【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

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番外編~受験生のオレと、遠慮がちな幼なじみの初デートの話~

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 受験前最後の公開模試が終わったのは、十二月初めの日曜日だった。

 叶太が通う予備校が試験会場になっていたこともあり、肩の力を抜いて試験に臨むことができた……とはいえず、予備校を出るそのときまで、叶太はぬるいため息を漏らしていた。

 今回英語の長文が特に難しかった。自分が読むと登場人物のジョニーがエリザベスの家を燃やす話になってしまうし、エリザベスが途中猫になって洗濯し始めたときはだいぶ焦った。

 これが本番だったらと思うとゾッとする。でも今回はあくまで模試の段階。本番じゃなくてよかったと心の底からホッとした。

 とはいえ、受験前最後の模試だ。いいのか悪いのか判断できない状況であることには変わりない。複雑な気持ちを抱えたまま、叶太は予備校の自動ドアを通って外に出た。

 予備校の前は幅が広い歩道になっている。そこのガードレールに寄りかかっている男と目が合う。青だった。

「悪い。待った?」

 小走りで駆け寄る。青はガードレールから腰を浮かし、「そんなには」と暇つぶしにいじっていたであろうスマホをパーカーのポケットに突っ込んだ。

 今日の青はオフホワイトが基調になったプルオーバーのパーカーに、黒のマウンテンパーカーを羽織っている。下は上着と同系色のワイドスラックス、足元は黒のレザースニーカーという、いたってシンプルな服装だった。

 それでも予備校を出た瞬間、まず目に飛び込んできたのは青の姿だ。どんなに落ち着いた格好をしていても、そのイケメンぶりのおかげで目立つのだろう。叶太の後ろから続々と予備校から出てくる受験生たち(特に女子)が、ちらちらと青を見ている。

 やたら周りの目を引く幼なじみは、夏の終わりごろにただの幼なじみから恋人になった。前は一緒に外を歩いてもなんとも思わなかったが、今はとにかく周囲の青を見たときの反応にびっくりするばかりだ。すれ違う人みんなが青のことを見ているようで、どうにも落ち着かない。

 青に注目する周りの目をちょっとでも逸らしたかった。叶太はコホンッとひとつ咳払いする。

「青はなんか昼食った?」

「まだ。叶太と会ってから食おうと思ってた」

「じゃあ腹減ったろ。ファミレス? ラーメンでもいいけど」

 叶太の提案に、青は少し考えてから「あのさ」と口を挟んだ。

「オレ行きたいところあるんだけど、そこでもいい?」

「行きたいところ? メシはどーすんの?」

「そこで食べれる。ラーメンじゃないけど」

 自分は特別ラーメンが食べたいわけではない。むしろ腹が満たせればなんでもいい気分だったので、叶太は「いいよー」と軽く返した。

「で、どこに行くん?」

 尋ねると、青はこれからバスに乗ると言う。

「バスっ? やべえ金あるかな……」

 お昼代は持ってきたが、移動運賃までは考えていなかった。これから向かう場所によっては昼飯代を削らないといけないのか。叶太は「やっぱりここらへんで食わない?」と弱気になる。

「緑地公園の方に行くだけだから、そんなにかかんねえよ」

 緑地公園というのは、地元でも名所の公園だ。公営の動物園が併設され、大きな池の周りは散歩コースになっており、公園の中心には夏場になると子どもたちが水遊びができる噴水広場がある。近くを流れる小川ではザリガニ釣りができるので、叶太も昔よく遊びに行っていた。

 そんな夏休みの子どもが行くような場所に何をしに行くというのか。そんな疑問が浮かんだものの、公園の周辺にはカフェやテラス席のあるパン屋など、飲食店がぽつぽつとあったことを思い出した。

 今日の模試が終わったあと、二人で出かけようと誘ったのは叶太だった。

 というのも、付き合い始めてからというもの、自分たちはまだデートらしいデートをしていない。

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