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番外編~受験生のオレと、遠慮がちな幼なじみの初デートの話~
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しおりを挟む叶太が受験生ということもあってか、青の方からは誘いづらいのだろう。
「次の日曜日昼メシ食わねえ? 一応模試があんだけど、午前中で終わるんだよ」
家を出る時間がたまたま被った数日前の朝、一緒に登校したときに叶太から提案した。今思い出しても色気のない誘い文句だと思う。だがそうでもしないと、向こうからデートの提案なんてしてくれないと叶太もわかっていた。
付き合いはじめの頃に一度「おまえデートとかしたくないの?」と聞いたとき、青は、
「叶太が大丈夫な日に言ってよ。オレはいつでも大丈夫だから」
と返してきた。
学校では周りも引くほどあれだけ好き好き大好きアピールをしてくるのに、ずいぶん控えめすぎやしないか。
――叶太ともっと先のこと、いろいろしたいんだけど。
なんて可愛くお願いしてきたやつはどこのどいつだ。青は別に、自分とどこかに出かけたいとは思わないんだ。たとえそれが受験生の叶太を気遣う配慮からくるものだとしても、恋人としてあまりに素っ気ないんじゃないか。まるで自分だけがデートに行きたがっているみたいで、釈然としなかった。
でも青が遠慮する気持ちも十分にわかる。自分だって、立場が逆ならあえてこの時期に青を誘うことはしないだろうから。
停留所で五分ほど待つと、公園行きのバスがやってきた。日曜日だから混んでいるかと思いきや、意外にもバスの中は空いている。ちょうど奥の席が空いたのを確認して、二人並んで座った。
腰を下ろしたタイミングで、ふと青の手と触れた。その瞬間、初めて抱き合った日のことを思い出し、叶太は頬を赤らめた。手が火傷するぐらいの熱をもつ。
あれは文化祭の前日だった。今家に親がいない、という表面的な理由で青に誘われて、自分はのこのこと部屋についていった。
青の部屋に入り、ドアが閉まったあとのことは正直あまり覚えていない。青がベッドの上でいっぱいキスしてくれたことは今でも鮮明に覚えているものの、自分はとにかく緊張しまくっていた。最初から最後までされるがままだった。
きっと青なりに、こちらの緊張をほぐすためにたくさんの気を遣い、労わってくれたのだと想像できる。
あのときの青はとにかく優しかった。優しさの中に時折見せる豹のように鋭い目が、たまらなく叶太の胸を濡らした。
思い出しただけで恥ずかしくなる。青と体を重ねた回数はけっして多くはないけれど、そのどれもが濃密で、またしたいと思わせてくれるものだった。それだけは確かだ。
勝手ににやけてしまう頬を見られないよう、叶太は窓の外に目をやる。駅前の喧騒をあっという間に抜け、バスは緑化された道路の中を進んでいく。
ぼんやりと窓から景色を眺めていると、太ももの上に置いていた手に何かが降れた。視線を太ももの上に落とす。青の手だった。
叶太の手と重なり合うように乗せた手。筋の浮き出た男らしくも綺麗な手が、叶太の手を包み込んでいる。
「……今日、誘ってくれて嬉しかった」
伏し目がちに、青は顔を赤くさせて言った。
誘うといったって、自分は昼メシを食わないかと提案しただけ。感謝されるほどのことはしていない。でも……青の嬉しそうな顔を見ていると、胸がじんわりと温かくなる。
勇気を出して自分から誘ってよかったと思った。
「オレもたまには息抜きしたいしな。ていうかむしろ、おまえはオレと出かけたくないのかと思っちゃうぐらいだったんだけど」
「オレが? んなわけねえじゃん」
青はありえないという顔で即答した。
「叶太は受験生なんだから、オレがデートしたいタイミングで全部声かけてたら迷惑だろ」
「いやでも、一応声かけてくれたら時間作るし」
「じゃあ毎日でも?」
「ま、毎日?」
想像の斜め上から振ってきた言葉にギョッとした。
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