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11章
11-4
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「オレらが付き合ってどんくらいか、叶太はわかってる?」
一瞬にして、青の空気が変わった。
いざ『付き合う』という言葉を青の口から聞くとドキッとした。やっぱり自分たちは付き合ってるんだよな、としみじみした。
「ど、どれくらいって……一ヶ月ぐらいじゃねーの」
「だよな」
青がぐっと頭を近づけてくる。やばい、キスされる――と顎を引いて身構える。ヘルメット越しに、コツンと青の額が優しく当たった。
「オレさ、叶太ともっと先のこと、いろいろしたいんだけど」
「……っ」
「叶太は? したいと思わねーの?」
基本的に青は淡々と喋る。でも今はどこか違う。ゆっくりと優しげで、甘えた喋り方だった。そんな男の声がヘルメットの中で反響する。
ただでさえ熱がこもりやすいヘルメットの内部。上昇した体温が頭の表面温度を高くしていくのを感じた。
「オ、オレだって……」
したいに決まっている。青が具体的に何をするつもりかわからないけど、自分だって男子高校生。好きな人と触れ合いたい気持ちがあるに決まっている。
――今日、うち親いないんだけどさ。
ついさっき青が口にした言葉を耳の奥で巡らせる。改めて今日、青が自分を家まで送ると言って聞かなかった理由を知った瞬間だった。
ようやく青の意図がわかった今、叶太は全身が沸騰するほどの恥ずかしさに襲われた。赤面する顔を両手で覆いながら、
「ま、まじかぁ……」
とこぼして頭を伏せた。緊張のドキドキで心臓が壊れてしまいそうだった。このあとのことをちょっと想像するだけで、肌に針が刺さったみたいに心許なくなった。
「まあ、叶太が今日は無理っていうなら、我慢するけど」
青が見るからにしょんぼりする。ていうかずるいだろ。こんなに背が高くてかっこいいくせに、捨てられた子犬のような目をするなんて。
不覚にもキュンとしてしまう。好きなやつにこんな甘えた顔をされたら、男気を見せたくもなる。叶太はふう~と、胸の中の空気をすべて吐き出す勢いで深呼吸した。
「無理じゃねえよ。オレだって、お、おまえとそういうこと……したいって思ってる」
無理なわけあるもんか。叶太は青の目をしっかりと見据えて、決意を言葉に乗せる。ちょっと語尾が小さくなったのは、なにぶん初めてのことで緊張しているからだ。お願いだからツッコむのは勘弁してほしいと思った。
「よかった……」
青は安堵したように柔らかく微笑む。
「ちゃんと掴まってろよ」
「安全運転でな」
「とーぜん」
サドルに跨ると、青は立ったままゆっくりと漕ぎ出した。
目の前の大きな背中に連れられて、青の漕ぐ自転車が駐輪場から校門を出ていく。
赤く染まった並木道がゆるやかに過ぎていく。高くなった空を見上げると、視界の中で伸びた襟足が風になびいていた。
スピードに乗ったのか、青がサドルに腰を落とす。流れる景色を見送りながら、叶太は青の腰に腕を回した。温かくて硬い。それは自分と同じ男の体だった。
でも自分とは違う。少し前までは、自分と青の違いを間近で感じられることが、こんなにも胸を熱くさせるなんて思いもしなかった。
「好きだよ、青」
青の背中に頭を預け、小さい声でつぶやく。叶太が何か喋ったことに気づいたらしく、青が「なんか言ったかー?」と前を向いたまま聞いてくる。
「あとで言うーっ」
気持ち声のボリュームを大きめにして答える。叶太はその大きな背中に、再び頭をこすりつけた。
【完】
一瞬にして、青の空気が変わった。
いざ『付き合う』という言葉を青の口から聞くとドキッとした。やっぱり自分たちは付き合ってるんだよな、としみじみした。
「ど、どれくらいって……一ヶ月ぐらいじゃねーの」
「だよな」
青がぐっと頭を近づけてくる。やばい、キスされる――と顎を引いて身構える。ヘルメット越しに、コツンと青の額が優しく当たった。
「オレさ、叶太ともっと先のこと、いろいろしたいんだけど」
「……っ」
「叶太は? したいと思わねーの?」
基本的に青は淡々と喋る。でも今はどこか違う。ゆっくりと優しげで、甘えた喋り方だった。そんな男の声がヘルメットの中で反響する。
ただでさえ熱がこもりやすいヘルメットの内部。上昇した体温が頭の表面温度を高くしていくのを感じた。
「オ、オレだって……」
したいに決まっている。青が具体的に何をするつもりかわからないけど、自分だって男子高校生。好きな人と触れ合いたい気持ちがあるに決まっている。
――今日、うち親いないんだけどさ。
ついさっき青が口にした言葉を耳の奥で巡らせる。改めて今日、青が自分を家まで送ると言って聞かなかった理由を知った瞬間だった。
ようやく青の意図がわかった今、叶太は全身が沸騰するほどの恥ずかしさに襲われた。赤面する顔を両手で覆いながら、
「ま、まじかぁ……」
とこぼして頭を伏せた。緊張のドキドキで心臓が壊れてしまいそうだった。このあとのことをちょっと想像するだけで、肌に針が刺さったみたいに心許なくなった。
「まあ、叶太が今日は無理っていうなら、我慢するけど」
青が見るからにしょんぼりする。ていうかずるいだろ。こんなに背が高くてかっこいいくせに、捨てられた子犬のような目をするなんて。
不覚にもキュンとしてしまう。好きなやつにこんな甘えた顔をされたら、男気を見せたくもなる。叶太はふう~と、胸の中の空気をすべて吐き出す勢いで深呼吸した。
「無理じゃねえよ。オレだって、お、おまえとそういうこと……したいって思ってる」
無理なわけあるもんか。叶太は青の目をしっかりと見据えて、決意を言葉に乗せる。ちょっと語尾が小さくなったのは、なにぶん初めてのことで緊張しているからだ。お願いだからツッコむのは勘弁してほしいと思った。
「よかった……」
青は安堵したように柔らかく微笑む。
「ちゃんと掴まってろよ」
「安全運転でな」
「とーぜん」
サドルに跨ると、青は立ったままゆっくりと漕ぎ出した。
目の前の大きな背中に連れられて、青の漕ぐ自転車が駐輪場から校門を出ていく。
赤く染まった並木道がゆるやかに過ぎていく。高くなった空を見上げると、視界の中で伸びた襟足が風になびいていた。
スピードに乗ったのか、青がサドルに腰を落とす。流れる景色を見送りながら、叶太は青の腰に腕を回した。温かくて硬い。それは自分と同じ男の体だった。
でも自分とは違う。少し前までは、自分と青の違いを間近で感じられることが、こんなにも胸を熱くさせるなんて思いもしなかった。
「好きだよ、青」
青の背中に頭を預け、小さい声でつぶやく。叶太が何か喋ったことに気づいたらしく、青が「なんか言ったかー?」と前を向いたまま聞いてくる。
「あとで言うーっ」
気持ち声のボリュームを大きめにして答える。叶太はその大きな背中に、再び頭をこすりつけた。
【完】
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