明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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リレーするキスのパズルピース

同僚と恋人/5

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 ピンクがかった銀の髪。ベビーピンクの純粋な瞳。未来が見える光命は、このあとどうなるかわかって、優雅な笑みを一層濃くした。

「どなたですか?」

 問いかけると、ぴょんぴょん廊下で跳ねているのが容易に想像できる、元気な声が返ってきた。

「僕~!」
「どうぞ」

 ジャンプしてドアノブを回したため、グルンッとオーバー気味に動き、ドアがパッと開けられた。すっと小さな人が入り込んできて、開けたままの扉を行儀よくきちんと閉める。王子さまみたいな白いフリフリのブラウスと紺の半ズボンが、ピアノの前に座る自分の元へピューッと走り寄ってきた。

「僕もく~!」

 写真立てに映る銀の長い前髪を持つ男にちらっと視線をやって、自分の足元で目をキラキラ輝かせている、ピンクがかった銀のひまわりみたいな円を描く、髪の子供に穏やかな水色の瞳を落とした。

(おや? 小さな彼に先を越されてしまいましたね)

 光命はあの男を迎えに行こうとしていた。だが、あの男と似た髪の色を持つ男の子に、阻止されてしまった。小さな王子さまに、優雅な王子さまが席を譲ろうとすると、

「それでは――」

 抱えていた楽譜を両手で上に元気よく持ち上げて、可愛いおねだり。

「お膝の上で弾きたい!」
「えぇ、構いませんよ」

 光命は腰をかがめて、エレガントにその男の子を抱きかかえ、自分の膝の上に乗せた。細身のズボンの両ももに、幸せという名の重みで父性が広がる。小さな頭、ちいさな瞳、楽譜を広げている小さな手。守りたいと思える存在。

 ピンクがかった銀の髪が揺れ出した。鍵盤をたたき込むというよりは、なぞるような弱い力だったが、はっきりとしたメロディーラインでポップスではなくクラシック。自分と同じジャンルを弾きこなす子供。

 程よいテンポの明るく穏やかな曲調。膝の上で足をゆらゆらとさせては、自分のスネに小さな靴のかかとが当たる。やり直しという人生の中で、今目の前にいる子供と同じ年――五歳の頃の自分と比べる。すでに閉じてしまったまぶたの裏で。

(八分音符の三連符……。装飾音符……自身のアレンジ。そちらを、五歳で弾きこなす。私より才能があるかもしれませんね)

 小さな天才。ピアノのレッスンという場で彼に出会って、自分の内に芽生えた感情をふと思い返す。膝の上の小さな温もりが、銀のひまわりみたいな線を描く髪が、神経質な頬に触れるのを感じながら。

(あなたとは以前から、親子になりたいと望んでいました。ですが、そちらは遠い夢でした)

 懸命に弾いている小さな人に悟られないように、写真立てに一緒に映る銀の長い前髪とスミレ色の瞳を持つ男をそっと見つめた。

(しかしながら……)

 そこで、ふとピアノのメロディーがやんだ。つたないものでもなく、下手をすると大人顔負けのピアノの曲。他の五歳の子だったら、ちょうちょやチューリップを弾きこなせるかどうかの瀬戸際。だが、自分の膝の上にいるピンクがかった銀の髪を待つ子供は違っていた。

(彼の魂の影響を深く受けているのかもしれませんね)

 今と違う家で、今と違う部屋で行なっていたピアノレッスンを懐かしむ。その一方で、先生と生徒という距離感を超えていた、光命の次の行動は。膝の上にいる小さな頭を、結婚指輪をした手で優しくなでる。

「上手に弾けましたね」
「うん、できるようになった~!」

 自分の方へ振り返り、子供らしさの象徴といってもいい、大きなくりっとしたベビーピンクの瞳が、大人の冷静な水色のそれを見上げてくる。両腕でしっかりと抱きしめ、光命の神経質な頬は、ピンクがかった銀の髪に寄せられ、スリスリする。

百叡びゃくえいと親子になれたことが、とても嬉しいですよ」
「先生がパパになって、僕も嬉しい」
「そうですか」

 小さな足が自分の膝にパタパタされる振動を感じながら、あの悲恋の嵐のあとに、やってきた至福の時に浸る。いつまでも暖かく優しく自分を包み込む陽だまりみたいな人生。その中で自身に返ってきたものは、予測もしなかった幸せの数々と失ったはずのものだった。

 それを叶えてくれた――いや手を一緒につないで、越えてくれた男。写真立てのスミレ色の瞳が、光命の心を熱くする。

(あちらの場所で、彼に会いたい……)

 瞬間移動で手元に、鈴色の円を取り出した。

(十六時二十六分十一秒……)

 大好きなパパの前で幾度となく見てきた、その癖。百叡は不思議そうな顔に変わった。

「どこかに行くの?」
「えぇ、あなたのパパに会ってきますよ」
「僕も行きた~い!」

 百叡は大きく右手を上げた、学校が終わって家に帰ってきた彼。大好きなパパが出かける。当然の言葉だった。

 しかし、男に会いに行くのであって、パパに会いに行くのではない。光命の紺の肩より長い髪はゆっくり横へ揺れた。

「残念ですが、お仕事の話もしますから、あなたのことは連れていけません」
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