【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

文字の大きさ
50 / 70
9章

9-5

しおりを挟む
「嫌だったら、殴ってくれ」

 瞼を閉じた青は、叶太の頬を挟んだままゆっくりと顔を近づけてきた。息を止め、叶太もきゅっと目を閉じる。

 目を閉じたあとに、すぐ唇に何かが触れる。青の唇だと気づくのに、時間はかからなかった。優しく触れただけのキスは、長いようで短く感じた。

 青の顔と手がゆっくりと離れていく。名残惜しかったけど、これ以上長かったらきっと自分は極度の緊張と酸欠でぶっ倒れていたかもしれない。

 目を開けると、戸惑いがちな目が叶太を出迎えた。コロコロと忙しなく変わる表情が愛おしくて、叶太は脱力して笑った。

「わがままはどっちだよ」

 叶太のツッコミに対して、青は遅れて苦笑する。

「それな」

 そのあとは特に言葉を交わすこともなく、気まずい雰囲気が流れた。少し経つと、一階から舞子さんの叶太を呼ぶ声がしたので急いで降りた。

 顔が赤くなっていないだろうか。不安でお土産を受け取るときも、俯き加減のまま舞子さんの顔を見ることができなかった。

 家に帰って母親に舞子さんからのお土産を渡したあとは、逃げるように自分の部屋へと戻った。ベッドにダイブし、苦しいぐらい枕に顔を埋めた。

 一人になると、恥ずかしさがじわじわとこみ上げてくる。

 やばいやばいやばい。青とキスしちゃったんだけど。ていうかめっちゃ柔らかかった。気持ちよかった。

 キスを思い返すと、全身がうずうずしてくる。じっとしていられなくて、体のどこかを動かしていないとどうにもこうにも落ち着かなかった。

 青は詩乃とは付き合っていないと言っていた。それだけじゃない。おそらく青が好きな相手というのは自分……の可能性が高い。

 そう思った瞬間、「わーっ!」と叶太は壁に頭をゴンッと打ち付けた。落ち着け落ち着け……と何度も自分に言い聞かせるが、バクバクする心臓はなかなか落ち着いてくれない。

 青本人から直接言われたわけじゃない。でも青が自分を見つめる目や、恐々と触れてくる手。そしてためらいがちにキスしてきた唇を思い返すと、そう考えられずにはいられなかった。

 ――関係あるんだよ。

 先ほどの獲物を捉えた豹のような目を思い出し、ゾクッとする。最初はあんな顔をする青を見たのは初めてだと思った。でも……思えばこれまでも、似たような目でこちらを睨んでくることがあったような気がする。

「……オレが好きって言ったら、どんな顔するんだろ」

 ぽつっとこぼした独り言が空気に溶けていく。

 ふわふわした気持ちは、その夜、眠りにつくその瞬間まで叶太の中で踊っていた。






しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた

谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。 就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。 お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中! 液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。 完結しました *・゚ 2025.5.10 少し修正しました。

処理中です...