【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

文字の大きさ
58 / 70
10章

10-8

しおりを挟む
「なっ、誰に電話して――」

「町田先輩」

「はっ!?」

 驚きの声ととも立ち上がる。相手の座るベンチに近寄ると、青はいたって冷静に「この人にオレから電話すんのは、これが最初で最後だから」と叶太を見上げて宣言した。

 しかも青がかけたのはビデオ通話だった。発信音が消え、代わりにスマホの画面にはマスクで顔の下半分を隠した詩乃が映りだした。

『もう~びっくりしたよ。こんな夜遅くにどうしたの~?』

 詩乃はそう言いながらも、仕方ないなぁというように笑う。

 寝る前だからか、メイクをしていないのだろう。こんな夜遅くにかかってきた男からの電話に、ノーメイクでもマスクをして出ようとするじらしさには、ちょっと感じるものがあった。

 猫なで声を出す詩乃に一切惑わされることなく、青は画面に映った詩乃に向かい、素っ気ない口ぶりで問いただした。

「昨日の夕方のあれ、動画撮ってたって本当ですか?」

 その瞬間、画面の中にいる詩乃の表情が氷のように固まった。明らかにうろたえはじめたのは、それからすぐのことだ。

『な、なんのこと?』

「叶太から聞きました。昨日の放課後にオレを呼び出したのって、そういうことですよね」

『そ、そんな動画、私は知らな――……っ』

「じゃあ叶太に見せた動画ってなんですか。取り巻きに撮らせたんですか。オレにも送ってくださいよ」

 毅然とした態度の青に圧され、詩乃は言葉に詰まっていた。

「大体、昨日オレ言いましたよね。そもそもオレら付き合ってないけど、もう終わりにしましょう、つーか終わりにしてくださいって。昨日わかったって、先輩言ってたじゃないですか。なのに叶太に絡むとか、どういう神経してるんですか?」

 まくし立てるうちに、青の中でも徐々に気持ちがヒートアップしていったのだろう。語尾に向かうにつれて早口になっていった。

「最初に先輩の告白をハッキリ断らなかったオレが全部悪いです。オレのことは誰に何を言ってもいいです。でも叶太は……今後叶太を傷つけるつもりで近づいたら、オレは一生あんたを許しませんから」

 怒涛の勢いで言い放つ。ビデオ通話の向こうでは、詩乃が全身をわなわなと震わせていた。髪の毛の先を落ち着かない手で触っている。何か反論したそうに見えたが、もしかするとそれ以上に言い返せない理由があるのかもしれない。たとえば青が今明かしたことがすべて事実で――とか。

 一応逃げ道を作ろうとしたのか、何も言い返さない詩乃に青は、

「言い返したいことがあれば、ここで聞きますけど」

 と投げる。

 けれど詩乃はそれ以上通話を繋げていたくないとばかりに『ねえよ』と乱暴に言葉をぶつけると青を睨んだ。画質が荒くて涙までは見えなかった。でも鼻をすする音と喉を詰まらせる声が聞こえてきたので、きっと泣いているんだろうなと思った。

 相手が先輩だろうと女の子だろうと容赦しない青に、こっちの方が心配になってくる。叶太は適当なところで「もういいから」と青の腕に手を乗せた。

 詩乃だって一人の女の子として青を好きになった。付き合いたいと願った。やり方を間違えたかもしれないが、元々そこにあるものは純粋な気持ちだったはずだ。叶太にはどうしても青のように責めることはできなかった。

「オレは大丈夫だから。青も町田も落ち着いて……」

 次の瞬間、スピーカーから『急に勝ち誇った気になってんじゃねーよ!』と割れたヒステリックな声が飛んでくる。女の人の甲高い声はすごい。耳がキーンとなる。三半規管が混ぜられたような気分だった。

「ああっ!?」

 青が応戦しようと、咆えてスマホを握り直すと、ビデオ通話はいつの間にか切れていた。向こうが切ったのか、青の指が間違えて押したのか。どちらにせよ、最後のあれが彼女の捨て台詞になったというわけだ。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

曖昧な関係

木嶋うめ香
BL
笹川蛍(ささがわけい)はリモートワーク勤務の会社員。 高校からの友達である中村拓(なかむらたく)と一緒に暮らしている。 会社支給のパソコンの交換のため久し振りに会社に出ていた蛍は、コンビニで明日の朝食用の食材と一緒に買ったコーヒーとドーナツを車の中で食べながら、拓と暮らす部屋ではドーナツなんて食べたことなかったなと気がついた。 Xのルクイユ・アートフェスティバル(@RecueilArtFest)様の素敵企画『ルクイユのおいしいごはんBL』に参加中です。

処理中です...