っているよりレバンスの事が好きだったらしい…。
なんだか早く戻りたくて帰りの足取りは軽くなっていた。
ラーウェイに声をかけたれたのはルーベンの領境となる森の街道脇で休憩しているときだった。
野宿の時でさえ何かしらの採取に誘われたことは無い。
不思議に思いつつもナーシャは少しワクワクした気持ちになった。
「よろこんで!」
一瞬ラーウェイを咎めるような素振りをしたレバンスが心配そうに見送る。
近頃ラノ村から謎のモヤモヤが時々顔を出すので気分転換になりそうで本当に嬉しかった。
なのにレバンスの表情を見て何だか切ないような気持ちになる。
(もう!本当になんなのかしら…)
レバンスは本当は引き止めたかった。
いつもの採取のようにラーウェイ一人に行って欲しかった。
しかし…以前ラーウェイもナーシャを口説くと言っていた。
その事に遠慮してしまって見送ったのだ。
我ながらお人好しだと思いながら…。
そんな気持ちのレバンスだったのでレバンスの表情は殊更切ない気持ちを押し込めたものだった。
その顔を見たことでナーシャは分かったことが一つ出来た。
モヤモヤしたり、切なくきゅうっとしたり…それにはレバンスが関係しているのは間違いなさそうだと…。
グルグルとそんな事を考えていたのでラーウェイの声に小さく驚いてしまう。
「これこれ、これ、美味しいんですよっ」
いつの間にか随分と森の奥に来たように思えた。
ラーウェイが指し示す木の上には桑の実が沢山なっている。
桑にしてはかなり大きな木だ。
「ここにあるって知ってたの?」
周りは似たような木ばかりなのに迷い無く進んできたはずだ。
「はいっ!この森は庭みたいなものですからね。あの休憩出来るスペースから近いんでルーベンの騎士なら殆ど皆この木は知ってますよ!」
思ったほど奥までは来ていなかったのかもしれない。
それだけ考えてしまっていたことにそこで気付いた。
笑顔で返したラーウェイは口の広い籠を手渡してきた。
「私が上に登るので籠を上に持ち上げて受けて下さい」
スルスルとラーウェイが木に登り、器用に実をプチプチ採ってはナーシャが頭上に持ち上げている籠に投げ入れていく。
そんなラーウェイを見ながらまた考え事の沼にはまっていく。
そういえばモヤモヤはラーウェイには起こらない。
一緒に旅をすると決まったときに神様がくれた縁の人かもしれないと思ったりもしたのに、そんな可能性を感じない。
なのにレバンスならば…?
前回も、今回も、優しくて話していて楽しいレバンス。
前回も別れがたくて…今回は私から話しかけてしまった。
ここまで考えたとき、唐突に理解した。
レバンスに恋したかもしれないと。
自覚すると急に恥ずかしくなった。
どうしてラノ村であんな事を言ってしまったのか。
レバンスは独立後伯爵になるらしいのに。
自分は逆に平民になるのに…!
結婚の申し込みをされると思うなんて…前回と今回は違うのに!
「持つよ」
気付けばラーウェイは降りてきて籠を受け取ってくれていた。
ナーシャの顔を見てニコリと笑う。
「赤いですよ。もしかしてレバンスのことが好きってちょっと離れただけで自覚しました?」
「なんでそれを…!?」
自分でも無自覚だった気持ちが、たった今自覚した気持ちが、何故ラーウェイにバレているのか不思議で仕方ない。
ものすごく驚くとラーウェイは揶揄うように続けた。
「荷馬車から二人がずーっと仲良く喋ってるの見てましたからねぇ。こりゃくっつくなーって」
「えぇ!?」
「なんか既に恋人同士感があったんですよ。いやー気まずい気まずい」
揶揄われるのは恥ずかしかったが『くっつく』『恋人同士感』につい嬉しくなってしまう。
自分で思っているよりレバンスの事が好きだったらしい…。
なんだか早く戻りたくて帰りの足取りは軽くなっていた。
107
あなたにおすすめの小説
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
黒薔薇の棘、折れる時
こだま。
ファンタジー
漆黒の髪と氷の瞳を持つ悪役令息エドワードは、借金を取り立てた少女アリスと運命を変える。
聖女リリアの甘い仮面の下に隠された野望と、公爵領の禁足地、黒い聖地の災厄。
復讐は調和へ導かれる。
最後に咲いたのは、召使いの少女が残した、永遠に枯れない真紅の薔薇――。
ちょっと切ないお話です。
AIがプロットを作ったファンタジーです。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
【完結】偽物の王女だけど私が本物です〜生贄の聖女はよみがえる〜
白崎りか
恋愛
私の婚約者は、妹に夢中だ。
二人は、恋人同士だった賢者と聖女の生まれ変わりだと言われている。
「俺たちは真実の愛で結ばれている。おまえのような偽物の王女とは結婚しない! 婚約を破棄する!」
お好きにどうぞ。
だって私は、偽物の王女だけど、本物だから。
賢者の婚約者だった聖女は、この私なのだから。
虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~
日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。
彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。
一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる