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あれからどれぐらいの時間が経っただろうか。窓の外に見えていたはずの月がいつの間にか見えなくなっている。心なしか、空が明るんできているような気もする。
「……また硬くなってきたな」
耳元で囁かれると、本日四回目の射精感が下半身にこみ上げてきた。
「あ……っだめ、もうイ、ク……!」
ぐちゃぐちゃとユーリアスの陰茎を上下に扱いていたアディムの左手が、速度を上げていく。一定の動きに刺激され、ユーリアスはあっという間に絶頂に達した。
「……治まったか?」
「ごめ……、まだ……っ」
達したばかりだというのに、去ったばかりの欲望が再び波のように襲い掛かってくる。情けないと思う気持ちを手放したのは、射精が二回、三回と続いたタイミングだ。
「どうせなら、イケるだけイッちまえ」
アディムの声に甘えて、男の首に腕を回しながらユーリアスは何度も乱れた。
アディムに押し倒された直後、お互いに理性を手放しかけていた。アディムとの行為はもっと手酷く、動物のような激しいものになると想像していたが、実際は露にも思わないほど優しいものだった。
アディムはユーリアスの布服を剥ぎ取ると、傷の無い方の左手と舌で愛撫を始めた。一糸まとわぬ姿を晒すのは恥ずかしかったが、胸の突起を舌先と指先でチロチロと転がされれば、気持ちよさが勝り、羞恥もあっという間に吹き飛んだ。
下半身に触れられていないのに腰が勝手に男を求め出す。耳たぶを食みながら小ぶりの陰茎を優しく包まれると、無意識に嬌声がこぼれた。
一度目の絶頂は早かった。充血していた茎は触れられただけで精を吐き、二回目は一回目に吐精したものを潤滑液にして扱かれているうちにイッてしまった。
三回、四回とイクたびに吐き出すものが白透明色になっていく。もう出せるものはないと体が訴えているのに、比例するようにアディムの熱を求めてしまう。
引かれやしないだろうかと、心を砕く余裕もなかった。初めての経験で知識も何もない。だがユーリアスは、自身のある部分が疼いていることにとっくに気がついていた。
「奥……お願、い……っ。奥、触って……」
ユーリアスは懇願しながら相手の左手に唇を這わせた。この手で後孔に触れてほしかった。疼いて仕方ない場所を、このゴツゴツとした指で擦りあげてほしかった。
アディムの顎奥から、ギリッと歯をすりつぶすような音が聞こえる。アディムは喉仏を上下させると、ユーリアスの首筋を唇と舌でなぞった。
「他の男に……いや、俺以外のアルファには絶対に言うなよ」
ガブッと首筋を噛まれる。加減してくれたのだろう。痛みは感じられなかった。
そういえば、アルファとオメガの間には番という特殊な関係があると昔聞いたことがある。番契約は、性交中にアルファがオメガのうなじを噛むことで成立する。夫婦は法律上のパートナーだが、番は生物上のパートナーといわれるらしい。
そうか。もしも自分のうなじをアディムが噛めば、自分たちは生物上でもパートナーとなるのだ。でもどうなんだ。書面での結婚とは違い、気持ちがなければ自分たちの間には決して成立しない関係だ。
アディムは自分との番契約について、どう思っているんだろう。ふと冷静になった瞬間、アディムの指がこちらの後孔にぐっと押し入ってきた。散々弄られることを待ち望んでいたからか、痛みはなかった。焦がれていた快楽に、目の裏がチカチカする。
「はッ……んァ」
自分でも、体内がひとりでにアディムの指を包み込もうと蠢いているのがわかる。挿れられただけなのに、またイッてしまいそうだ。
「指増やすぞ」
一旦抜かれたと思ったら、今度は二本に増やされた指が割って入ってくる。体内の弱点を相手の指がかすめる。その瞬間、これまでに感じたことのない快感に意識を持っていかれそうになった。
「やだ……っ、そこ、ヘンになる……っ」
「……ここか?」
低い声とともに、アディムの指がユーリアスの弱点を容赦なく責め立ててくる。グチュグチュと卑猥な水音とともに、男の指で後ろの蕾をめくられる感覚に悶えた。
「あンッ、ああっ、だめ……っおかしく、なる、から……っ」
ユーリアスはアディムの首に腕を回して、どこかへと飛んでいきそうな自分の体を支えた。前を何度扱かれても得られなかった快楽が気持ちいい。もっとすり潰してほしい。
小さかった絶頂への波が、弱い点を圧迫するたびに大きくなっていく。やがて自分では抑えきれないほどの波に、ユーリアスの体はブルルッと震えた。
「イッちゃ……っ、だめ、アンッ、やだ、あああっーっ!」
背筋をのけぞらし、激しい大波に耐える。何度も絶頂した上での、深い至福のとき。ユーリアスは半ば気を失うようにして、アディムの腕の中で目を閉じたのだった。
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